外貨建て取引・海外送金の経理処理をやさしく解説
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税務

外貨で受け取った売上は取引発生日のレートで円換算して計上し、入金時のレート差は為替差損益、送金手数料は経費として分けて記帳するのが基本です。使うレートの選び方から決算時の換算まで、個人事業主向けに手順を整理します。
「請求時と入金時でレートが違う」「結局いくらの売上にすればいいのか」と手が止まる場面は少なくありません。つまずきの多くは、売上・為替差・手数料の役割を分けて考えるだけで解消できます。まずはこの3つの整理から、順番に見ていきましょう。
☑ 海外のクライアントからドルやユーロで報酬を受け取ったが、帳簿に何円で記録すればよいかわからない
☑ 入金時と請求時でレートが変わってしまい、差額の処理に困っている
☑ PayPalやWiseなど海外送金サービスの手数料や為替差をどう仕訳すればよいか不安だ
クラウドソーシングや海外の取引先との仕事が当たり前になり、外貨で報酬を受け取る個人事業主・フリーランスの方が増えています。ところが、いざ帳簿をつけようとすると「請求したときと入金されたときでレートが違う」「結局いくらの売上として記録すればいいの?」と手が止まってしまうことが少なくありません。円の取引しか経験がないと、為替の考え方そのものに戸惑ってしまうものです。
外貨建ての売上や入金をどう円に換算するのか、為替差損益はどのタイミングで・どの勘定科目で処理するのかを、順を追って確認していきます。為替の確認や差損益の計算まで手が回らないときは、記帳ごと外部に任せる方法もあり、費用の目安は記帳代行の料金プランで確認できます。
外貨建て取引の基本ルールを押さえましょう
帳簿は「円」で記録するのが大原則
日本の所得税は円で計算するため、ドルやユーロで受け取った報酬であっても、帳簿には円に換算した金額で記録します。つまり「100ドルの売上」をそのまま帳簿に書くのではなく、その時点の為替レートを使って「1ドル150円なら15,000円」というように円換算してから記帳します。
このとき問題になるのが「いつのレートを使うか」です。外貨建ての取引では、売上を計上するタイミングと実際にお金が入金されるタイミングがずれるのが普通で、その間にレートも動きます。この時間差から生まれる差額が、後ほど説明する為替差損益です。
使う為替レートはどれ?TTM・TTS・TTB
為替レートには、銀行が公表する次の3種類があります。記帳では原則としてTTMを使い、継続して同じ基準を用いることが大切です。
TTM(仲値):売値と買値の中間。取引の換算に原則として用いる基準レート
TTS(電信売相場):円を外貨に替えるとき(顧客が外貨を買うとき)のレート
TTB(電信買相場):外貨を円に替えるとき(顧客が外貨を売るとき)のレート
収入の換算はTTM、外貨を実際に円に替えて受け取る場面ではTTBを使うなど、合理的な基準を選んだら、その後は同じルールを継続して適用しましょう。年によってコロコロ基準を変えると、帳簿の一貫性が失われてしまいます。
どのタイミングのレートで換算するか
売上を計上するのは、原則として「役務の提供が完了した日」や「納品した日」です。外貨建ての場合、その取引が発生した日のレートで円換算して売上を記帳します。請求書を出した日や、実際に入金された日とは必ずしも一致しないため、まずは「いつの取引か」を意識することが出発点になります。
外貨で売上を計上するときの記帳手順
取引発生日のレートで売上を立てる
たとえば海外のクライアントに納品し、500ドルを請求したとします。納品日のTTMが1ドル150円であれば、売上は「500ドル×150円=75,000円」として計上します。この時点ではまだ入金されていないため、相手科目は売掛金になります。
仕訳のイメージは次のとおりです。
(借方)売掛金 75,000円 / (貸方)売上高 75,000円
ここで記録した75,000円が、この取引の「売上」として確定する金額です。後で入金額が多少前後しても、売上そのものの金額は基本的に動きません。
入金時にレートが変わっていたら
実際に入金された日、レートが1ドル152円に上がっていたとします。すると円換算した入金額は「500ドル×152円=76,000円」となり、計上していた売掛金75,000円との間に1,000円の差が生まれます。この差額が為替差損益です。今回は受け取りが増えているので為替差益となります。
(借方)普通預金 76,000円 / (貸方)売掛金 75,000円・為替差益 1,000円
逆に入金時のレートが下がっていれば、差額は為替差損として費用側に計上します。「売上は取引発生日のレートで固定し、入金時のズレは為替差損益で調整する」と覚えておきましょう。振込手数料と為替差額をまとめて処理する具体的な記帳は、振込手数料・為替差額の記帳の実務で確認できます。
少額・継続取引はシンプルにする工夫も
取引のたびに厳密にレートを調べて為替差を出すのは、件数が多いと大変です。金額が小さく件数が多い場合は、入金日のレートで売上と入金をまとめて計上する、といった簡便な方法を継続的に用いるケースもあります。どこまで厳密に行うかは取引規模によって変わるため、迷う場合は専門家に相談すると安心です。
為替差損益の勘定科目と決算での扱い
為替差益・為替差損の科目
為替の変動によって生じた利益や損失は、本業の売上とは区別して為替差益(収益)・為替差損(費用)という科目で処理します。会計ソフトに科目がない場合は、雑収入・雑費で代用したり、新しく科目を追加したりして対応します。大切なのは、本業の売上や経費と混ざらないように分けておくことです。
期末に残っている外貨建ての資産・負債
