個人事業主が引っ越した年の確定申告|住所変更と異動届を解説
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確定申告

個人事業主が引っ越した年の確定申告は、申告書に「提出時点の住所」と「その年1月1日の住所」を分けて書くのが原則です。税務署への届出、提出先の考え方、引っ越し費用の経費計上まで、実務に沿って順に整理します。
個人事業主にとって引っ越しは、住む場所が変わるだけでなく、確定申告や税務手続きにも影響する出来事です。会社員なら会社が住民票や年末調整で処理してくれますが、個人事業主は住所が変わったときの届出や、申告書に記載する住所を自分で判断しなければなりません。一つずつ整理していけば、引っ越しの年の手続きは決して難しくありません。
☑ 年の途中で引っ越したけれど、確定申告書にはどの住所を書けばいいの?
☑ 税務署に出す「住所変更の届出」って必要なのかわからない
☑ 引っ越し費用や敷金・礼金は経費にできるのか知りたい
引っ越した年の確定申告書に書く住所はどっち?
原則は「提出するときの住所」
確定申告書に記載する住所は、原則として申告書を提出する時点での住所(現住所)です。たとえば1年の途中で引っ越し、確定申告の時期(原則2月16日〜3月15日)には新しい住所に住んでいるなら、申告書には新住所を書きます。1年間住んでいた旧住所ではない、という点がよく勘違いされるポイントです。確定申告そのものの基本は、国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」で確認できます。
申告書には「住所」と「令和○年1月1日の住所」を記入する欄があります。後者は住民税の課税を行う自治体を決めるための情報で、その年の1月1日時点でどこに住んでいたかを書きます。つまり、提出時の住所と1月1日時点の住所がずれる場合があり、両方をそれぞれ正しく書く必要があります。
1月1日時点の住所が住民税に関係する理由
住民税は、その年の1月1日に住んでいた市区町村が課税します。年の途中で引っ越しても、その年の住民税は前の自治体に納める仕組みです。確定申告書に「1月1日の住所」を書く欄があるのはこのためで、空欄にしたり間違えたりすると住民税の通知が正しく届かないことがあります。個人住民税の課税のしくみは総務省「個人住民税」の解説がわかりやすく、引っ越しをした年は特に、この欄を意識して記入しましょう。
事業所と自宅が別の場合の住所
自宅とは別に事務所や店舗を借りている方は、確定申告書の「住所」欄に自宅を、「事業所等」欄に事業所の所在地を書くのが一般的です。引っ越しで自宅だけが変わったのか、事業所も移転したのかによって、変更すべき届出や記載内容が変わってきます。複数の拠点や屋号を持つ場合の帳簿の整理は、複数の屋号・店舗を持つ場合の帳簿の分け方も参考になります。まずは「何が」「どこからどこへ」変わったのかを整理しておくと、手続きの全体像が見えやすくなります。
税務署に出す「異動届」とは何か
個人事業主が住所変更時に出す届出
引っ越しで納税地(多くの場合は自宅住所)が変わったときは、税務署にその旨を知らせる届出を提出します。かつては「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」が使われていましたが、制度の見直しにより、現在は確定申告書に新しい納税地を書いて提出すれば足りる扱いに変わってきています。とはいえ、引っ越しのタイミングや状況によって必要な対応は異なるため、最新の取り扱いは提出前に税務署や国税庁の案内で確認しておくと安心です。
ポイントは、税務署が「あなたの納税地が変わったこと」を把握できる状態にすることです。確定申告書の住所欄を正しく書く、必要に応じて届出を出す、という二段構えで考えておけば大きな間違いは防げます。
開業届に書いた住所との関係
開業時に提出した「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」には、納税地や事業所の住所を記載しています。引っ越しで自宅兼事務所が変わった場合、開業届の内容と実態がずれることになります。事業所の所在地が変わったときは、その変更を税務署に知らせる届出が必要になるケースがあります。自宅の移転なのか、事業所の移転なのかで扱いが異なるので、自分のケースがどちらかをはっきりさせておきましょう。
都道府県・市区町村への届出も忘れずに
個人事業主は、国(税務署)だけでなく都道府県税事務所にも開業の届出を出しているのが通常です。事業所を移転した場合は、こうした地方への届出も変更が必要になることがあります。税務署への手続きだけで完結すると思い込みやすいので、「国・都道府県・市区町村」という三つの窓口があることを頭に入れておくとよいでしょう。地方移住や二拠点生活を始めた場合の住所の扱いは、地方移住・二拠点生活を始めた人の確定申告でも詳しく取り上げています。
提出先の税務署は変わるのか
納税地を管轄する税務署が提出先
確定申告書の提出先は、提出時点の納税地を管轄する税務署です。引っ越しで納税地が別の税務署の管轄エリアに変わった場合、引っ越し後の確定申告は新しい住所を管轄する税務署に提出することになります。同じ市内の引っ越しでも管轄税務署が変わることがあるため、「自分の新住所はどの税務署の管轄か」を国税庁の管轄案内などで一度確認しておきましょう。
e-Taxを使っている場合
e-Tax(電子申告)を利用している方は、登録情報の住所を更新しておくことが大切です。住所が古いままだと、納税地と登録情報がずれてしまい、通知や手続きで不都合が出ることがあります。電子申告は提出先を意識せずに送信できますが、登録住所のメンテナンスは自分で行う必要がある点に注意しましょう。
引っ越し直後の申告で迷ったら
「申告期限の直前に引っ越した」「提出のタイミングと引っ越しが重なった」といった場合は、どちらの税務署に出すべきか迷うことがあります。基本は提出時点の納税地で判断しますが、判断が難しいときは早めに税務署へ相談するのが確実です。引っ越しにともなう手続きや按分の判断まで手が回らないときは、引っ越しの年の確定申告を代行してもらう方法を検討するのも一つの手です。期限ぎりぎりに慌てないよう、引っ越しが決まった段階で必要な手続きをリストアップしておくと安心です。
引っ越し費用や敷金・礼金は経費になる?
