廃棄・棚卸減耗が多い事業の記帳|ロスの証拠と科目の扱いを解説
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税務

売れ残りや傷んだ商品を廃棄したときのロスは、廃棄損と棚卸減耗損に分けて考えると帳簿がすっきりします。それぞれの記帳のしかたと、税務調査で問われる「ロスの証拠」の残し方までを、廃棄やロスの多い事業向けに実務目線で整理します。
ロスは正しく費用にできる一方で、実態以上に大きく計上すると利益調整を疑われやすい、扱いの難しい論点でもあります。だからこそ、科目の決め方と根拠書類の残し方をセットで押さえることが肝心です。まずは全体像から順番に見ていきましょう。
☑ 売れ残りや傷んだ商品を廃棄したとき、帳簿上どう処理すればよいのかわからない
☑ 実地棚卸をしたら在庫が帳簿より少なく、この差をどの科目で落とすのか迷っている
☑ 廃棄やロスの経費が多く、税務署に「本当に捨てたのか」と疑われないか不安だ
飲食店や小売店、食品や生鮮を扱う事業では、賞味期限切れや売れ残り、破損などで商品を廃棄する場面がどうしても出てきます。実地で在庫を数えてみたら帳簿の数量と合わない、という「棚卸減耗」も日常的に起こります。ところが、こうしたロスをどの科目で、どんな根拠を残して処理すればよいのかは、意外と体系的に説明されていません。
この記事で扱うのは、売上原価とロスの関係、廃棄と棚卸減耗それぞれの仕訳と科目の決め方、そして証拠書類の整え方です。廃棄やロスが多い事業でも、迷わず筋の通った帳簿がつけられるようになることを目指します。
そもそも「ロス」は帳簿でどう扱われるのか
売上原価は「期首+仕入−期末在庫」で決まる
物を仕入れて売る事業では、その年の利益を出すために売上原価を計算します。基本の式は「期首の在庫+その年の仕入−期末の在庫」です。つまり、年末に残っている在庫(期末在庫)が大きいほど売上原価は小さくなり、逆に期末在庫が小さいほど売上原価は大きくなります。年をまたぐ在庫の繰越や前年分の計上のずれについては、前年の売上・仕入を計上し忘れた翌年の記帳もあわせて確認しておくと安心です。
ここがロスの理解の出発点です。廃棄や棚卸減耗が起きるということは、帳簿上あるはずの在庫が実際には減っているということ。この減った分をきちんと期末在庫から外すことで、売上原価が正しく大きくなり、結果としてロス分が自動的に費用に反映される仕組みになっています。
「廃棄損」と「棚卸減耗損」は原因が違う
ロスには大きく2つの種類があります。廃棄損は、賞味期限切れや破損など、原因がはっきりしていて「捨てた」と特定できるロスです。一方の棚卸減耗損は、実地棚卸をしたら帳簿の数量より実際の在庫が少なかった、という原因を特定しきれない目減りを指します。
廃棄損…期限切れ・破損・型落ちなどで意図的に処分したもの(原因が明確)
棚卸減耗損…盗難・紛失・数え間違い・少量ずつの目減りなど、実地で判明する差(原因が不明確なことが多い)
どちらも最終的には費用になりますが、原因が違うため残すべき証拠も変わってきます。ここを分けて考えることが、ロスの多い事業の記帳をすっきりさせる第一歩です。
廃棄したときの記帳のしかた
基本は「棚卸を通じて費用にする」方法
個人事業主の記帳では、廃棄したその瞬間に必ず仕訳を切らなければならないわけではありません。多くの場合、年末の実地棚卸で「実際に残っている在庫」を数え、廃棄済みの商品を除いた数量で期末在庫を計上します。廃棄した分は期末在庫に含まれないので、前述の売上原価の式を通じて、自動的に費用として利益から差し引かれます。
この方法はシンプルで、日々こまめに廃棄仕訳を切る手間がありません。ただし「いつ・何を・どれだけ廃棄したか」の記録が帳簿に残りにくいため、後述する廃棄記録を別途つけておくことが大切になります。
廃棄が多い事業は「廃棄損」として明示する方法も
