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2026/7/18

個人事業主の資産形成と節税を両立する制度の組み合わせ方を解説

  • 税金

個人事業主が資産形成と節税を両立するには、掛金が所得控除になる小規模企業共済・iDeCo・国民年金基金を、資金繰りに合わせて無理なく組み合わせるのが基本です。制度ごとの特徴と、続けやすい優先順位の付け方を整理します。

個人事業主には会社員のような退職金がなく、老後資金も病気やケガで働けなくなったときの備えも、すべて自分で準備する必要があります。とはいえ、収入から税金や国民年金・国民健康保険を支払うと、将来への備えに回せるお金はなかなか残らない、と悩む方は少なくありません。

☑ 将来に向けて資産形成をしたいが、税金で手元のお金が減るのがもったいないと感じる

☑ iDeCoや小規模企業共済など制度の名前は知っているが、どれを優先すべきか判断できない

☑ いくつもの制度を同時に使うと、かえって資金繰りが苦しくならないか不安だ

ここでは、掛金が所得控除になる「節税しながら積み立てられる制度」の特徴と、無理のない組み合わせ方・優先順位の考え方を取り上げます。自分の状況に合った積み立ての順番がイメージできるようになります。

なぜ「資産形成」と「節税」をセットで考えるのか

個人事業主には退職金も厚生年金もない

会社員には、勤め先が半分負担してくれる厚生年金や、退職時の退職金があります。一方で個人事業主が加入する国民年金は、受け取れる額が厚生年金に比べて少なく、退職金にあたる制度もありません。つまり、老後の生活費や引退後の資金は、現役のうちに自分の力で積み上げておく必要があるということです。

この「自分で備える」部分を、国はいくつかの制度を通じて後押ししています。これらの制度の多くは、積み立てた掛金がそのまま所得控除になるため、将来の資金を準備しながら、その年の税金も軽くできるという二重のメリットがあります。こうした制度を活かす前提として、日々の帳簿づけを記帳代行に任せて所得を正しく把握しておくと、掛金の調整もしやすくなります。

所得控除で「実質的な利回り」が上乗せされる仕組み

掛金が所得控除になるということは、その分だけ課税される所得が減り、所得税と住民税が下がるということです。たとえば所得税と住民税を合わせた負担率が高い方ほど、同じ掛金でも軽減される税額が大きくなります。所得税は課税所得が大きいほど税率が上がる仕組みで、税率の区分は国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」(国税庁 No.2260)で確認できます。

これは、純粋な運用利回りとは別に、掛けた時点で税の軽減という形のリターンが得られると言い換えることもできます。単に銀行口座に貯金していくよりも、節税の効果を含めて考えると、効率よく資産を増やせる可能性があるわけです。

資金繰りとのバランスを忘れない

一方で、これらの制度の多くは、原則として途中で引き出せなかったり、解約のタイミングによっては元本割れしたりする点に注意が必要です。節税に気を取られて掛金を大きくしすぎると、日々の生活費や事業の運転資金が不足してしまいます。資産形成は、あくまで無理なく続けられる金額から始めることが大前提です。

節税しながら積み立てられる主な制度

小規模企業共済 ── 個人事業主の「退職金」をつくる

小規模企業共済は、個人事業主や小規模な会社の役員が、廃業や引退に備えて積み立てる制度です。掛金は月額1,000円から7万円までの範囲で設定でき、支払った掛金は全額が所得控除の対象になります。掛金額ごとの節税効果の目安は小規模企業共済の節税効果の試算で確認できます。

受け取るときは、廃業や65歳以上での受け取りなどの条件に応じて、退職所得や公的年金等の雑所得として扱われ、税制上も優遇されています。まさに個人事業主の退職金づくりにふさわしい制度で、資産形成と節税を両立させたい方が、まず検討したい候補のひとつです。

iDeCo(個人型確定拠出年金)── 老後資金を運用しながら準備する

iDeCoは、自分で選んだ運用商品でお金を積み立て、老後に年金または一時金として受け取る私的年金制度です。個人事業主の場合、国民年金基金などと合わせた掛金の上限が定められていますが、その範囲で積み立てた掛金は全額が所得控除になります。iDeCoで所得控除を受ける節税の考え方はiDeCoで所得控除を受ける節税にまとめています。

iDeCoの特徴は、運用中に得られた利益にも税金がかからない点です。さらに受け取るときも、退職所得控除や公的年金等控除といった優遇が用意されています。ただし原則として60歳まで引き出せないため、当面使う予定のない「老後専用のお金」として位置づけることが大切です。

国民年金基金・付加年金 ── 公的年金の上乗せを厚くする

国民年金基金は、国民年金に上乗せして年金を受け取れるようにする制度で、掛金は社会保険料控除として全額が所得控除になります。社会保険料控除の範囲は国税庁タックスアンサーNo.1130「社会保険料控除」(国税庁 No.1130)で確認できます。iDeCoとは掛金の上限を共有しているため、両方を使う場合は合計額に注意が必要です。国民年金基金の節税の目安は国民年金基金で上乗せする節税で解説しています。

また、月々わずかな付加保険料を国民年金に上乗せして納める「付加年金」という仕組みもあります。少額ながら、納めた分を比較的早く回収できる設計になっており、手軽に老後の備えを増やす選択肢として知っておくとよいでしょう。

