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2026/7/19

前年の売上・仕入を計上し忘れた翌年の記帳|遡及修正の実務を解説

  • 税務

前年の売上や仕入を計上し忘れたと後で気づいたら、原則はその取引が発生した年に戻して直します。売上漏れは修正申告、経費漏れは更正の請求で対応し、翌年の期首残高の合わせ方まで、遡及修正の実務手順を順に整理します。

確定申告を終えて新しい年の帳簿をつけ始めたころに、こうした計上漏れに気づく個人事業主の方は少なくありません。前年をさかのぼって直すべきか、それとも今年の帳簿で受けてよいのか。判断の軸を、税務面(申告のやり直し)と記帳面(帳簿の直し方)の両方から具体例で示します。

☑ 去年の売上(または仕入)を計上し忘れていたことに、年が明けてから気づいた

☑ いまさら前年の帳簿を直すのか、それとも今年の帳簿に入れてよいのか判断できない

☑ 前年分の期首残高や売掛金・買掛金がずれていて、どう合わせればよいかわからない

すでに前年分は申告済みなのに、いまから直せるのか、そもそもどの年の帳簿に入れるべきなのか、迷ってしまう方は少なくありません。税務署に指摘される前に自分から直すための考え方と、前年・今年の帳簿をどう連動させるかの手順を、具体例を交えて確認していきます。

まず押さえたい大原則|計上時期は「本来あるべき年」で直す

売上・仕入は「発生した年」に帰属させる

個人事業主の所得は、原則として発生主義で計算します。売上は商品を引き渡した日やサービスを提供した日、仕入は物やサービスの引き渡しを受けた日が属する年の取引として計上するのが基本です。実際に入金・支払いがあった日ではありません。いつの経費・売上として計上するかという考え方は、定期券・回数券の経費計上タイミングでも具体例つきで整理しています。

つまり、前年に発生した売上や仕入を計上し忘れていた場合、それは本来は前年の取引です。気づいたのが今年であっても、正しい帰属先は前年であるという点が、すべての出発点になります。

「今年の売上・仕入にすればいい」は原則できない

手っ取り早く済ませたくて、前年分の計上漏れを今年の帳簿に入れてしまいたくなるかもしれません。しかしこれは原則として認められません。前年に発生した取引を今年の所得に含めると、年ごとの所得が実際とずれてしまうためです。

特に、その年ごとに税率や各種控除、青色申告特別控除の適用が判定されます。帰属年を勝手にずらすと、税額計算が本来と変わってしまい、後の税務調査で指摘される原因にもなります。面倒でも、発生した年に戻して直すのが原則だと覚えておきましょう。

まず整理すべき2つのこと

計上漏れに気づいたら、次の2点をはっきりさせることから始めます。

  • 漏れていたのは売上か仕入(経費)か:どちらかで、税金が増える方向か減る方向かが変わります

  • その取引がいつ発生したか:引き渡し・提供の日が属する年が、本来の帰属年です

この2点が決まると、前年分の申告をどう直し、今年の帳簿でどう受け止めるかが自然に決まってきます。前年分の直しと日々の記帳をまとめて外に出したい場合は、記帳代行というやり方で手を動かす部分だけ任せる選択肢もあります。

売上の計上漏れに気づいたとき|税金が増える方向

前年の所得が過少になっている状態

前年の売上を計上し忘れていたということは、前年の収入が実際より少なく申告されていた、つまり所得を過少に計算していた状態です。直すと前年の所得が増え、納める税金も増える方向になります。

この場合、前年分についてはすでに申告期限を過ぎていることが多いため、修正申告を行って不足していた税金を納め直すのが基本です。修正申告に決まった提出期限はありませんが、税務署の指摘を受ける前に自分から早めに直すほど、加算税などの負担が軽くなる取り扱いがあります。確定申告のしくみの全体像は、国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」で確認できます。

