開業届の出し方と確定申告の関係をやさしく解説
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確定申告

開業届は、個人で事業を始めたことを税務署に伝える「個人事業の開業・廃業等届出書」で、原則として開業から1か月以内に提出します。確定申告とセットで役割を押さえれば、いつ何をすればよいかが一度で整理でき、青色申告のメリットも取りこぼしません。
個人で仕事を始めたとき、多くの方が最初に迷うのが開業届です。名前は聞いたことがあっても、いつ出すのか、何を書くのか、出さないと罰則があるのかがはっきりしないまま時間が過ぎてしまうこともあります。「開業届と確定申告は別物なのか、それとも一緒に考えるものなのか」という声も多く寄せられます。まずは全体像から順に整理していきましょう。
☑ 開業届って出さないといけないの?出さないとどうなるのか不安
☑ いつ・どこに・どうやって出すのか、書き方がよくわからない
☑ 開業届と確定申告がどう関係しているのか整理したい
開業届とは何か、なぜ出すのか
開業届は、個人で事業を始めたことを税務署に知らせるための届出です。提出によって「個人事業を営んでいる人」として認識され、その後の確定申告などの案内が届くようになります。まずは役割・提出時期・罰則の有無を押さえましょう。
開業届の正式名称と役割
開業届の正式な名前は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。個人で事業を始めたことを税務署に知らせるための書類で、「私はこの日からこういう事業を始めました」と申告する役割を持っています。会社をつくらずに個人として仕事をする、いわゆる個人事業主・フリーランスになるときの、いちばん最初の手続きと考えるとわかりやすいでしょう。
この届出を出すことで、税務署側に「個人事業を営んでいる人」として認識され、その後の確定申告などの案内が届くようになります。つまり開業届は、事業者としてのスタートラインに立つための書類だといえます。
提出は原則として開業から1か月以内
開業届は、事業を始めた日(開業日)から原則として1か月以内に提出することとされています。「1か月を過ぎたら受け付けてもらえないの?」と心配される方もいますが、期限を過ぎても提出自体は受け付けてもらえるのが一般的です。出していなかったことに気づいた時点で、早めに提出すれば問題ないケースがほとんどです。
とはいえ、後述する青色申告などのメリットを受けたい場合は提出のタイミングが重要になります。事業を始めたら、なるべく早めに手続きを済ませておくのが安心です。
出さないと罰則はあるのか
開業届を出さなかったこと自体に対して、罰金などの直接的な罰則が設けられているわけではありません。ここは誤解されやすいポイントです。ただし「罰則がない=出さなくてよい」という意味ではありません。開業届を出していないと、後述する青色申告が使えなかったり、屋号での銀行口座が開設しづらかったりと、実務上の不便が生じることがあります。事業として継続していくなら、提出しておくのが基本だと考えておきましょう。
開業届の出し方と書き方のポイント
提出先は納税地を管轄する税務署で、窓口・郵送・e-Taxの3通りで出せます。記入項目は自分の情報が中心で、難しい計算はありません。青色申告承認申請書を同時に出しておくのがおすすめです。
提出先と提出方法
開業届の提出先は、自分の住んでいる場所(納税地)を管轄する税務署です。どの税務署が管轄かわからない場合は、国税庁のサイトで郵便番号や住所から調べられます。提出方法は主に次の3つがあります。
税務署の窓口に直接持っていく
税務署あてに郵送する
e-Tax(電子申請)でオンライン提出する
用紙は税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のサイトからダウンロードもできます。控え(自分の手元に残す分)も用意し、窓口や郵送で提出する場合は控えにも受付印をもらっておくと、後々の証明に役立ちます。郵送の場合は、控えと返信用封筒(切手を貼ったもの)を同封しておくと、押印した控えを返してもらえます。なお、引っ越しや二拠点生活で住まいが変わるときの納税地の考え方は、地方移住・二拠点生活を始めた個人事業主の確定申告でも触れています。
記入する主な項目
