個人事業主の車の経費完全ガイド|購入・維持費・按分を徹底解説
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税金

個人事業主の車は、事業で使った割合の分だけ経費にできます。車両本体は減価償却で数年に分け、ガソリン代や税金などの維持費はその年の経費に。按分割合の決め方から4年落ち中古車の節税効果、売却・廃車時の処理までを1本にまとめました。
車は、個人事業主が扱う経費のなかでも金額が大きく、判断に迷う論点が集中する分野です。新車か中古か、購入かリースか、事業とプライベートの割合を何割にするか——どれも「これが正解」と言い切れるものではなく、走り方と事業の中身によって答えが変わります。このガイドでは車にまつわるお金を「買う」「使う」「手放す」の3段階に分け、それぞれの税務上の扱いと具体的な計算を順番に確認していきます。
☑ 車を買ったのに、初年度に落とせた経費が思ったより少なくて拍子抜けした
☑ 事業按分を何割にすればよいか分からず、なんとなく50%のままにしている
☑ ガソリン代・車検代・自動車税をどの勘定科目に入れるか、毎回迷って手が止まる
ひとつでも当てはまるなら、気になる見出しから読み進めてください。それぞれの論点はテーマ別の解説記事にもつないでいるので、深く知りたい部分だけ掘り下げられます。
車の費用はどこまで経費になる?押さえるべき2階建ての構造
車にかかるお金は「取得するための費用」と「使い続けるための費用」の2階建てで考えます。前者は減価償却で耐用年数にわたって少しずつ経費化し、後者は支払った年の経費になります。そしてどちらにも共通するのが、事業で使った割合の分だけが必要経費になるという大原則です。
家事関連費は「明らかに区分できる部分」だけが経費になる
仕事にも生活にも使う支出を、税務では家事関連費と呼びます。車はその代表格です。国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」では、家事関連費のうち必要経費になるのは、業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られると示されています(2026年8月時点)。
ここで重要なのは「明らかに区分できる」という条件です。感覚で「だいたい半分くらい」と決めた割合は、区分したことにはなりません。あとで説明を求められたときに、なぜその割合なのかを数字で示せる状態にしておくことが、車の経費計上のスタート地点になります。逆に言えば、根拠さえ用意できていれば、80%でも90%でも堂々と計上できます。
なお、事業に一切使わない完全なプライベート車は、どれだけ高額でも1円も経費になりません。「車を買えば節税になる」という言い方が独り歩きしがちですが、正確には「事業に使う車を買うと、その使用割合の分だけ経費が増える」というだけの話です。
車の費用を分解すると、どの項目が出てくる?
車まわりの支出は、次の3グループに分かれます。この分類を頭に入れておくと、レシートを見た瞬間にどこへ振り分けるか判断できるようになります。
取得のための費用:車両本体価格、カーナビ・ドライブレコーダーなどの付属品、納車費用、登録にかかる諸費用
使い続けるための費用:ガソリン代、駐車場代、高速道路料金、車検・点検費用、自動車税、自賠責保険・任意保険、修理代、洗車・タイヤ交換、ローンの利息
手放すときの費用と収入:売却代金、下取り価格、廃車費用、リサイクル料金の精算
意外と知られていないのが、購入時に払った金額のすべてが「取得価額」になるわけではない点です。車両本体価格・付属品・納車費用は取得価額に含めて減価償却しますが、自動車税や環境性能割などの税金、自賠責保険料、検査・登録の手数料といった項目は、取得価額に含めずその年の経費として処理することが認められています。総額300万円の見積書でも、減価償却の対象は280万円前後になることが珍しくありません。
リサイクル料金も独特です。預託金相当額は「預託金」として資産に計上し、廃車したときにはじめて費用になります。資金管理料金の部分だけは支払った年の経費です。購入時の諸費用明細は、この振り分けのために必ず保管しておいてください。
個人名義の車でも経費にできる?
