複数事業を営む個人事業主の確定申告|事業ごとの収支内訳と按分の考え方を解説
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確定申告

複数事業を営む個人事業主の確定申告は、各収入の所得区分を見極め、同じ事業所得なら合算して決算書を1枚にまとめ、共通経費は合理的な基準で按分するのが基本です。事業ごとの収支内訳や按分の考え方を整理します。
一人で複数の事業を掛け持ちしていると、「これは事業ごとに分けて計算するの?」「共通の経費はどう振り分ける?」と手が止まってしまいがちです。仕事の種類が増えるほど売上も経費も入り組むため、整理のしかたに戸惑うのは自然なことです。
☑ デザインの仕事と物販など、複数の事業をしているが確定申告でどうまとめればいいかわからない
☑ 自宅家賃や通信費など、事業をまたいで使う経費の分け方に自信がない
☑ 事業ごとに帳簿を分けるべきか、一つにまとめてよいのか判断がつかない
一人で複数の事業を掛け持ちしていると、確定申告の段階で「これは事業ごとに分けて計算するの?」「共通の経費はどう振り分ければいいの?」と手が止まってしまう方は少なくありません。仕事の種類が増えるほど売上も経費も入り組んでくるため、整理のしかたに戸惑うのは自然なことです。
複数事業の所得区分の考え方、収支内訳書(青色申告決算書)のまとめ方、そして共通経費を事業ごとに分ける「按分」の実務を、順を追って確認していきます。事業が増えて記帳も申告も追いつかないときは、確定申告を丸ごと任せる代行という選択肢もあります。
複数事業を営むとは?まず所得区分を整理しましょう
同じ「事業所得」なら合算して申告する
個人事業主が複数の仕事をしている場合でも、それらがすべて事業所得に当たるなら、最終的には合算して一つの事業所得として申告します。たとえばWebデザインの受注と、ハンドメイド作品のネット販売を両方手がけている方は、どちらも継続的・反復的に行う事業であれば、合わせて事業所得として計算するのが基本です。
所得税は事業ごとに別々に税額を出すのではなく、すべての所得を合算したうえで税率を掛ける「総合課税」が原則です(所得税の全体の仕組みは国税庁タックスアンサーNo.1000「所得税のしくみ」が参考になります)。そのため、複数の事業を営んでいても、申告書(第一表)の事業所得の欄には合計額が入る、という点をまず押さえておきましょう。
事業所得と他の所得が混在するケース
注意したいのは、行っている仕事が必ずしもすべて事業所得とは限らない点です。所得は性質によって次のように区分が分かれます。
事業所得……継続的・反復的に行い、独立した事業といえるもの
不動産所得……アパートや駐車場の貸付など不動産の貸付による所得
雑所得……事業とまではいえない副収入や、他の区分に当てはまらない所得
たとえば「本業のコンサルティングは事業所得、保有するワンルームの家賃は不動産所得」というように、区分が異なる収入は同じ事業所得として合算できません。区分ごとに所得を計算し、それぞれを申告書に記載することになります。どの区分に当たるか迷う場合は、収入の規模や継続性、独立性などから総合的に判断します。
所得区分で迷ったときの考え方
事業所得か雑所得かは、その活動を「事業として営んでいるといえるか」で判断します。一般には、継続的に取り組み、ある程度の収入規模があり、帳簿書類をきちんと備え付けている場合は事業所得として扱いやすくなります。逆に、単発で得た収入や趣味の延長の少額収入は雑所得になりやすい傾向があります。判断に迷うときは、自己流で決め込まず税務署や専門家に確認すると安心です。
事業ごとの収支内訳はどうまとめる?
事業所得が複数でも決算書は1枚にまとめるのが基本
複数の事業がいずれも事業所得に当たる場合、青色申告なら「青色申告決算書」、白色申告なら「収支内訳書」は、原則として事業所得全体で1枚にまとめて作成します。売上(収入金額)も経費も、複数事業を合算した数字を1つの決算書に記載するイメージです。
「事業ごとに決算書を分けないといけないのでは」と心配される方もいますが、同じ事業所得であれば、所得税の計算上は合算した1セットで問題ありません。ただし、合算する前提として、事業ごとの売上と経費を内部でしっかり把握しておくことが大切です。後述する按分や、どの事業が黒字でどの事業が赤字かを見極めるためにも、事業別の数字は欠かせません。
所得区分が違う場合は計算書類を分ける
一方、事業所得と不動産所得のように区分が異なる場合は、計算書類を分ける必要があります。たとえば事業所得は「青色申告決算書(一般用)」、不動産所得は「青色申告決算書(不動産所得用)」というように、それぞれの様式で作成します。所得区分ごとに収入から経費を差し引いて所得を計算し、申告書第一表のそれぞれの欄に記載する流れです(確定申告の基本は国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」で確認できます)。
事業別に管理するための実務的な工夫
申告書類は合算でも、日々の記帳では事業ごとの数字を分けて見られるようにしておくと、後の作業が一気に楽になります。具体的には次のような工夫が有効です。
会計ソフトの「部門」や「タグ」機能を使い、取引を事業ごとに分類する
事業ごとに屋号や摘要欄のルールを決め、どの仕事の売上・経費かを明確にする
可能であれば事業用口座やカードを事業ごとに分け、お金の流れを切り分ける
事業別に数字を把握できていれば、「どの事業が利益を生んでいるか」という経営判断にも役立ちます。確定申告のためだけでなく、事業を伸ばすうえでも、事業別の収支管理は大きな意味を持ちます。勘定科目を事業別に設定する実務は、勘定科目を事業別に設定する方法にまとめています。
共通経費の「按分」をどう考えるか
按分とは事業ごとに合理的に振り分けること