開業届に書く内容は、難しい計算などはなく、自分の情報を埋めていく形です。主な記入項目は次のとおりです。
納税地(自宅の住所など)・氏名・生年月日・マイナンバー
職業と事業の概要(どんな仕事をするのか)
屋号(お店や事業の名前。なければ空欄でも可)
届出の区分(開業)と開業日
「所得の種類」(多くは事業所得)
職業欄や事業の概要は、できるだけ具体的に書くと分かりやすくなります。たとえば「ライター業」「Webデザイン業」「飲食店経営」のように、何をして収入を得るのかが伝わる表現にしておきましょう。屋号は必須ではありませんが、決めておくと請求書や名刺、屋号付きの銀行口座づくりに役立ちます。複数の店舗や屋号で事業を分けていく予定がある方は、帳簿の分け方をあらかじめ考えておくと後がラクです。詳しい整理のしかたは複数の屋号・複数店舗を持つ個人事業主の確定申告が参考になります。
青色申告承認申請書も一緒に出すのがおすすめ
開業届とセットで覚えておきたいのが「所得税の青色申告承認申請書」です。これは、確定申告のときに青色申告という方法を選ぶための申請書で、提出しておくと青色申告特別控除(最大65万円)などのメリットを受けられます。青色申告をしたい場合は、原則として開業から2か月以内(その年の1月15日以前に開業しているときはその年の3月15日まで)に提出する必要があります。青色申告制度の要件は、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。
開業届と青色申告承認申請書は同時に提出できるため、せっかく税務署に行く(または郵送する)なら、まとめて出してしまうのが効率的です。タイミングを逃すとその年は青色申告が使えなくなることもあるため、最初にまとめて手続きしておくと安心です。
開業届と確定申告はどうつながっているのか
開業届は事業者としての「入口」、確定申告は毎年の「収支の精算」という関係です。開業届を出すこと自体で税金が発生するわけではなく、税額が決まるのは確定申告のときです。
開業届は「入口」、確定申告は「毎年の精算」
開業届と確定申告は、別々の手続きですが、深くつながっています。イメージとしては、開業届が事業者としての「入口」、確定申告が毎年行う「収支の精算」です。開業届を出して事業をスタートし、その年の1月1日から12月31日までの所得をまとめて、翌年の確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)に申告・納税する、という流れになります。確定申告の基本的なしくみは、国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」で確認できます。
開業届を出すこと自体で税金が発生するわけではありません。実際に税額が決まるのは確定申告のときです。開業届はあくまで「事業を始めた」という届出であり、税金の計算は1年間の活動を集計してから行う、と整理しておきましょう。
開業届を出していなくても確定申告は必要
ここはとても大切なポイントです。「開業届を出していないから確定申告もしなくていい」という考えは誤りです。確定申告が必要かどうかは、開業届の有無ではなく、実際に得た所得の金額などで判断されます。一般に、事業による所得があり一定額を超えれば、開業届を出していなくても確定申告と納税の義務は生じます。
つまり、開業届と確定申告は連動して案内が来る関係ではあるものの、確定申告の義務そのものは「収入・所得が一定額あるか」で決まる、と理解しておくことが重要です。夫婦がそれぞれ事業主として申告する場合の考え方は、夫婦ともに個人事業主の確定申告で整理しています。
開業届を出すことで広がる確定申告の選択肢
開業届(と青色申告承認申請書)を出しておくと、確定申告のときに選べる方法が広がります。青色申告を選べば、次のようなメリットを受けやすくなります。
青色申告特別控除(最大65万円)で課税対象となる所得を抑えられる
赤字が出た年の損失を一定期間くりこせる(繰越控除)
家族へ支払う給与を経費にできる(青色事業専従者給与)など
これらは、開業届と青色申告の申請を出していることが前提になります。届出を出すか出さないかで、確定申告での節税の幅が変わってくるわけです。家族で一つの事業を営み、誰が申告するかで迷う場合は、家族で一つの事業を営むときの確定申告で分担の考え方を確認できます。