できます。個人事業主の場合、事業用資産と個人資産の名義は同一人格なので、車検証の名義が個人名でも事業用として帳簿に載せられます。ローンやカーローンの所有権留保で、車検証の所有者欄がディーラーやローン会社になっているケースも同様で、使用者が本人であれば問題ありません。判定の基準は名義ではなく使用実態です。どの支出をどこまで載せられるかを費目ごとに確認したいときは、車を経費にする方法を購入形態別に整理した記事が入口になります。
購入・中古車・リースはどれが得?3つの方式を比較する
結論から言うと、長く乗って走行距離も多いなら購入、利益が出た年に経費を厚くしたいなら中古車、資金と事務手間を抑えたいならリースが基本の当てはめです。3方式は「トータルでいくら払うか」より「いつ経費になるか」と「手放すときにどうなるか」で性格が大きく違います。
まず全体像として、3つの方式を初期負担・経費化のしかた・出口の3視点で並べると次のようになります。
比較項目 | 新車を購入 | 中古車を購入(4年落ち) | カーリース |
|---|---|---|---|
初期の資金負担 | 大きい(ローン利用可) | 中程度 | 頭金0円のプランが多い |
経費化のしかた | 6年かけて減価償却 | 簡便法で2年など短期償却 | 毎月のリース料を経費計上 |
初年度に落とせる額 | 小さい | 大きい | 契約月数分で一定 |
帳簿の手間 | 固定資産台帳の管理が必要 | 固定資産台帳の管理が必要 | 毎月同じ仕訳の繰り返し |
所有権 | 自分 | 自分 | リース会社 |
税金・車検の支払 | その都度自分で負担 | その都度自分で負担 | 月額に含むプランあり |
途中でやめるとき | 売却して資金化できる | 売却して資金化できる | 中途解約金が発生しやすい |
手放すときの税務 | 譲渡所得の計算が必要 | 譲渡所得の計算が必要 | 原則として不要 |
向いている人 | 長く乗る・年間走行距離が多い | 利益の出た年に経費を厚くしたい | 資金を残したい・事務を軽くしたい |
新車購入が向いているのはどんな人?
年間2万キロ以上走る、10年近く乗りつぶす、車を使うこと自体が売上に直結する——こうした使い方なら新車購入が合理的です。1キロあたりのコストで見ると、長く乗るほど購入が有利になります。故障リスクが低く、保証期間中は修理費の見通しが立ちやすいのも実務的なメリットです。
一方で税務上のインパクトは穏やかです。普通乗用車の法定耐用年数は6年なので、300万円の新車を1月に買っても、初年度の償却費は定額法で約50万円。事業割合70%なら経費は約35万円にとどまります。「今年の利益を圧縮したい」という動機だけで新車を買うと、期待外れになりやすいのはこのためです。
カーリースはどう経費になる?
一般的なカーリース(オペレーティングリースに区分される契約)では、毎月のリース料を賃借料やリース料といった科目でそのまま経費に計上します。資産計上も減価償却の計算も不要で、事業割合を掛けた金額を毎月同じ仕訳で処理するだけです。固定資産台帳を触らずに済むため、帳簿づけの負担は3方式のなかで最も軽くなります。
注意点は2つあります。ひとつは、契約が所有権移転外ファイナンスリースに該当する場合、原則としてリース資産として資産計上し、リース期間定額法で償却する扱いになること。契約書に「中途解約不可」「残価精算あり」といった条件が並ぶ場合は区分を確認してください。もうひとつは中途解約の重さです。事業の縮小や車種変更で早期に手放したくなっても、残リース料相当額の違約金が生じるのが一般的で、売れば資金が戻る購入とは出口の柔軟性が違います。契約年数と月額の損益分岐はリースと購入を数字で比較した解説で具体的に確認できます。
3年で乗り換える前提なら、どれを選ぶ?
