家族で一つの事業を営むときの確定申告|誰が申告するかと分担を解説
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確定申告

家族で一つの事業を営むときは、事業主は原則一人と考え、その人がまとめて申告します。家族の働きには専従者給与や専従者控除という正しい仕組みで報い、配偶者控除との有利不利を家庭全体で見比べるのがポイントです。誰が申告し、どう分担するかを整理します。
夫婦で飲食店、親子で工房、家族総出で農作業——家族で事業を支える家庭は少なくありません。ところが申告となると「誰の名前で出すのか」「家族の給料は経費にできるのか」で手が止まりがちです。所得を勝手に折半できない理由から、順を追って考え方を示していきます。
☑ 夫婦や親子で一緒に店を切り盛りしているが、確定申告は誰の名前で出せばよいのかわからない
☑ 家族に手伝ってもらった分の給料を経費にできるのか、控除とどちらが得なのか判断できない
☑ 二人で働いているのだから所得も半分ずつに分けて申告してよいのか気になっている
夫婦で飲食店を営んでいる、親子で工房を回している、家族総出で農作業をこなしている——このように家族で一つの事業を支えているご家庭は少なくありません。ところが、いざ確定申告となると「誰が申告するのか」「家族の働きをどう扱うのか」で手が止まってしまう方が多いのが実情です。たとえば溶接や鉄工の工房を家族で営むケースでは、溶接工・鉄工所の確定申告のような業種別の解説も、資材仕入や設備の償却を考えるうえで参考になります。
以下では、家族で一つの事業を営むときに、誰が事業主として申告するのか、そして家族の労働や所得をどう分担・整理すればよいのかを解説します。自分の家庭ではどの形が合っているのか、考える手がかりがつかめるようになります。
家族で事業をしていても、申告するのは原則「一人」
事業主は一人に決まる、という考え方
まず押さえておきたいのは、家族で協力して一つの事業を営んでいても、税務上その事業を営んでいる人(事業主)は原則として一人だという点です。二人で同じくらい働いているからといって、所得を自動的に半分ずつに分けて、それぞれが別々に申告できるわけではありません。
誰が事業主になるかは、名前だけで決まるものではなく、その事業の経営方針を実質的に決めているのは誰か、資金や設備の名義は誰か、取引先との契約や責任を負っているのは誰か、といった実態で判断します。屋号のついた口座の名義人や、開業届を出した人が事業主になっているケースが一般的です。
「所得を分ければ税金が安くなる」に注意
所得税は、所得が大きいほど税率が高くなる仕組みです。そのため「二人で分ければ一人あたりの所得が下がって税金が安くなるのでは」と考える方がいますが、実態が伴わないのに形だけ所得を分けて申告することは認められません。あくまで実際に事業を営んでいる人が、その事業から生じた所得をまとめて申告するのが原則です。
家族の働きに対しては、この後に説明する「専従者給与」や「専従者控除」といった、別の正しい仕組みを使って報いる形になります。まずは「事業主は一人」「所得の勝手な折半はできない」という土台を押さえておきましょう。
事業主を誰にするかを決めるときの考え方
実際に経営の中心にいる人を事業主にする
事業主を誰にするかは、家庭の事情や税負担にも関わる大切な選択です。基本は、実際に経営判断をし、事業の責任を負っている人を事業主とします。たとえば、店の方針を決め、仕入れや資金繰りを取り仕切っているのが夫であれば夫が、開業当初から一貫して切り盛りしているのが妻であれば妻が事業主となる、という具合です。
どちらも同じくらい関わっている場合は、次のような点も参考にしながら、無理のない形を選ぶとよいでしょう。
事業用の資産(店舗、設備、車両など)や借入の名義が誰にあるか
取引先や金融機関との契約を主に誰が結んでいるか
他に給与収入などがあり、扶養や社会保険の関係でどちらが有利か
年の途中で事業主を変えるのは慎重に
いったん事業主を決めて申告を続けていると、その後に「やはり配偶者を事業主にしたい」と思っても、単なる節税目的で名義だけを付け替えることは認められにくくなります。事業主を変えるときは、経営の実態そのものが変わったといえる事情が必要です。世代交代で親から子へ事業を引き継ぐような場合は、開業・廃業の届出も含めて、実態に合わせて手続きを進めましょう。