開業届を出すと変わること・気をつけたいこと
控えを持っておくと屋号付き口座や各種申請がしやすくなる一方、扶養や社会保険の取り扱いに影響が出ることもあります。そして開業日からの帳簿づけが、翌年の申告の土台になります。
屋号付き口座・各種申請がしやすくなる
開業届を出して控えを持っておくと、屋号付きの銀行口座を開設しやすくなったり、事業者向けのサービスや補助金・助成金の申請時に「事業を営んでいる証明」として使えたりすることがあります。事業とプライベートのお金を分ける意味でも、屋号付き口座は記帳をシンプルにしてくれます。
扶養や各種制度との関係は事前に確認を
配偶者の扶養に入りながら仕事をしている方は、開業や収入の増加によって扶養や社会保険の取り扱いに影響が出る場合があります。判断は加入している健康保険や状況によって異なるため、心配な場合は加入先の窓口などに事前に確認しておくと安心です。開業届そのものより、収入や所得の見込みのほうが影響することが多い点も押さえておきましょう。
開業日からの帳簿づけが大切になる
開業届を出して事業をスタートしたら、その日からの収入と経費を記録(記帳)していくことが、確定申告の土台になります。とくに青色申告で65万円の特別控除を受けるには、日々の取引を複式簿記で帳簿につけ、必要な書類を整えておくことが求められます。記帳代行の現場でも、開業直後は事業を軌道に乗せることで頭がいっぱいになり、領収書は箱にためたまま、というご相談を多くいただきます。「届出は出したけれど帳簿はあとでまとめて」とすると、領収書の整理や入力が一気に押し寄せ、申告直前に大きな負担となりがちです。記帳から申告書の作成までまとめて任せたい場合は、確定申告書の作成まで任せる確定申告代行という選択肢もあります。
よくある質問
Q. 開業日はいつにすればいいですか?
開業日は、実際に事業を始めた日を自分で記入します。最初に売上が立った日や、本格的に活動を始めた日などを基準に決める方が多いです。厳密な決まりがあるわけではありませんが、青色申告の申請期限(開業から2か月以内など)は開業日を起点に数えるため、整合性が取れる日を設定しておくと安心です。
Q. 副業でも開業届は必要ですか?
会社員などの本業がある方が副業をする場合、その活動が「事業」といえる規模・継続性かどうかで考え方が変わります。継続的に事業として行うなら開業届を出し、青色申告を選ぶことも可能です。一方で、規模が小さく事業とまでいえない場合は雑所得として申告するケースもあります。判断に迷うときは、収入の状況を整理したうえで税理士などに相談すると安心です。
Q. 開業届を出し忘れていました。今からでも大丈夫ですか?
開業から1か月を過ぎていても、開業届は提出できるのが一般的です。気づいた時点で早めに提出しましょう。ただし青色申告の申請には期限があるため、青色申告を希望する場合はタイミングに注意が必要です。出し忘れに気づいたら、まずは現状を整理して、必要な届出をまとめて提出するのがおすすめです。
まとめ|開業届は事業のスタート、確定申告は毎年の精算
開業届は、個人で事業を始めたことを税務署に知らせる最初の手続きで、原則として開業から1か月以内に管轄の税務署へ提出します。出さなくても直接の罰則はありませんが、青色申告のメリットを受けるためにも、青色申告承認申請書とあわせて早めに提出しておくのが安心です。そして開業届が「入口」、確定申告が「毎年の精算」という関係を押さえておけば、いつ何をすればいいかが見えてきます。確定申告の義務は所得の金額などで決まるため、開業届の有無にかかわらず、一定の所得があれば申告は必要になります。
もっとも、開業届を出した後に待っているのは、開業日からの日々の記帳と、申告に向けた書類づくりです。本業が忙しい中で、領収書の整理から帳簿づけ、確定申告書類の作成までをすべて自分で行うのは、想像以上に大きな負担になりがちです。とくに青色申告で65万円の控除を受けようとすると、複式簿記での記帳が欠かせず、慣れないうちは時間も気力も消耗してしまいます。
開業の手続きが一段落しても、待っているのは開業日からの記帳と申告書づくりです。本業を軌道に乗せたいこの時期ほど、事務作業に時間を奪われるのはもったいないものです。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