短いサイクルで乗り換えるなら、購入なら中古車、手間を優先するならリースの二択になります。新車は3年で手放すと値落ちが最も大きい期間をそのまま負担することになり、償却も終わっていないため、売却時に未償却残高より安く売れて損失が出るパターンが多く見られます。逆に、走行距離が短くきれいに乗る方であれば、中古車を買って3年後に近い価格で売る「乗り換え前提の中古車」が、税務上も資金繰り上もバランスが取れます。
車の減価償却はどう計算する?耐用年数と償却方法の基本
減価償却とは、時間とともに価値が減る資産の取得費を、使用できる期間に分けて経費にしていく手続きです。国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」のとおり、取得価額は買った年に全額が経費になるのではなく、法定耐用年数に応じて配分されます(2026年8月時点)。車の場合、この耐用年数が車種によって3年から6年まで変わります。
車種別の法定耐用年数と、代表的な償却率をまとめると次のとおりです。中古車の欄は、後述する簡便法で耐用年数が2年になったケースを参考に載せています。
車種 | 法定耐用年数 | 定額法の償却率 | 定率法の償却率 |
|---|---|---|---|
普通乗用車 | 6年 | 0.167 | 0.333 |
軽自動車(総排気量0.66リットル以下) | 4年 | 0.250 | 0.500 |
小型貨物車(最大積載量2トン以下) | 4年 | 0.250 | 0.500 |
その他の貨物自動車 | 5年 | 0.200 | 0.400 |
二輪・三輪自動車 | 3年 | 0.334 | 0.667 |
参考:簡便法で2年になった中古車 | 2年 | 0.500 | 1.000 |
定額法と定率法、個人事業主はどちらになる?
個人事業主の法定償却方法は定額法です。何も届け出をしていなければ、車は自動的に定額法で償却されます。毎年同じ額を経費にしていく方式なので、利益の見通しが立てやすく、帳簿もシンプルです。
初期に多く償却したい場合は定率法を選べますが、そのためには「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を、その償却方法を採用したい年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに税務署へ提出する必要があります。ここを知らずに「中古車を買えば初年度に全額落ちるはず」と考えていて、実際は定額法で半分しか落ちなかった——という行き違いは非常に多いポイントです。届出は資産の種類ごとに行い、いったん選んだ方法は原則3年間は変更できません。定額法と定率法それぞれの計算の考え方は、減価償却がはじめての方向けの解説で図解的に整理しています。
年の途中で買ったら月割りになる
減価償却費は、事業に使い始めた月から年末までの月数で按分します。計算に使うのは「購入した月」ではなく「事業の用に供した月」です。12月に納車された車は12分の1しか償却できないため、年末ギリギリの購入は経費インパクトがほとんど出ません。1か月未満の端数は1か月に切り上げて数えます。
この月割りは、節税目的で車を買う場合の最大の落とし穴です。決算の数字を見てから慌てて11月・12月に発注しても、納車が翌年にずれ込めばその年の経費はゼロ。契約日ではなく納車日と使用開始日が基準になるという点は、必ず販売店と確認しておいてください。
10万円・20万円・30万円で処理が変わる
取得価額が小さい場合は、減価償却によらない簡便な処理も選べます。10万円未満なら消耗品費などで全額をその年の経費に。10万円以上20万円未満なら、3年間で均等に償却する一括償却資産という方法があります。さらに青色申告をしている場合は、30万円未満の資産を年間合計300万円まで一度に経費にできる少額減価償却資産の特例(適用期限は延長が重ねられているため、利用時に最新の期限を確認してください)が使えます。
普通車では該当しにくいものの、年式の古い軽トラックや原付・小型二輪を業務用に買うケースでは現実的な選択肢です。たとえば18万円の中古軽トラなら、4年で償却するか、一括償却資産として3年で均等に落とすか、青色申告の特例で全額をその年に落とすかを選べます。
4年落ち中古車が節税になるのは本当?数字で検証する
