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病気・災害・休業時の税金完全ガイド|使え...

2026/8/5

病気・災害・休業時の税金完全ガイド|使える救済制度まとめ

  • 税金

結論から言うと、個人事業主が病気・災害・休業で収入減に直面した年の税金には、「減らす」「待ってもらう」「取り戻す」の3方向の救済制度が用意されています。医療費控除・雑損控除から納税の猶予・還付申告まで、使える制度を場面別に1本へまとめました。

入院や被災の直後は、目の前の生活と事業の立て直しで手一杯になり、税金のことはどうしても後回しになります。ところが税金の救済制度の多くは「自分で申請しないと適用されない」仕組みで、知らないまま期限を過ぎると、本来払わなくてよかった税金をそのまま納めることになりかねません。

働けない間も住民税や国民健康保険の請求は前年の所得を基準に届き続ける、医療費はかさむのに手元の現金は減っていく、そもそも収入がほぼないのに確定申告をすべきかどうか判断がつかない——療養中・被災後の悩みは、おおむねこの3つに集約されます。このガイドは、その3つの悩みに対応する制度を順番に整理し、詳しい手順は個別の解説記事へつないでいく構成です。目次代わりに、気になる見出しから読み進めてください。

病気やケガで働けない期間、個人事業主の税金はどうなる?

所得税はその年の所得に応じて計算されるため、収入が減れば税額も自動的に軽くなります。一方で、住民税・国民健康保険料・予定納税は前年の所得を基準に請求が続くため、働けない期間の資金繰りを圧迫するのはむしろ後者です。「今年の所得にかかる税金」と「前年ベースで届く請求」を分けて考えることが、すべての出発点になります。

なぜ収入が減ったのに請求額が変わらない?

住民税は前年1月〜12月の所得をもとに翌年度の税額が決まり、国民健康保険料も同じく前年所得で計算されます。たとえば2025年が好調で、2026年に病気で休業した場合、2026年度に届く住民税・国保の通知は好調だった2025年の所得がベースです。収入が止まった時期に過去最高水準の請求が届く、という逆転現象はこの仕組みから生まれます。

つまり収入減の年にやるべきことは2つあります。ひとつは、今年の所得を正しく申告して「来年度の請求」を確実に下げること。もうひとつは、今まさに届いている請求に対して、猶予や減免の制度を使うことです。前者をこの章と次章以降で、後者を納付の章で順に見ていきます。

収入が減っても確定申告はした方がいい?

申告義務がなくなるほど所得が下がった年でも、確定申告をするメリットはむしろ大きくなります。理由は3つあります。

第一に、源泉徴収された税金の取り戻しです。ライターやデザイナーのように報酬から10.21%が源泉徴収される取引が多い業種では、年の前半に働いた分の源泉徴収税額が、収入減で下がった年間の税額を上回ることが珍しくありません。この納めすぎは申告してはじめて戻ります。国税庁タックスアンサーNo.2030「還付申告」のとおり、還付申告は翌年1月1日から5年間提出でき、確定申告期を待たずに出せます。

第二に、住民税・国保の軽減判定です。市区町村は申告された所得をもとに低所得世帯向けの軽減を適用するため、申告がないと「所得不明」として軽減の判定自体が受けられないことがあります。収入が減ったのに保険料が下がらない、という本末転倒を防ぐためにも申告は必要です。

第三に、赤字の記録です。青色申告なら、その年の赤字(純損失)を翌年以降3年間繰り越して復帰後の黒字と相殺できます。赤字の年の申告は義務というより「将来の節税の仕込み」だと考えてください。詳しくは休業の章で扱います。

傷病手当金・保険金・給付金に税金はかかる?