廃棄の量や金額が大きい事業では、期末在庫にまとめて溶け込ませるのではなく、廃棄損として独立した費用に計上する方法もあります。こうしておくと、決算書を見たときに「本業の原価」と「ロスによる損失」を分けて把握でき、経営判断にも役立ちます。廃棄が発生した都度、あるいは月次でまとめて、廃棄した商品の原価相当額を廃棄損(雑費や消耗品費とは別に、廃棄損・棚卸減耗損といった費用科目)に振り替える形が考えられます。
どちらの方法でも、最終的に費用になる金額そのものは基本的に同じです。違いは「帳簿上どこで見えるようにするか」です。ロスの管理を経営に活かしたいなら明示する方法、手間を抑えたいなら棚卸を通じる方法、と事業の実態に合わせて選ぶとよいでしょう。
科目名は自分のルールで統一する
個人事業主の場合、費用科目の名称に厳密な決まりがあるわけではありません。「廃棄損」「棚卸減耗損」「商品ロス」など、自分がわかりやすい科目を作り、毎年同じ基準で同じ科目に入れることが最も大切です。ある年は雑費、別の年は廃棄損、とバラバラにしてしまうと、年ごとの比較ができず、税務署から見ても不自然に映ります。どの科目に入れるか迷う場合は、正しい勘定科目の選び方も判断の助けになります。一度決めた科目のルールは、翌年以降も一貫して使いましょう。
棚卸減耗が出たときの記帳のしかた
実地棚卸で「本当の在庫」を確定させる
年末には、帳簿上の数量とは別に、実際に倉庫や店頭にある在庫を数える実地棚卸を行います。ここで「帳簿では100個あるはずなのに、実際は95個しかない」といった差が出ることがあります。この5個分が棚卸減耗です。原因は盗難や紛失、数え間違い、少量ずつの劣化などさまざまで、はっきり特定できないことも珍しくありません。
記帳では、期末在庫を「帳簿数量」ではなく「実際に数えた数量」で計上するのが原則です。実地で数えた95個分だけを期末在庫とすれば、差の5個分は売上原価に含まれ、自然に費用となります。実地棚卸を省いて帳簿数量のまま期末在庫にしてしまうと、この減耗が費用に反映されず、利益が実態より大きく出てしまう点に注意してください。
減耗損として分けて把握したいとき
棚卸減耗が慢性的に多い場合は、その金額を棚卸減耗損として独立させ、原価とは別に見える化しておくと、ロスの傾向がつかめます。たとえば毎年一定割合の減耗が続くなら、盗難対策や在庫管理の見直しといった経営改善のヒントにもなります。ロスや在庫の増減は資金繰りにも響くため、資金繰り表の作り方で数字を先読みしておくと打ち手を考えやすくなります。金額が小さく管理の必要がなければ、無理に分けず売上原価の中に含めてしまっても差し支えありません。
過大なロスは「利益調整」を疑われやすい
ロスを費用にできるからといって、実態以上に大きく計上するのは禁物です。実際には売れたのに廃棄したことにして在庫を減らす、といった処理は、売上除外や利益の付け替えを疑われる典型的なポイントです。あくまで実際に起きたロスだけを、根拠を残したうえで計上する、という姿勢を崩さないことが安全な記帳につながります。
税務調査で問われる「ロスの証拠」の残し方
廃棄記録(廃棄リスト)を作る
ロスが多い事業でいちばん問われやすいのが「本当に廃棄・減耗したのか」という点です。口頭の説明だけでは弱いため、廃棄記録を残しておくことが重要になります。最低限、次のような項目を記録しておくと説得力が増します。
廃棄した日付
廃棄した商品名・数量・仕入原価の目安
廃棄の理由(賞味期限切れ・破損・売れ残りなど)
処分の方法(自社で廃棄・回収業者に依頼など)や担当者
手書きの廃棄ノート、表計算ソフトの廃棄リスト、レジやシステムのロス登録データなど、形式は問いません。大切なのは「継続して、その都度」記録していることです。日々の記録や棚卸まで手が回らないときは、記帳代行に任せるやり方で、証拠書類の整理ごとお願いする方法もあります。
写真や第三者の記録を補強に使う
金額の大きい廃棄や、まとまった量を一度に処分する場合は、廃棄する現物の写真を撮っておくと、より客観的な証拠になります。回収業者に処分を依頼したときの処分証明書やマニフェスト、請求書があれば、第三者が発行した記録として強力です。こうした外部の書類は、廃棄記録とセットで保管しておきましょう。
