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2026/7/18

赤字を3年繰り越して翌年以降の税を抑える|純損失の繰越を活かす節税を解説

  • 税金

事業の赤字は、青色申告なら純損失の繰越控除を使い、翌年以降3年間の黒字から差し引けます。赤字の年に期限内で申告しておけば、将来の黒字にかかる税金を抑えられます。制度の仕組みと必要な手続き、具体例を順に整理します。

開業初年度や売上が落ち込んだ年に出た赤字を、「納税がないから」と申告せずにいるのは、実はもったいない選択です。青色申告の純損失の繰越控除を使えば、その赤字は翌年以降の節税に回せます。まずは制度の全体像から押さえていきましょう。

☑ 開業初年度や売上が落ち込んだ年に赤字が出たが、その赤字を活かせていない気がする

☑ 「赤字は3年繰り越せる」と聞いたが、具体的にどう手続きすればよいかわからない

☑ 黒字に転じた翌年、思ったより税金が高くて損をしている気がする

事業をしていれば、開業したばかりの年や大きな設備投資をした年、思わぬ売上減に見舞われた年など、赤字になってしまう年は珍しくありません。そんなとき、「どうせ赤字なら申告しなくてもいいだろう」と考えてしまう方も多いのですが、実はその赤字こそが翌年以降の税金を減らす大切な資産になり得ます。

青色申告をしている個人事業主が使える「純損失の繰越控除」という仕組みについて、どんな制度なのか、どうすれば活かせるのか、どんな手続きが必要なのかを、初めての方にもわかりやすく整理します。赤字の年こそきちんと申告しておく意味を、具体例を交えて確認しましょう。

純損失の繰越控除とは?まず仕組みを理解しましょう

赤字を翌年以降3年間持ち越せる制度

純損失の繰越控除とは、その年に出た事業の赤字(純損失)を、翌年以降3年間にわたって持ち越し、将来の黒字(所得)から差し引ける制度です。たとえば今年100万円の赤字が出て、来年200万円の黒字になった場合、来年の所得から今年の赤字100万円を差し引いて、課税の対象を100万円に圧縮できます。

事業の業績は年によって波があるのが自然です。ある年は赤字、翌年は黒字ということは十分にあり得ます。純損失の繰越控除は、こうした年ごとのデコボコをならし、複数年で見たときに過大な税負担にならないようにするための仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。

この制度を使える人

純損失の繰越控除を使えるのは、原則として青色申告をしている個人事業主です。白色申告の場合は、この純損失の繰越控除は基本的に使えません(変動所得や被災事業用資産など、ごく限られた損失を除きます)。ここが、白色申告と比べたときの青色申告の大きなメリットのひとつです。青色申告制度の位置づけは国税庁タックスアンサー「No.2070 青色申告制度」で確認できます。赤字の繰越と同じく青色申告の特典である青色事業専従者給与も、家族に働いてもらう場合はあわせて検討すると効果的です。

  • 青色申告の承認を受けていること

  • 赤字が出た年について、期限内に確定申告をしていること

  • 赤字の翌年以降も、原則として連続して確定申告をしていること

つまり、「青色申告をしていて、赤字の年もきちんと申告している」ことが、この制度を使うための土台になります。

赤字でも申告したほうがよい理由

申告しないと繰越の権利が消えてしまう

「赤字だから納める税金はゼロ。なら申告しなくてもいい」と考えるのは、もっとも惜しいパターンです。純損失を翌年以降に繰り越すには、赤字が出た年の確定申告書を期限内に提出しておくことが前提になります。申告をしていなければ、せっかくの赤字を将来の節税に使うチャンスを自ら手放すことになりかねません。

赤字の年は納税額こそ発生しないかもしれませんが、その赤字は「翌年以降の税金を減らせる権利」として残せます。納税のためだけでなく、将来の自分のために申告する、という意識を持っておきたいところです。

連続した申告が条件になる

純損失を繰り越したあと、それを差し引くまでの間も、原則として毎年連続して確定申告をしている必要があります。間の年で申告を抜かしてしまうと、繰越の取り扱いに支障が出る場合があります。「今年は黒字だけど少額だから」「今年も赤字だから」と申告を怠らず、繰越をしている期間中は毎年きちんと申告を続けることが大切です。

所得控除や他の特典とも組み合わせやすい

赤字の年でも申告しておくことで、その後の各種手続きの記録が途切れずに残ります。事業の継続性を示す書類として、確定申告書の控えは融資の相談など事業のさまざまな場面で役立ちます。赤字だからこそ、むしろ丁寧に申告して記録を残しておく価値があります。控除の取りこぼしを防ぐ観点は控除証明書を紛失したときの再発行と節税の取りこぼし防止策も参考になります。

純損失の繰越を受けるための手続き

赤字の年にやること

赤字が出た年は、青色申告決算書で損失額を確定させたうえで、確定申告書を作成します。このとき、確定申告書には純損失の金額を記載する欄があり、ここに繰り越す赤字の金額を記入します。あわせて、確定申告書に添付する第四表(損失申告用の様式)を使って、損失の内容や繰り越す金額を整理して申告します。

通常の黒字の年とは使う様式が一部異なるため、「赤字の年は損失申告の様式を使う」という点を覚えておきましょう。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って入力することで必要な様式が自動的に整います。期限内申告の考え方は国税庁タックスアンサー「No.2020 確定申告」で確認できます。損失申告の様式づくりから申告まで任せたいときは、損失申告まで丸投げできる確定申告代行という選択肢もあります。