働けない期間に受け取るお金の多くは、所得税がかからない非課税所得です。医療保険の入院給付金・手術給付金、がん保険の診断一時金など、身体の傷害や疾病に基因して支払われる保険金は非課税とされ、事業所得の売上に計上する必要はありません。労災保険に特別加入している一人親方などが受け取る休業補償給付や、障害年金も非課税です。

「入金があったのだから売上に含めないと」と律儀に計上してしまうと、払わなくてよい税金を自分から増やすことになります。休業期間の入金は、事業の売上・非課税の給付・課税される助成金の3種類に区別して記帳するのが鉄則です。ひとつ注意があるとすれば、非課税の給付金でも医療費控除の計算では「補填された金額」として医療費から差し引く必要がある点で、この計算は次の章で具体的に確認します。

休業中に払い続けた家賃や固定費は経費にできる?

事業を廃止していない限り、休業中に支払い続けた費用は必要経費に計上できます。店舗や事務所の家賃、機材のリース料、借入金の利息、減価償却費などは、売上がゼロの月でも事業を維持するための支出だからです。療養で数か月休んだ年も、これらを積み上げれば申告できる赤字が残ります。

「売上がないのだから帳簿もつけなくていい」と手を止めると、この赤字の記録が失われます。療養中の記帳は最低限で構わないので、通帳とカードの明細、支払いの控えだけは捨てずに残しておいてください。年の途中で休業・再開した場合の申告手順は病気・療養で年の途中に休業した個人事業主の確定申告で詳しく説明しています。

入院・通院で医療費がかさんだ年はどの控除を使えばいい?

医療費が膨らんだ年の第一候補は医療費控除です。支払った医療費のうち「10万円か総所得金額等の5%のいずれか低い方」を超えた部分を所得から控除でき、収入が減った年は5%基準に切り替わって控除の入口が下がります。医療費がかさむ年と収入が減る年は重なりやすく、この掛け合わせを知っているかどうかで戻る金額が変わります。

医療費控除はいくらから使える?計算式と対象範囲

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が一定額を超えるとき、超えた部分を所得から差し引ける所得控除のことです。国税庁タックスアンサーNo.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」に沿うと、控除額は「実際に支払った医療費の合計−保険金などで補填される金額−(10万円と総所得金額等の5%のいずれか低い方)」で計算し、上限は200万円です。

対象には、診療費・入院費・処方薬代のほか、通院のための公共交通機関の運賃、治療目的のはり・きゅう・マッサージ代なども含まれます。一方、自己都合の差額ベッド代、予防目的のサプリメント、結果的に異常が見つからなかった人間ドックの費用などは対象外です。生計を一にする家族の分は合算できるため、自分の入院と家族の通院が重なった年は世帯でまとめて計算します。

収入が減った年ほど控除が増えるって本当?

数字で確かめてみます。ふだんは事業所得400万円のフリーランスが、療養で事業所得120万円まで落ち込み、医療費を年間30万円支払ったケースです(保険金の補填なし)。

  • 所得400万円の年:総所得の5%は20万円だが、10万円の方が低い → 差し引く額は10万円 → 控除額は30万円−10万円=20万円

  • 所得120万円の年:総所得の5%は6万円で、10万円より低い → 差し引く額は6万円 → 控除額は30万円−6万円=24万円

同じ30万円の医療費でも、所得が下がった年は控除が4万円増えました。総所得金額等が200万円を下回ると、差し引く基準額が「10万円」から「所得の5%」に切り替わるためです。「医療費が10万円に届かないから関係ない」と思い込んでいた方こそ、収入減の年は計算し直す価値があります。

ただし正直にお伝えすると、所得が低い年は適用される所得税率も低いため、所得税の還付額そのものは大きくなりません。医療費控除が本領を発揮するのは、源泉徴収で先に税金を納めている場合の還付と、翌年度の住民税(所得割は一律10%)の軽減です。上の例なら控除24万円で住民税がおよそ2万4千円下がる計算になり、収入が戻りきらない時期の翌年の請求を確実に軽くしてくれます。

入院給付金を受け取ったときは何を差し引く?

