複数の入金経路がある事業の突合|売上と入金を合わせる実務を解説
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税務

銀行振込・カード・現金・電子マネーと入金経路が増えても、先に売上を確定させ、そこへ経路ごとの入金を消し込めば帳簿は合います。売上と入金がずれる原因を一つずつ理解し、毎月の突合をラクにする実務手順を整理します。
支払い方法がお客さまごとに違うと、「計上した売上」と「実際に入ってきたお金」を突き合わせる作業は一気に複雑になります。手数料・源泉徴収・月ずれ・前受金——ずれること自体は異常ではなく、原因ごとに処理すれば必ず整うと知っておくと、落ち着いて対応できます。
☑ 銀行振込・クレジット決済・現金・電子マネーと入金経路がバラバラで、どの売上がどの入金か追えなくなっている
☑ 決済サービスから振り込まれる金額が、手数料が引かれていて売上額と一致せず混乱する
☑ 月末に帳簿の売上と通帳の入金が合わず、原因を探すだけで何時間もかかってしまう
事業を続けていると、お客さまや取引先ごとに支払い方法が違ってきます。ある人は銀行振込、別の人はクレジットカード、店頭では現金やQRコード決済、通販ではプラットフォーム経由――と入金経路が増えるほど、「売上として計上した金額」と「実際に入ってきたお金」を突き合わせる作業が一気に複雑になります。金額が合わないまま放置すると、正しい売上高がわからなくなり、確定申告の数字にも影響してしまいます。
以下では、複数の入金経路がある個人事業主・フリーランスの方に向けて、売上と入金を合わせる「突合」の考え方と、経路ごとに何に気をつければよいかを実務目線で解説します。なぜ売上と入金がずれるのか、どう整理すれば毎月の照合がラクになるのかがイメージできるようになります。
そもそも「突合」とは何かを整理しましょう
売上の計上と入金は別のタイミングで起きる
まず押さえておきたいのが、「売上を計上する日」と「お金が入ってくる日」は必ずしも同じではないということです。商品を渡した日やサービスを提供した日に売上を計上し、その代金が入金されるのは数日後、あるいは翌月末――という具合に、売上と入金の間には時間差が生まれます。
この「売上として記録した内容」と「通帳や決済明細に表れた入金」を一件ずつ照らし合わせて、正しく対応しているかを確認する作業を突合と呼びます。突合ができていれば、計上漏れや二重計上、入金されていない未回収の売上にすぐ気づけます。
なぜ売上と入金の金額がずれるのか
売上額と入金額が一致しない主な原因には、次のようなものがあります。
決済サービスや振込の手数料が差し引かれて入金される
複数の売上がまとめて一括入金される(決済代行やプラットフォーム経由に多い)
売上計上の月と入金の月がまたがっている
返金・キャンセル・値引きが入金額に反映されている
源泉徴収されて差引後の金額が振り込まれている
つまり「通帳に入った金額」だけを売上とみなすと、手数料の分だけ売上が小さく記録されたり、入金が翌月になった売上が抜け落ちたりします。ずれること自体は異常ではなく、原因ごとに正しく処理すれば帳簿は合う、という前提を持っておくと落ち着いて対応できます。
入金経路ごとの特徴と突合のポイント
銀行振込・現金の場合
銀行振込は、通帳やネットバンキングの明細に振込人名義と金額が残るため、比較的突合しやすい経路です。ポイントは、請求書の金額と入金額を一件ずつ照合し、振込手数料が先方負担か自己負担かを確認することです。手数料を差し引いて振り込む取引先の場合、入金額が数百円少なくなるため、その差額を支払手数料として処理すれば売上と整合します。振込手数料が差し引かれて入金されたときの具体的な記帳は、振込手数料・差引入金の記帳で詳しく解説しています。
現金売上は明細が自動で残らないため、最も抜けやすい経路です。日々の売上をレジ記録や売上メモで残し、現金がいくら手元に増えたかを合わせておくことが大切です。売上をいったん個人の財布に入れてしまうと後から追えなくなるので、事業用の現金と私用のお金は分けて管理しましょう。
クレジットカード・QRコード決済の場合
カード決済やQRコード決済は、売上が立った日と入金日が大きくずれ、しかも手数料が差し引かれて入金される点に注意が必要です。たとえば月内に受けた決済が、翌月にまとめて手数料控除後の金額で振り込まれるケースが一般的です。
この場合、「決済が発生した日の売上総額」と「後日入金された差引後の金額」の両方を記録し、その差額を決済手数料として処理します。売上はあくまで手数料が引かれる前の総額で計上するのがポイントで、消費税の課税事業者はこの総額で課税売上を把握します。消費税の基本的なしくみは国税庁タックスアンサーNo.6101「消費税の基本的なしくみ」で確認できます。決済サービスの管理画面から取得できる入金明細(精算レポート)には、売上総額・手数料・返金・振込額が明記されていることが多いので、これを保存しておくと突合がスムーズです。
ネット通販・プラットフォーム経由の場合
通販モールやスキル販売サイト、フードデリバリーなどのプラットフォームを使っている場合、複数の注文が一定期間ごとにまとめて精算されます。ここでは、お客さまが支払った総額(売上)と、プラットフォーム手数料・送料・ポイント負担などを差し引いた後に自分の口座へ振り込まれる額を区別することが欠かせません。
入金額だけを売上にしてしまうと、本来の売上高が手数料の分だけ過少になり、経費として計上できる手数料も見えなくなります。プラットフォームが発行する精算レポートやCSVを月ごとに取得し、売上総額と各種控除を分けて記録するのが基本です。
売上と入金を合わせる実務の進め方
入金経路ごとに「入り口」を分ける
