飲食店の原価率管理と帳簿|食材ロス・廃棄の経理処理を解説
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税務

飲食店の原価率は、その月の仕入額ではなく「期首在庫+当期仕入−期末在庫」で求めた売上原価から計算します。棚卸しと日々の記帳の進め方、食材ロス・廃棄や自家消費の経理処理まで、個人事業主向けに整理します。
毎日のように仕入れて、調理して、ときには廃棄もする——その流れを「原価率」という数字でとらえ、帳簿に正しく落とし込むのは意外と手間がかかります。仕入額をそのまま原価と考えてしまい、正確な利益がつかめていない飲食店の方は少なくありません。まずは原価率の基本から確認しましょう。
☑ 食材の仕入はしているのに、原価率が高いのか低いのかよくわからない
☑ 売れ残りや廃棄した食材を、帳簿でどう処理すればいいのか迷っている
☑ 月末に在庫を数えるべきと聞くけれど、面倒で結局やっていない
以下では、飲食店の原価率の基本的な考え方から、月末の棚卸しと売上原価の計算、そして食材ロスや廃棄が出たときの経理処理までを、個人事業主の方向けに具体的に見ていきます。自分の店の原価をどう管理し、どう帳簿に記録すればよいかの全体像がつかめます。
飲食店の原価率とは?まず基本の考え方を整理しましょう
原価率の意味と計算式
原価率とは、売上に対して食材などの原価がどれくらいの割合を占めるかを示す数字です。計算式は原価率(%)=売上原価 ÷ 売上高 × 100で求めます。たとえば月の売上が200万円で、その月にかかった食材の原価が60万円なら、原価率は30%ということになります。
一般的に、飲食業態によって目安となる原価率は異なります。あくまで目安ですが、居酒屋や定食店で30%前後、原価のかかる業態ではもう少し高くなる傾向があると言われます。自分の店の原価率が高いのか低いのかは、同業態のおおまかな水準と、過去の自店の数字を比べて判断していくのが現実的です。
「仕入=原価」ではない点に注意
原価率を考えるうえでよくある誤解が、その月に仕入れた金額をそのまま原価として扱ってしまうことです。月末に食材が在庫として残っていれば、その分はまだ「使っていない」ため、当月の原価には含めません。逆に、前月から繰り越した在庫を当月に使った分は原価に加わります。つまり、正しい原価は仕入金額だけでは決まらず、在庫の増減を反映させる必要があるのです。
原価率を管理する目的
メニューごとの利益が取れているかを把握する
仕入価格の高騰に気づき、値付けの見直しにつなげる
ロスや廃棄、まかないの食べ過ぎなど「数字に表れにくい流出」を発見する
原価率は単なる経理上の数字ではなく、店の利益体質を映す鏡です。毎月の数字を追いかけることで、どんぶり勘定では見えなかった問題点に早く気づけるようになります。
正しい原価を出すための「棚卸し」の進め方
棚卸しはなぜ必要なのか
棚卸しとは、月末や年末などの時点で、店に残っている食材や飲料の在庫を数えて金額に換算する作業です。前述のとおり、正しい売上原価を計算するには在庫の金額が欠かせません。売上原価=期首在庫+当期仕入−期末在庫という式で求めるため、期末の在庫金額がわからないと原価が確定しないのです。
確定申告の場面でも、年末(12月31日時点)の棚卸しは欠かせません。在庫を計上しないと、その年の所得が実態より小さく(または大きく)出てしまい、正しい申告になりません。個人事業主の記帳・帳簿保存の一般的なルールは国税庁タックスアンサーNo.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度でも確認できます。面倒に感じても、少なくとも年に一度は必ず行う必要がある作業です。
棚卸しの具体的な手順
冷蔵庫・冷凍庫・倉庫など、保管場所ごとに残っている食材を数える
未開封の調味料や飲料、米や乾物などの常温在庫も忘れず数える
数量に仕入単価をかけて在庫金額を算出する
飲食店では生鮮食材が多く、一品ずつ厳密に数えるのは大変です。すべてを完璧にやろうとすると続かないため、金額の大きい肉・魚・酒類などを中心に押さえ、少額の調味料などはある程度まとめて見積もる、といった現実的な運用でも構いません。大切なのは、毎回同じ基準で数え続けることです。
在庫の評価方法
在庫の金額をいくらで評価するかにはいくつかの方法がありますが、個人事業主の場合は最後に仕入れた単価で計算する「最終仕入原価法」が一般的でわかりやすい方法です。届出をしなければ原則としてこの方法になります。期末に残っている食材を、直近で仕入れた値段で評価すればよいので、特別な計算をしなくても対応できます。
食材ロス・廃棄が出たときの経理処理
廃棄しても基本的に経費から外す必要はない
傷んでしまった野菜や、消費期限を過ぎた食材を廃棄することは、飲食店ではどうしても発生します。ここで安心していただきたいのは、事業のために仕入れた食材を廃棄した場合、その仕入は基本的にそのまま経費(売上原価)として扱えるという点です。廃棄したからといって、わざわざ経費から差し引く処理は必要ありません。売上原価が必要経費に含まれる考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2210 必要経費の知識も参考になります。
仕組みとしては、仕入れた食材のうち期末に在庫として残っていないものは、売れたか廃棄したかにかかわらず、すべて当期の売上原価に含まれます。つまり廃棄分は、在庫として残さないことで自動的に原価へ反映される、というイメージです。
記録として「廃棄ロス」を残す意味
