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事業を縮小・整理する時期に手元資金を守る...

2026/7/18

事業を縮小・整理する時期に手元資金を守る節税の順序を解説

  • 税金

事業の縮小や廃業を控えた時期は、赤字を捨てず資産の処分時期を選ぶだけで、納税後に手元へ残る資金が大きく変わります。損失の活用から在庫処分、廃業手続きまで、手元資金を守る節税の順序を実務の流れに沿って整理します。

事業の勢いが落ちてきたとき、あるいは体調や年齢を理由に店じまいを考え始めたとき、多くの個人事業主やフリーランスの方が最初に不安に感じるのは「手元にいくら残るのか」という一点ではないでしょうか。売上が細っていく局面では、税金の払い方や資産の処分の仕方を少し間違えるだけで、本来は残せたはずの資金が想定より減ってしまうことがあります。

☑ 事業を縮小したり畳んだりしようと考えているが、税金でどれだけ手元にお金が残るのか読めない

☑ 在庫や機械を処分するタイミングと節税の関係がわからず、動くに動けない

☑ 廃業のときに払うべき税金と、それまでにやっておくべきことの順番を知りたい

何から手をつければよいのか、在庫や設備はいつ処分するのが有利なのか、廃業のときにどんな税金がかかるのか——実務の流れに沿って順に整理します。慌てて動くのではなく、落ち着いて段取りを組むための地図として使ってください。

まず押さえたい「縮小・撤退期」の税金の全体像

縮小と廃業では考えるポイントが変わります

ひとくちに事業を整理すると言っても、規模を小さくして続ける「縮小」と、完全にやめる「廃業」とでは、意識すべき税金のポイントが変わります。縮小の場合は事業が続く前提なので、毎年の所得をどう平準化し、赤字が出た年をどう活かすかが中心になります。一方で廃業の場合は、その年で事業所得の計算に区切りをつけ、残った資産や債務をどう精算するかが中心になります。

まずは自分がどちらの局面にいるのかをはっきりさせることが、順序を考える出発点です。「しばらく様子を見て続けるかもしれない」という段階なら縮小の視点で、「もう畳むと決めている」なら廃業の視点で準備を進めます。両者は税金の扱いが違うため、方針が曖昧なまま資産を処分すると、あとで損をしていたと気づくことがあります。

手元資金を守るという発想の大切さ

利益が出ていた頃は「いかに税金を減らすか」が節税の主眼でした。しかし縮小・撤退期に大切なのは、税金の額そのものよりも納税の後に手元にいくら現金が残るかという視点です。たとえば資産をまとめて処分して大きな利益が出れば、その分だけ翌年の納税額も膨らみます。売却で入ってきたお金をすべて使ってしまうと、納税の時期に資金が足りなくなるという事態も起こり得ます。

この時期の節税は、単に課税を減らすことだけでなく、「いつ、どの資産を、いくらで動かすと、納税後にいくら残るか」を意識して組み立てることが肝心です。順序を考えるうえでは、常にこの手元資金の観点を軸に置いてください。

青色申告のメリットは最後まで手放さない

縮小・撤退の局面でこそ、青色申告の制度は力を発揮します。青色申告をしていれば、赤字が出た年の損失を翌年以降に繰り越せる「純損失の繰越控除」が使えます。売上が落ちて赤字になりやすいこの時期に、繰り越した損失を将来の黒字と相殺できるのは大きな利点です。制度の要件は国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます(国税庁 No.2070 青色申告制度)。

また、前年が黒字で当年が赤字になった場合には、赤字を前年にさかのぼって税金の還付を受ける「繰戻し還付」という選択肢もあります。事業を縮小して赤字に転じたときに、前年に払った税金の一部が戻ってくる可能性があるわけです。青色申告の届出をしている方は、こうした制度を最後まで使い切る意識を持ちましょう。赤字の繰越の具体的な使い方は青色申告の赤字を繰り越して節税する方法で整理しています。

節税の順序その1:赤字と損失を「捨てない」

先に赤字の年の扱いを固める

縮小期にまず考えたいのは、出てしまった赤字をどう活かすかです。前述の純損失の繰越控除や繰戻し還付は、いずれも青色申告が前提の制度です。順序としては、資産をどう処分するかを考える前に、「今年の損益はどうなりそうか」「赤字が出るならどの制度で受け止めるか」を先に固めておくと、その後の判断がぶれません。

