スマホ撮影した領収書の電子帳簿保存法対応の運用ルールを解説
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税務

スマホで撮影した紙の領収書は、読み取り品質・改ざん防止・検索できる状態の要件を満たせば、電子帳簿保存法に沿って保存し、原本を処分できます。ひとり事業でも回せる現実的な運用ルールを、具体的にまとめました。
「紙の山に悩まされずに済むのに」と感じつつ、電子帳簿保存法という言葉が出たとたんに手が止まる方は多いものです。要件は難しく見えても、押さえどころは3つに絞れます。撮影から保存、原本の扱いまでの一連の流れを、順に見ていきましょう。
☑ 紙の領収書をスマホで撮影して捨ててもよいのか、ルールがよくわからない
☑ スキャナ保存に必要な「タイムスタンプ」や「検索条件」と言われてもピンとこない
☑ 自分ひとりの事業で、どこまで厳密に対応すればよいのか判断がつかない
領収書をスマホで撮影してデータで残せたら、紙の山に悩まされずに済むのに……と感じている個人事業主やフリーランスの方は多いのではないでしょうか。ところが「電子帳簿保存法」という言葉が出てきたとたん、要件が難しそうで手が止まってしまう、というのもよくある声です。
ここからは、紙の領収書をスマホで撮影してデータ保存する「スキャナ保存」について、満たすべき要件と、ひとり事業でも回せる現実的な運用ルールを見ていきます。撮影から保存、原本の取り扱いまでの一連の流れをイメージできるように整理します。
スマホ撮影による領収書保存の全体像をつかみましょう
「スキャナ保存」と「電子取引」はまず分けて考える
電子帳簿保存法では、書類の保存方法がいくつかの種類に分かれています。混乱しないために、まずは紙でもらった領収書をスマホやスキャナでデータ化する「スキャナ保存」と、最初からデータで受け取った領収書(メール添付のPDFやネット通販の電子領収書など)の「電子取引」の2つを分けて考えるのがコツです。スキャナ保存の全体的な手順は紙の領収書をスキャナ保存に切り替える手順と要件に、電子取引の扱いは電子取引データの保存要件にまとめています。
この記事のテーマである「スマホ撮影」は、紙の領収書をデータにする行為なので、原則として前者のスキャナ保存にあたります。スキャナ保存は、要件を満たせば撮影後に紙の原本を処分できる点が大きな特長です。一方で電子取引のデータは、そもそも紙に印刷して保存する形では原則認められず、データのまま一定のルールで残す必要があります。
スキャナ保存は「やってもよい」制度
大切な前提として、紙の領収書のスキャナ保存は「必ずやらなければならない」ものではありません。紙のまま保管し続けるのも引き続き認められています。スキャナ保存は、紙を減らして保管スペースや探す手間を軽くしたい人が、要件を満たしたうえで選べる仕組みだと考えてください。
つまり「スマホ撮影でデータ化したい」と思ったときに初めて、これから説明する要件が関係してきます。義務だからと身構える必要はなく、自分の業務を楽にするために制度を使う、という気持ちで読み進めていただければ十分です。
対象になる書類のイメージ
取引先や店舗から紙で受け取った領収書・レシート
紙で届いた請求書・納品書などの取引関係書類
経費精算のもとになる紙の支払い証ひょう類
日々の経費に関わる紙の証ひょうの多くが、スキャナ保存の対象になりえます。まずは「枚数が多くて困っているものから試す」という発想で構いません。仕入や在庫でレシートが大量に出る事業では、記帳の仕組みもあわせて整えたいところです。たとえばせどり・転売の記帳のように台帳の付け方まで決めておくと、撮影したあとの処理も回しやすくなります。
スマホ撮影で満たすべき主な要件
読み取りの品質(解像度・カラー)
スキャナ保存では、撮影したデータが後から見て内容をきちんと確認できることが求められます。具体的には、一定の解像度を確保し、原則としてカラーで読み取ることが要件とされています。スマホのカメラは十分な画素数を備えているものが多いため、ピントを合わせ、影や手ぶれを避けて撮れば、品質面は実務上クリアしやすいといえます。
撮影時は、領収書の四隅まで写し、金額・日付・取引先名・但し書きといった重要な項目が欠けたり、つぶれて読めなくなったりしていないかを必ず確認しましょう。折れ曲がりやレシートの感熱紙の薄れにも注意が必要です。
タイムスタンプ、または訂正・削除の記録が残るしくみ
スキャナ保存で要となるのが「いつ保存され、その後に改ざんされていないか」を担保するしくみです。代表的なのがタイムスタンプの付与ですが、近年は訂正や削除の履歴が記録される(または訂正・削除ができない)クラウドサービス等にデータを保存する方法でも要件を満たせるようになっています。
個人事業主やフリーランスの方の場合、自前でタイムスタンプの仕組みを用意するのは負担が大きいため、こうした履歴管理ができる会計ソフトや経費保存サービスを利用するのが現実的です。サービス側が要件に対応しているかどうかを、導入前に確認しておくと安心です。
速やかに行う「入力期間」の目安
撮影してデータ化する作業は、いつまでも先延ばしにしてよいわけではなく、おおむね「速やかに」あるいは業務の処理サイクルに合わせた一定期間内に行うことが求められます。受け取った領収書をため込まず、こまめに撮影して取り込む運用が、結果的に要件を満たしやすくします。
細かい日数の基準は制度の運用によって整理されているため、迷ったときは「もらったらすぐ撮る」を基本にし、遅くとも月内のうちに処理を終えるくらいのペースを目安にしておくと、大きく外すことはありません。
