手形・電子記録債権で支払うときの記帳|振出・決済・割引の処理を解説
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税務
☑ 取引先から手形で支払いたいと言われたが、どう記帳すればよいかわからない
☑ 電子記録債権(でんさい)の入金や支払いをどの勘定科目で処理するのか迷っている
☑ 手形を銀行で割り引いたときの手数料や利息の扱いがあいまいなままだ
普段は現金や銀行振込でのやり取りが中心でも、取引先によっては手形や電子記録債権(でんさい)での支払い・回収を求められることがあります。いざその場面になると、「受取手形」「支払手形」「電子記録債権」といった見慣れない勘定科目が出てきて、どう仕訳すればよいのか手が止まってしまう方は少なくありません。
本記事では、手形と電子記録債権について、振り出した(支払う)とき・受け取ったとき・決済されたとき・割り引いたときの記帳を、個人事業主やフリーランスの方向けにやさしく整理します。読み終えるころには、それぞれの場面でどの勘定科目を使えばよいか、全体の流れがイメージできるようになります。
手形と電子記録債権の基本を押さえましょう
手形とは「後日支払う約束を書いた証券」
手形は、決められた期日に決められた金額を支払うことを約束する証券です。商取引で多く使われるのは約束手形で、代金を支払う側(振出人)が「いつ・いくら払うか」を記して相手に渡します。受け取った側は、記載された期日(満期日)になると、その金額を受け取れる仕組みです。
手形の特徴は、代金の支払いを一定期間先に延ばせる点にあります。支払う側は手元の資金繰りに余裕を持たせられ、受け取る側は期日まで待てば確実に入金される、というやり取りが成り立ちます。ただし、受け取る側からすると、現金化までに時間がかかるという面もあります。
電子記録債権(でんさい)とは
電子記録債権は、紙の手形が持つ機能を電子的に置き換えた仕組みです。代表的なものに「でんさい」と呼ばれるサービスがあります。紙の手形のように印紙を貼ったり、紛失・盗難に気をつけたりする必要がなく、専用のネットワーク上で債権の発生や譲渡、決済が記録・管理される点が大きな違いです。
支払う側・受け取る側のどちらにとっても、事務の手間が減り、期日になれば自動的に口座間で決済されるため、近年は手形からでんさいへ切り替える事業者が増えています。会計上の考え方は手形とよく似ているので、手形の処理を理解しておくとでんさいの仕訳も整理しやすくなります。
使う勘定科目を整理しておく
手形を受け取ったとき(回収側)…受取手形
手形を振り出したとき(支払側)…支払手形
電子記録債権を受け取ったとき(回収側)…電子記録債権
電子記録債権を負担したとき(支払側)…電子記録債務
まずはこの組み合わせを押さえておくと、どの場面でどの科目を使うのか迷いにくくなります。以下では、場面ごとにもう少し具体的に見ていきましょう。
支払う側(振り出す側)の記帳
手形を振り出したとき
商品やサービスを仕入れて、その代金を約束手形で支払う場合を考えます。手形を振り出した時点では、まだ実際にお金が出ていくわけではなく、「期日に支払う義務」が発生した状態です。そこで、買掛金などの仕入債務を支払手形に振り替えるイメージで記帳します。
たとえば、仕入代金の買掛金30万円を約束手形で支払うことにした場合、借方に「買掛金 30万円」、貸方に「支払手形 30万円」と仕訳します。これで、支払いの方法が買掛金から手形に変わったことが帳簿に表れます。仕入と同時に手形を振り出す場合は、借方を「仕入」とすることもあります。
手形が決済されたとき
満期日が来て、手形の金額が当座預金などから引き落とされると、支払いが完了します。このときは、借方に「支払手形」、貸方に「当座預金(または普通預金)」と記帳し、支払手形の残高を消し込みます。先ほどの例なら、借方「支払手形 30万円」、貸方「当座預金 30万円」です。
振り出してから決済されるまでに期間が空くため、満期日と口座残高の管理がとても重要です。期日に残高が不足していると手形が決済できず、信用に大きく影響します。手形を振り出したら、期日と金額を一覧で管理しておきましょう。
電子記録債務を負担したとき
でんさいで支払う場合も考え方は同じです。買掛金などを電子記録債務に振り替え、期日に口座から引き落とされたら電子記録債務を消し込みます。たとえば買掛金20万円をでんさいで支払うなら、発生時は借方「買掛金 20万円」・貸方「電子記録債務 20万円」、決済時は借方「電子記録債務 20万円」・貸方「普通預金 20万円」となります。紙の手形のような印紙の負担がない点も、実務上の違いとして覚えておくとよいでしょう。
受け取る側(回収する側)の記帳
手形を受け取ったとき
売上代金を約束手形で受け取った場合は、売掛金を受取手形に振り替えます。たとえば売掛金30万円を手形で回収したなら、借方「受取手形 30万円」、貸方「売掛金 30万円」と仕訳します。売上と同時に手形を受け取る場合は、貸方を「売上」とすることもあります。
この時点ではまだ現金化されていません。受取手形は「期日になればお金を受け取れる権利」を表しており、満期日まで保有して入金を待つのが基本の流れです。
手形が決済されて入金されたとき
満期日になり、手形の金額が口座に入金されると回収が完了します。借方に「当座預金(または普通預金)」、貸方に「受取手形」と記帳し、受取手形の残高を消し込みます。先ほどの例なら、借方「当座預金 30万円」、貸方「受取手形 30万円」です。