たとえば、当年に大きな赤字が見込まれるなら、あえて資産の売却益を同じ年にぶつけて相殺する、という組み立ても考えられます。逆に黒字の見込みなら、損失が出る処分を同じ年に寄せることで課税所得を抑えられます。損益の見通しを先に立てることが、処分のタイミングを決める土台になります。

回収できない売掛金は貸倒れとして整理する

縮小・撤退期には、取引先からの回収が滞っている売掛金が残っていることがあります。回収の見込みが立たない債権は、一定の要件を満たせば「貸倒れ」として必要経費に計上できる場合があります。放置したまま廃業してしまうと、経費にできたはずの損失を活かせないことがあります。貸倒れとして処理するときの帳簿づけは貸倒れとなった売掛金の記帳で確認できます。

どのような状態であれば貸倒れとして認められるかは要件が細かく、判断が難しい場面もあります。回収不能かどうかの見極めや証拠の残し方に迷うときは、早めに専門家に相談して、経費計上できるものを取りこぼさないようにしましょう。

節税の順序その2:在庫と設備の処分は時期を選ぶ

棚卸資産(在庫)は投げ売りの損も記録に残す

商品や材料などの在庫を抱えている場合、縮小・撤退期には安く売り切ったり、廃棄したりすることになります。ここで大切なのは、値引き販売による損失や廃棄した在庫も、きちんと帳簿に反映させることです。仕入れたときの金額と、実際に売れた金額や廃棄の事実を記録しておくことで、その差額が損失として所得計算に反映されます。

「どうせ畳むのだから記録は適当でよい」と考えてしまうと、本来は損失として計上できたはずの分が反映されず、結果として所得が実態より大きく計算されてしまうおそれがあります。処分するにしても、いつ・いくつ・いくらで売ったか、あるいは廃棄したかを残しておくことが、手元資金を守ることにつながります。廃棄処理の記録の残し方は在庫のロス・廃棄の記帳が参考になります。日々の記帳が追いつかないなら、記帳を丸ごと任せる記帳代行という手もあります。

固定資産の売却益・売却損はタイミングで調整する

機械や車両、備品などの固定資産を売る場合、帳簿上の残っている価値(未償却残高)と売却額の差が、売却益または売却損になります。事業用資産を売って得た利益や損は、原則として譲渡所得などとして扱われ、事業所得とは計算の枠組みが異なる点に注意が必要です。

  • まだ価値の残る資産を高く売れば利益が出て、その分の税負担が増えます

  • 相場が下がった資産を売れば損失となり、他の所得と通算できる場合があります

  • 同じ売るなら、損益の見通しを踏まえて売る年をずらすことも一つの手です

複数の資産を処分する予定があるなら、利益の出る資産と損の出る資産を同じ年にまとめることで、全体の税負担をならせる場合があります。処分の順番と時期を意識するだけで、納税後に残るお金は変わってきます。

少額の資産は早めに費用化しておく

取得価額が一定額未満の少額な資産については、購入した年に一括で経費にできる特例や、数年に分けて費用にできる仕組みがあります。まだ黒字のうちにこうした資産を計画的に費用化しておくと、その年の所得を抑えられます。撤退が視野に入ってきたら、手元の資産の帳簿価額がどうなっているかを一度棚卸しし、費用にできるものは早めに処理しておくと安心です。

節税の順序その3:廃業のときに特有の手続きを押さえる

廃業後にかかった費用も経費にできる場合があります

廃業した年には、事業をたたむために発生する費用がいくつもあります。店舗の原状回復費用、機械の撤去費用、残務処理にかかった費用などです。こうした費用の中には、事業を廃止した後に支払ったものであっても、事業所得の必要経費として認められる場合があります。

ポイントは、これらの費用が「事業を営んでいたことに由来して生じたもの」であるかどうかです。廃業後に払ったからといって一律に経費にできないわけではありません。領収書や契約書をきちんと保管し、何のために支払った費用かを説明できるようにしておくことが、経費として認めてもらう前提になります。

消費税の課税事業者は最後の申告を忘れずに

消費税の課税事業者だった方は、廃業する年の分についても消費税の申告と納付が必要です。売上に対して預かった消費税と、仕入れや経費で支払った消費税を精算する手続きで、これを忘れると後日の負担が思わぬ形で重くのしかかることがあります。

