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配偶者の働き方と世帯手取り|扶養の壁を踏...

2026/7/19

配偶者の働き方と世帯手取り|扶養の壁を踏まえた個人事業主の最適化を解説

  • 税金

配偶者の働き方で世帯の手取りは変わりますが、個人事業主の世帯には会社員のような社会保険の「扶養」がなく、税金の壁を中心に考えるのが要点です。配偶者控除・配偶者特別控除と専従者給与の使い分けまで整理します。

会社員世帯で語られる「扶養の壁」の話は、個人事業主の世帯にはそのまま当てはまらない部分があります。この違いを知らないまま配偶者の働き方を決めると、必要以上に収入を抑え、かえって世帯の手取りを減らしてしまうこともあります。

☑ 個人事業主の自分と配偶者で、世帯として手取りを増やすにはどう働けばよいかわからない

☑ 「扶養の壁」という言葉はよく聞くけれど、税金と社会保険のどちらの話なのか整理できていない

☑ 配偶者に事業を手伝ってもらいたいが、給与にするのと扶養に入れたままにするのとで迷っている

個人事業主として働いていると、自分の所得だけでなく「世帯全体でどれだけ手元にお金が残るか」という視点が大切になります。特に配偶者がいる場合、配偶者の働き方しだいで世帯の手取りは大きく変わります。とはいえ、「103万円の壁」「130万円の壁」などの言葉が入り混じり、何をどう考えればよいのか迷ってしまう方は少なくありません。

以下では、配偶者の働き方と世帯の手取りの関係を、税金と社会保険の両面から整理します。あわせて、配偶者に事業を手伝ってもらう場合の「専従者給与」という選択肢についても取り上げます。自分の世帯にとって無理のない働き方を考える軸を持てるように進めていきます。

「扶養の壁」は税金と社会保険の2種類に分けて考える

「壁」と呼ばれるものは大きく2つある

配偶者の働き方を考えるときに登場する「壁」は、ざっくり言うと税金に関する壁社会保険に関する壁の2種類に分かれます。両者は仕組みも金額の目安も別物なのに、まとめて「扶養の壁」と語られることが多いため、混乱のもとになっています。

まずはこの2つをきちんと分けて考えることが、世帯の手取りを正しく見積もる第一歩です。税金の壁は「所得税や住民税がかかり始めるか」「配偶者控除などが受けられるか」という話、社会保険の壁は「配偶者が自分で社会保険料を負担することになるか」という話だと整理しておきましょう。

税金の壁のイメージ

税金の壁は、配偶者本人に税金がかかり始める基準と、世帯主側が配偶者に関する控除を受けられる基準が中心です。基礎控除や給与所得控除といった控除があるため、配偶者のパート収入が一定額までは本人に所得税がかからない仕組みになっています。

また、配偶者の所得が一定の範囲内であれば、世帯主側で配偶者控除または配偶者特別控除を受けられます。配偶者特別控除は、配偶者の所得が増えるにつれて控除額が段階的に少なくなっていく仕組みで、いきなりゼロになるわけではない点がポイントです。控除額の段階は国税庁タックスアンサーNo.1195「配偶者特別控除」で確認できます。

社会保険の壁のイメージ

社会保険の壁は、配偶者が自分で健康保険や年金の保険料を負担し始める基準です。会社員や公務員に扶養されている配偶者は、一定の収入までは自分で保険料を払わずに済みますが、収入が基準を超えると自分自身で社会保険に加入することになり、その分の保険料負担が発生します。

注意したいのは、この「扶養に入る」仕組みは、相手が会社員などで勤務先の健康保険・厚生年金に加入している場合の話だという点です。個人事業主が加入する国民健康保険や国民年金には、会社員のような「扶養」の仕組みがありません。この違いが、個人事業主の世帯では特に重要になります。

個人事業主の世帯では社会保険の扱いが会社員と異なる

国民健康保険には「扶養」という考え方がない

会社員の家庭では、配偶者の収入が社会保険の基準内であれば、配偶者は保険料を負担せずに健康保険の被扶養者になれます。一方、世帯主が個人事業主で国民健康保険に加入している場合、配偶者も基本的にその世帯の国民健康保険の被保険者となり、世帯全体の所得や加入人数に応じて保険料が計算されます。