4年落ち中古車が節税になると言われるのは、中古資産の耐用年数が「簡便法」で短く見積もれるためです。普通乗用車なら4年落ちで耐用年数が2年になり、定率法を選べば計算上は初年度に取得価額のほぼ全額を償却できます。ただしこれは税金が減るというより「経費になる時期が前倒しになる」効果であり、総額が増えるわけではありません。
簡便法の計算式と、なぜ「4年落ち」なのか
国税庁タックスアンサーNo.5404「中古資産の耐用年数」によると、中古資産の耐用年数を見積もることが難しい場合は、次の簡便法で算定できます(2026年8月時点)。
法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数 × 20%
法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
計算結果に1年未満の端数があれば切り捨て、2年未満になる場合は2年とする
普通乗用車(法定耐用年数6年)を4年落ちで買った場合に当てはめると、(6年 − 4年)+ 4年 × 20% = 2.8年。端数を切り捨てて2年です。3年落ちだと(6−3)+3×0.2=3.6年で3年、5年落ちだと(6−5)+5×0.2=2.0年で2年。つまり4年落ち以降は、どれだけ古い車を買っても2年より短くはならないため、「価格と状態のバランスが取れる最短ライン」として4年落ちが語られてきたわけです。なお、購入後に取得価額の50%を超える資本的支出をした場合は簡便法を使えません。
200万円の4年落ち中古車を事業割合70%で使うと、いくら経費になる?
具体的に計算します。前提は「1月に納車して即使用開始」「取得価額200万円」「事業按分70%」「耐用年数は簡便法で2年」です。届出をしていない場合の定額法と、届出済みの定率法を並べます。
年 | 定額法(償却率0.500) | うち経費(70%) | 定率法(償却率1.000) | うち経費(70%) |
|---|---|---|---|---|
1年目 | 1,000,000円 | 700,000円 | 1,999,999円 | 1,399,999円 |
2年目 | 999,999円 | 699,999円 | 0円 | 0円 |
3年目 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
合計 | 1,999,999円 | 1,399,999円 | 1,999,999円 | 1,399,999円 |
定率法なら初年度に約140万円を経費にできます。課税所得が330万円超695万円以下の帯にいる方なら、所得税20%と住民税10%を合わせておよそ30%。単純計算で約42万円の税負担が軽くなります。一方の定額法は毎年70万円ずつ2年に分かれ、初年度の効果は半分です。ただし表の合計欄が示すとおり、2年間のトータルで経費になる金額は完全に同じです。どちらを選んでも、経費の総額は事業割合を掛けた約140万円で変わりません。
また、定率法で全額を償却する場合でも、帳簿上は備忘価額として1円を残します。この1円は車を売却または廃車するまで固定資産台帳に残り続けるので、決算のたびに「なぜ1円あるのか」と悩まないよう覚えておいてください。
4年落ち中古車が「節税にならない」3つのケース
短期償却は魅力的ですが、次のいずれかに当てはまると期待した効果は出ません。
①翌年以降の利益も安定して高い場合:初年度に経費を集中させた反動で、2年目以降は車の経費がゼロになります。所得税は超過累進税率なので、利益が毎年同水準なら、経費を平準化したほうが結果的に税負担が軽くなることもあります。
②年末近くに購入した場合:月割りが効くため、10月使用開始なら定率法でも200万円 × 1.000 × 3か月 ÷ 12か月=50万円。事業割合70%で経費は35万円まで縮みます。
③手元資金に余裕がない場合:200万円払って戻ってくるのは税負担の減少分だけです。上の例なら約42万円で、差し引き158万円は確実に出ていきます。「税金を払いたくない」という理由だけで買うと、資金繰りは必ず悪化します。
それでも中古車が有効なのは、もともと車が必要で、たまたま利益が出た年に買い替えのタイミングが重なったときです。年式ごとの耐用年数の違いや、月割りを踏まえた発注時期の考え方まで踏み込んだ解説は4年落ち中古車が節税になると言われる理由の記事にまとめています。購入を検討するなら、決算月から逆算して「使い始めが何月になるか」を先に確定させてから車種を選ぶ順番がおすすめです。
