災害減免法と雑損控除の選び方|被災した個人事業主が得する判断を解説
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税金

災害減免法と雑損控除は、被災した個人事業主が所得税を軽くできる2つの制度で、同じ損害に併用はできません。損害額と所得の見込みで有利な方が変わる判断の軸を、事業用資産と生活用資産の切り分けまで含めて整理します。
地震、台風、豪雨、火災といった災害で住まいや家財が被害を受けたとき、所得税には負担を軽くするための制度が用意されています。ところが、いざ調べてみると「災害減免法」と「雑損控除」という2つの制度が出てきて、どちらを使えばよいのか迷ってしまう方が少なくありません。被災して心身ともに大変な時期に、税金の仕組みまで読み解くのは大きな負担です。
☑ 地震や台風で自宅や家財が被害を受けたが、税金の軽減制度があると聞いて気になっている
☑ 「災害減免法」と「雑損控除」のどちらを選べばよいのか、違いがわからない
☑ 個人事業主の場合、事業用の損害と自宅の損害で扱いが変わるのか知りたい
被災した個人事業主・フリーランスの方に向けて、災害減免法と雑損控除の違い、それぞれが有利になるケース、選ぶときの考え方を整理します。自分の状況ではどちらを検討すればよいか、判断の軸がつかめるようにまとめました。
災害減免法と雑損控除はどう違う?まず全体像をつかみましょう
2つの制度はどちらも「災害で受けた税の救済」
災害で資産に損害を受けた場合、所得税には大きく分けて2つの救済策があります。ひとつが雑損控除、もうひとつが災害減免法による所得税の軽減・免除です。どちらも被災者の税負担をやわらげる目的は同じですが、減らし方の仕組みがまったく異なります。
雑損控除は「所得控除」の一種で、損害額を所得から差し引くことで課税対象を小さくする方法です。一方、災害減免法は、計算した所得税額そのものを直接軽くしたり免除したりする方法です。前者は所得を減らすアプローチ、後者は税額を減らすアプローチ、とイメージすると整理しやすくなります。所得税が「所得−所得控除」に税率をかけて計算される全体像は、国税庁タックスアンサーNo.1000「所得税のしくみ」で確認できます。
両方を同時に使うことはできない
大切な前提として、雑損控除と災害減免法はどちらか有利な方を選んで適用するものであり、同じ損害について両方を併用することはできません。だからこそ「どちらが自分にとって得か」を見極める必要があります。一般的には、損害が大きい場合や所得が比較的高い場合は雑損控除、損害がそれほど大きくなく所得が一定以下の場合は災害減免法が有利になりやすい、という傾向があります。
対象になるのは主に「生活に必要な資産」
どちらの制度も、基本的には住宅や家財といった生活に必要な資産の損害が対象です。別荘や事業用の固定資産、棚卸資産などは、この2つの制度とは扱いが分かれます。個人事業主の方は「自宅・家財の損害」と「事業用資産の損害」を分けて考える必要があるため、この点はのちほど詳しく説明します。
雑損控除の特徴と計算の考え方
所得から損害額を差し引く仕組み
雑損控除は、災害だけでなく盗難や横領による損害も対象になる所得控除です。損害額のうち一定の足切り額を超えた部分を、その年の所得から差し引くことができます。控除額は、おおまかに次の2通りで計算し、いずれか大きい方を採用するのが基本的な考え方です。
差引損失額から、総所得金額等の一定割合を差し引いた金額
差引損失額のうち、災害関連支出から一定額を差し引いた金額
細かな計算式は状況によって変わりますが、「損害が大きいほど控除額も大きくなりやすい」と覚えておけば十分です。保険金や共済金などで補てんされた金額は損害額から差し引いて計算する点にも注意しましょう。なお、災害に関連して受け取る給付金・協力金・支援金には課税されるものと非課税のものがあり、給付金・協力金・支援金の課税と非課税の扱いもあわせて確認しておくと、申告の全体像が整理できます。
引ききれない分は翌年以降に繰り越せる
雑損控除の大きな特徴は、その年の所得から引ききれなかった金額を翌年以降に繰り越せることです。被害が甚大で1年分の所得では控除しきれない場合でも、一定年数にわたって繰り越して使えるため、損害が大きいケースでは雑損控除が有利になりやすい理由のひとつになっています。
災害関連支出も対象に含められる
雑損控除では、損壊した住宅や家財の取り壊し・撤去にかかった費用、災害がやんだ後に被害の拡大を防ぐために支出した費用なども、災害関連支出として損害額に含められる場合があります。こうした支出の領収書は、後で控除額を計算するための重要な根拠になりますので、捨てずに保管しておきましょう。損害額の集計や、事業用・生活用の切り分けを含む記帳の手間が大きいときは、記帳を丸ごと任せる記帳代行という方法もあり、被災後の負担を軽くできます。
災害減免法の特徴と適用の条件
所得税額そのものを軽減・免除する
災害減免法は、災害によって住宅や家財に一定以上の損害を受けた場合に、その年の所得税額を直接軽くしたり、全額免除したりする制度です。所得を減らす雑損控除とは異なり、計算後の税額に対して働くのが特徴です。手続きがわかりやすく、損害がそれほど大きくないケースでは効果を実感しやすい制度といえます。軽減・免除は所得税額を基準に段階的に決まるため、前提となる課税所得ごとの税率は国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」で確認できます。
所得や損害の程度に条件がある
災害減免法を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。代表的なものとして、次のような点があります。
住宅や家財の損害金額が、その時価の一定割合以上であること
災害を受けた年の所得金額が一定額以下であること
軽減・免除の割合は、所得の大きさに応じて段階的に決められていること
