複数の屋号・複数店舗を持つ個人事業主の確定申告|帳簿の分け方を解説
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確定申告

複数の屋号や複数店舗を持つ個人事業主の確定申告は、日々の帳簿を事業ごと・店舗ごとに分けて記録し、最後に同じ事業所得として1つに合算して申告するのが基本です。帳簿の分け方と、いちばんの悩みどころである共通経費の按分を整理します。
1人の個人事業主が複数の屋号を使ったり、2店舗・3店舗と事業を広げたりすると、「お店ごとに申告するのか」「帳簿はいくつ作るのか」と急に不安になるものです。会社員時代にはなかった論点だけに、調べても自分のケースに当てはめにくいと感じる方は少なくありません。全体像からつかんでいきましょう。
☑ カフェと物販など、屋号の違う事業を2つ持っているが、帳簿は分けるべきか1つにまとめるべきかわからない
☑ 2店舗目を出したものの、確定申告書や決算書をそれぞれの店ごとに作るのか1枚にまとめるのか迷っている
☑ 共通でかかる家賃や水道光熱費、自分の人件費を店舗ごとにどう振り分ければよいのかが整理できていない
事業ごとに何をどう記録し、最終的にどう1つの申告書にまとめればよいのか、全体像をつかんでいきます。
大前提:申告するのは「人」、合算して1人分
屋号や店舗が増えても申告書は1人につき1セット
まず押さえておきたいのは、所得税の確定申告は「事業」ごとではなく「人」ごとに行うという点です。屋号を2つ持っていても、店舗が3つあっても、申告する人が1人であれば、確定申告書は1人分を1セット提出します。お店ごとに申告書を分けて出すわけではありません。
たとえば「屋号A(飲食)」と「屋号B(雑貨販売)」を営んでいる場合でも、最終的にはA・Bの所得を合算した1つの事業所得として申告します。複数の屋号や店舗は、あくまで1人の事業主の中の「部門」のようなイメージで考えると整理しやすくなります。
同じ事業所得なら原則として合算する
複数の屋号が、いずれも事業所得に区分される事業であれば、それぞれの利益(または損失)を合算して事業所得を計算します。片方が黒字、もう片方が赤字という年でも、同じ事業所得の中であれば内部で相殺され、合算後の金額が課税対象になります。
一方で、たとえば「事業として営む店舗」と「保有するアパートの家賃収入」のように、所得の区分そのものが違うもの(事業所得と不動産所得など)は合算せず、区分ごとに分けて計算します。屋号が複数あるかどうかより、「どの所得区分に当てはまるか」で分け方が決まる、と覚えておきましょう。
帳簿は「事業ごと」に分けて、最後に合算するのが基本
なぜ事業・店舗ごとに帳簿を分けるのか
申告書は1セットでも、日々の帳簿づけは事業ごと・店舗ごとに分けて記録するのが基本です。すべてを1つの帳簿でごちゃ混ぜにしてしまうと、どの店がもうかっていてどの店が赤字なのかが見えなくなり、経営判断ができなくなってしまいます。
店舗ごとの売上・利益が把握でき、撤退や拡大の判断材料になる
税務署から問い合わせがあったときに、根拠を示しやすい
共通経費の按分(後述)が正しくできているか検証しやすい
つまり、帳簿を分けるのは税務上の義務というより「自分の事業を正しく把握するため」の実務です。結果として、申告の正確さや説明のしやすさにもつながります。
クラウド会計の「部門」「タグ」機能を活用する
帳簿を分けるといっても、紙の帳簿を物理的に2冊3冊と用意する必要はありません。多くのクラウド会計ソフトには、取引ごとに「部門」や「タグ」を付けられる機能があります。1つの会計データの中で、取引に「A店」「B店」といった部門を割り当てておけば、入力は1か所で済みながら、店舗別の集計レポートを後から取り出せます。事業別に勘定科目を設ける実務は、勘定科目を事業別に設ける実務にまとめています。