迷ったときは、目先の税額だけで判断せず、数年先の見通しや家族の働き方の変化も踏まえて決めることをおすすめします。
家族への給料は経費にできる?「専従者給与」の仕組み
原則として家族への給料は経費にならない
事業主が生計を同じくする家族に給料を払っても、原則としてその給料は必要経費として認められません。これは、家族への支払いを自由に経費にできてしまうと、所得を実態以上に圧縮できてしまうためです。ただし、一定の要件を満たせば例外的に経費にできる仕組みが用意されています。それが専従者給与と専従者控除です。
青色申告なら「青色事業専従者給与」
青色申告をしている事業主は、生計を同じくする家族に支払った給料を、一定の要件のもとで必要経費にできます。これを青色事業専従者給与といいます。主な要件は次のとおりです。
その家族が、原則としてその年の6か月を超えて事業に専ら従事していること
あらかじめ税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
届け出た金額の範囲内で、仕事の内容や従事の程度に照らして相当な額であること
ここで大切なのは、実際の働きに見合った給料であることです。ほとんど手伝っていないのに高額な給料を設定すると、経費として認められない場合があります。反対に、しっかり働いている家族に相応の給料を払えば、その分だけ事業主の所得が下がり、家族側は給与所得として整理される形になります。青色事業専従者給与の要件は、国税庁タックスアンサーNo.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」で確認できます。
白色申告なら「事業専従者控除」
白色申告の場合は、給料そのものを経費にする形ではなく、事業専従者控除という一定額の控除を受ける形になります。控除できる額には上限があり、配偶者かそれ以外の親族かで金額が変わるほか、事業の所得を専従者の人数に応じて按分した額との、いずれか低い方が上限となります。青色申告のように実際の給与額を自由に設定できるわけではない点が特徴です。専従者給与の記録づけから申告書の作成まで手が回らないときは、確定申告の代行に任せる方法もあります。
家族が事業に深く関わっているご家庭ほど、青色申告に切り替えて青色事業専従者給与を使う方が、結果的に有利になりやすい傾向があります。届出の期限もあるため、早めに検討しておきましょう。
専従者にすると「配偶者控除・扶養控除」はどうなる?
専従者と扶養は「二重取り」できない
家族を専従者にして給与や控除の対象にした場合、その家族について配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除は受けられません。つまり「専従者給与も経費にして、さらに配偶者控除も受ける」という二重の恩恵は認められないということです。どちらを選ぶ方が家庭全体の税負担が軽くなるかを、事前に比べておくことが大切です。配偶者特別控除の要件や控除額は、国税庁タックスアンサーNo.1195「配偶者特別控除」で確認できます。事業所得と給与所得がある世帯の控除配分は、夫婦で事業と給与がある世帯の手取り最適化もあわせて参考になります。
どちらが有利かを考える目安
ざっくりとした考え方としては、家族が事業に本格的に従事していて、相応の給料を払える場合は専従者給与、手伝いが軽く給料も少額にとどまる場合は配偶者控除・扶養控除、と整理すると分かりやすくなります。
家族の労働が事業に不可欠で、月々まとまった額を払っている → 専従者給与を検討
ときどき手伝う程度で、給料を出すほどではない → 配偶者控除・扶養控除を活用
実際には、事業の所得の大きさや家族の他の収入によって有利不利が変わります。専従者給与を高く設定しすぎると家族側の税・社会保険の負担が増えることもあるため、家庭全体で見て判断するのがポイントです。
家族それぞれが別に収入を得ているときの整理
一つの事業を手伝いつつ、別の収入もある場合
