個人事業主の棚卸資産の評価方法の選び方|原価法と低価法を解説
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税務

棚卸資産の評価方法は、原価法と低価法に分かれ、選び方しだいで在庫の金額と所得・税額が変わります。届出をしなければ最終仕入原価法になり、低価法は青色申告と届出が前提。まずは自分がどの方法かを確認しましょう。
商品や材料を仕入れて販売する事業では、年末に売れ残った在庫を数える「棚卸し」が必要です。ところが、その在庫をいくらで評価するか、つまり「棚卸資産の評価方法」まで意識している個人事業主は意外と多くありません。なんとなく仕入れたときの値段で計算している、という方も少なくないのではないでしょうか。
☑ 年末の棚卸しはしているが、在庫の「評価方法」を意識したことがない
☑ 原価法や低価法と聞いても、自分が何を選んでいるのかわからない
☑ 評価方法で税金がどう変わるのか、選び方の基準を知りたい
ここでは、棚卸資産の評価方法の種類、原価法と低価法の違い、そして自分の事業に合った方法をどう選ぶかを整理します。今どの方法を使っているかを確認し、必要なら有利な方法へ切り替える判断ができるようになります。
棚卸資産の評価方法とは何でしょうか
「在庫の金額」は所得計算に直結する
棚卸資産とは、年末時点で売れ残っている商品や製品、製造途中の仕掛品、原材料などの在庫のことです。売上原価は、おおまかに「期首の在庫+その年の仕入れ-期末の在庫」で計算します。つまり期末の在庫を高く評価すれば所得は大きく(=税金は多く)なり、低く評価すれば所得は小さく(=税金は少なく)なります。在庫の評価は、単なる数え方ではなく利益と税額を左右する手続きなのです。在庫の評価や記帳をまとめて任せたいときは、記帳代行という選択肢もあります。
届出をしなければ「最終仕入原価法」になる
棚卸資産の評価方法は、大きく原価法と低価法に分かれます。そして個人事業主が評価方法を税務署へ届け出ていない場合、自動的に「最終仕入原価法による原価法」が適用されます。これを法定評価方法といい、多くの個人事業主が知らないうちにこの方法を使っています。届出をすれば別の方法を選べますが、何もしなければ最終仕入原価法になる、とまず覚えておきましょう。
原価法にはどんな種類があるのでしょうか
代表的な原価法
原価法は、期末の在庫を「いくらの原価で仕入れたものとみなすか」の違いで複数に分かれます。主なものは次のとおりです。
個別法:在庫を一つひとつ区別し、実際の仕入原価で評価する。宝石や美術品など高額で個性の強い商品向け。
先入先出法:先に仕入れたものから売れたとみなし、期末在庫は新しく仕入れた分が残ると考える。
総平均法・移動平均法:1年間または仕入れのたびに平均単価を出して評価する。
最終仕入原価法:その年の最後に仕入れた単価で、期末在庫すべてを評価する。
個人事業主に多い「最終仕入原価法」
届出をしない個人事業主が使う最終仕入原価法は、計算がシンプルなのが特徴です。年末に在庫数量を数え、最後に仕入れた単価を掛けるだけで評価額が出ます。一方、最後の仕入単価だけで全在庫を評価するため、価格変動の大きい商品では実態とずれることもあります。年末ぎりぎりに高値で少量仕入れると、その単価で在庫全体が評価され所得が大きく出る、ということもあり得ます。手軽さと引き換えに、年による有利・不利が出やすい点は知っておきましょう。
平均法・先入先出法を選ぶメリット
総平均法や移動平均法は平均単価で評価するため、単発の仕入価格に振り回されにくく、評価額が安定しやすいのが利点です。先入先出法は、古い在庫から売れていく食品や流行品の実際の動きに合いやすい方法です。食品や流行品の在庫管理と原価の考え方は、飲食店の原価管理が参考になります。自分の商品の動き方に合わせて選ぶことが、無理のない帳簿づけにつながります。
低価法とはどんな方法でしょうか
原価と時価の「低いほう」で評価する
低価法は、期末在庫について原価法で計算した金額と期末時点の時価を比べ、低いほうで評価する方法です。たとえば原価1,000円の商品が、流行遅れで年末には700円でしか売れない状態なら、原価法では1,000円のままですが、低価法なら700円で評価できます。値下がり分をその年の費用として早めに反映できるイメージです。値下がりや廃棄で在庫の価値が落ちたときの記帳は、在庫ロス・廃棄の記帳もあわせて確認すると理解が深まります。
向いている事業と前提条件