実地棚卸表を保管する
棚卸減耗については、年末に実地で数えた結果をまとめた棚卸表が根拠になります。数えた日付、商品ごとの数量と単価、合計金額を記した棚卸表を毎年作って保管しておけば、期末在庫の金額の裏づけになり、減耗が生じた事実も示せます。帳簿や書類の記帳・保存の基本は、国税庁タックスアンサーNo.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」でも確認できます(青色申告の方も保存の考え方は共通です)。棚卸表は確定申告の決算書の在庫金額と直結する重要書類ですので、廃棄記録と同じ場所にそろえて残しておくと安心です。
ロスが多い事業が記帳でつまずきやすい点
期中の廃棄を記録し忘れる
もっとも多いのが、日々の忙しさの中で廃棄をその都度メモし忘れ、年末に「どれだけ捨てたか思い出せない」となるケースです。ロスの金額が曖昧だと、期末在庫の精度も落ちてしまいます。廃棄はその場で記録する仕組みを、レジや在庫アプリ、簡単なノートなどで作っておくことがポイントです。
在庫の評価方法をコロコロ変える
在庫の単価をどう決めるか(最終仕入原価法など)は、一度採用したら継続して使うのが原則です。年ごとに評価方法を変えると、期末在庫の金額が不自然に増減し、ロスの計算もぶれてしまいます。棚卸の単価の付け方は、事業を始めたときのルールを一貫して守りましょう。
「捨てた=すぐ経費」と誤解する
廃棄したからといって、その場で自由に経費が増えるわけではありません。あくまで在庫として計上していたもの(=すでに仕入として記録済みのもの)が、売上原価やロスの費用に振り替わるだけです。二重に経費計上したり、まだ仕入れていない見込みのロスを先に費用にしたりしないよう、在庫と費用の関係を正しく押さえておきましょう。
よくある質問
Q. 廃棄した商品も、いったんは仕入として記録しておくのですか?
はい。仕入れた時点では、まだ売れるか廃棄するかはわかりませんので、通常どおり仕入として記録します。その後、売れずに廃棄した分は、年末の実地棚卸で期末在庫から外す(または廃棄損に振り替える)ことで費用に反映されます。仕入を記録せずにいきなり廃棄損だけを計上する、という流れにはならない点に注意してください。
Q. 廃棄記録に決まった様式はありますか?
法律で定められた様式はありません。日付・商品名・数量・原価の目安・廃棄理由がわかれば、手書きのノートでも表計算ソフトでも構いません。大切なのは、思い出しで作るのではなく、廃棄が起きたその都度、継続して記録していることです。写真や業者の処分証明が添えられれば、さらに信頼性が高まります。
Q. 棚卸減耗が毎年同じくらい出ますが、問題になりますか?
業種によっては一定の減耗が出るのは自然なことですので、金額が事業の規模から見て不自然でなく、実地棚卸表などの根拠があれば、それだけで問題になるわけではありません。ただし、減耗の割合が急に大きくなった年や、根拠が何も残っていない場合は説明を求められることがあります。毎年の棚卸表を残し、傾向を自分でも把握しておくと安心です。
まとめ|ロスは「記録」と「一貫性」で筋の通った帳簿になる
廃棄損と棚卸減耗損は、どちらも最終的に売上原価やロスの費用として利益から差し引かれますが、原因が違うため残すべき証拠も異なります。廃棄には廃棄記録と写真・処分証明を、棚卸減耗には実地棚卸表を用意し、科目や在庫の評価方法を毎年同じ基準で一貫させること。これがロスの多い事業でも税務署に胸を張れる帳簿の基本です。
毎日の廃棄をその都度メモし、年末に棚卸をして、科目のルールを守りながら決算書までまとめる——本業が忙しいほど、この積み重ねが後回しになりがちです。数え間違いや記録漏れが重なると、正しいロスの計上そのものが難しくなってしまいます。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








