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2026/8/11

ネット銀行・決済代行の入出金を記帳する実務|手数料相殺と摘要の整え方を解説

  • 税務

ネット銀行や決済代行を使うと、通帳の入金額と実際の売上額はずれます。売上は総額で計上し、手数料は別建てにして、差額を性質ごとに切り分けるのが記帳の基本です。手数料相殺の処理と、後から見返せる摘要欄の整え方を実務に沿って整理します。

個人でネット販売やサブスクを運営していると、代金は決済代行会社をいったん経由して入金され、手数料が引かれた金額しか通帳に現れないことがほとんどです。この仕組みを知らずに入金額だけを売上にすると、売上を実際より少なく計上し、経費にできる手数料も取りこぼしてしまいます。

☑ 決済代行から振り込まれる入金額が、売上金額とぴったり合わなくて困っている

☑ ネット銀行の取引明細をそのまま会計ソフトに取り込んだら、手数料や相殺がぐちゃぐちゃになってしまった

☑ 摘要欄に何を書けばよいのかわからず、後から見返しても何の取引か思い出せない

ネットショップやサブスク、オンラインのサービス販売などでは、お客様からの代金が銀行に直接振り込まれるのではなく、決済代行会社をいったん経由して入金されるのが一般的です。ところが、いざ記帳しようとすると「売上は10万円のはずなのに、入金は9万7千円しかない」といったズレが必ず出てきて、どう処理すればよいのか手が止まってしまう方は少なくありません。

手数料の相殺処理と摘要欄の書き方を中心に、入金額と売上額が合わない理由と、その差額を正しく処理する手順を、順を追って確認していきます。

なぜ入金額と売上額がズレるのか、仕組みから理解しましょう

決済代行を経由するとお金の流れが二段階になる

クレジットカード決済やオンライン決済を導入していると、お客様が支払った代金は、まず決済代行会社のもとに集まります。そして決済代行会社が、一定期間分の売上をまとめ、そこから手数料を差し引いた金額を、後日あなたの銀行口座へ振り込みます。つまり、お客様の支払い→決済代行会社→自分の口座、という二段階の流れになっているのです。

この「いったん別の会社にお金が集まり、後でまとめて入金される」という仕組みこそが、入金額と売上額がズレる最大の理由です。銀行口座だけを見ていると、実際に売れた金額ではなく、手数料が引かれた後の金額しか見えないため、そのまま記帳すると売上を少なく計上してしまうことになります。

差額の正体は手数料・返金・タイミングのズレ

入金額と売上額が合わない原因は、おおむね次の3つに整理できます。

  • 決済手数料:決済代行会社に支払う利用料。売上から差し引かれて入金されることが多い

  • 返金・キャンセル:お客様への返金分が、後の入金からマイナスされる

  • 締め日と入金日のタイミングのズレ:今月の売上が翌月にまとめて入金されるなど

これらを一つひとつ分けて考えると、「なぜ差額が出るのか」がはっきりします。記帳の基本は、この差額を手数料なのか返金なのかタイミングのズレなのか、性質ごとに切り分けて処理することにあります。

手数料が相殺された入金の記帳方法

原則は「売上は総額、手数料は別建て」で記帳する

もっとも大切な考え方は、売上は手数料を引く前の総額で計上し、手数料はそこから別に費用として計上することです。たとえば売上が10万円、決済手数料が3千円で、口座への入金が9万7千円だったとします。このとき「入金された9万7千円を売上にする」のではなく、「売上10万円」と「支払手数料3千円」に分けて記帳します。

この処理を仕訳のイメージで表すと、入金された9万7千円は普通預金の増加、3千円は支払手数料(または雑費)、そして合計の10万円が売上高、という形になります。手数料を差し引いた後の金額だけを売上にしてしまうと、本当の売上規模が帳簿に正しく残らず、経費として計上できるはずの手数料も漏れてしまいます。売上から差し引かれた手数料そのものの記帳は振込手数料・差引入金の記帳で詳しく扱っています。

