開業費とは?開業前の支出を経費にする方法と償却の仕組みを解説
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税務

開業費とは、開業前に事業のために使った費用を、あとから経費にできる仕組みです。名刺やチラシ、市場調査の交通費なども対象になり、償却のタイミングは自分で選べます。含められる支出と含められない支出、償却の考え方をまとめました。
事業を始めるにあたっては、開業の準備段階でさまざまな出費が発生します。名刺やパソコンの購入、市場調査のための交通費、開業に向けた打ち合わせの飲食代など、「これは経費にできるのだろうか」と迷う支出は意外と多いものです。とくに開業前は事業用の通帳もまだ整っておらず、個人のお金から立て替えていることがほとんどですから、後から不安になる方は少なくありません。
☑ 開業する前に使ったお金は経費にできるのか分からない
☑ 「開業費」という言葉は聞いたことがあるが、何が含まれるのか自信がない
☑ 開業前のレシートをどう処理すればいいのか悩んでいる
開業費とは何か
開業費とは、事業を開始するまでの準備期間に、開業のために特別に支出した費用のことをいいます。会計上は「繰延資産」という分類に整理され、一度資産として計上したうえで、後から経費に振り替えていく性質を持っています。経費そのものの考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」(国税庁)で確認できます。
開業前に使ったお金もあとから経費にできる
開業日より前に支払った費用であっても、その事業を始めるために必要だった支出であれば、開業費として計上することが認められています。「開業してからの領収書しか使えない」と思い込んでいる方が多いのですが、実際には開業準備のための出費もしっかり活用できます。
いつまでさかのぼれるのか
開業費としてさかのぼれる期間について、法律上「何年前まで」という明確な上限が一律に定められているわけではありません。ただし、あくまで「その事業を始めるために要した費用」である必要があり、開業との関連性が説明できることが前提です。何年も前の支出を無理に含めるのではなく、開業準備として合理的に説明できる範囲にとどめるのが安心です。
開業費に含められる支出・含められない支出
開業費として扱える支出には一定の考え方があります。すべての出費が対象になるわけではないため、線引きを押さえておきましょう。
開業費に含められる主な支出
開業前の打ち合わせや市場調査にかかった飲食代・交通費
名刺やチラシ、ロゴ作成などの費用
事業に関する書籍やセミナーの参加費
開業前に契約した事務所の関連費用
挨拶回りにかかった手土産代など
開業前に契約した事務所の家賃や礼金などは、科目の選び方に迷いやすいところです。地代家賃・賃借料・支払手数料の使い分けは、レンタルやリースの科目の解説で整理しています。
開業費に含められない支出
一方で、次のようなものは開業費には含めません。性質が異なるため、別の科目で処理する点に注意が必要です。
10万円以上のパソコンや車などの固定資産(減価償却の対象になります)
商品の仕入れにかかった費用(売上原価として扱います)
敷金など、後から返ってくる性質のお金
とくに高額な備品は、開業費ではなく固定資産として別に扱う点が見落とされがちです。判断に迷う場合は、購入したものが「使うとなくなる消耗的なもの」か「長く使う財産」かを基準に考えると整理しやすくなります。
開業費の償却の仕組み
開業費は、計上したその年に全額を経費にするのではなく、複数年にわたって少しずつ経費化していくことができます。この経費化の作業を「償却」と呼びます。
好きなタイミングで経費にできる柔軟さ
開業費の大きな特徴は、償却のタイミングを自分で選べる点にあります。原則として、開業費は任意のタイミングで好きな金額だけ経費に振り替えることができます。つまり、利益が大きく出た年にまとめて経費化し、その年の所得を抑えるといった調整が可能です。
初年度に赤字でも繰り越せる
開業初年度は売上が安定せず、赤字になることも珍しくありません。そうした年に無理して開業費を全額経費にしても、効果は限定的です。償却のタイミングを選べる仕組みを活かせば、利益が出た年まで取っておき、そこで経費化することができます。こうした柔軟さは、開業費ならではのメリットといえます。
開業費を正しく計上するためのポイント
制度を活用するには、日頃の記録が欠かせません。後から「証拠がない」と困らないよう、準備段階から意識しておきましょう。開業費の整理や日々の記帳をまとめて任せたい場合は、記帳代行というやり方で早めに仕組みを整えておくと安心です。