事業按分の割合はどう決める?証拠の残し方まで
按分割合は「事業で使った実績を数字で示せる基準」で決めます。最も説得力があるのが走行距離基準、次いで使用日数基準です。割合そのものに法律で決まった上限はなく、根拠と記録がそろっていれば高い割合でも通ります。逆に、根拠のない切りのよい数字は指摘を受けやすくなります。
按分割合を決める判断フロー
自分がどの基準を使うべきかは、次の順に当てはめると決まります。
① 通勤・買い物・送迎に使う車が別にあり、その車は事業に一切使わない → 事業用の車を100%として計上することも可能。ただし2台持ちの実態と、それぞれの使い分けを説明できることが前提
② ①に当てはまらず、走行距離を記録できる → 事業の走行距離 ÷ 総走行距離。最も強い根拠になる
③ 距離の記録は難しいが、稼働する曜日が決まっている → 事業使用日数 ÷ 総日数。週5日稼働なら5÷7で約71%
④ 日によってばらつく → 直近1〜3か月だけ実測し、その平均を年間の代表値として使う。実測した期間の記録は保存しておく
⑤ どの方法も困難 → 業務内容(訪問件数・配送ルートなど)から合理的に見積もり、算定根拠をメモにして保存する
①〜⑤のいずれでも、決め方を毎年ころころ変えないことが大切です。前年70%、今年95%のように大きく動かすなら、事業の内容が変わったという説明を用意しておきましょう。
走行距離で根拠づけるなら、何を記録する?
走行距離基準を使うなら、運行記録を残します。記録すべき項目は多くありません。日付・行き先・訪問目的・出発時と到着時のメーター値、これだけです。スマホの表計算アプリでも、車内に置いたノートでも構いません。1日1行、30秒で書ける形にしておくのが続けるコツです。
補強材料として、カーナビの走行履歴、ETCの利用明細、給油レシート(裏に訪問先を書いておく)、訪問先とのメールや予約記録なども有効です。年始と年末のメーター値の写真を撮っておくと、総走行距離の裏づけになります。記録方法の具体例と、月次でどうまとめるかは走行距離で事業按分を根拠づける運行記録の残し方で詳しく扱っています。
按分は車両本体だけの話ではない
決めた按分割合は、車両の減価償却費だけでなく、ガソリン代・駐車場代・保険料・自動車税・車検費用・修理代まで、その車に関するほぼすべての支出に同じ割合で適用します。減価償却費だけ70%にして、ガソリン代は100%——という処理は整合が取れません。
例外的に割合を変えてよいのは、その支出が事業使用に紐づくと個別に特定できる場合です。取引先訪問のために使ったコインパーキング代や高速道路料金は、事業のために発生したことが明らかなので100%計上できます。逆に、家族旅行で使った高速代は0%です。「車全体は按分、個別に特定できる支出は実額」と覚えておくと迷いません。
按分の計算も、その根拠づけも、突き詰めれば毎月の記録の積み重ねです。運行記録と領収書は自分で残し、そこから先の仕訳と集計は記帳を丸ごと外注する方法に任せる、という分担にすると、根拠の質を落とさずに手間だけを減らせます。
維持費の勘定科目一覧|ガソリン・駐車場・車検・保険・税金
維持費は、支払った年の経費として処理します。勘定科目に絶対の正解はありませんが、同じ支出は毎年同じ科目に入れる(継続適用)のが原則です。よく出てくる支出を科目別に整理すると次のとおりです。
支出の内容 | 主な勘定科目 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
ガソリン代・軽油代 | 車両費(旅費交通費・燃料費でも可) | 一度決めた科目を毎年使い続ける |
高速道路料金・ETC利用料 | 旅費交通費 | ETC利用照会サービスの明細を保存 |
月極駐車場の賃料 | 地代家賃 | 契約書を保管し、決算書の地代家賃の内訳に記載 |
コインパーキング代 | 旅費交通費 | レシート裏に訪問先をメモしておく |
自動車税・軽自動車税 | 租税公課 | 毎年5月末が納期。按分後の金額を計上 |
自動車重量税 | 租税公課 | 車検時にまとめて課税される |