黒字に転じた年にやること

繰り越した赤字を実際に使うのは、黒字に転じた年です。その年の確定申告で、過去に繰り越しておいた純損失を所得から差し引いて、課税対象を圧縮します。前年までに繰り越した損失の金額を正しく引き継ぎ、当年の所得からいくら差し引くのかを計算して記載します。

古い年の損失から順番に使っていくのが基本で、3年を過ぎて使い切れなかった損失は、それ以降は使えなくなります。「いつ出た赤字を、いつまでに使えるのか」を意識して管理しておくことが、制度を取りこぼさないコツです。

記録と書類の保管

繰越をしている間は、赤字の年の確定申告書の控えや青色申告決算書をきちんと保管しておきましょう。何年にいくらの赤字が出て、どの年にいくら使ったのかを自分で把握できるようにしておくと、黒字の年の申告がスムーズになります。帳簿や決算書類の保存は、もともと青色申告の要件でもあります。

具体例で見る繰越控除の効果

開業初年度が赤字だったケース

開業初年度は、設備の購入や広告費など先行投資がかさみ、売上が軌道に乗る前に赤字になりやすい時期です。たとえば初年度に150万円の赤字、2年目に250万円の黒字が出たとします。繰越控除を使えば、2年目の所得から初年度の赤字150万円を差し引き、課税の対象を100万円まで小さくできます。

もし初年度に申告をしていなければ、2年目はまるまる250万円に対して税金がかかります。開業初年度こそ、赤字でも忘れずに申告しておく価値が大きいといえます。

赤字を複数年で分けて使うケース

赤字の金額が大きく、翌年の黒字だけでは使い切れないこともあります。その場合、使い切れなかった分は、さらにその次の年(繰越の期限内)に持ち越して差し引けます。たとえば300万円の赤字に対し、翌年の黒字が100万円であれば、まず100万円分を使い、残りの200万円を次の年以降に回す、という形です。

このように、純損失は一度に使い切る必要はなく、繰越の期限内であれば複数年に分けて少しずつ使っていけます。だからこそ、各年の残額を正確に管理しておくことが重要になります。

注意しておきたいポイント

白色申告では原則使えない

すでに触れたとおり、事業の赤字をまるごと繰り越せるのは青色申告の特典です。白色申告のままでは、この純損失の繰越控除は原則として使えません。これから事業を続けていくなら、早めに青色申告の承認申請をしておくことで、赤字の年も黒字の年も含めて、税制上の有利な扱いを受けやすくなります。

使える期間に限りがある

繰り越せる期間は、その年の翌年から数えて3年間です。期間内に黒字が出なければ、赤字を使い切れずに期限切れになってしまうこともあります。「赤字は3年間という有効期限つきの資産」だと考え、黒字が出た年には忘れずに差し引くようにしましょう。制度ごとの手間と効果を見比べる考え方は節税策の費用対効果を見極める考え方も参考になります。

申告の連続性を切らさない

繰越を活かすうえで地味に大切なのが、申告を毎年続けることです。赤字の年も、少額の黒字の年も、申告を欠かさないこと。途中で申告が抜けると、繰越の取り扱いに支障が生じるおそれがあります。判断に迷う場合は、自己流で進めず、税務署や専門家に確認しておくと安心です。

よくある質問

Q. 赤字の年は本当に申告しないと損なのですか?

はい、純損失を翌年以降に繰り越したい場合は、赤字の年に期限内で確定申告をしておくことが前提になります。申告をしていないと、赤字を将来の黒字から差し引く権利を活かせなくなってしまいます。納める税金がない年でも、将来の節税のために申告しておくことをおすすめします。

Q. 白色申告でも赤字を繰り越せますか?

事業の赤字をそのまま3年間繰り越せるのは、原則として青色申告をしている方に限られます。白色申告では、変動所得や被災事業用資産の損失など、ごく限られたものを除いて、純損失の繰越控除は基本的に使えません。赤字が出る可能性がある事業であれば、青色申告への切り替えを検討する価値があります。

Q. 繰り越した赤字は、黒字になったら必ず差し引かれるのですか?

自動的にではなく、黒字に転じた年の確定申告で、過去に繰り越しておいた損失を所得から差し引く形で反映させます。古い年の損失から順に使い、繰越の期限内に使い切ることがポイントです。前年までの残額を引き継いで計算するため、毎年の申告内容を正しくつないでおくことが大切です。

まとめ|赤字の年こそ申告して、将来の節税につなげる

純損失の繰越控除は、青色申告をしている個人事業主が、ある年の赤字を翌年以降3年間にわたって黒字から差し引ける制度です。赤字の年に期限内で申告しておき、その後も連続して申告を続け、黒字に転じた年に古い損失から順に差し引いていく、という流れさえ押さえれば、年ごとの業績のデコボコによる過大な税負担を和らげられます。赤字は「使える資産」だと考え、放置せずに申告しておくことが大切です。

とはいえ、損失申告の様式の作成や、繰り越した赤字の残額管理を、本業をこなしながら自分で正確に行うのは骨の折れる作業です。赤字の年だからこそ申告を後回しにしてしまいがちですが、ここで取りこぼすと将来の節税のチャンスを逃してしまいます。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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