領収書やレシートはすべて保管する
開業前であっても、事業に関係しそうな支出の領収書やレシートは捨てずに保管しておくことが大切です。「開業前だから関係ない」と処分してしまうと、後から開業費として計上したくてもできなくなってしまいます。ネットで注文したときのメール添付の領収書などは、電子取引データの保存要件にそって残しておく必要があります。紙のレシートをデータで残す場合は、スキャナ保存に切り替える手順も参考になります。
何のための支出かをメモしておく
時間が経つと、その出費が何のためのものだったか思い出せなくなります。領収書の余白や手帳に「○○の市場調査」「開業準備の打ち合わせ」などと一言添えておくと、後の整理がぐっと楽になります。
事業との関連性を説明できるようにする
開業費として認められるかどうかは、その支出が事業の準備に必要だったかどうかにかかっています。プライベートな出費と区別し、事業との関連性を自分の言葉で説明できる状態にしておくと安心です。
開業費と混同しやすい費用
開業の準備段階では、開業費とよく似ているけれど扱いが異なる費用がいくつかあります。混同すると処理を誤りやすいので、代表的なものを整理しておきましょう。
固定資産との違い
開業のためにパソコンや車、応接セットなどを購入することもありますが、一定金額以上の高額なものは「固定資産」として扱い、使用できる年数に応じて少しずつ経費にしていきます。これを減価償却といい、その基本は国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」(国税庁)で確認できます。開業費が消耗的な準備費用をまとめたものであるのに対し、固定資産は長く使う財産である点が大きな違いです。両者は分けて記録しておきましょう。
仕入れや在庫との違い
販売するための商品を開業前に仕入れた場合、その費用は開業費ではなく、商品が売れたときに対応する「売上原価」として扱います。開業前に用意した在庫があるときは、開業費にまぜず、商品としての記録を別に残しておくことが大切です。何を販売するための支出なのかを意識すると、判断に迷いにくくなります。
毎月発生する固定的な費用との違い
家賃や通信費のように、開業後も毎月継続して発生する費用は、開業費というより通常の経費に近い性質を持ちます。自宅を仕事場にする場合、家賃や光熱費のうち事業で使った割合だけを経費にする家事按分の考え方が必要で、詳しくは家事按分のやり方総まとめで整理しています。開業前にまとめて支払った分があるときは、どこまでが準備のための支出かを意識して整理すると、後の処理がスムーズになります。
よくある質問
Q. 開業届を出す前の支出も開業費にできますか?
はい、開業届の提出日より前の支出であっても、その事業を始めるために必要だった費用であれば開業費として計上できます。開業費は「開業日より前」の準備費用を対象とするものなので、届出のタイミングそのものが基準になるわけではありません。事業との関連性を説明できる支出であることが大切です。
Q. 開業費はその年に全額経費にしなければいけませんか?
いいえ、その必要はありません。開業費は任意のタイミングで好きな金額だけ経費に振り替えられる繰延資産です。利益が少ない年は償却を見送り、利益が出た年にまとめて経費化するといった調整ができます。ご自身の事業の状況に合わせて活用してください。
Q. 開業費に上限金額はありますか?
開業費そのものに一律の上限金額が定められているわけではありません。ただし、あくまで開業準備に必要だった費用であることが前提となり、事業と無関係な支出を含めることはできません。なお、高額な固定資産は開業費ではなく別の処理になる点にも注意が必要です。最新の取り扱いは国税庁サイト等でご確認ください。
今日から始める開業費の管理
開業費は、事業を始める前に使ったお金を後から経費にできる、開業者にとって心強い仕組みです。名刺やチラシ、市場調査の交通費、打ち合わせの飲食代など、対象になる支出は思いのほか幅広く、知っているかどうかで申告の内容が変わってきます。ポイントは、開業前から領収書やレシートをきちんと保管し、何のための支出かを記録しておくこと、そして償却のタイミングを上手に選ぶことです。柔軟に経費化できる仕組みを活かせば、利益が出た年の負担をやわらげることにもつながります。準備段階の一手間が、開業後の安心につながります。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