決算日(12月31日)の時点で、まだ入金されていない外貨建ての売掛金や、外貨のまま保有している残高が残っていることがあります。こうした外貨建ての債権・債務は、決算時のレートで円換算し直して、計上時との差額を為替差損益として処理する考え方があります。年をまたぐ外貨の取引がある場合は、期末時点での換算を忘れないように注意しましょう。外貨のまま預けている残高の評価については、外貨預金の為替評価の実務が参考になります。
記録を残しておくことが何より大切
為替差損益の計算は、後から「どのレートで換算したのか」がわからなくなると検証できません。そのため、次のような記録をセットで残しておくことをおすすめします。
取引発生日・入金日それぞれの日付
使用した為替レートとその出典(銀行や送金サービスの明細など)
外貨での金額と、円換算後の金額
送金サービスの取引明細を保存しておくだけでも、後の確認がぐっと楽になります。
PayPal・Wiseなど海外送金サービスの処理
サービス内に外貨が滞留するケース
PayPalやWiseなどでは、受け取った外貨を国内の銀行口座に出金するまで、サービス内に残高として保有することがあります。この場合、入金された時点でいったん売掛金を消し込み、その後円口座へ出金したときに改めて円換算する、というように2段階で動きが発生します。それぞれの時点でレートが違えば、その都度為替差が生まれる点に注意が必要です。複数の通貨をまたぐ入金の整理は、複数通貨の入金処理の考え方もあわせて確認しておくと、口座間の動きを追いやすくなります。
手数料は経費として分けて記帳
海外送金サービスでは、受け取りや出金のたびに手数料が差し引かれることが一般的です。この手数料は売上から差し引くのではなく、支払手数料などの経費として独立して記帳します。たとえば「報酬が満額入金され、別途手数料が引かれた」と整理することで、売上と経費がそれぞれ正しく帳簿に残ります。
(借方)普通預金・支払手数料 / (貸方)売掛金
手数料を差し引いた「手取り額」だけを売上にしてしまうと、本来の売上が小さく記録され、経費も漏れてしまいます。総額で記帳することを意識しましょう。手数料をどの科目で処理するか迷ったときは、支払手数料の勘定科目の考え方が目安になります。
消費税との関係も意識する
海外の取引先に対するサービスの提供は、消費税の課税対象とならない(輸出免税などに該当する)場合があります(消費税の基本的な考え方は国税庁タックスアンサーNo.6101「消費税の基本的なしくみ」が参考になります)。一方で、国内の事業者向けの取引は通常どおり課税されます。どちらに当たるかは取引内容によって変わるため、外貨の売上がある方は、課税・非課税・免税の区分も含めて確認しておくと安心です。迷う場合は専門家に確認しましょう。
外貨の経理でつまずきやすいポイント
「入金額=売上」と思い込んでしまう
外貨の経理で最も多い誤解が、円口座に着金した金額をそのまま売上にしてしまうことです。実際には、売上は取引発生日のレートで決まり、入金時のズレは為替差損益、手数料は経費というように、それぞれ役割が分かれています。着金額をひとまとめにしてしまうと、売上も経費も為替差も正しく把握できなくなります。
レートの出典がバラバラになる
あるときは銀行のレート、あるときは送金サービスのレートと、その都度違う基準を使うと、帳簿の一貫性が崩れます。「収入の換算はこの基準」と最初に決め、同じルールを使い続けることが、後々の手間を減らすコツです。
外貨の証ひょうを保存し忘れる
外貨取引では、送金サービスの取引履歴やレートの根拠が証ひょうとして重要になります。明細はこまめにダウンロードして保存し、円換算の計算過程もメモとして残しておきましょう。記帳が後回しになると、どのレートを使ったか思い出せず、年末にまとめて苦労することになりがちです。
よくある質問
Q. 為替レートは毎回どこで調べればよいですか?
取引している銀行が公表する為替レート(TTM・TTS・TTB)を使うのが一般的です。ネット上でも各銀行が日次のレートを公表しています。大切なのは「どの基準を使うか」を決めて継続することなので、まずは取引のメインで使う銀行のレートを基準にすると管理しやすくなります。送金サービス内のレートを使う場合も、その明細を必ず保存しておきましょう。
Q. 為替差益が出たら、それも申告が必要ですか?
事業に関連して生じた為替差益は、事業所得の計算に含めるのが基本です。為替差益は本業の売上とは別の科目で処理しますが、所得として申告の対象になります。逆に為替差損が出た場合は、その分が所得を押し下げる方向に働きます。利益・損失のどちらであっても、きちんと帳簿に反映させることが大切です。
Q. 取引件数が多くて、1件ずつ為替差を計算するのが大変です。どうすればよいですか?
少額・多件数の取引については、入金日のレートでまとめて処理するなど、合理的で継続的な簡便法を用いることもあります。ただし、どの方法が適切かは事業の規模や取引内容によって異なります。負担が大きいと感じたら、自己流で進める前に、記帳代行や税務の専門家に相談して、自分に合った無理のない処理方法を決めておくことをおすすめします。
外貨の経理で迷ったときの結論|ルールを決めて続ける
外貨入金の経理は、難しそうに見えても整理してみるとシンプルです。売上は取引発生日のレートで円換算して計上し、入金時のレート差は為替差損益で調整、送金サービスの手数料は経費として総額で記帳する。この3つの役割分担と、「使うレートの基準を決めて継続する」「明細とレートの根拠を必ず残す」という習慣さえ守れば、外貨取引があっても落ち着いて帳簿をつけられます。
海外取引が増えるほど、レートの確認と為替差損益の計算は毎回の負担になります。本業の時間をそこに削られてしまうのは避けたいところです。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