つまり、個人事業主の世帯では「配偶者を扶養に入れて社会保険料を節約する」という会社員的な発想がそのまま当てはまりません。配偶者が自分で稼ぐかどうかにかかわらず、国民健康保険料は世帯単位でかかってくると理解しておきましょう。

国民年金は配偶者も自分で加入するのが原則

年金についても同様です。会社員に扶養される配偶者は、自分で保険料を負担しなくてよい区分に入れる場合があります。これに対して、個人事業主の配偶者は原則として自分で国民年金に加入し、保険料を負担します。

このように、個人事業主の世帯では社会保険まわりの「壁」の効き方が会社員世帯とは違います。社会保険の壁を意識して配偶者の収入を抑える必要性は、会社員世帯ほど大きくないケースが多いといえます。だからこそ、税金面と「働ける範囲でしっかり働く」という視点のバランスが大切になります。

世帯全体で「収入」と「コスト」を見る

世帯の手取りを考えるときは、配偶者の収入が増えることで生じるプラスとマイナスの両方を見比べることが基本です。

  • プラス:配偶者本人の収入そのものの増加

  • マイナス:配偶者本人にかかる税金、世帯の社会保険料の増加、世帯主側で受けられる控除の減少

大切なのは、収入が壁を少し超えたとしても、増えた収入のすべてが税金や保険料に消えるわけではないという点です。「壁を超えると一気に損をする」という極端なイメージにとらわれず、増えた収入と増えた負担を冷静に差し引きして判断する姿勢が、世帯の手取りを増やすうえで役立ちます。

配偶者に事業を手伝ってもらうなら「専従者給与」も選択肢

専従者給与とは

配偶者が事業を手伝ってくれている場合、個人事業主には専従者給与という制度を使う道があります。これは、生計を一にする配偶者や親族が事業に専従しているとき、その人に支払う給与を必要経費に算入できる仕組みです。青色申告をしている事業主が、あらかじめ届出をしたうえで、相応の金額を給与として支払う形が基本になります。

専従者給与として支払った分は事業の経費になるため、事業主本人の所得を圧縮できます。一方で、給与を受け取った配偶者側にはその収入が生じるので、世帯全体での税負担を見ながら金額を考えることが大切です。制度の全体像は青色事業専従者給与とはで確認しておくと、届出の要否がつかめます。

専従者給与を使うときの注意点

  • 専従者給与を支払う配偶者は、原則として配偶者控除・配偶者特別控除の対象から外れます

  • 「専従」とは、その年を通じて主にその事業に従事していることを指し、他で本格的に働いている場合は対象になりにくいです

  • 給与の金額は、仕事の内容や働く時間に見合った常識的な水準であることが求められます

専従者給与を「経費を増やすための形式的な支払い」として安易に高く設定すると、実態に合わないと判断されるおそれがあります。実際の仕事ぶりに見合った金額を、届出の範囲内で設定することが基本です。いくらに設定すると世帯で有利かは専従者給与の金額の決め方で試算の考え方を確認できます。届出には期限があるため、検討する場合は早めに準備しましょう。

専従者給与は、届出の期限だけでなく、毎月の給与計算や源泉徴収、記帳まで手間が続きます。届出後の給与の記帳ごと任せたい方は、専従者給与の記帳も任せられる記帳代行もあります。

白色申告の場合の取り扱い

白色申告の場合は、青色専従者給与のように実際に支払った金額をそのまま経費にできるわけではなく、「事業専従者控除」という形で一定額を控除する仕組みが用意されています。控除できる額には上限の考え方があるため、配偶者に本格的に働いてもらい、その分をしっかり経費にしたい場合は、青色申告に切り替えてから専従者給与を活用する方が有利になることが多いといえます。青色専従者給与と白色の事業専従者控除の違いは、国税庁タックスアンサーNo.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」で確認できます。