入院給付金や高額療養費を受け取った場合は、その金額を医療費から差し引いてから控除を計算します。ここで間違えやすいのが差し引きの単位です。補填金は「その給付の対象になった医療費」からだけ差し引けばよく、引ききれない分をほかの医療費から引く必要はありません。

たとえば入院費25万円に対して入院給付金30万円を受け取り、別に家族の通院費12万円がある場合、入院費の部分はゼロになりますが(マイナスにはしません)、通院費12万円はそのまま控除の計算に残ります。「給付金をもらったから医療費控除は使えない」とあきらめる前に、医療費と給付を1対1で対応づけて整理してみてください。

なお、医療費の合計が基準に届かない年でも、対象の市販薬(スイッチOTC医薬品)を年間1万2千円超購入していれば、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例・2026年8月時点で利用可能)を選べる場合があります。通常の医療費控除とは併用できないため、両方の金額を出して有利な方を選択します。

災害や盗難で資産に損害を受けたら税金はどうなる?

台風・地震・火災などの災害や盗難にあったときは、雑損控除と災害減免法という2つの救済制度から有利な方を選べます。対象になるのは住宅や家財といった生活用の資産で、店舗・機械など事業用資産の損失は、事業所得の計算に含める別ルートで救済されます。まず「生活用か事業用か」で入口を振り分けるのが整理のコツです。

雑損控除とはどんな制度?

雑損控除とは、災害・盗難・横領によって生活に通常必要な資産に損害を受けたとき、損失額の一部を所得から控除できる制度です(詐欺や恐喝による被害は対象外です)。控除額は、保険金などで補填される金額を差し引いた損失額をもとに「損失額−総所得金額等の10%」と「災害関連支出−5万円」の多い方で計算し、その年で引ききれない分は翌年以降3年間繰り越せます。

損失額の見積もり方や必要書類、対象になる被害の線引きは雑損控除の仕組みと対象になる被害の解説にまとめています。国税庁タックスアンサーではNo.1110「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき」が該当ページです。

雑損控除と災害減免法はどちらが得?

災害減免法は、災害で住宅や家財にその価額の2分の1以上の損害を受け、その年の合計所得金額が1,000万円以下の場合に、所得税そのものを軽減・免除する制度です。所得500万円以下なら全額免除、500万円超750万円以下なら2分の1、750万円超1,000万円以下なら4分の1が軽減されます(2026年8月時点)。雑損控除とはどちらか一方だけを選ぶ選択適用です。

2つの制度の違いを、対象・条件・効果の面から一覧で比べると次のとおりです。

項目

雑損控除

災害減免法

対象になる原因

災害・盗難・横領

災害のみ

対象資産

生活に通常必要な資産(住宅・家財・現金など)

住宅・家財(損害額が価額の2分の1以上)

所得制限

なし

合計所得金額1,000万円以下

効果

損失額を所得から控除

所得税額を全額〜4分の1軽減・免除

翌年以降への繰越

3年間可能

不可(その年限り)

大まかには「損失が大きく翌年以降に繰り越したいなら雑損控除、その年の所得が500万円以下で当年の税額を一気に消したいなら災害減免法」が目安ですが、損害割合や翌年の所得見込みで結論は変わります。具体的な有利判定の手順は災害減免法と雑損控除の選び方で試算つきで解説しています。

店舗や設備など事業用資産の被害はどう処理する?

店舗・機械・車両・商品在庫など事業用資産の損害は、雑損控除ではなく事業所得の計算で処理します。資産の損失額や、壊れた設備の取り壊し・撤去にかかった費用を必要経費に計上する形で、その結果事業が赤字になれば、青色申告なら純損失として繰越・繰戻しの対象になります。生活用資産の被害より救済の幅が広いケースもあるため、被害資産の区分は丁寧に分けてください。

税金の救済とは別に、被災した設備の復旧には補助金という選択肢もあります。大きな災害の後には、国や自治体が被災事業者向けの復旧・再建支援を設けることが多く、対象や申請の流れは災害で被災した個人事業主が使える復旧・再建の補助金で紹介しています。被害状況の写真、修繕の見積書・領収書、罹災証明書は、税務と補助金の両方で証拠になります。片づけを始める前に、まず記録を残すことを徹底してください。

税金や国保が払えないときはどうすればいい?