自賠責保険料・任意保険料 | 保険料(損害保険料) | 複数年分を一括払いしたら期間で按分 |
車検の点検・整備費用 | 車両費(修繕費) | 法定費用と整備費用を明細で分ける |
オイル交換・タイヤ・洗車 | 車両費 | 消耗品費に入れる処理も可 |
事故の修理費 | 修繕費(車両費) | 受け取った保険金は雑収入として計上 |
自動車ローンの利息 | 利子割引料 | 元本部分は経費にならない |
カーリース料 | 賃借料(リース料) | 契約がファイナンスリースでないか確認 |
駐車違反の反則金・交通反則金 | 経費にならない(事業主貸) | 罰金・過料は必要経費に算入できない |
車検代は分けたほうがいい?
車検の請求書は、法定費用と整備費用が一枚にまとまっています。厳密に処理するなら、自動車重量税と印紙代は租税公課、自賠責保険料は保険料、点検・整備・部品交換の費用は車両費、という3分割です。合計金額は同じでも、租税公課と保険料の年間集計が正確になるという利点があります。
一方で、金額が小さく毎年の傾向を分析する必要もないなら、全額を車両費でまとめても実務上は許容範囲です。大切なのは、どちらの方針を採るかを決めて毎年同じにすること。年によって処理を変えると、前年比較の数字が意味を持たなくなります。
ローンの元本と利息、どう分ける?
自動車ローンで買った場合、毎月の返済額のうち経費になるのは利息部分だけです。元本の返済は、借入金という負債を減らす取引にすぎず、経費ではありません。車両本体は購入時に資産として計上し、減価償却で経費化するので、元本まで経費にすると二重計上になってしまいます。
返済予定表には毎回の元本と利息の内訳が載っているので、これを見ながら「借入金(元本)」と「利子割引料(利息)」に分けて記帳します。返済予定表をなくすと分解できなくなるため、契約時にPDFでも保存しておくと安心です。信販会社経由の分割払いで手数料が明示されている場合も、同じ考え方で手数料部分だけを経費にします。維持費まわりの仕訳例をもっと見たい場合は、車の維持費の勘定科目と仕訳の実例が参考になります。
売却・買い替え・廃車のときはどう処理する?
事業用の車を売ったときの利益は、事業所得ではなく譲渡所得として計算します。ここは車の税務で最も間違いが多い場所です。売却代金を売上や雑収入に入れてしまうと、所得区分も税額も変わってしまいます。国税庁タックスアンサーNo.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」でも、譲渡所得となる資産の範囲が示されています。
譲渡所得はどう計算する?
計算式は「譲渡価額 −(取得費 − 減価償却累計額)− 譲渡費用 − 特別控除」です。取得費から減価償却累計額を差し引いた金額、つまり帳簿上の未償却残高が、売るときの原価にあたります。総合課税の譲渡所得には最高50万円の特別控除があり、所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として、控除後の金額の2分の1だけが課税対象になります。
数字で見てみましょう。200万円で買って未償却残高が1円まで償却済みの車を、3年後に80万円で売った場合。譲渡益は80万円 − 1円 ≒ 80万円ですが、事業割合70%で使っていた車なので、譲渡所得の対象になるのは事業使用に対応する部分です。そこから特別控除50万円を差し引き、所有期間が5年以内なら短期譲渡所得として全額が総合課税の対象になります。短期償却で経費を前倒しした分、売却時に利益が出やすくなる——これが「4年落ち中古車は出口で戻ってくる」と言われる理由です。
下取りは「売却」と「購入」に分けて考える
買い替えでよくある失敗が、下取り価格を差し引いた後の支払額で新しい車を資産計上してしまうことです。正しくは、旧車を下取り価格で売却した取引と、新車を車両本体価格で購入した取引の、2つに分けて処理します。250万円の新車を、旧車の下取り60万円を充当して190万円で購入した場合、新車の取得価額は190万円ではなく250万円。同時に旧車の譲渡所得の計算も必要になります。
見積書上は1枚にまとまっているため、経理の場面では意識的に分解する必要があります。買い替え時は、新旧2台分の書類(旧車の下取り明細、新車の注文書と諸費用明細)をセットで保管しておいてください。
廃車・事故で手放したときは?
