減価償却がはじめての人向け|定額法・定率法の選び方を解説
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税務

減価償却は、高額で長く使う資産を耐用年数に沿って少しずつ経費にしていく仕組みです。定額法と定率法の違いと、個人事業主が「自分はどちらを選べばよいのか」を判断するポイントを、はじめての方にもわかるように整理します。
10万円を超えるものは買った年に一度で経費にできず、何年かに分けて少しずつ経費にしていく——この仕組みに、はじめて触れる方の多くが戸惑ってしまいます。高額な備品や車両を購入したときに何をどう処理すればよいのか、全体の流れをつかんでいきましょう。
☑ パソコンや車を買ったのに、なぜ買った年に全額経費にできないのか納得できない
☑ 「減価償却」「定額法」「定率法」という言葉を見るたびに頭が痛くなる
☑ 自分はどちらの償却方法を選べばよいのか、判断する基準がわからない
減価償却の基本的な考え方から、2つの計算方法の違い、選び方まで、順に見ていきます。
減価償却とは?まず基本の考え方をつかみましょう
高いものは「使う年数」に分けて経費にする
減価償却とは、長く使う高額なものの購入費用を、買った年に一度で経費にするのではなく、使用できる期間にわたって少しずつ経費にしていく仕組みです。たとえば事業で使う車やパソコンは、買った年だけでなく数年にわたって使い続けます。そこで「何年も使って利益を生み出すもの」については、その購入費用も使う年数に合わせて分けて計上する、という考え方が取られています。減価償却の全体像は、国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」で確認できます。
こうして毎年の経費として計上していく金額を減価償却費と呼びます。利益を生み出すために何年も使う資産と、その費用とを対応させることで、各年の利益をより実態に近い形で表すことができるのです。
対象になるもの・ならないもの
減価償却の対象になるのは、事業に使う資産のうち、原則として取得価額が10万円以上で、使ううちに価値が減っていくものです。具体的には次のようなものが代表例です。
パソコン、コピー機、エアコンなどの機械・備品
営業や配送に使う自動車・バイク
店舗の内装や設備、業務用の工具・器具
一方で、時間が経っても価値が減らないとされる土地や、購入時から価値が変わりにくい一部の資産は減価償却の対象になりません。また、10万円未満のものや、使用できる期間が1年未満のものは、買った年にそのまま経費(消耗品費など)にできます。ソフトウェアやホームページの費用の扱いは、ソフトウェア・ホームページの計上と償却にまとめています。
「耐用年数」という考え方
では、何年に分けて経費にするのか。その目安となるのが耐用年数です。耐用年数とは、その資産を通常どれくらいの期間使えるかを示すもので、資産の種類ごとに法律で定められています。たとえば一般的な事務用のパソコンや、用途別に区分された車両など、それぞれに年数が決められています。自分で勝手に「3年で経費にしよう」と決められるわけではなく、定められた耐用年数に沿って計算する点がポイントです。具体的な年数は、国税庁が公表している耐用年数表で確認できます。
定額法と定率法、2つの計算方法の違い
定額法:毎年同じ金額を経費にする
定額法は、減価償却費を毎年ほぼ同じ金額で計上していく方法です。取得価額を耐用年数で割り、毎年均等に経費にしていくイメージです。たとえば購入費用を耐用年数の年数で割った金額が、おおむね毎年の減価償却費になります。
毎年の経費額が一定なので計算がわかりやすく、利益の見通しも立てやすいのが特徴です。はじめて減価償却を行う方や、収支の見通しをシンプルに把握したい方にとっては扱いやすい方法といえます。
定率法:最初に多く、だんだん少なく経費にする
定率法は、まだ経費にしていない残りの金額(未償却残高)に一定の割合を掛けて計算する方法です。そのため購入した初めの年ほど経費が大きく、年を追うごとに経費が小さくなっていくのが特徴です。
早い段階で多くの費用を経費にできるため、購入直後の利益を圧縮しやすいというメリットがあります。一方で、毎年の経費額が変動するため、定額法に比べると計算や見通しはやや複雑になります。
同じものでもトータルの経費は変わらない
ここで誤解しやすいのが、「定率法のほうが得なのでは?」という点です。定額法でも定率法でも、最終的に経費にできる金額の合計はほぼ同じです。違うのは各年への配分の仕方であって、トータルで経費にできる総額が増えるわけではありません。定率法は「早めに経費を計上できる」のであって、「多く経費にできる」わけではない、という点を押さえておきましょう。
個人事業主はどちらを選べばいい?
