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2026/7/18

生活費と事業費が同じ財布から出る事業の記録の残し方を解説

  • 税務

生活費と事業費が同じ財布から出ていても、事業主貸・事業主借で出入りを切り分け、自宅兼事務所は家事按分で事業分だけを経費にすれば、正しく記録して申告できます。財布が一つのままでも迷わない記録の残し方を、勘定科目と実務の手順で整理します。

個人事業主やフリーランスとして働いていると、生活のお金と仕事のお金が同じ財布・同じ口座から出入りする、という状態は決して珍しくありません。特に一人で事業をしている方ほど、わざわざ分ける手間をかけずにきてしまい、いざ帳簿をつける段になって「これは経費、これは私用」と一つずつ思い出す作業に追われがちです。

☑ 一つの財布やカードで生活費も仕事の支払いもしていて、どこまでが経費かわからない

☑ 自宅兼事務所の家賃や光熱費を、事業分としてどう分けて記録すればよいか迷う

☑ 事業用の口座を作っていないので、後から帳簿をつけるときに毎回混乱してしまう

生活費と事業費が同じ財布から出ている事業の記録の残し方を、家事按分の考え方や「事業主貸・事業主借」という勘定科目の使い方を交えて解説します。財布が一つのままでも迷わず記録を残していく道すじがイメージできるようにまとめました。

まずは「財布が一つ」でも問題ない理由を知りましょう

個人事業では事業とプライベートのお金が地続き

会社の場合は法人と個人が完全に別人格なので、会社のお金を私用に使うことは原則できません。一方、個人事業主は事業もプライベートも同じ「あなた個人」のものです。そのため、事業用の口座から生活費を引き出しても、逆に私用の財布から仕事の備品を買っても、それ自体がただちに問題になるわけではありません。この「法人なら公私が分かれる」という違いを積極的に使う考え方が、マイクロ法人と個人事業の二刀流で、事業の規模によっては選択肢になります。

大切なのは、財布を物理的に分けることそのものではなく、「どの支払いが事業のためのものか」を後から説明できる形で記録に残しておくことです。つまり、財布が一つでも、記録の付け方さえ整えれば正しく申告できます。

それでも「分けたほうが楽」なのはなぜか

記録上は分けられるとはいえ、実務では事業用の口座やカードを一つ用意しておくほうが圧倒的に楽になります。理由はシンプルで、明細を見たときに「これは事業の支払い」と迷わず判断できるからです。

  • 通帳やカード明細が、そのまま事業の取引一覧に近づく

  • 私用の買い物が混ざらないので、記帳の仕分け作業が減る

  • 売上の入金と経費の支払いが同じ流れで追える

今は財布が一つでも、これから事業用の口座・カードを一つ足すだけで、翌年からの記録はぐっと軽くなります。まずは「分けると後が楽になる」という感覚を持っておきましょう。

混ざったお金を整理する「事業主貸・事業主借」

2つの勘定科目の意味

生活費と事業費が同じ財布から出る場合に欠かせないのが、事業主貸事業主借という勘定科目です。名前が難しそうですが、意味はとてもシンプルです。

  • 事業主貸:事業のお金を、生活費など私用に使ったとき(事業から個人へお金が出ていくイメージ)

  • 事業主借:私用のお金で、事業の支払いをしたとき(個人から事業へお金を入れるイメージ)

たとえば事業用口座から10万円を生活費として引き出したら「事業主貸」、逆に自分の財布から事業の備品を買ったら「事業主借」で記録します。この2つを使えば、財布が一つでも事業とプライベートの出入りをきれいに切り分けられます。

具体的な使い方の例

イメージしやすいよう、日常でありがちな場面を挙げてみます。

  • 私用のクレジットカードで仕事用のパソコンを買った → 「消耗品費/事業主借」のように記録

  • 事業用の口座から、自分の食費を引き出した → 「事業主貸」で処理し、経費にはしない

  • 売上の入金を、そのまま生活費に回した → 生活費部分を「事業主貸」で記録

ポイントは、生活費の支出は経費にしないという一点です。事業主貸・事業主借はあくまで「お金の出どころと使い道のズレ」をつじつま合わせする勘定科目で、利益(もうけ)の計算そのものには影響しません。所得税は、この事業のもうけ(所得)から所得控除を差し引いて計算する仕組みで、全体像は国税庁タックスアンサーNo.1000「所得税のしくみ」で確認できます。なお、事業とは別に受け取ったお金が事業の収入になるかどうかは、給付金・協力金・支援金の課税・非課税の扱いのように判断が分かれる場面もあります。

自宅兼事務所などは「家事按分」で分ける

家事按分とは

自宅を仕事場としても使っている場合、家賃や光熱費、通信費などは「生活のための分」と「事業のための分」が混ざっています。この混ざった費用を、合理的な割合で事業分だけ経費にすることを家事按分(かじあんぶん)と呼びます。

たとえば家賃が事業と生活で共通してかかっている場合、そのうち事業に使っている割合だけを経費に計上します。全額を経費にはできませんが、事業に使っている実態がある分は、しっかり経費として認めてもらえる、と考えるとわかりやすいでしょう。費用を期間や用途で配分して費用化するという発想は、開業費などを数年に分けて費用化する繰延資産の償却の実務とも通じます。

按分の割合の決め方

按分の割合には「これが正解」という一つの決まった数字があるわけではなく、費用の性質に合った合理的な基準で決めるのが原則です。よく使われる基準の例を挙げます。

  • 家賃・電気代など:仕事に使っている部屋の床面積の割合、または使用時間の割合

  • 通信費(ネット・スマホ):仕事で使っている時間や使用頻度の割合

  • 車のガソリン代・保険:仕事での走行距離が全体に占める割合

大切なのは、なぜその割合にしたのかを自分で説明できることです。「仕事部屋は家全体のおよそ4分の1だから25%」のように、根拠をメモとして残しておけば、後から見返しても、税務署に聞かれても落ち着いて答えられます。混ざったお金の仕分けや家事按分をまとめて任せたい場合は、枚数無制限の料金プランで費用の目安を確認しておくと選びやすくなります。