家族の一人が事業を手伝いながら、パート勤務や別の副業で自分名義の収入も得ているというケースもあります。この場合、事業から受け取る専従者給与と、外部から得た給与や副業の所得は、それぞれ性質が異なる所得として整理します。専従者になっている家族に他の給与収入もあるときは、合算して申告が必要になることもあるため、収入の種類ごとに分けて把握しておきましょう。
複数の事業を別々に営んでいる場合は別々に申告
「夫は飲食店、妻はネットショップ」というように、家族それぞれが独立した別の事業を営んでいる場合は、話が変わります。これは一つの事業を分担しているのではなく、二つの事業がそれぞれ存在している状態です。この場合は、夫は飲食店の事業主として、妻はネットショップの事業主として、それぞれが自分の事業所得を申告します。どこまでが一つの事業で、どこからが別の事業なのかは、実態に沿って整理することが大切です。夫婦がそれぞれ独立した事業を営む場合の申告と経費配分は、夫婦ともに個人事業主の確定申告と経費配分で詳しく扱っています。
帳簿は「事業ごと・名義ごと」に分けて残す
家族が関わる事業では、お金の流れが家計と混ざりやすく、後から「これは事業の経費か、家庭の支出か」が分からなくなりがちです。事業用の口座やカードを分ける、領収書は事業ごとにまとめる、専従者給与は実際に支払った記録を残す——こうした基本を徹底しておくと、申告のときに慌てずに済みます。誰が何を担当し、どのお金がどの事業のものかを日頃から区別しておくことが、正しい分担申告の土台になります。
よくある質問
Q. 夫婦で働いているので、所得を半分ずつにして二人で申告してもよいですか?
原則として、一つの事業から生じた所得を任意に折半して二人で申告することはできません。事業主は一人と考え、その人がまとめて申告するのが基本です。配偶者の働きに対しては、専従者給与や専従者控除といった正しい仕組みで整理します。二人がそれぞれ独立した別の事業を営んでいる場合に限り、各自が事業主として申告することになります。
Q. 専従者給与はいくらに設定すればよいですか?
金額に決まった正解はなく、その家族が担っている仕事の内容や従事の程度、同じような仕事を外部に頼んだ場合の相場などから見て、相当といえる額にするのが基本です。働きに見合わない高額な設定は経費として認められないことがあります。また、青色事業専従者給与を使うには、あらかじめ届け出た金額の範囲内であることも必要です。迷う場合は専門家に相談すると安心です。
Q. 子どもに手伝ってもらった分も専従者給与にできますか?
生計を同じくする親族であれば、子どもであっても専従者給与の対象になり得ますが、その年の一定期間、専らその事業に従事していることなどの要件を満たす必要があります。学業の傍らにたまに手伝う程度では、専ら従事しているとはいえず対象にならないのが一般的です。実態に合っているかどうかで判断される点に注意しましょう。
結論:「誰が事業主か」と「働きの整理」がカギ
家族で一つの事業を営むときは、まず「事業主は原則一人」という考え方を土台に、実際に経営の中心にいる人を事業主として申告します。家族の働きに対しては、所得を勝手に分けるのではなく、専従者給与や専従者控除といった正しい仕組みで報い、配偶者控除・扶養控除との有利不利を家庭全体で見比べて選ぶことが大切です。そして、事業ごと・名義ごとにお金と帳簿を分けて残しておくことが、正しい分担申告の第一歩になります。
とはいえ、家族の働きや複数の収入が絡み合うと、記帳の区分も申告の判断も一気に複雑になります。本業が忙しい中で、専従者給与の記録づけから帳簿の仕分け、確定申告書の作成までをすべて自分で行うのは、決して軽い作業ではありません。記帳代行の現場でも、家族経営のお金の区分についてのご相談は数多く寄せられます。
領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送かスマホ撮影で送るだけで、日々の記帳から確定申告書類の作成までをまとめてサポートします。税理士監修で、契約の縛りもありません。まずは家族経営の申告整理を無料で相談してみるところから始めてみてください。相談は無料です。依頼から申告までの進め方はご利用の流れで確認できます。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