売却代金が発生しない廃車や、災害・事故で使えなくなった場合は、そのときの未償却残高を固定資産除却損として経費にします。事業割合を掛けた金額が必要経費になる点は他の費目と同じです。廃車手数料やレッカー代も経費に、購入時に資産計上していたリサイクル預託金はこのタイミングで費用に振り替えます。年の途中の除却なら、その月までの減価償却費を計上してから未償却残高を求めます。売却・廃車それぞれの仕訳と、損失が出たときの取り扱いは事業用の車を売却・廃車したときの処理で具体的に確認できます。
車を使う時間が長い業種の実務ポイント
車が事業の中心にある業種では、按分割合が高くなる代わりに、記録と経費項目の管理が申告の精度を左右します。走行距離が多いほど1%の按分差が金額に効くので、記録の手間をかける価値も大きくなります。
配送・運送ドライバーの場合
軽貨物や宅配のドライバーは、車両が売上を生む道具そのものです。事業割合90%以上、車を業務専用にしていれば100%というケースも珍しくありません。経費の中心はガソリン代・高速代・車両保険・整備費・タイヤ交換で、走行距離が年3万キロを超えると消耗品の交換頻度も上がります。加えて、軽貨物車は法定耐用年数が4年と短く償却が早く進みます。黒ナンバーを取得して貨物軽自動車運送事業として使っている場合は「運送事業用」の区分になり、総排気量3リットル以下の貨物自動車として耐用年数3年で計算するため、さらに償却が前倒しになります。自分の車がどちらの区分に当たるかで償却スケジュールが変わるので、固定資産台帳の管理と買い替え時期の設計が重要になります。業種特有の論点は軽貨物・運送ドライバーの確定申告にまとめています。
訪問型サービス・建設業の場合
訪問美容、出張整体、リフォーム、電気工事といった訪問型の仕事では、車は「移動手段兼、道具置き場」です。この場合、按分の根拠は訪問件数と訪問先住所から積み上げるのが現実的です。予約管理アプリや現場日報に住所が残っていれば、それが走行距離の裏づけになります。工具や資材を常時積んでいて後席をたためない状態なら、その車が事業専用に近い使われ方をしていることの補強材料にもなります。
記帳代行の現場でお預かりする書類でも、車まわりは論点が集中する部分です。多いのは「ガソリンのレシートは全部あるのに、按分割合を決めた根拠のメモが1枚もない」というパターン。金額の集計は領収書がそろっていればできますが、割合の妥当性だけは記録がないと後から作れません。反対に、簡単な運行メモを1年続けている方は、按分の会話が一度で終わります。手間は月に十数分でも、効き目が大きい部分です。
よくある質問
Q. 自動車ローンの毎月の返済額は、全額経費になりますか?
なりません。経費になるのは利息部分だけで、元本の返済は借入金という負債の減少にすぎません。車両本体は購入時に資産計上し、減価償却を通じて経費になる仕組みなので、元本も経費にすると同じ支出を二重に計上することになります。返済予定表で元本と利息を分け、利息だけを利子割引料などの科目で処理してください。
