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個人版事業承継税制で事業用資産を引き継ぐ...

2026/7/15

個人版事業承継税制で事業用資産を引き継ぐ|贈与税・相続税の納税猶予を解説

  • 税金

☑ 親から個人事業を引き継ぐ予定だが、店舗や機械を譲り受けたときの贈与税・相続税が心配だ

☑ 「個人版事業承継税制」という言葉は聞いたが、自分が使えるのか、どんな手続きが必要なのかわからない

☑ 納税猶予を受けた後に廃業や売却をしたら、猶予された税金がどうなるのか不安だ

個人事業を親から子へ、あるいは先代から後継者へと引き継ぐとき、事業に使ってきた土地・建物・機械などをまとめて譲り受けると、思いのほか大きな贈与税や相続税がかかることがあります。「事業は続けたいのに、税金の負担で資産を手放すことになっては本末転倒だ」と悩む方は少なくありません。

そこで活用を検討したいのが「個人版事業承継税制」です。本記事では、この制度の基本的な仕組み、対象となる資産や人、手続きの流れ、そして納税猶予が打ち切られるケースまでを、個人事業主の方向けにやさしく解説します。読み終えるころには、自分の事業承継でこの制度を検討すべきかどうかの判断材料がそろうはずです。

個人版事業承継税制とはどんな制度か

事業用資産にかかる税金を「猶予」する仕組み

個人版事業承継税制とは、個人事業主が後継者へ事業を引き継ぐ際、事業に使っている資産(特定事業用資産)にかかる贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。生前に贈与で引き継ぐ場合は贈与税、亡くなったことで相続する場合は相続税が、それぞれ対象になります。

ポイントは「免除」ではなく「猶予」から始まる点です。後継者が事業を続けている間は納税を待ってもらえ、一定の要件を満たし続けたうえで、最終的には猶予されていた税額の納付が免除される、という流れになります。事業をやめずに引き継いでいくことを支援するための制度だとイメージするとわかりやすいでしょう。

法人版との違い

事業承継税制には、株式会社などの自社株を対象とする「法人版」と、個人事業の資産を対象とする「個人版」があります。法人版は会社の株式を引き継ぐ場面で使う制度であるのに対し、個人版は法人化していない個人事業主のための制度です。商店や工場、士業の事務所、農家など、個人で事業を営んでいる方が後継者へバトンタッチする場面で関わってきます。

適用には期限が設けられている

個人版事業承継税制は、期間を区切って設けられた制度です。一定期間内に承継計画を提出し、その後一定期間内に贈与や相続による承継を行うことが前提とされています。制度の適用を受けられる期限は法改正で変わることがあるため、利用を検討する際は、必ず最新の期限を国税庁や税理士などの専門家に確認してください。期限を逃すと制度自体が使えなくなるため、早めの情報収集が大切です。

対象となる資産と人の要件

対象になる「特定事業用資産」とは

納税猶予の対象になるのは、先代事業者が事業に使っていた一定の資産で、確定申告の青色申告書に添付する貸借対照表に計上されているものが中心です。具体的には、次のようなものが含まれます。

  • 事業に使っていた土地(面積に上限あり)

  • 事業に使っていた建物(床面積に上限あり)

  • 機械・器具備品、車両など事業用の減価償却資産

一方で、事業に関係のない自宅部分や、純粋な投資目的で持っている資産などは対象外です。あくまで「事業を続けるために必要な資産」が対象になる、と押さえておきましょう。

先代事業者(贈与する側・被相続人)の要件

資産を引き継がせる側にも要件があります。代表的なものとして、青色申告の承認を受けて事業を行っていたことが挙げられます。日々の帳簿づけをきちんと行い、青色申告で申告してきた実績が前提になるということです。日ごろの記帳の積み重ねが、こうした制度を使えるかどうかの土台になります。

後継者(受け取る側)の要件

事業を引き継ぐ後継者側にも、いくつかの条件があります。一般的には次のような点が求められます。

  • 承継計画に後継者として記載されていること

  • 事業を引き継いだ後、青色申告の承認を受けて事業を継続すること

  • 引き継いだ資産を事業に使い続けること

細かな要件は個々の状況によって判断が分かれるため、「自分は当てはまりそうか」を早い段階で専門家に相談しておくと安心です。

制度を使うまでの手続きの流れ

承継計画の作成と提出

個人版事業承継税制を使うには、まず承継計画を作成し、認定支援機関(税理士や商工会議所など)の所見を記載してもらったうえで、都道府県知事に提出します。承継計画には、後継者は誰か、どのように事業を引き継いでいくのかといった見通しを記載します。この承継計画の提出が、制度を利用するための最初の入り口になります。

贈与または相続の実行と認定申請

承継計画を出したうえで、実際に贈与または相続によって事業用資産を後継者へ引き継ぎます。その後、都道府県知事に対して認定を申請し、要件を満たしていることの認定を受けます。贈与か相続かによって申請のタイミングや必要書類が異なるため、スケジュール管理が重要になります。