手数料を相殺したまま記帳するとどうなるか

入金額の9万7千円をそのまま売上にする「相殺処理」は、一見シンプルに見えますが、いくつかの不都合があります。まず、売上が実際より小さく見えてしまいます。次に、支払った手数料が経費に計上されないため、本来より所得が大きく計算され、税額が増えてしまう可能性があります。手数料は立派な必要経費ですから、きちんと別建てで計上して経費に算入するのが基本です。

なお、消費税の課税事業者の方の場合、売上と手数料を相殺してしまうと、課税売上高の集計や仕入れにかかる消費税の計算にも影響することがあります。総額で記帳しておくほうが、後々の集計でも安全です。消費税の基本的なしくみは国税庁「No.6101 消費税の基本的なしくみ」で確認できます。

明細を見ながら売上と手数料を分けるコツ

決済代行会社の管理画面では、たいてい「売上総額」「手数料」「振込額(差引後の金額)」が一覧で確認できます。記帳のときは、この明細を手元に開き、振込額そのものではなく売上総額と手数料の2つの数字を拾うようにしましょう。月ごとに明細をダウンロードして保存しておくと、後から見返したときの根拠資料にもなり、確定申告の際にも役立ちます。

返金・キャンセルやタイミングのズレへの対応

返金が発生したときの考え方

お客様への返金が発生すると、決済代行会社からの次の入金額が、その分だけ少なくなることがあります。この場合も、入金額をそのまま売上にするのではなく、いったん計上した売上を取り消す処理(売上の戻し)として扱うのが基本です。返金が当月の売上に対するものか、前月以前の売上に対するものかで処理の考え方が変わることもあるため、明細でどの取引の返金なのかを確認しておきましょう。

月末の売上が翌月入金になる「ズレ」の扱い

決済代行サービスでは、月末締めの売上が翌月にまとめて入金されることがよくあります。発生主義(売上が確定した時点で計上する考え方)で記帳する場合、売上は「お客様が購入した月」に計上し、入金は「実際に振り込まれた月」に処理します。この間の差額は、まだ入金されていない売上として「未収入金」などの勘定で一時的に管理します。

少し難しく感じるかもしれませんが、要は「売れた月」と「お金が入った月」がずれているだけです。年をまたぐ12月の売上が翌年1月に入金されるようなケースでは、どちらの年の売上にするかで所得が変わるため、特に丁寧に区別することが大切です。決算での未収・未払の立て方は未収収益・未払費用を正しく計上する手順が参考になります。

口座振替やネット銀行ならではの手数料

ネット銀行を使っていると、他行宛の振込手数料や、決済サービスからの引き落としなど、細かな入出金が頻繁に発生します。これらの振込手数料も、原則として支払手数料などの経費として計上できます。少額だからと放置せず、性質ごとに勘定科目を決めておくと、毎月の記帳がぶれずに進みます。キャッシュレス決済の手数料の科目はキャッシュレス売上・決済手数料の記帳と科目の選び方で確認できます。

後から見返せる摘要欄の整え方

摘要は「誰と・何の・いつ分か」を意識する

摘要欄は、その取引が何だったのかを後から思い出すためのメモです。ネット銀行の明細をそのまま取り込むと、摘要が決済代行会社の名前や英数字の羅列だけになり、何の入金か判別できないことがよくあります。これを防ぐには、摘要に取引相手・取引内容・対象期間を盛り込むのがおすすめです。たとえば「○○決済 △月分 売上入金」のように書いておくと、半年後に見返しても一目で内容がわかります。

表記をパターン化して統一する

摘要の書き方は、毎回その場で考えるのではなく、あらかじめパターンを決めておくと記帳が速くなり、検索もしやすくなります。

  • 売上入金:「(決済サービス名)(対象月)分 売上入金」

  • 手数料:「(決済サービス名)(対象月)分 決済手数料」

  • 返金:「(決済サービス名)(取引内容)返金」

このように決まった形にしておけば、同じ種類の取引を後からまとめて確認したいときに、摘要で検索するだけで一覧できます。表記が人によってばらばらだと、せっかくの明細も活かしきれません。