世帯の手取りを最適化する考え方の手順

まず「どんな働き方が無理なくできるか」から考える

制度の損得から入ると、つい「壁を超えないように働く」という発想になりがちです。しかし本来は、配偶者がどれくらい働きたいか、家庭の状況としてどこまで働けるかという生活面の希望が出発点になります。そのうえで、選んだ働き方に応じて税金や社会保険がどう変わるかを確認する、という順序がおすすめです。

税金・社会保険・控除を一度に並べて比較する

働き方の候補がいくつか見えてきたら、それぞれについて次の要素を並べて比べてみましょう。

  • 配偶者本人の手取り(収入から本人の税金・保険料を引いた額)

  • 世帯主側の税額の変化(配偶者控除・配偶者特別控除や専従者給与の影響)

  • 世帯全体の社会保険料の見込み

これらを合計した「世帯の手取り」で比べると、どの選択肢が世帯にとって有利かが見えてきます。一部分だけを見て判断するのではなく、世帯全体の合計で比較することが、最適化の核心です。共働きも含めた世帯全体の手取りの整え方は夫婦世帯の手取りを最適化する考え方もあわせてご覧ください。

事業の形態とあわせて検討する

個人事業主の場合、配偶者を専従者給与の対象にするのか、それとも配偶者は外で働いて世帯主側で配偶者控除を受けるのか、といった選択は、事業の規模や所得水準によって有利・不利が変わります。事業所得が大きく税率が高い局面では専従者給与で所得を分けるメリットが出やすく、事業がまだ小さい段階では配偶者控除を活かした方がよい場合もあります。自分の事業の状況に照らして、毎年見直す姿勢が大切です。

よくある質問

Q. 個人事業主の場合、配偶者は「103万円」「130万円」を意識して働く必要がありますか?

会社員世帯ほど厳密に意識する必要がない場合が多いです。理由は、個人事業主が加入する国民健康保険や国民年金には会社員のような被扶養者の仕組みがないためです。ただし、配偶者本人に所得税・住民税がかかり始める基準や、世帯主側で配偶者控除・配偶者特別控除を受けられるかどうかという税金面の影響は残ります。社会保険の壁よりも税金の壁を中心に考えると整理しやすくなります。

Q. 配偶者に事業を手伝ってもらっています。専従者給与と配偶者控除はどちらが得ですか?

一概には言えず、事業所得の大きさや配偶者の関わり方によって変わります。専従者給与を支払うと、その配偶者は配偶者控除・配偶者特別控除の対象から外れる代わりに、給与が事業の経費になります。事業の所得が大きく税率が高いほど、所得を分散できる専従者給与のメリットが出やすい傾向があります。一方、事業がまだ小規模なうちは配偶者控除を活かした方がよいこともあるため、両方を試算して比べるのが確実です。

Q. 専従者給与は好きな金額に設定してよいのですか?

実際の仕事の内容や働く時間に見合った、常識的な金額にする必要があります。経費を増やす目的で実態に合わない高額を設定すると、認められないおそれがあります。また、青色申告で専従者給与を支払うには事前の届出が必要で、届出に記載した範囲内で支払うのが原則です。導入を考える場合は、届出の期限にも注意しながら準備を進めましょう。

世帯の手取りで考えると判断しやすくなる

配偶者の働き方を考えるときは、「税金の壁」と「社会保険の壁」を分けて整理し、個人事業主の世帯では会社員世帯と社会保険の扱いが異なる点を押さえることが出発点になります。そのうえで、配偶者本人の手取り・世帯主側の税額・世帯の社会保険料を一度に並べ、世帯全体の手取りで比較すれば、どんな働き方が無理なく有利かが見えてきます。配偶者が事業を手伝ってくれる場合は、専従者給与という選択肢もあわせて検討するとよいでしょう。

税金・社会保険・控除を並べて損得を比べ、専従者給与の届出や日々の帳簿づけまでを本業の合間にこなすのは、決して軽い作業ではありません。数字の見積もりで迷ったまま、なんとなくの判断で年を越してしまうのはもったいないことです。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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