手元資金がなく納付が難しいときの最悪の選択は、何もせず放置することです。税務署や市区町村に申請すれば、納税の猶予・分割納付・保険料の減免といった制度が使え、猶予が認められれば延滞税も軽減または免除されます。「払えないから連絡しづらい」ではなく「払えないからこそ先に相談する」が鉄則です。

納税の猶予・換価の猶予とは?

国税には、災害・病気・事業の著しい損失といった事情がある場合の「納税の猶予」と、財産の差押えや売却を待ってもらいながら分割で納める「換価の猶予」があり、原則1年以内の範囲で認められます。猶予期間中は督促や差押えといった滞納処分が進まず、延滞税も軽減または免除されるため、資金繰りが崩れた局面では真っ先に検討すべき制度です。

申請には財産や収支の状況を示す書類が必要ですが、税務署の納税相談は無料で、電話でも受け付けています。申請の流れや、住民税・国保など地方税側の窓口も含めた対処の全体像は納税が払えないときの延納・分割・猶予制度の使い方に整理しています。

予定納税の減額申請はいつまでにする?

前年分の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上だった人には、7月と11月の2回に分けて予定納税の通知が届きます。金額は前年の実績から機械的に計算されるため、今年の収入が激減していても前年ベースの高い金額のまま請求されます。この場合に使うのが「予定納税額の減額申請」です。

その年の所得の見積もりをもとに申請し、承認されれば納付額が減額またはゼロになります。提出期限は、第1期分・第2期分の減額なら7月15日まで、第2期分のみの減額なら11月1日から11月15日まで(期限が土日祝にあたる場合は翌開庁日)です。療養が長引いて夏の申請を逃しても、11月の第2期分はまだ間に合います。2026年8月時点で今年の収入減が確実なら、令和8年分の第2期に向けて打てる手が残っているということです。

予定納税はあくまで税金の前払いなので、払いすぎた分は翌年の確定申告で還付されます。ただ「戻ってくるまでの数か月」の資金繰りが苦しいのであれば、先に減額申請で出ていくお金を止める方が合理的です。

国民健康保険と国民年金の保険料はどうする?

税金と並んで重いのが、国民健康保険と国民年金です。国保には、災害や所得の急減など特別な事情がある世帯向けの減免・徴収猶予の制度を設けている市区町村が多くあります。基準や必要書類は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の国保窓口で「所得急減による減免を受けたい」と伝えて確認してください。

国民年金には、所得に応じた保険料の免除制度(全額・4分の3・半額・4分の1)があり、廃業や失業をした場合には前年所得にかかわらず判定される特例免除もあります。手続きは年金事務所または市区町村の窓口で、制度の詳細は日本年金機構の案内で確認できます。未納のまま放置すると、万一のときの障害年金の受給資格にまで影響しかねません。「払えないなら免除申請」を徹底してください。

払えないと気づいたときの動き方は、次の順番で考えると迷いません。

  • ① 納期限より前で、収入減が確実 → 予定納税の減額申請、振替納税・延納の活用を検討する

  • ② 納期限までに用意できない → 税務署・市区町村に先に連絡し、納税の猶予・換価の猶予を申請する

  • ③ 猶予を受けても苦しい → 分割納付の計画を組み直し、国保の減免・国民年金の免除を並行して申請する

  • ④ どこにも連絡せず放置 → 延滞税が膨らみ、督促・差押えに進む。この選択肢だけは避ける

相談に行くときは、直近の通帳のコピー、収入と支出が分かるメモ、医療費や被災の状況が分かる書類を持参すると話が早く進みます。整った書類でなくても構いません。状況を数字で示せることが、猶予や減免の判断材料になります。

休業して収入が激減した年の確定申告はどうする?