受け取った手形は、満期日まで紛失しないよう大切に保管する必要があります。でんさいの場合はネットワーク上で管理されるため、こうした保管の手間がかからないのも利点のひとつです。
電子記録債権を受け取ったとき
でんさいで売上代金を回収する場合は、売掛金を電子記録債権に振り替えます。発生時は借方「電子記録債権」・貸方「売掛金」、期日に入金されたら借方「普通預金」・貸方「電子記録債権」と記帳します。流れは受取手形とまったく同じで、勘定科目が変わるだけだと考えると整理しやすくなります。
手形・電子記録債権を割り引いたときの記帳
「割引」とは満期前に現金化すること
受け取った手形やでんさいは、満期日まで待たなくても、銀行などに買い取ってもらって早めに現金化することができます。これを割引といいます。資金繰りの都合で早くお金が必要なときに使われる方法です。ただし、満期日までの利息に相当する分が割引料として差し引かれるため、額面より少ない金額が手元に入る点に注意が必要です。
割引したときの仕訳例
たとえば額面30万円の受取手形を銀行で割り引き、割引料5千円が差し引かれて29万5千円が入金されたとします。このときは、借方に「当座預金 29万5千円」と「手形売却損 5千円」、貸方に「受取手形 30万円」と記帳します。差し引かれた割引料は、手形売却損という科目で費用として処理するのが一般的です。でんさいを割り引いた場合は「電子記録債権売却損」といった科目を使います。
ポイントは、入金額(手取り)と割引料を分けて記帳することです。手取り額だけを入金として処理してしまうと、受取手形の額面が消し込めず帳簿が合わなくなります。額面・手取り・割引料の3つの数字を意識しましょう。
裏書譲渡という方法もある
受け取った手形は、自分の支払いに充てるために第三者へ渡すこともできます。これを裏書譲渡といいます。仕入代金などの支払いに手形を回すと、借方に「買掛金」、貸方に「受取手形」と記帳し、受取手形の残高を相手へ譲る形で消し込みます。でんさいでも譲渡記録という形で同じようなことができます。自分の手元の手形を支払いに使える、という点を覚えておくと選択肢が広がります。
記帳でつまずきやすいポイント
「発生」と「決済」を分けて考える
手形やでんさいの記帳が難しく感じる一番の理由は、取引が二段階に分かれていることです。まず振り出す・受け取るという「発生」の場面があり、その後に期日が来て口座でお金が動く「決済」の場面があります。この二つを別々の仕訳として捉えると、ぐっと整理しやすくなります。
発生時…売掛金や買掛金を、手形・でんさいの科目に振り替える
決済時…手形・でんさいの科目を、預金の科目に振り替える
この基本パターンを覚えておけば、支払う側・受け取る側のどちらでも応用が利きます。
期日と残高の管理を忘れない
手形やでんさいは、振り出してから決済までに時間がかかります。支払う側は期日に口座残高が足りているかを必ず確認し、受け取る側は期日にきちんと入金されたかを確認することが大切です。期日ごとの一覧表を作っておくと、決済漏れや残高不足を防ぎやすくなります。でんさいの場合は、利用している金融機関の管理画面で期日や金額を確認できることが多いので、こまめにチェックしておきましょう。
よくある質問
Q. 手形を受け取ったとき、すぐ売上として計上してよいのですか?
売上を計上するタイミングは、原則として商品やサービスを引き渡した時点です。代金を手形で受け取った場合は、その売上に対する代金の受け取り方法が「手形」になっただけと考えます。すでに売掛金として計上していたものを手形で回収するなら、売掛金を受取手形に振り替えるだけで、改めて売上を計上することはありません。
Q. でんさい(電子記録債権)と手形で、会計処理は大きく違いますか?
基本的な考え方はほとんど同じです。受け取れば資産(受取手形・電子記録債権)、支払えば負債(支払手形・電子記録債務)として記帳し、期日に預金で決済する流れも共通しています。違いは主に勘定科目の名前と、紙か電子かという管理方法の部分です。手形の処理を理解しておけば、でんさいの仕訳も同じ要領で対応できます。
Q. 割引したときの割引料は、経費として処理してよいですか?
手形を割り引いた際に差し引かれる割引料は、「手形売却損」などの科目で費用として処理するのが一般的です。額面と手取り額の差額が割引料にあたるため、入金額だけで記帳せず、額面・手取り・割引料の3つを分けて仕訳することがポイントです。でんさいを割り引いた場合も、これに準じた科目で同様に処理します。
まとめ:二段階で考えれば手形・でんさいの記帳は整理できる
手形や電子記録債権の記帳は、「振り出す・受け取る(発生)」と「期日に決済する」という二段階に分けて考えることがコツです。受け取れば受取手形・電子記録債権、支払えば支払手形・電子記録債務、決済時には預金へ振り替える。この基本の流れを押さえ、割引のときは額面・手取り・割引料を分けて記帳すれば、見慣れない取引でも落ち着いて対応できます。期日と口座残高の管理も忘れずに行いましょう。
とはいえ、手形やでんさいは発生と決済で取引が分かれるうえ、期日管理も必要なため、本業が忙しい中で記帳から申告まで自分で行うのは大きな負担になりがちです。数字の振り替えや期日の追いかけに時間を取られて、肝心の仕事に集中できなくなっては本末転倒です。
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