制度をどう組み合わせるか ── 優先順位の考え方

まずは生活防衛資金を確保する

制度を使い始める前に、半年分程度の生活費や事業の運転資金を、いつでも引き出せる預貯金として確保しておくことをおすすめします。前述のとおり、共済やiDeCoは原則すぐには引き出せません。手元の現金が乏しいまま掛金を増やすと、急な出費や売上の落ち込みに対応できなくなってしまいます。

「引き出しやすさ」と「節税効果」で優先度を決める

余裕資金ができたら、次の観点で優先順位を考えると整理しやすくなります。

  • いざというときの備えを重視するなら、廃業時などに受け取れる小規模企業共済が候補になります

  • 老後資金の運用を重視し、長期で増やしたいならiDeCoが向いています

  • 公的年金の上乗せを確実に増やしたいなら、国民年金基金や付加年金を検討します

一般的には、比較的柔軟に扱える小規模企業共済を軸にしつつ、老後資金としてiDeCoを併用する、といった組み合わせがイメージしやすいでしょう。どれを優先するかは、年齢・家族構成・事業の安定度によって変わるため、自分の状況に当てはめて考えることが大切です。

掛金は「年単位」で柔軟に見直す

多くの制度では、掛金の増額や減額を後から変更できます。事業が好調な年は掛金を厚くして節税効果を高め、売上が落ち込んだ年は無理に続けず減額する、といった調整が可能です。一度決めた金額を固定する必要はありません。毎年の所得の見通しに合わせて、年単位で掛金を見直していく姿勢が、長く続けるコツになります。

制度を使うときに注意したいこと

節税だけを目的にしない

掛金が所得控除になることは大きな魅力ですが、節税額だけを見て判断するのは禁物です。たとえば小規模企業共済は、加入期間が短いうちに任意解約すると、受け取れる額が掛けた額を下回ることがあります。あくまで長く続けて将来の資産をつくることが本来の目的であり、節税はその副産物だと考えると、判断を誤りにくくなります。

受け取るときの税金まで見据える

これらの制度は、掛けるときに節税できる反面、受け取るときには所得として課税の対象になります。とはいえ、退職所得控除や公的年金等控除といった優遇が用意されているため、受け取り方を工夫することで税負担を抑えられる場合があります。「いつ・どの形で受け取るか」まで含めて、長い目で計画を立てておくと安心です。なお、将来、事業用資産を次の世代へ引き継ぐことを考えているなら、事業用資産を引き継ぐ個人版事業承継税制も知っておくとよいでしょう。

証明書類を保管し、申告で確実に控除を受ける

掛金を所得控除として申告するには、それぞれの制度から送られてくる控除証明書が必要です。小規模企業共済の掛金払込証明書、iDeCoの小規模企業共済等掛金払込証明書、国民年金基金の社会保険料控除証明書などは、確定申告の時期まで大切に保管しておきましょう。証明書を紛失したり、申告書への記入を忘れたりすると、せっかくの節税効果を取りこぼしてしまいます。実際にお預かりする資料でも、控除証明書だけが見当たらず探し直しになるケースは珍しくありません。日々の帳簿づけと合わせて、控除関連の書類も整理しておくことが、節税を確実なものにする近道です。

よくある質問

Q. 小規模企業共済とiDeCoは両方同時に使えますか?

はい、両方に加入し、それぞれの掛金を所得控除として申告することができます。両者は別々の制度で、掛金の上限も独立しているため、資金に余裕があれば併用することで節税効果と資産形成のスピードを高められます。ただし、合計の掛金が家計や事業の資金繰りを圧迫しないよう、無理のない金額に収めることが大切です。

Q. 赤字の年や所得が少ない年でも、これらの制度を使うメリットはありますか?

所得控除は、そもそも課税される所得があってこそ税金が軽くなる仕組みです。赤字や所得がごく少ない年は、節税という面でのメリットは小さくなります。ただし資産形成という目的そのものは続ける価値があります。所得が少ない年は掛金を減額しておき、事業が回復したら増やす、といった柔軟な使い方を検討するとよいでしょう。

Q. どの制度から始めればよいか、自分では判断できません。

年齢や家族構成、事業の安定度、当面使う予定のない資金がどのくらいあるかによって、適した制度は変わります。一般的には、引き出しやすさと節税効果のバランスがよい小規模企業共済から検討する方が多いですが、老後資金を重視するならiDeCoを軸にする選択もあります。迷う場合は、税理士などの専門家に自分の状況を伝えて相談すると、優先順位を整理しやすくなります。

まとめ|節税は「続けられる範囲」で資産形成と両立させる

個人事業主にとって、掛金が所得控除になる制度は、将来への備えと節税を同時に進められる心強い味方です。小規模企業共済で退職金をつくり、iDeCoで老後資金を運用し、必要に応じて国民年金基金や付加年金で公的年金を上乗せする ── こうした制度を、自分の資金繰りに合わせて無理なく組み合わせていくことが、資産形成と節税を両立させる王道といえます。まずは生活防衛資金を確保したうえで、続けられる金額から始めましょう。

こうした制度を最大限に活かすには、日々の帳簿づけが正確に整っていて、所得の見通しが立っていることが前提になります。本業が忙しい中で、記帳から確定申告、控除証明書の整理までをすべて自分で行うのは、思っている以上に手間がかかります。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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