売上がほとんどない年でも、記帳と確定申告は続けるのが正解です。青色申告なら赤字(純損失)を翌年以降3年間繰り越して復帰後の黒字と相殺でき、前年に納めた税金の一部を取り戻す繰戻し還付という道もあります。休業の年の申告は、復帰後の税金を減らすための準備だと位置づけてください。

赤字の年の申告で何が変わる?

青色申告をしている個人事業主は、事業の赤字を給与など他の所得と損益通算し、引ききれない純損失を翌年以降3年間繰り越せます。たとえば休業の年に150万円の赤字が出て、翌年200万円の黒字まで回復した場合、繰越があれば翌年の課税対象は50万円まで圧縮されます。所得税だけでなく、翌々年度の住民税や国保料まで連動して下がるため、効果は見た目以上です。

前年が黒字で所得税を納めていたなら、赤字を前年にぶつけて還付を受ける「純損失の繰戻し還付」も選べます。どちらが有利かは前年の税率と復帰の見込み次第ですが、いずれの制度も入口は同じで、赤字の年にきちんと申告しておくことが条件です。申告がなければ繰越も繰戻しも使えません。

収入の波が大きいときの「平均課税」とは?

印税・原稿料・作曲料のような変動所得や、休業の補償として一括で受け取るお金などの臨時所得には、平均課税という税率を平準化する制度があります。所得税は累進税率のため、ある年に所得が集中するとその年だけ高い税率がかかりますが、変動所得・臨時所得の合計が総所得金額の20%以上ある場合、五分五乗方式という計算で税率の跳ね上がりを抑えられます。

休業からの復帰後、仕事が一気に戻って所得が急回復した年にも関係しうる制度です。対象になる所得の範囲と計算のしかたは変動所得・臨時所得の平均課税の解説で確認できます。

育児や介護での休業でも考え方は同じ?

休業の理由が病気ではなく育児や介護でも、税金の基本的な考え方は同じです。事業を廃止していなければ固定費は経費にでき、赤字は繰り越せて、収入減の年の各種軽減も使えます。出産に伴う医療費は医療費控除の対象になり、出産育児一時金は補填金として差し引く、といった固有の論点は育児・介護で休業した年の確定申告で扱っています。

記帳代行の現場では、療養や介護が一段落した方から「1年分の領収書と明細が手つかずのまま袋に入っている」というご相談を毎年お受けします。共通するのは、体調が戻ったら自分でやろうと考えていたものの、復帰後は仕事の巻き返しが最優先になり、経理まで手が回らなかったという経過です。休んでいた期間の帳簿づけをまとめて外に出す方法として、記帳代行というサービスの仕組みも選択肢に入れてみてください。溜まった状態からの依頼にも対応できます。

病気を機に事業の続け方を見直すときに知っておく制度

病気やケガは、事業の続け方そのものを考え直すきっかけにもなります。従業員を休ませるなら雇用調整助成金、家族に引き継ぐなら納税猶予の税制、再発に備えるなら保険や共済と、場面ごとに使える仕組みがあります。「無理して続けるか、全部やめるか」の二択で考える必要はありません。

従業員を休ませるとき、個人事業主でも助成金は使える?

従業員を雇っている個人事業主が、事業活動の縮小にともなって従業員を休業させ、休業手当を支払った場合には、厚生労働省の雇用調整助成金で費用の一部の助成を受けられる可能性があります。雇用保険の適用事業主であることや、休業手当の支払いが前提になるといった要件があります。対象になる休業の範囲と申請の流れは雇用調整助成金の対象と手続きの解説にまとめています。

注意したいのは、受け取った助成金の税務上の扱いです。身体の傷害に基因する保険金と違い、事業の減収や人件費を補う助成金・補助金は、原則として事業の収入(雑収入など)に計上する課税対象です。非課税の給付と混同して申告から漏らすと、後から指摘を受ける原因になります。

家族に事業を引き継ぐときの税金の備えは?

