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2026/7/18

夫婦で事業と給与がある世帯の手取り最適化|控除の配分を解説

  • 税金

事業所得と給与所得がある夫婦の世帯では、同じ控除でも「どちらの申告に付けるか」で世帯の手取りが変わります。医療費・ふるさと納税・生命保険料・扶養などの配分を、税率の高い人へ寄せるという基本の考え方から具体例まで整理します。

所得税は世帯ではなく一人ひとりを単位に計算するため、二人の所得を合算はできません。しかし配分を選べる控除を上手に寄せれば、世帯全体では手取りを増やせる余地があります。毎年なんとなく同じ人の申告に入れている方こそ、一度見直す価値があります。

☑ 夫が個人事業主、妻が会社員(またはその逆)の世帯で、控除をどちらに付けると得なのかわからない

☑ 医療費控除やふるさと納税を、なんとなく毎年同じ人の申告に入れていて損していないか不安だ

☑ 扶養控除や生命保険料控除を、事業所得側と給与所得側のどちらに寄せるべきか迷っている

ご夫婦の一方が個人事業主やフリーランスで、もう一方が会社員やパートとして給与をもらっている——こうした「事業所得と給与所得が混在する世帯」は珍しくありません。このタイプの世帯では、同じ控除でも「どちらの申告に付けるか」で、世帯全体の手取りが変わってくることがあります。ところが、その配分をあまり意識せず、毎年なんとなく同じ人の申告に入れている方は少なくありません。配偶者の働き方そのものから世帯の手取りを見直したい場合は、配偶者の働き方と世帯手取り・扶養の壁の最適化もあわせて参考になります。

以下では、事業所得と給与所得がある夫婦の世帯を前提に、医療費控除・寄附金控除・生命保険料控除・扶養控除といった「付け替えられる控除」を、どちらに寄せると世帯の手取りが増えやすいのかという配分の考え方を整理します。自分の世帯でどの控除を誰の申告に乗せればよいか、判断の軸を持てるはずです。

まず「所得税は個人単位」という大前提を押さえる

夫婦の所得を合算して申告することはできない

日本の所得税は、世帯ではなく一人ひとりを単位として計算します。ですから、夫が個人事業主で妻が会社員という世帯でも、二人の所得をひとつにまとめて申告することはできません。夫は自分の事業所得について確定申告を行い、妻は勤務先の年末調整で完結するか、必要に応じて自分名義で確定申告をします。なお、夫婦がともに個人事業主のケースは経費配分などの論点が加わるため、夫婦ともに個人事業主の確定申告と経費配分で別に整理しています。

「合算できない」と聞くと最適化の余地がないように感じるかもしれませんが、そうではありません。どちらの申告に控除を乗せるかを選べる控除がいくつかあり、その配分しだいで世帯全体の税額が変わってきます。ここが、事業と給与が混在する世帯の手取り最適化のポイントです。

控除には「本人にしか使えないもの」と「配分できるもの」がある

控除は大きく2種類に分けて考えると整理しやすくなります。ひとつは本人にしか使えない控除、もうひとつは夫婦のどちらに乗せるか選べる控除です。

  • 本人にしか使えない例:社会保険料控除(自分で払った国民年金・国民健康保険・厚生年金など)、小規模企業共済等掛金控除(iDeCoや小規模企業共済の掛金)、基礎控除

  • 配分の余地がある例:医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税を含む)、生命保険料控除・地震保険料控除、扶養控除

本人にしか使えない控除は、その負担をした人の申告で使うのが原則です。一方、配分の余地がある控除は「実際に負担した人が申告する」という枠のなかで、世帯として有利になるように寄せ方を工夫できます。

控除を寄せる基本の考え方は「税率の高い人に」

所得税は所得が大きいほど税率が上がる

所得税は、課税される所得金額が大きいほど税率が高くなる累進課税の仕組みです。同じ金額の所得控除でも、税率の高い人の所得から差し引いたほうが、減らせる税額は大きくなります。たとえば同じ控除でも、税率が高い人に付ければそのぶん節税額が大きく、税率が低い人に付ければ節税額は小さくなる、というイメージです。所得税の税率の段階は、国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」で確認できます。

そのため、配分の余地がある控除は、原則としてその年に所得(および税率)が高いほうの申告に寄せると、世帯全体で減らせる税額が大きくなりやすい、というのが基本の考え方になります。事業所得が好調で税率が高い年は事業主側に、逆に事業が縮小して給与所得側の税率が高い年は給与所得側に、と年ごとに見直す姿勢が役立ちます。

ただし「実際に負担した人」しか使えないのが大前提

ここで最も大切な注意点があります。控除は実際にその費用を負担した人しか使えないのが原則だという点です。税率が高いからといって、実際には妻が払った保険料を夫の申告に付ける、といった付け替えは認められません。