所得が一定額を超える方は災害減免法を使えない仕組みになっているため、所得が比較的高い個人事業主の方の場合は、雑損控除を検討することになるケースが多くなります。
繰り越しはできない点に注意
災害減免法は、あくまでその年の所得税を対象とする制度で、雑損控除のように引ききれなかった分を翌年以降へ繰り越すことはできません。そのため、損害が極めて大きく1年では救済しきれないようなケースでは、繰り越せる雑損控除の方が結果的に有利になることがあります。逆に、損害が中程度で所得もそれほど高くない年であれば、災害減免法のほうがシンプルに大きな効果を得られる場合もあります。
個人事業主が特に押さえておきたいポイント
事業用資産の損害は別のルールで扱う
ここが個人事業主の方にとって最も重要なポイントです。雑損控除と災害減免法が対象とするのは、原則として自宅や家財といった生活用の資産です。店舗、事務所、機械、商品在庫といった事業用資産の損害は、これらの制度ではなく事業所得の計算の中で必要経費として扱うのが基本です。たとえば災害で壊れた事業用設備の損失や、被害を受けた商品の損失などは、事業の損失として処理する流れになります。
自宅兼事務所のように、ひとつの建物を生活と事業の両方に使っている場合は、損害を事業用部分と生活用部分に分けて考える必要があります。事業用部分は必要経費、生活用部分は雑損控除や災害減免法、という整理になるため、面積按分などの考え方が関わってきます。
事業の損失が大きければ純損失の繰越も視野に
事業用資産の損害が大きく、その年の事業が赤字になった場合、青色申告をしている方であれば、その純損失を翌年以降に繰り越して将来の所得と相殺できる仕組みがあります。生活用資産は雑損控除、事業用資産は事業の損失として純損失の繰越、というように、損害の性質ごとに使える制度を組み合わせて考えることが、個人事業主の被災時には特に大切になります。赤字や利益の少ない年をどう活かすかという観点では、利益の少ない年に合わせて備えを崩す経営セーフティ共済の出口戦略の考え方も参考になります。
納税の猶予や予定納税の減額も検討できる
被災したときに使えるのは、税額を減らす制度だけではありません。災害によって資産に相当な損失を受けた場合には、所得税の納税を一定期間猶予してもらえる制度や、予定納税額の減額を申請できる制度なども用意されています。手元の資金繰りが厳しいときには、こうした「納める時期や金額を調整する制度」もあわせて検討すると、当面の負担をやわらげやすくなります。
どちらを選ぶ?判断のステップ
まずは損害額と所得を整理する
選び方の出発点は、「被害を受けた資産の損害額」と「その年の所得の見込み」を整理することです。損害が大きいほど、また所得が高いほど、所得から損害を差し引ける雑損控除の効果が出やすくなります。反対に、所得が一定以下で損害が中程度であれば、税額を直接減らせる災害減免法が有利になることもあります。
繰り越しの必要性で考える
損害が甚大で、その年の所得だけでは到底引ききれないと見込まれる場合は、翌年以降に繰り越せる雑損控除が候補になりやすいといえます。1年で完結させたいか、複数年にわたって効果を生かしたいか、という視点も判断材料になります。
事業用と生活用を切り分けてから比較する
個人事業主の方は、まず損害を「事業用」と「生活用」に切り分けることが先決です。事業用は事業の損失として処理し、生活用について雑損控除と災害減免法を比較する、という順番で考えると整理しやすくなります。実際の有利不利は数字を当てはめて試算してみないとわからないことも多いため、迷ったときは税務署や専門家に相談し、両方の方法で試算したうえで選ぶのが安心です。申告そのものは、自宅から進められるスマホ(マイナンバーカード方式)での確定申告を使う方法もあります。
よくある質問
Q. 災害減免法と雑損控除は、両方一緒に使えますか?
同じ損害について両方を同時に使うことはできません。どちらか有利な方を選んで適用する仕組みです。一般的には、損害が大きい場合や所得が高い場合は雑損控除、損害が中程度で所得が一定以下の場合は災害減免法が有利になりやすい傾向があります。実際には数字を当てはめて試算し、有利な方を選ぶことになります。
Q. 保険金を受け取った場合、控除の計算はどうなりますか?
火災保険や地震保険、共済などから損害を補てんする保険金・共済金を受け取った場合は、その金額を損害額から差し引いて計算します。受け取った保険金で損害がほぼまかなえた場合は、控除や軽減の対象となる損害額が小さくなったり、なくなったりすることもあります。保険金の額が確定してから計算するのが基本です。
Q. 自宅兼事務所が被害を受けたときは、どう申告すればよいですか?
自宅兼事務所のように生活と事業の両方に使っている建物が被害を受けた場合は、損害を事業用部分と生活用部分に分けて考えます。事業用部分は事業所得の計算で必要経費などとして扱い、生活用部分は雑損控除または災害減免法の対象として検討します。按分の考え方や金額の算定は判断が難しいため、専門家に確認しながら進めると安心です。
まとめ|損害の中身を分けて、有利な制度を選ぶ
災害減免法と雑損控除は、どちらも被災者の税負担をやわらげる制度ですが、所得を減らすか税額を減らすかという仕組みの違いがあり、併用はできません。損害額と所得の見込みを整理し、繰り越しの必要性も踏まえて、自分にとって有利な方を選ぶことが基本です。個人事業主の方は、まず損害を事業用と生活用に切り分け、事業用は事業の損失として処理したうえで、生活用について2つの制度を比較するという順番を意識すると、判断がしやすくなります。
被災して生活や事業の立て直しに追われる中で、損害額の算定から制度の比較、申告書の作成までをすべて自分で行うのは、心身ともに大変な時期には重くのしかかります。慣れない税の計算で手が止まってしまうこともあるでしょう。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