「検索できる状態」で保存するための実務
そろえておきたい3つの検索項目
スキャナ保存したデータは、必要なときにすぐ取り出せるよう「検索できる状態」で保存することが求められます。基本となるのは次の3つの項目です。
取引年月日(領収書の日付)
取引金額
取引先(相手先の名称)
これらで検索できるようにしておくのが原則です。会計ソフトや専用サービスを使えば、撮影時に金額や日付、取引先を入力・登録することで、自動的に検索条件として整理されるものが多く、実務の負担を大きく減らせます。こうして残した領収書は、確定申告で経費を証明する根拠にもなります。確定申告そのものの概要は国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」で確認できます。
ソフトを使わない場合のファイル名の工夫
専用サービスを使わず、撮影画像をフォルダに保存して管理する場合は、ファイル名の付け方で検索性を確保する方法があります。たとえば「日付・取引先・金額」をファイル名に含める形にしておくと、後から探しやすくなります。
具体的には「20XX年X月X日_〇〇商店_1100円」のように、日付・相手先・金額をそろえた命名ルールを決めておくと、一覧で並べたときに見つけやすく、規則性も保てます。あわせて、年度ごとや月ごとにフォルダを分けておくと、量が増えても破綻しにくくなります。
保存先のバックアップも忘れずに
データ保存はスペースを取らない反面、機器の故障やうっかり削除によって失われるリスクがあります。スマホ本体だけに残すのではなく、クラウドや外付けの保存先にもバックアップを取り、二重で守っておくと安心です。保存したつもりが消えていた、という事態を防ぐことが、長く続けるうえで何より大切です。
ひとり事業でも回る運用ルールの作り方
「撮る・登録する・残す」を習慣化する
制度の要件を一度に完璧にこなそうとすると、かえって続きません。おすすめは、受け取ったらその場で撮影し、ソフトに登録し、決めた場所に残すという3ステップを、毎日の小さな習慣にしてしまうことです。財布やカバンに紙をため込まないことが、結果として要件を満たす近道になります。撮影も登録も記帳もまとめて外に任せたいなら、記帳代行という選択肢もあります。
たとえば「外出から戻ったら、その日の領収書をまとめて撮影する」「経費を使ったらレジを離れる前に撮る」といった、自分なりのタイミングを決めておくと、撮り忘れや先延ばしを防げます。
事務処理のルールを簡単に書き出しておく
スキャナ保存を行う際は、どのような手順でデータ化し、誰が(ひとり事業なら自分が)どう管理するかといった事務処理のルールを整えておくことが望まれます。難しく考える必要はなく、「いつ撮るか」「どのソフトに入れるか」「どこに保存するか」「原本はいつ処分するか」を、メモ程度でよいので書き出しておくと運用が安定します。
ルールを文章にしておくと、繁忙期に手順があいまいになるのを防げますし、後から見返したときに自分の運用を確認できます。一度作れば毎年使い回せるので、最初に少し手間をかける価値があります。
原本(紙)の取り扱いを決めておく
要件を満たしてスキャナ保存をすれば、紙の原本は処分してよいことになっています。ただし、撮影直後にすぐ捨てるのではなく、データがきちんと保存・登録され、内容が読み取れることを確認してから処分する運用にすると安全です。心配な方は、年度が確定するまで一定期間まとめて保管し、問題がないと確認できた段階で処分する、という流れにしてもよいでしょう。
よくある質問
Q. スマホで撮影した後、紙の領収書はすぐ捨ててもよいですか?
スキャナ保存の要件を満たして保存できていれば、紙の原本を処分すること自体は認められています。ただし安全のためには、撮影データが鮮明に保存され、検索できる状態で登録できていることを確認してから処分するのがおすすめです。確認前に捨ててしまうと、撮り直しができなくなる点に注意しましょう。
Q. メールで届いたPDFの領収書も、同じスキャナ保存のルールですか?
いいえ、扱いが異なります。最初からデータで受け取った領収書は「電子取引」にあたり、原則としてデータのまま保存する必要があります。紙に印刷して保存する形は原則認められないため、スマホ撮影とは別のルールとして整理しておきましょう。電子取引のデータにも、改ざん防止と検索できる状態での保存が求められます。
Q. 専用ソフトを使わず、スマホのカメラだけで対応できますか?
カメラで撮影すること自体はできますが、改ざん防止のしくみや検索できる状態での保存といった要件まで自力でそろえるのは負担が大きいのが実情です。履歴管理や検索に対応した会計ソフト・経費保存サービスを使うほうが、結果的に要件を満たしやすく、手間も少なく済みます。
スマホ保存で迷ったときの結論
紙の領収書のスマホ撮影による保存は、読み取り品質を確保し、改ざん防止のしくみを使い、取引年月日・金額・取引先で検索できる状態で残す、という要点を押さえれば決して難しいものではありません。「もらったらすぐ撮る」を習慣化し、簡単な運用ルールを書き出しておくことが、ひとり事業でも無理なく続けるコツです。
とはいえ、本業が忙しい中で、撮影から登録、保存、原本の管理までを毎日きちんと回し、記帳から確定申告まで自分で行うのは、決して軽い仕事ではありません。要件を気にしながらの作業がストレスになり、後回しになってしまうこともあるでしょう。記帳代行の現場でも「撮ったはよいが、そこから先が進まない」というご相談は少なくありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