また、廃業にあたっては税務署などへ廃業届などの書類を提出します。届出の種類や期限は制度によって異なりますが、所得税や消費税、青色申告に関する届出など、必要な書類を出し忘れないようにすることが大切です。書類の抜け漏れは、後々の手続きを煩雑にする原因になります。

手元資金と納税資金は分けて考える

廃業の年は、資産の売却で一時的にまとまったお金が入ってくることがあります。しかし、そのお金には売却益に対する税金が含まれていると考えるべきです。入ってきた現金をすべて生活費や借入返済に回してしまうと、翌年の納税の時期に資金が足りなくなることがあります。

手元資金を守るという観点では、売却などで得た資金のうち一定額は納税用として別に確保しておくという発想が欠かせません。納税額の見込みを早めに立て、その分を先に取り分けておけば、精算の時期に慌てずに済みます。

節税の順序その4:生活と将来の備えも同時に考える

小規模企業共済の扱いを確認する

小規模企業共済に加入していた個人事業主の方は、廃業や事業の縮小によって共済金を受け取れる場合があります。受け取り方によって税金の扱いが変わるため、一括で受け取るのか分割で受け取るのかを含め、自分にとって有利な受け取り方を事前に確認しておきましょう。廃業後の生活資金として大切な原資になりますので、受け取りの手続きや時期も含めて早めに把握しておくと安心です。共済の節税効果の見方は小規模企業共済の節税シミュレーションで確認できます。

国民健康保険や年金の見直しも並行して

事業を縮小・廃業すると、収入が変わることで翌年以降の国民健康保険料や住民税の額も変わってきます。これらは前年の所得をもとに計算されるため、廃業した翌年にかえって負担が重く感じられることもあります。手元資金の計画を立てるときは、税金だけでなく社会保険料の負担も見込んでおくと、資金繰りの見通しがぐっと立てやすくなります。赤字の年の国保・年金の考え方は赤字でも国保・年金で損しない考え方もあわせて確認しましょう。

再スタートの可能性を残すなら記録を丁寧に

いったん事業を縮小しても、将来また事業を再開する可能性がある方もいます。その場合、青色申告の繰越損失を活かすためにも、また過去の取引を証明するためにも、帳簿や書類はきちんと保管しておくことが大切です。撤退は終わりではなく、次への区切りと捉えると、記録の整理の意味合いも変わってきます。

よくある質問

Q. 赤字続きなら、節税を考える必要はないのではありませんか?

赤字であっても、その損失を将来に活かせるかどうかで手元に残るお金は変わります。青色申告をしていれば、赤字を翌年以降の黒字と相殺したり、前年の黒字にさかのぼって税金の還付を受けたりできる場合があります。「赤字だから関係ない」と申告自体をやめてしまうと、こうした制度が使えなくなります。赤字の年こそ、損失を捨てないための申告が大切です。

Q. 在庫や機械はまとめて一気に処分した方が楽ではないですか?

手続きの手間だけを見ればまとめて処分する方が楽ですが、税金の面では必ずしも有利とは限りません。利益の出る資産と損の出る資産を同じ年にまとめると全体の税負担をならせる一方、大きな利益がまとまって出る年をつくると納税額も膨らみます。損益の見通しを立てたうえで、処分する年や順番を選ぶことをおすすめします。

Q. 廃業した年の確定申告は、いつものように行えばよいのですか?

基本的な流れは通常の確定申告と同じで、原則として翌年の2月16日から3月15日までに申告します。ただし廃業の年は、その年で事業所得の計算に区切りをつけたうえで、資産の処分による損益や廃業に伴う費用の扱いなど、通常の年にはない論点が加わります。消費税の課税事業者だった方は消費税の申告も必要です。判断に迷う項目が多い年でもあるため、早めに準備を始めておくと安心です。

結論:順序を決めてから動けば、残せるお金は変わる

事業を縮小・整理する時期の節税は、「損失を捨てない」「在庫と設備は時期を選んで処分する」「廃業特有の手続きを押さえる」「生活と将来の備えも同時に考える」という順序で組み立てると、手元資金を守りやすくなります。大切なのは、慌てて資産を処分したり申告をやめたりするのではなく、損益の見通しを立ててから一つずつ手を打っていくことです。

とはいえ、売上が細っていく中で、貸倒れの判断や資産の売却損益、廃業に伴う費用の整理までを一人で正しく処理するのは、想像以上に手間のかかる作業です。本業や身辺の整理に追われる時期に、記帳から申告書の作成までをすべて抱え込むのは、心身の負担も小さくありません。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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