税務上は特別な仕訳が不要でも、どれだけ廃棄が出ているかを自分で記録しておくことには大きな意味があります。廃棄が多ければそれだけ利益を圧迫しているわけですから、経営改善のヒントになります。日付・廃棄した食材・おおよその金額をメモしておくだけでも、後から「先月はロスが多かった」と振り返ることができます。
また、廃棄が異常に多い時期があると、原価率だけを見て「仕入が高すぎる」と誤った判断をしかねません。廃棄の記録があれば、原価率が上がった原因がロスにあるのか、仕入単価の上昇にあるのかを切り分けられます。
まかない・自家消費の扱い
従業員に出すまかないや、店主自身が食べた分の食材も、原価管理では見落とせないポイントです。仕入れた食材を事業主自身が私的に消費した場合は「家事消費(自家消費)」として、一定の金額を収入に計上する考え方があります。少額であっても、事業用と私用の食材が混ざりやすい飲食店では、線引きを意識しておくとよいでしょう。判断に迷うときは、専門家に相談すると安心です。
日々の帳簿づけと科目の使い方
食材の仕入は仕入高、店で使う消耗品は消耗品費と、科目を分けて日々こまめに記帳するのが原価管理の近道です。仕込みと営業に追われて記帳まで手が回らない場合は、飲食店向けの記帳・確定申告サポートを活用する方法もあります。
食材仕入に使う勘定科目
食材や飲料など、商品として提供するために仕入れたものは「仕入高(仕入)」の科目で記帳します。一方で、店で使う割り箸・おしぼり・洗剤・調理用の消耗品などは仕入ではなく「消耗品費」などで処理します。お客様に提供するものは仕入、店の運営で使うものは経費と覚えておくと、科目の振り分けに迷いにくくなります。科目選びで迷いやすいポイントは正しい勘定科目の選び方にまとめています。
こまめに記帳することが原価管理の近道
原価率を月単位で把握するには、仕入の記帳が日々たまっていないことが前提です。領収書や納品書を月末にまとめて入力しようとすると、量が多くて後回しになりがちで、結局は「どんぶり勘定」に戻ってしまいます。レジの売上と仕入の記録をこまめに残しておけば、月末の棚卸しと組み合わせるだけで原価率がすぐに計算できます。同じ店舗型の事業でも記帳の勘所は業種で変わり、材料費や前受金の扱いはエステサロンの記帳|回数券・前受金と材料費も参考になります。
現金商売だからこそ証拠書類を大切に
市場や業者からの仕入は、納品書・請求書・領収書を必ず保管する
現金で支払った少額の仕入も、メモやレシートを残す
クレジットカードや電子マネーで支払った分は、明細も合わせて保管する
飲食店は現金のやり取りが多い業種です。証拠書類が不足していると、経費として認められにくくなったり、後から数字が合わなくなったりする原因になります。仕入に関する書類は、種類を問わず残しておく習慣をつけましょう。紙のレシートをスマホで撮って残す運用はスマホ撮影した領収書の電子帳簿保存法対応で解説しています。
原価率が悪化したときの見直しポイント
まず原因を切り分ける
原価率が上がったと感じたら、いきなりメニューの値上げを考える前に、原因を切り分けることが大切です。仕入単価そのものが上がっているのか、廃棄ロスが増えているのか、まかないや過剰な盛り付けで使う量が増えているのか。原因によって打つべき手はまったく違います。日々の記帳と廃棄の記録があれば、この切り分けがぐっとやりやすくなります。
無理な原価削減のリスク
原価率を下げようとして、食材の質を落としすぎたり、量を減らしすぎたりすると、かえってお客様が離れてしまうこともあります。原価率は低ければよいというものではなく、満足度と利益のバランスの中で適正な水準を探ることが重要です。数字を追うあまり、店の魅力そのものを損なわないよう気をつけましょう。
よくある質問
Q. 廃棄した食材は、経費としてもう一度差し引く処理が必要ですか?
原則として、特別な差し引き処理は必要ありません。事業のために仕入れた食材は「仕入高」として経費に計上されており、廃棄したものは期末在庫に含めないことで自動的に当期の売上原価へ反映されます。二重に処理する必要はありませんが、どれだけ廃棄したかを自分用の記録として残しておくと、経営の改善に役立ちます。
Q. 棚卸しは毎月やらないといけませんか?
税務上、必ず行う必要があるのは年末(12月31日時点)など、その年の所得を確定させるタイミングです。毎月の棚卸しは義務ではありませんが、月ごとの原価率を正確に把握したい場合は、月末にも行うのが理想です。毎月が難しければ、まずは年に一度の棚卸しを確実に行い、慣れてきたら頻度を上げていくとよいでしょう。
Q. 仕入が多い月は、その分だけ経費が増えて節税になりますか?
必ずしもそうとは限りません。月末や年末に在庫として残った食材は当期の経費にならず、翌期に繰り越されます。決算前にたくさん仕入れても、使い切れずに在庫として残れば、その年の所得は減りません。在庫の評価を正しく行うことが、適正な所得計算につながります。
まとめ|原価率は「在庫」と「記録」で正しくつかめる
飲食店の原価率は、その月に仕入れた金額ではなく、期首在庫に当期仕入を足して期末在庫を差し引いた「売上原価」をもとに計算します。だからこそ、定期的な棚卸しと日々のこまめな記帳が欠かせません。廃棄やロスは特別な仕訳こそ不要ですが、自分で記録を残しておくことで、原価率悪化の原因を切り分け、経営改善につなげることができます。
とはいえ、毎日の仕込みと営業で手一杯の中、仕入の記帳から棚卸し、確定申告までをすべて一人でこなすのは大きな負担です。記帳が後回しになり、気づけば原価率もよくわからないまま、という状態に陥っている飲食店の方は少なくありません。記帳代行の現場でも、レシートの束をお預かりして月次の数字を立て直すご相談は多くいただきます。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