税務署への申告と担保の提供

認定を受けたら、贈与税または相続税の申告期限までに、納税猶予の適用を受ける旨を記載した申告書を税務署へ提出します。あわせて、猶予される税額に見合う担保を提供する必要があります。一般的には、納税猶予の対象となる事業用資産そのものを担保にすることが多いとされています。申告期限を過ぎてしまうと猶予を受けられなくなるため、期限管理は特に注意したいポイントです。

納税猶予を続けるための注意点

継続届出書の提出を忘れない

納税猶予はいったん受けたら終わり、ではありません。猶予を継続するためには、税務署に対して定期的に継続届出書を提出し、引き続き事業を続けていることなどを報告する必要があります。この届出を忘れると、それだけで猶予が打ち切られ、猶予されていた税金に加えて利子税まで納めなければならなくなることがあります。スケジュールに組み込んで、提出漏れがないように管理しましょう。

事業の継続と資産の保有が前提

制度の根っこにあるのは「事業を続けてもらう」という考え方です。そのため、後継者が事業をやめてしまったり、対象となった事業用資産を事業に使わなくなったりすると、猶予が打ち切られる場合があります。引き継いだ資産を事業のために使い続けることが、猶予を維持するうえでの基本姿勢になります。

猶予が打ち切られる主なケース

猶予されている税金を、利子税とあわせて納めなければならなくなる代表的なケースには、次のようなものがあります。

  • 後継者が事業を廃止した場合

  • 対象資産を売却・譲渡した場合(事業に使わなくなった場合)

  • 青色申告の承認が取り消された場合

  • 継続届出書を期限までに提出しなかった場合

一方で、後継者が亡くなった場合や、次の後継者へさらに事業承継税制を使って引き継いだ場合など、一定の事由に当てはまると、猶予されていた税額の納付が免除されることがあります。「どうなったら免除され、どうなったら打ち切られるのか」を制度の利用前に整理しておくことが、安心して引き継ぐためのカギになります。

使うかどうかを判断するときの考え方

メリットだけでなく負担も理解する

個人版事業承継税制の最大のメリットは、まとまった税負担をすぐに用意しなくても事業を引き継げる点です。一方で、承継計画や認定申請、毎回の継続届出といった手続きの手間が長期間にわたって続くという側面もあります。猶予が続いている間は、要件を満たし続けているかを常に意識する必要があります。メリットと手間の両方を理解したうえで判断することが大切です。

ほかの制度との比較も検討する

事業用資産を引き継ぐ際には、小規模宅地等の特例など、ほかにも税負担を軽くできる仕組みがあります。状況によっては、納税猶予を使うより別の特例を使う方が結果的にシンプルで有利になることもあります。どの方法が自分の事業や家族の状況に合っているかは、複数の選択肢を並べて比較するのがおすすめです。

早めの準備が選択肢を広げる

この制度は、承継計画の提出という事前の準備が前提になっています。「いざ相続が起きてから」では間に合わないことも多いため、後継者の方向性が見えてきたら、できるだけ早く検討を始めることが、選べる選択肢を広げることにつながります。日ごろから帳簿を整え、事業用資産の状況を把握しておくことも、スムーズな承継の準備になります。

よくある質問

Q. 個人版事業承継税制を使えば、税金が完全にゼロになるのですか?

この制度はあくまで「納税の猶予」から始まる仕組みで、最初からゼロになるわけではありません。後継者が事業を続け、要件を満たし続けたうえで、後継者の死亡など一定の事由に当てはまったときに、猶予されていた税額の納付が免除されます。途中で事業をやめたり対象資産を手放したりすると、猶予されていた税金を利子税とあわせて納める必要が生じる点に注意しましょう。

Q. 不動産賃貸業のような事業でも対象になりますか?

制度には対象となる事業の範囲についての考え方があり、規模の小さな不動産貸付業など一部の事業は、原則として対象外とされる場合があります。自分の事業が対象になるかどうかは、事業の内容や規模によって判断が分かれるため、利用を検討する段階で税理士などの専門家に確認することをおすすめします。

Q. 後継者が複数いる場合はどうなりますか?

後継者の人数や引き継ぎ方によって、適用できる範囲や手続きの考え方が変わってきます。誰が事業の中心を担うのか、資産をどう分けるのかは、家族間のトラブルを避けるうえでも重要です。承継計画を作る段階で全体像を整理し、関係者で方針を共有しておくと、後々の手続きが進めやすくなります。

まとめ:個人版事業承継税制は「早めの準備」と「継続」がカギ

個人版事業承継税制は、個人事業の事業用資産にかかる贈与税・相続税の納税を猶予し、事業の引き継ぎを後押しするための制度です。承継計画の提出から始まり、認定申請、税務署への申告と担保提供、その後の継続届出まで、長い期間にわたって要件を満たし続ける必要があります。メリットと手間の両面を理解し、ほかの特例とも比べながら、早めに準備を進めることが上手に活用するためのポイントです。

ただ、この制度の前提となる青色申告や、日々の帳簿づけ、事業用資産の管理は、本業が忙しい中ですべて自分で行うのは大きな負担になりがちです。承継の手続きに気を取られて日常の記帳が滞ってしまっては、肝心の要件を満たせなくなるおそれもあります。

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