白色申告と青色申告での違い

家事按分は白色申告でも青色申告でもできますが、細かな取り扱いに差があります。青色申告では、事業に使っている部分について比較的柔軟に按分して経費にできるのに対し、白色申告では「主として事業で使っている」といった一定の条件が意識される場面があります。青色申告の要件やメリットは国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。いずれにしても、事業に関係のある支出であること、そして割合の根拠を残しておくことが共通して重要です。判断に迷う費用は、無理に大きな割合を計上せず、実態に即した範囲にとどめておきましょう。

財布が一つでも回る「記録の残し方」の実務

証拠となる書類を捨てずに残す

記録の土台になるのは、領収書・レシート・請求書・通帳やカードの明細です。財布が一つで支払いが混ざっているときほど、これらの原本を捨てないことが何より大切になります。生活費のレシートまで神経質に取っておく必要はありませんが、事業に関係しそうな支払いは、迷ったらいったん残しておくと安心です。

レシートには、あとで見て思い出せるよう、何のための支払いかを一言メモしておくとさらに確実です。「取引先と打ち合わせ」「仕事用の文具」など、短い書き込みで十分です。これらの書類は、原則として一定期間の保存が必要とされていますので、年度ごとにまとめて保管しておきましょう。

「都度メモ」で後回しをなくす

財布が一つの状態でいちばんつらいのは、数か月分をまとめて仕分けしようとしたときに、一つずつ記憶をたどる作業です。これを防ぐには、支払ったその場か、その日のうちに簡単なメモを残す習慣が効きます。

  • レシートに「事業/私用」の印を一つつけておく

  • スマホのメモやアプリに、日付・金額・用途をひと言だけ記録する

  • 週に一度、たまったレシートを事業分と私用分に分けておく

完璧な帳簿を毎日つける必要はありません。後から仕分けできる手がかりを、その場で少しだけ残しておく。これだけで、記帳のときの負担は大きく変わります。

翌年からは「事業用の入れ物」を一つ用意する

今年の記録は財布が一つのままでも乗り切れますが、来年以降を楽にするなら、事業用の口座やカードを一つ用意するのが近道です。売上の入金先と、事業の主な支払いをそこに集めるだけで、明細がそのまま事業の記録に近づきます。生活費との線引きに悩む時間そのものを減らせるので、「分ける準備」を今のうちに始めておくとよいでしょう。

やってはいけない記録・注意したいこと

生活費を経費にまぜない

最も気をつけたいのは、家族との食事や日用品といった純粋な生活費を、事業の経費に紛れ込ませてしまうことです。事業に関係のない支出を経費にすると、後から否認されて追加の税金を求められる原因になります。事業との関連が説明できない支出は、思い切って経費に入れない、というくらいの姿勢がむしろ安全です。

「なんとなく半分」を根拠なく続けない

家事按分の割合を、明確な根拠のないまま「なんとなく半分」で計上し続けるのは避けたいところです。割合そのものより、その割合にした理由を説明できるかどうかが問われます。実態と大きくかけ離れた按分は、後々の説明を難しくします。使い方が変わったときは、割合も見直しましょう。

記録を「あとでまとめて」に頼りすぎない

財布が一つの状態で記録を丸ごと後回しにすると、確定申告の直前に一年分を一気に仕分ける羽目になり、抜け漏れやミスが起きやすくなります。少しずつでも記録を残しておくことが、結果的にいちばんの近道です。

よくある質問

Q. 事業用の口座やカードは、必ず作らないといけませんか?

必須ではありません。個人事業では事業とプライベートのお金が同じ「あなた個人」のものなので、財布が一つでも、事業主貸・事業主借などを使って正しく記録すれば申告できます。ただし、事業用の口座を分けておくと明細の仕分けが格段に楽になるため、記帳の負担を減らしたい方には用意をおすすめします。

Q. 生活費を事業用の口座から引き出したら、経費になりますか?

いいえ、経費にはなりません。生活のための引き出しは「事業主貸」として処理し、もうけの計算には含めません。事業用のお金を私用に使うこと自体は個人事業では問題ありませんが、それを経費として計上しないよう注意しましょう。

Q. 家賃や光熱費は、どのくらいまで経費にできますか?

一律の上限があるわけではなく、事業に使っている実態に応じた合理的な割合を経費にします。仕事部屋の床面積や使用時間など、説明できる基準で按分することが大切です。実態とかけ離れた大きな割合を計上すると、後から説明を求められたときに困る場合があるため、無理のない範囲にとどめましょう。

まとめ|財布が一つでも、記録の仕組みで乗り切れる

生活費と事業費が同じ財布から出ていても、事業主貸・事業主借で出入りを切り分け、自宅兼事務所などは家事按分で事業分だけを経費にし、証拠書類とひと言メモを残しておけば、正しく記録して申告できます。財布を物理的に分けることよりも、「後から説明できる形で残す」という仕組みづくりが本質です。翌年からは事業用の口座を一つ用意すると、その仕組みがさらに回りやすくなります。

とはいえ、家事按分の割合を考え、混ざったお金を勘定科目で仕分けし、それを一年分積み上げて申告書まで仕上げるのは、本業が忙しい中では手が回りきらないこともあります。無理に一人で抱え込み、確定申告の直前に慌てるよりも、記録の整理を専門家に任せてしまうのも賢い選択肢です。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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