事業に関係する部分だけが経費
引っ越し費用が経費になるかどうかは、その引っ越しが事業のためかどうかで判断します。自宅兼事務所を移転したケースで、事業に使う割合に応じて費用を按分し、事業分だけを経費に計上するのが基本的な考え方です。純粋に私生活のための引っ越しは、原則として事業の経費にはなりません。家事按分の考え方を当てはめて、無理のない合理的な割合で分けることがポイントです。按分そのものの考え方は、複数事業を営む場合の収支内訳と按分の考え方もあわせて確認しておくと理解が深まります。
敷金・礼金・仲介手数料の扱いの違い
事務所として借りる物件の契約費用は、性質によって扱いが分かれます。一般的な考え方は次のとおりです。
礼金・仲介手数料:返ってこない費用で、金額や内容に応じて経費(または繰延資産として一定期間で按分)として処理することが多い項目です。
敷金・保証金:退去時に返還される部分は預け金(資産)として扱い、経費にはなりません。返還されない部分があれば、その分は費用として処理します。
家賃・共益費:事業に使う割合に応じて按分し、毎月の経費として計上します。
「払ったお金=全部経費」ではない点が、敷金・礼金まわりのつまずきやすいところです。契約書で返還の有無を確認しながら、項目ごとに仕分けることが大切です。
領収書・契約書はまとめて保管
引っ越しに関わる費用は、引っ越し業者の領収書、不動産会社の契約書や明細、敷金・礼金の内訳など、書類が多岐にわたります。後から「これは経費にできたのに証拠がない」とならないよう、引っ越し関連の書類は一つのまとまりとして保管しておきましょう。家事按分の割合を決めた根拠(間取りや使用面積のメモなど)も残しておくと、後々の説明がスムーズになります。記帳代行の現場でも、引っ越しの年は書類が急に増えて整理が追いつかない、というご相談が目立ちます。
引っ越しの年に確認しておきたいその他の手続き
住民票・各種登録住所の更新
確定申告まわりだけでなく、取引先への住所変更の連絡、銀行口座やクレジットカードの登録住所、各種サービスの請求先住所なども、引っ越しを機に見直しておきたいところです。請求書や郵送物が旧住所に届き続けると、入金確認や書類のやり取りに支障が出ることがあります。事業で使っている連絡先は、漏れなく更新しましょう。
青色申告をしている場合の注意
青色申告で帳簿を付けている方は、引っ越しがあっても帳簿の継続性は変わりません。事業用の支出と私用の支出をきちんと分けて記帳していけば、青色申告特別控除(最大65万円)の要件にも影響しません。引っ越しでバタバタする時期に記帳が滞ると、思わぬところで要件を落とすこともあるため、青色申告が取り消される条件と再申請の方法もあわせて確認しておくと安心です。領収書を貯め込まず、こまめに記帳しておくことが後の申告をラクにします。
スケジュールを早めに把握しておく
引っ越しは荷造りや各種契約で時間が取られ、帳簿付けが後回しになりがちです。確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)から逆算して、住所変更の届出、領収書の整理、按分割合の決定などをいつまでに済ませるか、ざっくりとでも計画しておくと慌てずに済みます。
よくある質問
Q. 年の途中で引っ越しましたが、確定申告書には旧住所と新住所のどちらを書きますか?
提出時点の現住所(新住所)を「住所」欄に書きます。あわせて、申告書にある「その年の1月1日の住所」欄には、1月1日時点で住んでいた住所(このケースでは旧住所)を記入します。住民税の課税先を決めるために、両方を正しく書くことが大切です。
Q. 同じ市内で引っ越した場合でも、税務署への手続きは必要ですか?
同じ市内でも管轄する税務署が変わることがあります。納税地が変われば、確定申告書に新住所を記載し、必要に応じて届出を行うことで税務署が把握できる状態にします。提出先の税務署が変わるかどうかは、新住所の管轄を確認しておくと確実です。
Q. 引っ越し費用は全額経費にできますか?
原則として、事業に関係する部分のみが経費になります。自宅兼事務所の移転なら、事業に使う割合に応じて按分した分を計上します。私生活のための引っ越しは経費にできません。敷金など返還される費用は資産として扱い、経費にならない点にも注意しましょう。
結論:住所と届出を整理すれば引っ越しの年も怖くない
個人事業主が引っ越した年の確定申告では、申告書に書く住所は「提出時点の現住所」、住民税のために「1月1日時点の住所」も別欄に記入する、というルールがポイントです。納税地が変わったら税務署が把握できるよう申告書や届出で対応し、提出先の税務署が変わるかどうかも確認しておきましょう。引っ越し費用や敷金・礼金は、事業に関係する部分だけを項目ごとに正しく仕分けることが大切です。
とはいえ、引っ越しは荷造りや契約手続きで忙しく、本業もこなしながら住所変更の届出や費用の按分、領収書の整理まで自分一人で行うのは大きな負担です。処理する書類が増えるぶん、記帳が後回しになって確定申告の直前に慌ててしまう、というケースも少なくありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