Q. 通勤にしか使わない車でも経費になりますか?
個人事業主の場合、自宅と事業所の往復にしか使わない車は、経費にできないか、できても限定的です。給与所得者の通勤と違い、個人事業主には通勤費という概念がなく、自宅兼事務所であればそもそも通勤が発生しません。自宅と別に店舗や事務所を構えていて、その移動が事業に必要だと説明できる場合には認められる余地がありますが、判断が分かれる論点なので、移動記録を残したうえで慎重に扱ってください。
Q. 家族名義の車を仕事で使う場合、経費にできますか?
生計を一にする家族名義の車であれば、事業で使った分の維持費(ガソリン代・保険料・自動車税など)を按分して経費にできると考えられます。ただし、その車を事業主が事業に使っている実態と、費用を実際に事業主が負担している事実が必要です。名義人に「使用料」を支払う形にしても、生計を一にする親族への支払いは必要経費にならないため、その方法での経費化はできません。減価償却も原則として名義人ではなく実際に事業へ使っている側で判断されるため、迷う場合は取得の経緯を含めて確認しておくと安全です。
Q. 白色申告でも車を減価償却できますか?
できます。減価償却は青色・白色を問わず適用される計算方法で、白色申告でも車両の取得価額を耐用年数で配分して経費にします。違いが出るのは特例部分で、30万円未満の資産を一括で経費にできる少額減価償却資産の特例は青色申告者だけの制度です。たとえば18万円の中古軽トラックなら、白色申告でも一括償却資産として3年で均等償却するか、耐用年数にしたがって償却するか(4年落ちなら簡便法で2年)を選べます。ただし一括償却資産は取得価額20万円未満が条件なので、ちょうど20万円の車両は対象外です。この場合は青色申告者なら30万円未満の特例で一括計上できますが、白色申告では耐用年数どおりに償却することになります。
Q. もともと自家用だった車を、途中から事業に使い始めたときはどう計算しますか?
買った日ではなく、事業に使い始めた日を起点に減価償却を始めます。ただし取得価額をそのまま使うのではなく、自家用だった期間の価値の目減り分を差し引く必要があります。具体的には、法定耐用年数を1.5倍した年数をもとに、自家用だった期間について計算した減価の額を取得価額から控除し、残った金額を未償却残高として償却をスタートします。購入時の契約書や領収書が残っていないと取得価額を証明できないので、家庭用から転用する可能性がある車の書類は捨てないでおきましょう。
車の経費は「按分の根拠」と「償却の設計」で決まる
車の税務は、突き詰めると2つの設計に集約されます。ひとつは按分の根拠——走行距離か使用日数かを決めて、その記録を1年間残し続けること。もうひとつは償却の設計——新車・中古車・リースのどれを選び、定額法と定率法のどちらで、いつ使い始めるかを決めることです。この2つが固まっていれば、ガソリン代の科目や車検代の分け方といった細部は、後からいくらでも整えられます。逆に、根拠のない按分と行き当たりばったりの購入時期は、あとから取り返しがつきません。まずは今日から運行メモを1行つけるところから始めてください。
とはいえ、走行記録も領収書も自分で管理しながら、毎月の仕訳まで手が回らない——という声はよく聞きます。領収書丸投げドットコムは、レシート・領収書・通帳のコピーを郵送かスマホ撮影で送るだけで記帳を代行する、個人事業主・フリーランス専門のサービスです。何枚たまっていても月額6,600円(税込)の定額・初期費用0円で、車の按分計算や固定資産台帳の管理を含めて確定申告までサポートします。なお、令和8年分(2026年分)の記帳代行のお申し込みは2026年11月30日までとなっており、申し込み状況によっては早期に締め切る場合がございます。まずは車の按分まで含めて任せられるか、無料で相談してみるところからどうぞ。相談は無料で、公式LINEでも24時間受け付けています。枚数が多い月の費用が気になる方は、枚数無制限の定額プラン一覧もあわせてご確認ください。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