複数事業を営むうえで避けて通れないのが、共通経費の按分です。按分とは、どの事業にも共通して使っている費用を、それぞれの事業に合理的な割合で振り分ける作業を指します。事業所得が合算であれば事業間の按分が税額に直接影響しないこともありますが、事業所得と不動産所得など区分が分かれる場合や、家事費(プライベート分)が混ざる場合には、按分が所得計算を左右します。
たとえば自宅兼事務所の家賃や水道光熱費、1台で複数の仕事に使うパソコンや車などは、典型的な共通経費です。これらを「全額事業の経費」としてしまうと、プライベート分まで経費に入れることになり、税務上問題になりかねません。家賃・地代・賃借料の使い分けは、地代・家賃・賃借料の使い分けで確認できます。
合理的な按分基準の例
按分で大切なのは、誰が見ても納得できる「合理的な基準」で振り分けることです。よく使われる基準には次のようなものがあります。
面積……自宅家賃は、事業に使っている部屋の床面積の割合で按分する
使用時間……通信費や光熱費は、事業に使っている時間の割合で按分する
使用日数・走行距離……車の費用は、事業で使った日数や走行距離の割合で按分する
売上比……複数事業の共通費を、各事業の売上割合で振り分ける
どの基準を選ぶかは費用の性質によります。たとえば家賃なら面積、車なら走行距離というように、その費用の使われ方に最も近い基準を選ぶのがポイントです。一度決めた基準は、合理的な理由がない限り毎年継続して使うようにしましょう。
按分の根拠を残しておく重要性
按分割合は、後から「なぜその割合なのか」を説明できるようにしておくことが何より重要です。家賃なら「総床面積◯㎡のうち事業用が◯㎡なので◯%」、車なら「年間走行のうち事業利用が◯割」といった計算の根拠をメモや書類で残しておきましょう。税務調査などで質問された際、根拠を示せるかどうかで対応が大きく変わります。按分は「だいたい半分くらい」と感覚で決めるのではなく、根拠ある数字で示すことが、安心して経費計上するための鍵です。
申告時に気をつけたい実務ポイント
赤字の事業がある場合の損益通算
複数の事業所得がある場合、ある事業が赤字でも、同じ事業所得内であれば黒字の事業と相殺(通算)されたうえで所得が計算されます。さらに、事業所得が全体で赤字になり、給与所得など他の所得がある場合には、一定のルールのもとで損益通算ができることがあります。青色申告であれば、通算しきれなかった損失を翌年以降に繰り越せる制度もあり、赤字の年を無駄にしない仕組みが用意されています。赤字を繰り越して活用する方法は、青色申告の赤字繰越の活用で確認できます。
青色申告特別控除は所得全体で考える
青色申告の大きなメリットである青色申告特別控除(最大65万円)は、事業ごとに65万円ずつ受けられるわけではありません。事業所得と不動産所得の両方がある場合などは、一定の順序で控除を当てはめ、全体として受けられる控除額には上限があります。「事業の数だけ控除が増える」という誤解をしないよう注意しましょう。なお、65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳とe-Taxによる電子申告(または電子帳簿保存)などの要件を満たす必要があります。
インボイス・消費税は事業全体で判断する
消費税の課税事業者かどうかや、インボイス制度への対応は、事業ごとではなく「その人(個人事業主)全体」で判断します。複数事業の売上を合計して基準期間の課税売上高を考えるため、一つひとつの事業は小さくても、合算すると課税事業者の判定に関わってくることがあります。事業を増やすときは、消費税の観点でも全体像を確認しておくと安心です。事業拡大で増えた取引に科目を合わせる実務は、事業拡大に合わせた勘定科目の整理が参考になります。
よくある質問
Q. 事業ごとに屋号が違う場合、確定申告書はどう書きますか?
屋号が複数あっても、確定申告をするのは「個人」一人ですので、申告書は1通です。申告書の屋号欄には代表的な屋号を記載し、いずれも事業所得であれば決算書も合算して1枚にまとめます。ただし内部管理として、どの屋号でいくらの売上・経費があったかを分けて把握しておくと、按分や経営判断の際に役立ちます。
Q. 一つは事業所得、もう一つは雑所得になりそうです。まとめて申告できますか?
所得区分が異なる場合は合算できません。事業所得は事業所得として、雑所得は雑所得として、それぞれ収入から必要経費を差し引いて所得を計算し、申告書のそれぞれの欄に記載します。区分が異なると損益通算の取り扱いなども変わってくるため、どちらの区分に当たるか迷う場合は早めに確認しておきましょう。
Q. 共通経費の按分割合は、毎年変えてもよいのでしょうか?
実態が変われば按分割合を見直すこと自体は問題ありません。たとえば事業用に使う部屋を増やした、車の使い方が変わったといった場合は、新しい実態に合わせて割合を改めるのが自然です。大切なのは、変更した年について「なぜ割合を変えたのか」を説明できる根拠を残しておくことです。合理的な理由なく毎年コロコロ変えるのは避けましょう。
複数事業でも「区分」と「按分」を押さえれば整理できる
複数事業を営む個人事業主の確定申告は、(1)それぞれの収入がどの所得区分かを見極める、(2)同じ事業所得なら合算して決算書をまとめる、(3)共通経費は合理的な基準で按分し根拠を残す、という3つのステップを押さえれば、決して複雑なものではありません。日頃から事業ごとに数字を分けて管理しておくことが、スムーズな申告と正しい経営判断の両方につながります。
事業の数が増えるほど、記帳も按分計算も手間がかかり、本業の時間を圧迫します。「按分割合はこれで合っているのか」と一人で抱え込んで、申告直前に慌てる必要はありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