ただし、医療費控除やふるさと納税のように「生計を一にする家族の分をまとめて負担した人が申告できる」タイプの控除では、誰が支払うかをあらかじめ決めておくことで、結果的に配分をコントロールできます。後から名義だけ変えるのではなく、支払いの段階からどちらが負担するかを意識するのがコツです。

住民税や社会保険料への影響も同時に見る

控除を寄せると、所得税だけでなく住民税も変わります。さらに、個人事業主が加入する国民健康保険は世帯の所得をもとに保険料が決まることが多いため、事業主側の所得を控除で圧縮できれば、国民健康保険料の面でも影響が出ることがあります。所得税の節税額だけを見るのではなく、住民税・社会保険料まで含めて眺めると、より正確に世帯の手取りを比較できます。

費目別に「どちらに寄せるか」を考える

医療費控除は「家族分をまとめて所得の高い人」が基本

医療費控除は、生計を一にする家族が1年間に支払った医療費を合算し、一定額を超えた部分を控除できる仕組みです。家族の医療費は、実際にその費用を負担している人の申告にまとめて計上できます。医療費控除の対象や計算のしかたは、国税庁タックスアンサーNo.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」で確認できます。

夫婦のどちらの医療費もある世帯では、所得(税率)が高いほうがまとめて負担して申告すると、控除による節税額が大きくなりやすい傾向があります。ただし、医療費控除には「所得金額の一定割合」を差し引いてから控除額を計算する仕組みがあり、所得が低い人のほうが差し引く金額が小さくなって控除の対象額が増える、というケースもあります。医療費の総額が大きくない年は、あえて所得の低い側で申告したほうが有利になることもあるため、両方で軽く見比べてみると安心です。

ふるさと納税(寄附金控除)は名義と限度額に注意

ふるさと納税は寄附金控除の一種で、実質的な自己負担を抑えながら返礼品を受け取れる仕組みとして知られています。ここで大切なのは、寄附をした本人の名義で申告するという点です。夫名義で寄附したものを妻の控除にすることはできません。

控除できる金額の目安(上限)は、その人の所得や他の控除の状況によって変わります。事業所得が大きく税率が高い事業主側で寄附をすれば、より多くの寄附について実質負担を抑えられる余地が広がりやすい一方、所得が少ない側で無理に寄附額を増やすと自己負担が大きくなってしまいます。誰の名義でいくら寄附するかを、年末の所得の見込みを踏まえて決めるのがポイントです。なお、確定申告をする個人事業主はワンストップ特例が使えないため、寄附金控除は確定申告で申告することになります。

生命保険料控除・地震保険料控除は「契約者・負担者」で決まる

生命保険料控除や地震保険料控除は、実際に保険料を負担している人の控除になります。夫婦で複数の保険契約がある場合、それぞれの契約について保険料を負担している人が申告する形が基本です。

生命保険料控除には控除できる上限額があるため、一人にすべての契約を集めても上限で頭打ちになることがあります。上限を超えそうなときは、契約者・保険料負担者を夫婦で分けておくことで、世帯として控除枠を使い切りやすくなる場合があります。これも、契約や引き落とし口座を決める段階からの設計が効いてくる部分です。

扶養控除・配偶者控除は所得の高い人に付けると効きやすい

子どもや親などの扶養親族がいる場合、その扶養控除は、扶養している親族を「誰の扶養にするか」を夫婦で選べます。所得税は累進課税ですから、原則として税率の高いほうの扶養に入れると、控除による節税額が大きくなりやすくなります。配偶者控除の要件や控除額は、国税庁タックスアンサーNo.1191「配偶者控除」で確認できます。

ただし、扶養控除は住民税の計算や、自治体の各種手当・保育料などの判定に関わることもあります。所得税だけを見て高いほうに寄せた結果、別の負担が増えるといったこともあり得るため、世帯の状況に応じて総合的に判断することが大切です。なお、一人の扶養親族を夫婦で二重に扶養控除の対象にすることはできません。どちらか一方だけに付ける必要があります。家族に事業を手伝ってもらっている世帯では、専従者給与という別の論点も出てきます。詳しくは家族で一つの事業を営むときの確定申告を参考にしてください。

iDeCo・小規模企業共済は「本人の所得を直接圧縮する」控除

掛金は本人の所得控除にしかならない

iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済の掛金は、掛金を払った本人の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になります。夫婦のどちらかに寄せて配分する、という性質のものではなく、加入して掛金を払った人自身の所得を直接圧縮する控除です。掛金月額ごとの節税額の目安は、小規模企業共済の節税額シミュレーションで確認できます。

そのため、配分を考えるというより「税率の高い人が加入して掛金を払うと、節税効果が出やすい」という観点で捉えるのが実務的です。事業所得が大きく税率が高い事業主が、無理のない範囲で掛金を活用すると、所得税・住民税の両面で効果が出やすくなります。