低価法は、季節商品やトレンド商品を扱うアパレル・雑貨、型落ちで価値が下がる電化製品、賞味期限で価値が落ちる食品など、在庫が値下がりしやすい事業と相性のよい方法です。こうした商品を原価のまま評価すると在庫を実態より高く見積もりがちですが、低価法なら値下がり分を反映でき、その年の所得を実態に合わせて抑えられる場合があります。ただし低価法は、原則として青色申告をしていることが前提で、さらに低価法を選ぶ旨を税務署へ届け出る必要があります。白色申告のままでは使えません。青色申告特別控除などの青色の特典は、国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」で確認できます。
評価方法を選ぶ・変えるにはどうすればよいのでしょうか
届出のタイミングと継続の原則
最終仕入原価法以外を選びたい場合は、「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」を税務署に提出します。提出期限はその年分の確定申告期限までが原則です。そして、一度選んだ方法は継続して使うのが原則(継続性の原則)で、年ごとに有利な方法へ気軽に切り替えることはできません。変更したいときは「変更承認申請書」を提出し、税務署の承認を受ける必要があります。
選ぶときに確認したいポイント
値下がりリスク:値下がりしやすいなら低価法(青色申告+届出)が候補。
仕入価格の変動:変動が大きいなら平均法が安定し、安定しているなら手軽な最終仕入原価法でも問題は出にくい。
事務負担:個別法や移動平均法は手間がかかる。クラウド会計や専門家の活用も判断材料に。
正確な棚卸しと記帳が前提
どの方法を選んでも、もとになる在庫数量が正しくなければ正確な計算はできません。年末(12月31日時点)に実地棚卸を行い、商品名・数量・単価・金額を棚卸表に整理しましょう。実地棚卸の具体的な進め方は、決算期の在庫実地棚卸の実務でくわしく紹介しています。また、仕入れの単価や日付の記録があいまいだと平均法や先入先出法の計算ができず、結局シンプルな方法に頼らざるを得なくなります。普段の記帳と在庫管理をひもづけておくことが、選択肢を広げることにもつながります。
よくある質問
Q. これまで何も届け出ていませんが、今の評価方法は何になりますか?
届出をしていない場合は、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」が適用されています。その年の最後に仕入れた単価で期末在庫を評価する、計算がシンプルな方法です。他の方法のほうが自分の事業に合っていそうなら、届出による変更を検討するとよいでしょう。
Q. 低価法を使えば、必ず節税になりますか?
必ずではありません。低価法が効果を発揮するのは、在庫が値下がりして時価が原価を下回っている場合です。値下がりがなければ原価法と同じ評価額になります。また低価法は青色申告と届出が前提で、すべての事業で有利になるわけではない点に注意しましょう。
Q. 在庫がほとんどないサービス業でも、棚卸しは必要ですか?
販売用の商品や材料の在庫がほとんどないサービス業なら、年末の棚卸資産が少額、またはゼロになることもあり、在庫評価の影響は小さくなります。ただし、消耗品の在庫や、まだ提供していないサービスにかかった費用(仕掛品)などがある場合は計上が必要になることもあるため、一度確認しておくと安心です。
まとめ|評価方法を知れば、在庫が「武器」になる
棚卸資産の評価方法は、原価法と低価法に大きく分かれ、原価法の中にも最終仕入原価法や平均法などの種類があります。届出をしなければ最終仕入原価法になること、低価法には青色申告と届出が必要なこと、一度選んだ方法は継続が原則であること。この3点を押さえれば、自分の事業に合った方法を落ち着いて選べます。
とはいえ、評価方法の比較や届出書の作成、日々の記帳と在庫管理のひもづけまでを本業のかたわらで一人でこなすのは大変です。スタート地点でつまずくと、後から直すのはさらに骨が折れます。
記帳代行の料金・対応範囲:領収書丸投げドットコムの個人事業主向け基本プランは月額6,600円(税込)。仕訳入力から月次試算表の作成まで対応し、領収書の枚数による追加料金はありません。初期費用は0円で、過去分は依頼開始月から申込月までの料金を初回にまとめて請求します。法人、農業・漁業・酪農・畜産業、士業、医師、整骨院は別途お見積もり。確定申告書の作成・提出は月額料金に含まれず、税込55,000円から、税理士との別途契約となります。各プランの料金・初回請求例を確認する。棚卸と記帳の手間をまとめて手放す方法を相談する。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