この方法なら、日々の入力はまとめて行いつつ、決算のときには店舗ごとの数字も、全店合計の数字も両方を確認できます。複数店舗を運営するなら、最初に部門設定をしておくと後がぐっと楽になります。
口座やカードも事業ごとに分けると管理が楽
可能であれば、事業用の銀行口座やクレジットカードも屋号・店舗ごとに分けておくと、記帳の手間が大きく減ります。お金の流れが店舗ごとに分かれていれば、通帳の動きとレジの売上を突き合わせやすく、按分の必要な共通経費だけを別管理すればよくなるからです。ネットバンクとの連携を活用する方法は、ネットバンクの決済連携の実務が参考になります。
共通経費の按分が複数店舗のいちばんの悩みどころ
どこまでが「共通経費」になるのか
店舗ごとに帳簿を分けると、必ず出てくるのが「複数の店舗にまたがる経費をどう割り振るか」という問題です。特定の店だけにかかる経費(その店の仕入れ、その店のアルバイト代など)は、そのまま該当店舗に計上すれば済みます。問題になるのは、複数の事業で共通して使うものです。
自宅兼事務所の家賃・水道光熱費・通信費
会計ソフトや事務用品など、事業全体で使うもの
事業主本人が複数店舗を行き来して使う車のガソリン代 など
こうした共通経費は、合理的な基準で各事業に按分する必要があります。「なんとなく半分ずつ」ではなく、説明できる根拠を持って配分することが大切です。
按分基準の例と考え方
按分の基準に唯一の正解はなく、その経費の性質に合った合理的な基準を選びます。よく使われるのは次のような考え方です。
売上高の比率で按分する(全体に広く関わる経費に向く)
使用面積や使用時間で按分する(家賃・水道光熱費など場所に関わる経費に向く)
従業員数や作業量で按分する(人に関わる経費に向く)
大切なのは、いったん決めた基準を年の途中でころころ変えないこと、そして「なぜその基準にしたのか」を後から説明できるようにしておくことです。按分の計算過程をメモや表で残しておくと、申告内容に自信が持てます。
自分自身の生活費(家事按分)にも注意
自宅の一部を事務所として使っている場合、家賃や光熱費のうち事業に使っている割合だけを経費にする「家事按分」も忘れてはいけません。複数店舗を運営していると、まず家事按分で「家庭分」と「事業分」を分け、さらに事業分を店舗ごとに按分する、という二段階の配分になることもあります。生活費と事業費を分けて記録する基本は、生活費と事業費を分けて記録する方法が参考になります。順序を整理しておくと混乱を防げます。
決算書・申告書へのまとめ方
決算書は事業所得として1つにまとめる
店舗ごとに帳簿を分けて集計しても、青色申告決算書(白色申告なら収支内訳書)は、原則として事業所得全体で1つを作成します。店舗別に出した売上・経費を合算し、全店合計の数字を決算書に反映させるイメージです。
このとき、店舗ごとの内訳を自分用の補助資料として残しておくと、決算書の数字の根拠が明確になります。税務署からの問い合わせや、将来の融資相談などの場面でも、店舗別の内訳があると説明がスムーズです。
屋号欄の書き方
確定申告書や決算書には屋号を記入する欄があります。屋号が複数ある場合は、代表的な屋号を記入したり、欄に収まる範囲で併記したりといった対応になります。屋号欄の書き方そのもので税額が変わるわけではないため、神経質になりすぎる必要はありません。事業の実態が正しく申告に反映されていることのほうがはるかに重要です。
赤字店舗と黒字店舗がある年の扱い
同じ事業所得の中であれば、黒字の店舗と赤字の店舗は合算され、差し引き後の金額が事業所得になります。たとえばA店が+200万円、B店が△50万円なら、事業所得は差し引き150万円です。青色申告をしていれば、合算してもなお事業所得全体が赤字になった場合に、その損失を翌年以降に繰り越せる制度(純損失の繰越し)を使える可能性があります。赤字の繰越しの活用は青色申告の赤字の繰越しを活かす節税にまとめています。複数店舗の立ち上げ期で赤字が出やすい時期こそ、青色申告のメリットが生きてきます。
