個人事業主の貸倒れ処理|売掛金が回収できないときの記帳を解説
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税務

取引先の倒産などで売掛金が回収できなくなったら、「貸倒損失」として費用に計上し、払いすぎた税金を取り戻せます。貸倒れと認められる3つの要件、貸倒引当金の使い方、仕訳の書き方まで、個人事業主向けに実務に沿って整理します。
商品やサービスを提供したのに代金が支払われない。個人事業主・フリーランスにとって、回収できない売掛金ほど頭の痛い問題はありません。すでに売上として計上しているのに現金は入ってこない。そんな状況で「この損失はどう処理すればよいのだろう」と途方に暮れてしまう方も多いのではないでしょうか。
☑ 取引先が倒産してしまい、売掛金が回収できなくなってしまった
☑ 何度請求しても入金されない代金を、経費として落とせるのか知りたい
☑ 貸倒れの仕訳や確定申告での扱いがわからず、帳簿の処理で止まっている
貸倒れとして認められる3つの要件、具体的な仕訳の書き方、そして判断に迷ったときの注意点まで、回収不能な債権を帳簿でどう扱えばよいかを、実務に沿って確認していきましょう。
そもそも貸倒れとは?回収できない売掛金の扱い
貸倒れは「回収不能になった債権」のこと
貸倒れ(かしだおれ)とは、売掛金や貸付金などの債権が、取引先の倒産や行方不明などの理由で回収できなくなることを指します。個人事業主の場合、もっとも多いのは売掛金が回収できなくなるケースです。商品を納品したりサービスを提供したりして請求書を発行したものの、取引先が支払えなくなってしまった、という状況ですね。
ここで重要なのは、売掛金はすでに「売上」として帳簿に計上されているという点です。発生主義で記帳している場合、入金がなくても請求した時点で売上に上がっているため、回収できないと判明したときには、その分を「貸倒損失」として費用に計上して帳簿を正しい状態に戻す必要があります。発生主義での売掛金の計上のしくみは、発生主義での未収・未払の計上もあわせて押さえておくと理解しやすくなります。
貸倒れにできるのは「事業上の債権」
貸倒損失として必要経費に算入できるのは、あくまで事業活動から生じた債権に限られます。具体的には次のようなものが対象です。
商品やサービスの提供による売掛金
事業のために行った貸付金や前渡金
受取手形など、事業に関連して発生した金銭債権
一方で、個人的な友人への貸し付けや、事業と関係のないお金の貸し借りは、事業所得の貸倒損失にはできません。あくまで「事業に関係する債権かどうか」が線引きの基準になります。
計上を忘れると税金を払いすぎてしまう
貸倒れの処理を行わないままにすると、回収できない売上に対しても所得税や住民税がかかり続けることになります。回収不能がはっきりした年に正しく処理すれば、その分だけ所得を圧縮でき、税負担を適正化できます。貸倒れ処理は、損失を取り戻すための大切な手続きだと覚えておきましょう。日ごろから売掛金の回収状況を管理しておく方法は、売掛金の回収管理とエイジングが参考になります。
貸倒れとして認められる3つの要件
「入金がないから」というだけでは、すぐに貸倒れにはできません。税務上、貸倒損失として認められるには一定の事実が必要です。国税庁の取扱いでは、大きく分けて次の3つのパターンがあります。
1. 法律上の貸倒れ(債権が消滅した場合)
取引先の会社更生や民事再生、破産などの法的手続きによって、債権の全部または一部が切り捨てられた場合です。また、債権者集会での協議決定や、書面による債務免除を行った場合もここに含まれます。法的に債権そのものが消滅したため、その金額をその年の貸倒損失として計上できます。客観的な証拠が残るため、もっとも認められやすいパターンといえます。
2. 事実上の貸倒れ(全額回収不能が明らかな場合)
債権そのものは法律上残っているものの、取引先の資産状況や支払能力から見て、全額が回収できないことが明らかになった場合です。この場合、回収不能が明らかになった年に、その全額を貸倒損失として計上できます。ただし、担保物がある場合はそれを処分した後でなければ計上できない点に注意が必要です。また、回収できないことを示す資料(取引先の状況がわかる書類、督促の記録など)を残しておくことが大切です。
3. 形式上の貸倒れ(一定期間の取引停止など)
継続的に取引していた相手との取引を停止してから1年以上が経過した場合などに、売掛債権から備忘価額(1円)を差し引いた残額を貸倒損失にできる、という取扱いです。少額で取り立て費用のほうが高くつくようなケースも対象になります。注意点として、この形式上の貸倒れは「売掛債権」に限られ、貸付金には使えません。また、不動産取引のように継続的でない一回限りの取引には適用できないとされています。
貸倒れの具体的な仕訳と記帳方法
貸倒引当金を設定していない場合の仕訳
多くの個人事業主は、後述する貸倒引当金を設定していません。その場合、回収不能となった売掛金は「貸倒損失」という勘定科目で処理します。たとえば、取引先A社に対する売掛金10万円が回収不能になったとします。
(借方)貸倒損失 100,000円 / (貸方)売掛金 100,000円
この仕訳によって、資産である売掛金が帳簿から消え、その分が費用(貸倒損失)として計上されます。形式上の貸倒れの場合は、備忘価額として1円を残すため、貸倒損失を99,999円、売掛金を1円残す形になります。こうした仕訳を含めて日々の帳簿づけを任せたい方は、帳簿づけを任せる記帳代行という選択もあります。
貸倒引当金を設定している場合の仕訳
青色申告者は、将来の貸倒れに備えてあらかじめ「貸倒引当金」を計上できます。引当金を設定している場合、実際に貸倒れが発生したら、まず引当金を取り崩して充てます。引当金の残高で足りる場合の仕訳は次のとおりです。
(借方)貸倒引当金 100,000円 / (貸方)売掛金 100,000円