突合を楽にする一番のコツは、経路を混ぜないことです。可能であれば入金経路ごとに口座やアカウントを分け、経路の色分けが帳簿上でもはっきりわかるようにします。すべての入金が一つの口座に集まっていると、どれがどの売上か判別するだけで時間がかかりますが、経路が分かれていれば「この口座はカード決済分」「この口座は振込分」と当たりをつけやすくなります。取引先ごとに請求書番号を振っておくと突合がさらに速くなります。番号の付け方は取引先ごとに請求書番号を管理する実務が参考になります。
会計ソフトを使う場合は、口座や決済サービスごとに補助科目や勘定を分けておくと、後から経路別に集計・照合ができて便利です。経路が増えて突合に毎月何時間もかかるようなら、何枚でも定額で任せられる記帳代行の料金を確認してみる手もあります。
「売上台帳」で発生ベースをおさえる
入金を見る前に、まずいつ・誰に・いくらの売上が立ったかを発生ベースで記録した売上台帳を持っておくことをおすすめします。請求書の控えや受注データをもとに、売上の発生を一覧にしておくのです。締め日や支払サイトを踏まえた売上管理は締め日・支払サイトと売掛金管理の実務フローで整理できます。
この売上台帳があれば、後から入ってきた入金を「どの売上に対する入金か」とひも付けていくだけで済みます。入金明細から逆算するのではなく、売上を先に確定させ、そこへ入金を消し込んでいく流れにすると、未入金の売上も自然に浮かび上がります。
入金を「消し込む」習慣をつける
売上台帳に対して、入金があったものから順に「入金済み」と印をつけていく作業を消込(消し込み)と呼びます。消込を続けることで、次のような状態がひと目でわかるようになります。
まだ入金されていない売上(未回収)が残っているか
入金額と売上額に差があるもの(手数料・値引きなど)はどれか
売上台帳にない入金(計上漏れや前受金など)が混ざっていないか
月に一度まとめてやると原因を思い出せず苦労しがちなので、できれば週単位など短い間隔で消し込むと、記憶が新しいうちに差額の理由を特定できます。
突合でよくあるつまずきと対処法
手数料や源泉徴収で入金が減っている
「請求は11万円なのに入金は約9万9千円しかない」といったケースは、源泉徴収税額が差し引かれていることが多いです。この場合、売上は請求額の総額で計上し、差し引かれた源泉徴収税額は別に記録しておきます。確定申告のとき、源泉徴収された税額は前払いした所得税として精算され、納めすぎていれば還付の対象になります。還付申告の仕組みは国税庁タックスアンサーNo.2030「還付申告」で確認できます。入金額だけを売上にしてしまうと、この前払い分を取り戻せなくなるおそれがあるので注意しましょう。
売上の月と入金の月がまたがっている
12月に提供したサービスの代金が翌年1月に入金される、というように年をまたぐケースは特に慎重に扱う必要があります。所得は原則としてその年に発生した売上を、その年の売上として計上するのが基本です。入金がまだでも、その年に売上が確定していれば、その年の収入に含めます。入金日を基準にしてしまうと、年ごとの売上高がずれ、正しい所得計算ができなくなります。
前受金・預り金が混ざっている
先に代金を受け取ってから後日サービスを提供する場合、受け取った時点ではまだ売上ではなく「前受金」として扱います。入金があったからといってすべてを売上にすると、実態と合わなくなります。入金の性質が「売上の対価」なのか「預かっているお金」なのかを見極めて記録することが、正しい突合につながります。
よくある質問
Q. 入金経路が多くて、通帳と帳簿がどうしても合いません。まず何から手をつければよいですか?
まずは経路ごとに明細を分けてそろえることから始めましょう。銀行の入出金明細、各決済サービスの精算レポート、現金の売上メモを経路別に用意し、それぞれの中で売上と入金を突き合わせます。全部を一度に合わせようとすると混乱しやすいので、「振込分」「カード決済分」と経路単位で区切って一つずつ潰していくと、差額の原因が見つけやすくなります。
Q. 決済手数料は経費にできますか?
事業の売上を得るために支払っている決済手数料は、必要経費として扱えるのが一般的です。売上は手数料が引かれる前の総額で計上し、差し引かれた手数料を支払手数料などの経費として別に記録します。入金額だけを売上にしてしまうと、この手数料が経費として表れず、結果的に不利になることがあります。
Q. 少額の差額なら無視してもよいですか?
金額の大小にかかわらず、差額には必ず理由があります。振込手数料の数百円であっても、原因を確認して処理しておくことをおすすめします。理由がわからない差額を放置すると、後から売上や経費の正確性が問われたときに説明ができません。小さな差でも「なぜずれたか」を記録に残しておくと、帳簿全体の信頼性が高まります。
結論:売上を軸に突合すれば整う
複数の入金経路がある事業では、売上と入金がずれるのは自然なことです。大切なのは、入金額をそのまま売上とみなすのではなく、先に発生した売上を売上台帳で確定させ、そこへ経路ごとの入金を消し込んでいくこと。手数料・源泉徴収・月ずれ・前受金といったずれの原因を一つずつ処理していけば、経路が増えても帳簿はきちんと合わせられます。
とはいえ、経路ごとに明細をそろえ、精算レポートを読み解き、毎月差額の理由を追いかけていく作業は、続けるほど手間がかさみます。本業が忙しい中で、記帳から突合、確定申告書類の作成までをすべて自分で行うのは、決して小さくない作業量です。記帳代行の現場でも、決済手段が増えて売上と通帳が合わなくなったというご相談は少なくありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