会計ソフトの自動取込を使うときの注意

ネット銀行や決済サービスと会計ソフトを連携させると、明細が自動で取り込まれてとても便利です。ただし、取り込まれた金額は「手数料が引かれた後の入金額」であることが多いため、そのまま登録すると前述の相殺処理になってしまいます。自動取込はあくまで下書きと考え、売上総額と手数料に分ける一手間を加えることで、帳簿の正確さを保てます。連携で取り込んだ取引には、摘要を自分の言葉で補っておくと、より分かりやすくなります。自動取込を活かした効率化の進め方は記帳をAI-OCRで効率化する実務にまとめています。

記帳をラクにするための日々の工夫

月次で明細を突き合わせる習慣をつける

記帳のズレやミスは、月をまたいで放置するほど原因をたどるのが難しくなります。月に一度、決済代行会社の明細と、銀行口座の入金額、そして会計ソフトの売上を突き合わせて確認する習慣をつけましょう。「売上総額-手数料=入金額」になっているかをチェックするだけでも、計上漏れや二重計上を早い段階で見つけられます。

勘定科目と摘要のルールを最初に決めておく

決済手数料は「支払手数料」、振込手数料も「支払手数料」、というように、どの取引をどの勘定科目で処理するかを最初に決めておくと、毎月迷わずに記帳できます。摘要のパターンと合わせて自分なりのルールをメモしておけば、年の途中で処理がぶれることもなく、確定申告のときの集計もスムーズになります。

とはいえ、決済サービスごとに異なる明細を毎月突き合わせ、総額と手数料に分ける作業を本業の合間に続けるのは簡単ではありません。この手間そのものを外に出したいときは、記帳をまるごと預けるやり方もあります。実際にお預かりする帳簿でも、決済代行の入金をそのまま売上にしていて手数料が抜けている、というつまずきは繰り返し見られます。

よくある質問

Q. 売上は手数料を引いた後の入金額で計上してもよいですか?

原則としては、手数料を引く前の売上総額で計上し、手数料は別に経費として計上する方法をおすすめします。入金額だけを売上にすると、本当の売上規模が帳簿に残らないうえ、経費にできるはずの手数料が漏れてしまい、結果として税額が増えてしまうことがあります。明細で売上総額と手数料を分けて記帳しておくと安心です。

Q. 年末の売上が翌年1月に入金される場合、どちらの年の売上になりますか?

発生主義で記帳している場合、売上はお客様が購入した(売上が確定した)時点の年に計上します。したがって、12月に売れたものは入金が翌年1月であっても、原則として前年の売上になります。年をまたぐ取引は所得の計算に直結するため、明細で取引日を確認し、丁寧に区別することが大切です。

Q. 決済代行の明細はどのくらい保存しておくべきですか?

決済代行会社の明細は、売上と手数料の根拠を示す大切な資料です。帳簿や領収書などと同じく、一定期間の保存が求められますので、毎月ダウンロードしてまとめて保管しておくことをおすすめします。帳簿や書類の保存義務は国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」で確認できます。

まとめ|差額を性質ごとに分ければ帳簿は整う

ネット銀行や決済代行を使ったときの入出金は、「入金額=売上」と考えてしまうとズレが生じます。差額の正体が手数料なのか、返金なのか、入金タイミングのズレなのかを性質ごとに切り分け、売上は総額で、手数料は別建てで記帳すること、そして摘要に取引相手と内容と対象期間を残すことが、後から見返せる整った帳簿への近道です。

決済サービスごとに明細の形式は異なり、毎月この突き合わせと仕訳を本業の合間に正確にこなすのは、思いのほか大きな負担です。数字が合わないまま確定申告を迎える前に、記帳そのものを外に任せてしまう選択もあります。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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