小規模企業共済は個人事業主側、iDeCoは両方が使える

小規模企業共済は、個人事業主や小規模な会社の役員などが対象の制度で、給与所得だけの会社員は原則として加入できません。そのため、事業所得のある側が活用を検討する制度になります。一方でiDeCoは、会社員でも個人事業主でも加入でき、掛金の上限額は働き方によって異なります。

世帯として考えるなら、事業主側は小規模企業共済とiDeCoを組み合わせ、給与所得側はiDeCoを活用する、といった形で、それぞれが自分の使える制度を無理のない範囲で使うのが基本になります。いずれも老後資金の準備を兼ねる制度なので、目先の節税だけでなく、家計全体のお金の計画とあわせて考えましょう。

配分を最適化するときの手順と注意点

年末までに「今年の所得の見込み」を把握する

控除の配分は、その年の夫婦それぞれの所得の見込みがわかっていないと決められません。事業所得は年によって変動しやすいため、年末が近づいたら、今年の事業の所得と給与所得のおおよその大きさを把握しておくことが第一歩です。どちらの税率が高くなりそうかがわかれば、医療費・ふるさと納税・扶養などをどちらに寄せるかの判断がしやすくなります。夫婦二人分の申告を効率よく仕上げたいときは、確定申告の代行に任せる選択肢もあります。

「支払いの段階」で誰が負担するかを決めておく

医療費やふるさと納税、保険料は、支払った後で名義だけを都合よく変えることはできません。だからこそ、支払いの段階でどちらが負担するかを決めておくことが、配分を実現する現実的な方法になります。たとえば、今年は事業が好調そうなら事業主名義でふるさと納税をする、家族の医療費は事業主側の口座からまとめて支払う、といった具合です。

実態を伴わない付け替えはしない

最適化はあくまで実際の負担関係の範囲内で行うものです。実際には妻が払ったものを夫の控除にする、というような実態を伴わない付け替えは認められません。生計を一にする家族の費用を「まとめて負担した人が申告する」という仕組みを、支払いの設計を通じて自然に使うのが正しい進め方です。判断に迷う費目は、無理に寄せず税理士に相談すると安心です。

よくある質問

Q. 医療費控除は、必ず所得の高いほうで申告したほうが得ですか?

多くの場合は税率の高いほうで申告するほうが節税額は大きくなりますが、常にそうとは限りません。医療費控除は、所得金額の一定割合を差し引いてから控除額を計算するため、医療費の総額がそれほど大きくない年は、所得の低い側のほうが差し引く金額が小さく、控除の対象額が増えることがあります。医療費の総額と夫婦それぞれの所得を踏まえ、両方で軽く試算して比べるのが確実です。

Q. 夫のふるさと納税を、専業に近い妻の控除に付けることはできますか?

できません。寄附金控除は寄附をした本人の名義でしか使えないため、夫名義の寄附は夫の控除になります。世帯で配分を考えたい場合は、寄附をする段階で「誰の名義でいくら寄附するか」を、その年の所得の見込みに合わせて決めておく必要があります。所得が少ない側で無理に寄附額を増やすと自己負担が大きくなる点にも注意しましょう。

Q. 子どもの扶養控除は、夫婦のどちらに付けるべきですか?

所得税の節税だけを考えれば、税率の高いほうに付けるのが基本です。ただし、扶養の付け方は住民税や自治体の手当・保育料などの判定に影響することもあります。一人の子を夫婦で二重に扶養控除の対象にすることはできないため、世帯全体の負担を見比べたうえで、どちらか一方に付けることになります。迷う場合は税理士に相談し、世帯全体で有利になる付け方を確認しましょう。

今日から見直したい控除の寄せ方

事業所得と給与所得が混在する夫婦の世帯では、所得税が個人単位で計算されるという前提のもと、配分の余地がある控除を「その年に税率が高いほうへ寄せる」ことで、世帯全体の手取りを増やせる余地があります。医療費控除・ふるさと納税・生命保険料控除・扶養控除などが代表的で、いずれも実際に負担した人しか使えないという原則を守りつつ、支払いの段階から誰が負担するかを設計しておくことがポイントです。あわせて、住民税や国民健康保険料への影響まで見渡すと、より正確に有利・不利を判断できます。

とはいえ、夫婦それぞれの所得を見積もり、費目ごとにどちらへ寄せると得かを毎年比べ、記帳から確定申告書類の作成まで本業の合間にこなすのは、決して軽い作業ではありません。判断に迷ったまま、なんとなくの配分で年を越してしまうのはもったいないところです。記帳代行の現場でも、控除の付け方を年末にまとめて相談されるご家庭は多くあります。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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