複数事業・複数店舗ならではの注意点
事業の数が増えると消費税の管理も複雑になる
店舗や事業が増えると、その分だけ売上の合計も大きくなりやすく、消費税の課税事業者になるかどうかの判定にも関わってきます。インボイス制度への対応も含め、複数事業を合計したベースで考える必要があります。判定の基準やタイミングは個々の状況で変わるため、規模が大きくなってきたら早めに確認しておくと安心です。事業拡大に伴う手続きや支援制度の情報は、中小企業ビジネス支援サイトJ-Net21も参考になります。複数店舗の記帳や集計をまとめて任せたい場合は、記帳代行というやり方もあります。
従業員を雇う店舗が出てきたら手続きが増える
2店舗目以降でアルバイトやスタッフを雇うと、給与の支払いに伴う源泉徴収や、給与に関する届け出などの手続きが発生します。店舗ごとに人を雇っていても、手続きは事業主単位で行う部分が多く、店舗が増えるほど抜け漏れが起きやすくなります。誰にいくら支払ったかを店舗別に記録しておくことが、正確な処理の前提になります。
記録の一貫性を保つことがいちばんの近道
複数の屋号・店舗の申告でトラブルになりやすいのは、計算が難しいからというより、「店舗ごとの記録がそろっていない」ことが原因であるケースが多いものです。どの店の取引かをその都度きちんと分けて記録し、共通経費の按分基準を一貫して使う。この地道な積み重ねが、結果的にいちばんの近道になります。
よくある質問
Q. 屋号が2つあると、確定申告書も2枚提出するのですか?
いいえ、申告するのは1人につき1セットです。屋号が2つあっても、同じ事業所得であればそれぞれの利益を合算して1つの事業所得として申告します。お店ごとに申告書を分けて出す必要はありません。日々の帳簿は店舗ごとに分けて記録し、最後に合算するイメージで進めましょう。
Q. 開業届は店舗(屋号)ごとに出す必要がありますか?
個人事業の開業届は、基本的に「人」を単位として提出するもので、屋号ごとに何枚も出さなければならないものではありません。新たに別の事業や店舗を始めたときに、必要に応じて事業内容を反映させる形になります。届け出の取り扱いに迷う場合は、税務署や専門家に確認しておくと確実です。
Q. 共通経費の按分基準は、毎年変えてもよいですか?
合理的な理由があれば見直すこと自体は可能ですが、特段の事情もないのに毎年コロコロ変えるのは望ましくありません。基準を変えると年ごとの数字の比較がしにくくなり、説明も難しくなります。原則として一度決めた基準を継続して使い、店舗の規模が大きく変わったときなど、必要なタイミングだけ見直すのがよいでしょう。
まとめ|分けて記録し、1つにまとめるのが基本
複数の屋号や複数店舗を持つ個人事業主の確定申告は、「日々の帳簿は事業ごと・店舗ごとに分けて記録し、最後に同じ事業所得として1つに合算して申告する」という流れが基本です。共通経費は合理的な基準で按分し、その根拠を残しておく。この2点を押さえれば、店舗が増えても申告の考え方そのものは変わりません。
店舗が2つ3つと増えるほど、店舗別の記帳と共通経費の按分、消費税や給与の管理まで重なり、本業に割ける時間が削られていきます。お店の運営に集中したいのに、夜は電卓と帳簿に追われている——そんな状況は避けたいものです。領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送またはスマホ撮影で送るだけで、税理士監修のもと日々の記帳から確定申告書類の作成までをサポートします。店舗別の按分や集計を任せられるか無料で相談することができます(相談は無料です)。実際に任せた方の様子は導入事例のページでご覧いただけます。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