引当金の残高を超える貸倒れが出たときは、超えた部分を貸倒損失で処理します。引当金を使い切った後の不足分だけを費用に計上する、というイメージです。
記帳のタイミングと帳簿への反映
貸倒れは、上の3つの要件に当てはまる事実が発生した「その年」に計上するのが原則です。回収不能が確定した日付で仕訳を起こし、帳簿に反映させましょう。クラウド会計ソフトを使っている場合は、「貸倒損失」の勘定科目を選んで該当の売掛金を消し込む形で入力すると、決算書にも自動で反映されます。証憑となる書類は仕訳と紐づけて保存しておくと、後から根拠を説明しやすくなります。
貸倒引当金を活用して先回りで備える
貸倒引当金とは何か
貸倒引当金とは、まだ貸倒れが発生していなくても、将来発生するかもしれない損失に備えて、あらかじめ一定額を費用として計上しておく仕組みです。実際に貸し倒れる前に費用化できるため、その年の所得を抑える効果があります。青色申告者であれば、年末の売掛金などの残高をもとに、一定割合を一括評価で引当金として計上できます。白色申告者は、原則として個別評価による繰入れに限られます。こうした青色申告の特典の全体像は、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます(参考:国税庁タックスアンサー No.2070 青色申告制度)。
翌年は「戻入れ」が必要
引当金を設定したら、その処理は1年で完結しません。前年に計上した貸倒引当金は、翌年の期首に「貸倒引当金戻入」として収益に戻し入れる必要があります。そのうえで、改めて当年末の残高をもとに引当金を繰り入れます。つまり、毎年「戻して、また積む」という処理を繰り返すことになります。この繰り戻しを忘れると所得の計算が狂ってしまうため、注意したいポイントです。
引当金を使うかどうかの判断
貸倒引当金は所得を前倒しで圧縮できる一方、毎年の戻入れ・繰入れという手間が増えます。売掛金の残高が小さい方や、取引先が安定している方は、実際に貸倒れが起きたときに貸倒損失で処理する方がシンプルです。逆に、売掛金が多く回収リスクのある取引先を抱えている方には、引当金の活用が有効です。回収リスクのある売掛金を早めに資金化したい場合は、売掛金を早期資金化する方法もあわせて検討できます。自分の事業規模や取引状況に合わせて判断しましょう。
貸倒れ処理で間違えやすいポイント
「入金が遅れているだけ」では計上できない
もっとも多い誤りが、単に支払いが滞っているだけの売掛金を貸倒損失にしてしまうケースです。支払いが遅れているだけで、相手に支払能力があり、回収の見込みが残っているうちは貸倒れにはできません。安易に費用計上すると、税務調査で否認されるおそれがあります。備え方は個人事業主の税務調査の備えで確認できます。あくまで前述の3要件のいずれかに該当する事実があるかどうかを、冷静に確認することが大切です。
消費税の扱いにも注意
課税事業者の場合、貸倒れが発生すると、その売上にかかっていた消費税についても調整が必要になることがあります。回収できなかった売掛金に含まれる消費税相当額は、貸倒れが生じた課税期間の消費税額から控除できる仕組みがあります。免税事業者には関係しませんが、課税事業者の方は、所得税だけでなく消費税の処理も忘れないようにしましょう。消費税の基本的なしくみは、国税庁タックスアンサーNo.6101「消費税の基本的なしくみ」で確認できます(参考:国税庁タックスアンサー No.6101 消費税の基本的なしくみ)。
証拠書類をきちんと残す
貸倒れは「本当に回収できないのか」が問われやすい処理です。取引先の倒産を示す通知、督促状や催告のやり取り、債務免除の書面、取引停止後の経過がわかる記録など、判断の根拠となる書類は必ず保管しておきましょう。書類が残っていれば、後から税務署に説明を求められても落ち着いて対応できます。
よくある質問
Q. 取引先と連絡が取れないのですが、すぐに貸倒れにできますか?
連絡が取れないというだけでは、ただちに貸倒れとは認められにくいのが実情です。行方不明や所在不明であることがわかる資料をそろえ、回収不能が客観的に明らかだといえる状況かどうかを確認する必要があります。判断に迷う場合は、自己判断で処理せず、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
Q. 過去の年に貸倒れがあったのに処理を忘れていました。今からできますか?
貸倒れは、要件に当てはまる事実が発生した年に計上するのが原則です。過去の年の分を当年にまとめて計上することは認められません。本来計上すべきだった年の申告を見直す「更正の請求」などの手続きが必要になる場合があるため、気づいた時点で早めに専門家へ相談しましょう。
Q. 白色申告でも貸倒れの処理はできますか?
はい、できます。回収不能になった事業上の売掛金を貸倒損失として必要経費に計上する処理は、白色申告でも青色申告でも同じように行えます。ただし、貸倒引当金のうち一括評価による繰入れは青色申告者に認められた特典で、白色申告では原則として使えません。この点が両者の違いになります。
結論:回収できない売掛金は正しく処理して税負担を適正に
回収できなくなった売掛金は、放置すると入ってこないお金に対して税金を払い続けることになります。法律上・事実上・形式上のいずれかの要件に当てはまる事実が生じたら、その年に「貸倒損失」として計上し、帳簿を正しい状態に戻すことが大切です。青色申告者であれば貸倒引当金を活用して先回りで備える方法もありますが、その場合は翌年の戻入れを忘れないようにしましょう。
とはいえ、貸倒れの要件は判断が難しく、証拠書類の準備や消費税の調整など、実務には細かな注意点が数多くあります。本業のかたわらで一つひとつ正しく処理するのは簡単ではなく、判断を誤れば後から否認されるリスクもあります。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