原則は「定額法」、届け出れば「定率法」も選べる
個人事業主の場合、減価償却の方法は原則として定額法とされています。特に何も手続きをしなければ、定額法で計算することになります。一方で、定率法を選びたい場合は、税務署に「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を期限までに提出する必要があります。届け出をして初めて定率法が選べる、という流れです。
なお、建物や、建物に付属する設備・構築物など一部の資産は、定率法を選べず定額法に限られています。すべての資産で自由に方法を選べるわけではない点にも注意しましょう。
選ぶときの判断のポイント
どちらを選ぶか迷ったときは、次のような観点で考えると整理しやすくなります。
計算のわかりやすさを重視するなら定額法。毎年同じ金額なので管理がシンプルです。
購入直後の利益が大きく、その年の経費を多めに出したいなら定率法。早い時期に経費を寄せられます。
長く安定して使う設備で、毎年の損益を平準化したい場合も定額法が向いています。
ただし、その年の利益や事業の状況によって有利・不利は変わります。一度選んだ償却方法は継続して使うのが原則で、頻繁に変えられるものではないため、目先の損得だけでなく数年先まで見据えて判断することが大切です。日々の減価償却の計算まで任せたい場合は、記帳代行というやり方もあります。
少額・一括で処理できる特例もある
高額な資産はすべて何年もかけて償却しなければならないかというと、そうとも限りません。取得価額に応じて、より簡単に経費にできる特例が設けられています。代表的なものとして、取得価額が10万円未満であれば全額その年の経費にできるほか、一定の金額未満のものを3年間で均等に経費にする「一括償却資産」の制度や、青色申告をしている個人事業主向けに少額の減価償却資産を一定の上限まで一度に経費にできる特例などがあります。少額減価償却資産の管理は少額減価償却資産(年300万円まで)の管理、短期のリース資産の扱いは少額・短期リースの経理が参考になります。適用できる金額の範囲や要件は変わることがあるため、購入前に最新の内容を確認しておくと安心です。
減価償却の実務でつまずきやすいポイント
使い始めた月から計算する(月割り)
減価償却費は、1年分をまるごと計上できるとは限りません。年の途中で資産を使い始めた場合は、使い始めた月から年末までの月数に応じて月割りで計算します。たとえば年の後半に車を購入した場合、その年の減価償却費は1年分ではなく、使った月数に応じた金額になります。「買ったのは年末なのに1年分経費にしてしまった」というのはよくある間違いなので、注意しましょう。
事業とプライベートで兼用するときは按分する
自家用と兼用の車や、自宅で使うパソコンなど、事業とプライベートの両方で使う資産もあります。この場合、減価償却費の全額を経費にできるわけではなく、事業で使っている割合に応じて按分します。車の按分では走行距離の記録が根拠になり、車の走行距離を記録して按分する節税が参考になります。按分の根拠を残しておくと、後から説明を求められたときにも安心です。
「固定資産台帳」で管理する
減価償却の対象となる資産は、いつ・いくらで購入し、毎年いくら償却して、残りがいくらなのかを記録しておく必要があります。これをまとめたものが固定資産台帳です。確定申告で使う青色申告決算書にも減価償却費の計算欄があり、ここに資産ごとの取得年月・取得価額・耐用年数・本年分の償却費などを記入します。資産が増えてくると管理が煩雑になりやすいため、購入のたびに記録しておく習慣をつけておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 10万円未満のものは減価償却しなくてよいのですか?
はい、取得価額が10万円未満のものは、原則として購入した年にそのまま経費(消耗品費など)として計上できます。減価償却の対象になるのは、おおむね10万円以上で長く使う資産です。なお、10万円以上であっても、金額に応じた特例を使えば一括や短い期間でまとめて経費にできる場合があります。
Q. 一度選んだ償却方法は途中で変えられますか?
償却方法は継続して使うのが原則で、毎年自由に切り替えられるものではありません。方法を変更したい場合は、原則としてあらかじめ税務署に変更の承認を受ける手続きが必要です。「今年は利益が多いから定率法に変える」といった形で都合よく変えられるわけではないため、最初に選ぶ際にしっかり考えておくことが大切です。
Q. 中古で買った資産も減価償却が必要ですか?
はい、中古であっても10万円以上で長く使う資産であれば減価償却の対象です。中古資産の場合は、新品とは異なる方法で耐用年数を見積もることが認められており、新品より短い年数で計算できることがあります。中古の車や設備を購入したときは、耐用年数の扱いが新品と違う点に注意しましょう。
まとめ|減価償却は「分けて経費にする」だけと考えれば難しくない
減価償却は、高額で長く使う資産を、耐用年数に沿って少しずつ経費にしていく仕組みです。計算方法には毎年同じ金額にする定額法と、初めに多く経費にする定率法があり、個人事業主は原則として定額法、届け出をすれば定率法も選べます。どちらもトータルで経費にできる金額は変わらないため、計算のわかりやすさや、その年の利益の状況を踏まえて選ぶのがポイントです。
耐用年数の判定や月割り計算、事業按分、固定資産台帳の管理まで含めると、はじめての方には負担が大きく感じられるのも事実です。資産が増えてくると、毎年の減価償却費を正しく計算し続けるのは思いのほか手間がかかります。領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送またはスマホ撮影で送るだけで、減価償却を含む日々の記帳から確定申告書類の作成までをサポートします。高額な買い物の処理を無料で相談してみることができます(相談は無料です)。確定申告まで任せたい方は確定申告代行のご案内もご覧ください。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