前年分の帳簿・決算書を直してから修正申告する

修正申告は、いきなり申告書だけを書き換えるのではなく、まず前年の帳簿に漏れていた売上を追加し、決算書(青色申告決算書や収支内訳書)を正しく作り直すのが流れです。おおまかには次のとおりです。

  • 前年の帳簿に、漏れていた売上の仕訳を発生日付で追加する

  • 正しい売上高で前年の決算書を作り直す

  • 増えた所得にもとづき、修正申告書を作成して提出する

  • 当初の納税額との差額を納付する

クラウド会計ソフトを使っている場合は、前年の会計期間に戻って仕訳を追加し、決算・申告データを出し直すイメージです。年をまたいでいるため、今年の帳簿ではなく前年の帳簿側を触る点に注意しましょう。

入金が今年になる売上は「売掛金」で受ける

前年に発生した売上でも、入金が今年になるケースは珍しくありません。この場合、前年の帳簿では「売上/売掛金」として計上し、今年その代金が入金されたときに「売掛金」を消し込む形になります。前年に売上を立て、今年の入金は売掛金の回収として処理することで、売上を二重に計上せずに済みます。手形や電子記録債権で受け取る場合の処理は、手形・電子記録債権で支払うときの記帳もあわせて確認しておくと安心です。

仕入・経費の計上漏れに気づいたとき|税金が減る方向

前年の所得が過大になっている状態

前年の仕入や経費を計上し忘れていた場合は、逆に前年の費用が少なく、所得を実際より多く申告して税金を払いすぎている状態です。直すと前年の所得が減り、納めた税金が戻る方向になります。

払いすぎた税金を取り戻すには、更正の請求という手続きを行います。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。売上の計上漏れ(修正申告)と違い、こちらには期限がある点に注意が必要です。放置して期限を過ぎると、本来戻るはずの税金が戻らなくなります。

「その年の仕入・経費」だったかを確認する

仕入の計上漏れを直す前に、その支出が本当に前年に帰属する費用だったかを確認します。特に商品の仕入では、売れ残った分は前年の経費にならず、在庫(期末棚卸高)として翌年に繰り越す点に注意が必要です。仕入をそのまま全額前年の経費にすると、今度は経費を多く見すぎることになりかねません。在庫や廃棄が多い事業での考え方は、廃棄・棚卸減耗が多い事業の記帳で詳しく扱っています。

プライベートと兼用している支出であれば、事業で使った割合(家事按分)の分だけが対象です。何でも経費にできるわけではない、という前提を忘れないようにしましょう。

支払いが今年になる仕入は「買掛金」で受ける

前年に引き渡しを受けた仕入でも、支払いが今年になることがあります。この場合、前年の帳簿では「仕入/買掛金」として計上し、今年支払ったときに「買掛金」を消し込みます。前年に費用を立て、今年の支払いは買掛金の決済として処理することで、経費を二重に計上せずに済みます。

翌年の帳簿でやるべきこと|期首残高と二重計上の防止

前年を直したら「期首残高」も合わせる

前年の帳簿に売掛金や買掛金、在庫を追加すると、前年末の残高が変わります。個人事業主の帳簿は、前年末の残高がそのまま今年の期首残高として引き継がれる関係にあります。前年を直したのに今年の期首残高を直し忘れると、年をまたいだ数字がずれてしまいます。

たとえば前年に売掛金を追加したなら、その分だけ今年の期首の売掛金残高も増やしておく必要があります。買掛金や棚卸資産も同じです。前年を直したら、今年の期首残高も同じだけ合わせる、とセットで覚えておきましょう。

今年の入金・支払いは「残高の消し込み」にする

前年に売上・仕入として計上した取引の入金や支払いが今年に行われた場合、今年の帳簿ではそれを売上や経費として再度計上してはいけません。あくまで前年に立てた売掛金・買掛金を消し込む処理にします。