自分の代では続けられないものの家族が継いでくれる、という状況なら、事業用の土地・建物・機械などの引き継ぎにかかる贈与税・相続税の納税が猶予される「個人版事業承継税制」という時限措置があります(2026年8月時点。事前の計画提出など期限と要件があります)。適用のハードルは低くありませんが、資産の大きい事業ほど検討の価値があります。

また、小規模企業共済に加入している場合は、病気やケガによる入院時に利用できる傷病災害時貸付など、契約者向けの貸付制度があります。掛金の範囲内での借入ではあるものの、金融機関の審査を経ずに資金をつなげる手段として覚えておいて損はありません。

所得補償保険の保険料は経費になる?

働けない期間の収入を補う民間の備えには、所得補償保険や就業不能保険があります。ここで注意したいのが保険料の扱いです。事業のためではなく事業主本人の生活を守る保険であるため、保険料は必要経費にできません。生命保険料控除など所得控除の側で拾うのが正しい処理です。

「事業に関係する保険だから経費だろう」と経費計上している帳簿は、実務でもたびたび見かけます。経費にはならない一方で、受け取る保険金は非課税という有利な扱いなので、トータルで見れば加入の価値は十分あります。公的制度と共済でカバーできる範囲を先に確認し、足りない部分だけ民間保険で埋めると、掛金に無駄がありません。

よくある質問

Q. 個人事業主でも傷病手当金はもらえますか?

市区町村が運営する国民健康保険には、会社員の健康保険にあるような傷病手当金の制度が原則としてありません。ただし、建設業や医師・美容業など業種別の国民健康保険組合のなかには、独自の傷病手当金や入院見舞金を設けているところがあります。国保組合に加入している場合は、給付の一覧を一度確認してみてください。

Q. 病気で廃業を決めた場合、廃業後に支払った費用は経費にできますか?

できる場合があります。事業をやめた後に発生した費用でも、在庫の処分や事業に関する債務の整理など事業に直接関係するものは、「事業を廃止した場合の必要経費の特例」により廃業した年などの所得から差し引ける仕組みがあります。廃業日をいつにするかで扱いが変わることもあるため、廃業届を出す前に支出の予定を整理しておくのが安全です。

Q. 療養中に障害者手帳の交付を受けました。税金の控除はありますか?

あります。本人や扶養する家族が所得税法上の障害者に当たる場合、障害者控除として27万円(特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円)を所得から差し引けます。障害者手帳の交付を受けた場合だけでなく、寝たきりで介護が必要な状態など手帳がなくても対象になるケースがあるため、要件を確認する価値があります。

Q. 災害で帳簿や領収書が失われたら、確定申告はどうすればいいですか?

まず税務署に事情を相談してください。銀行の取引履歴やカード明細の再発行、取引先への支払記録の照会などで帳簿を可能な範囲で再現し、どうしても不明な部分は合理的な見積もりによる申告が認められる場合があります。被災の事実を示す罹災証明書は、税務・保険・補助金のすべてで使うので必ず取得しておきましょう。

Q. 休業中の国民年金を免除してもらうと、将来の年金は減りますか?

未納のままにするよりは大幅に有利です。全額免除の期間も老齢基礎年金の計算では2分の1(国庫負担分)が反映され、障害年金・遺族年金の受給資格期間にも算入されます。免除された保険料は10年以内なら追納して満額に近づけることもできます。保険料を払わず免除申請もしない「未納」が、最も損な状態です。

病気・災害・休業の年は「申請して取り戻す」が鉄則

収入減の年の救済制度は、医療費控除・雑損控除・純損失の繰越といった「減らす」、納税の猶予・保険料免除といった「待ってもらう」、還付申告・繰戻し還付といった「取り戻す」の3方向で整理できます。共通するのは、どれも自動では適用されず、申告・申請してはじめて動く制度だということです。体調と生活の再建が最優先であることは大前提として、領収書と明細の記録だけは捨てずに残し、期限のある手続きから順に手を付けてください。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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