  • 今年の入金:「現金・預金/売掛金」…売上ではなく売掛金の回収

  • 今年の支払い:「買掛金/現金・預金」…経費ではなく買掛金の決済

ここを間違えて売上や経費として二度計上すると、今年の所得がずれるうえ、前年と今年で同じ取引を重複して計上する典型的なミスになります。

白色申告や現金主義の届出がある場合の注意

ここまでは発生主義を前提に説明しました。青色申告で正規の簿記により記帳している方は、この考え方で進めるのが基本です。一方、事前に届出をして現金主義によることが認められている少額の事業者などは、入金・支払いの時期で計上するため考え方が異なります。青色申告と現金主義の特例の関係は、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。自分がどの方法で記帳しているかを確認したうえで、判断に迷う場合は税務署や専門家に相談すると安心です。

直すときに気をつけたいポイント

年をまたぐと「どちらの年も」影響することを意識する

計上漏れの修正は、前年だけの問題では終わりません。前年を直せば期首残高を通じて今年にも影響し、今年の入金・支払い処理も連動します。前年と今年の両方の帳簿を、つじつまが合うように直すという意識が大切です。片方だけ直して安心してしまうと、翌年にまた別のずれとして表面化します。

売上漏れと仕入漏れが両方ある場合

同じ前年分について、売上の計上漏れ(税金が増える要素)と仕入・経費の計上漏れ(税金が減る要素)が両方見つかることもあります。この場合は、両方を反映して前年の正しい所得と税額を計算し直し、差し引きの結果として税金が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求を選びます。内容が入り組むときは、誤りを一覧に整理してから判断すると迷いません。

根拠となる資料をそろえておく

修正申告でも更正の請求でも、いつ・いくらの取引が漏れていたのかを裏づける資料が欠かせません。請求書、納品書、領収書、通帳の入出金記録などをそろえておきましょう。特に更正の請求は税務署の審査を経るため、なぜ所得が減るのかを資料で示せることが重要です。

よくある質問

Q. 前年の売上漏れを、今年の売上として計上してしまってもよいですか?

原則として認められません。売上は発生した年に帰属させるのが基本で、前年に発生した売上は前年の帳簿に入れて修正申告するのが正しい対応です。年をまたいで帰属をずらすと、各年の所得や控除の判定が本来と変わり、後で指摘される原因になります。面倒でも、発生した年に戻して直すのが安全です。

Q. 前年の仕入を今年になって計上し忘れに気づきました。まだ間に合いますか?

払いすぎた税金を取り戻す更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内であれば手続きできる可能性があります。前年分であればまだ間に合うケースが多いです。ただし対象年分ごとに期限を数えるため、古い年分ほど期限が近づきます。気づいた時点で、対象年分と残りの期間を確認しておきましょう。

Q. 金額がとても小さい場合でも、前年をさかのぼって直す必要がありますか?

考え方としては、金額の大小にかかわらず正しい年に帰属させて直すのが原則です。ただし、実務上どこまで厳密に対応すべきかは、金額や影響の大きさ、事業の状況によって判断が分かれることもあります。判断に迷うときは自己流で処理せず、税務署や税理士などの専門家に相談したうえで進めると安心です。

まとめ|前年の計上漏れは「発生した年」に戻して両年を整える

前年の売上や仕入を計上し忘れていたときは、その取引を発生した年に戻して直すのが大原則です。売上漏れは前年の所得を増やすため修正申告、仕入・経費漏れは前年の所得を減らすため更正の請求(原則5年以内)と、方向によって手続きが分かれます。そして前年を直したら、今年の期首残高を合わせ、今年の入金・支払いは売掛金・買掛金の消し込みとして処理する——この年をまたいだ整合が、二重計上を防ぐ鍵です。

もっとも、前年の帳簿と決算書を作り直し、期首残高を今年に引き継ぎ、入金・支払いを消し込みでそろえる一連の作業を、本業の合間に一人で行うのは思いのほか骨が折れます。発生主義や棚卸の考え方も絡み、どこか一つずれると翌年に持ち越してしまいます。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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