外貨預金・暗号資産を持つ個人事業主の期末評価と記帳実務を解説
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税務

外貨預金は円に換金したとき、個人が持つ暗号資産は売却などで手放したときに、それぞれ損益が確定します。年末に確認すべきことと具体的な仕訳を資産の種類ごとに分け、記帳でつまずきやすい点まで具体例で確認します。
個人事業主でも、海外取引の決済用に外貨預金を持ったり、余剰資金で暗号資産を保有したりするケースは珍しくなくなりました。ただ、これらは円建ての預金と違い「年末にいくらと評価するのか」「どの時点で損益が出るのか」が分かりにくく、帳簿づけで手が止まりがちです。
☑ 事業用の口座に外貨預金や暗号資産があるが、年末時点でどう評価すればよいかわからない
☑ 為替が動いたときの差損益を、いつ・いくらで帳簿に載せるのか自信がない
☑ 期末に評価替えが必要なのか、保有しているだけなら何もしなくてよいのか整理したい
外貨預金と暗号資産では、年末に何を確認し、どのタイミングでどんな仕訳を起こすのかが分かれ道になります。評価の考え方から実際の記帳の手順、間違えやすいポイントと対処法まで、順を追って見ていきましょう。
まず押さえたい「期末評価」の基本的な考え方
そもそも期末評価とは何か
期末評価とは、決算日(個人事業主の場合は原則12月31日)の時点で、保有している資産を「いくらの価値があるか」改めて見直すことを指します。円建ての現金や預金であれば金額が変わらないので評価替えは不要ですが、外貨預金や暗号資産は時価や為替レートによって円換算した価値が日々変動します。そのため、期末に一度立ち止まって評価をどう扱うかを判断する必要が出てきます。
ここで大切なのは、「実際に売却・換金して確定した損益」と「保有したままで生じる評価上の損益」を分けて考えるという視点です。前者を実現損益、後者を評価損益(含み損益)と呼びます。どちらをいつ帳簿に反映するかは、資産の種類によってルールが異なります。
外貨預金と暗号資産でルールが違う点に注意
外貨預金と暗号資産は、どちらも「変動する資産」という点で共通しています。個人(個人事業主)の場合、いずれも保有しているだけの含み損益に課税されるわけではなく、実際に手放したとき——外貨預金は円に換金したとき、暗号資産は売却・交換・使用したとき——に損益が確定するという整理が基本です。法人のように期末時点で時価へ評価替えする処理は、原則として個人には求められていません。
つまり、「保有しているだけで毎年評価替えをするのか」ではなく、外貨預金でも暗号資産でも「実際に手放したときにいくらの損益が出たか」を押さえることが、記帳の中心になります。この考え方を最初に押さえておくと、後の記帳がぐっと楽になります。
外貨預金の為替差損益と記帳の進め方
取得時・入出金時のレートの考え方
外貨預金を事業用として扱う場合、まず入金時・出金時にその日のレートで円換算して記帳するのが基本です。たとえば海外の取引先から外貨で売上が入金されたときは、入金日のレートで円に直して売上や預金として計上します。出金(支払い)のときも同様に、その時点のレートで円換算します。
このとき使うレートは、取引日の電信仲値(TTM)や、入金なら買相場(TTB)、出金なら売相場(TTS)など、合理的な基準を継続して使うことが大切です。毎回バラバラの基準を使うのではなく、自分のルールを決めて一貫させることが、後から見て整合性のある帳簿を作るコツです。
外貨の入出金では、両替や海外送金の手数料がかかることもあります。こうした手数料をどの勘定科目で処理するか迷ったら、支払手数料になるものと勘定科目の使い分けが整理の手がかりになります。
外貨預金の為替差損益が確定するタイミング
個人(個人事業主)が保有する外貨預金は、法人と異なり、年末時点で保有残高を時価に評価替えして含み損益を計上する必要は原則ありません。為替差損益は、外貨を円に換金するなど、実際に外貨を手放したタイミングで確定します。年末には、その年に円転などで確定した為替差損益を漏れなく計上できているかを確認するのが基本です。
たとえば、1ドル=140円のときに預け入れた外貨預金を、その後1ドル=150円のタイミングで円に換金すれば、1ドルあたり10円の為替差益が確定します。逆に、換金時のレートが預入時より下がっていれば為替差損になります。ポイントは、あくまで実際に円へ換えたときに損益が確定し、保有したままの含み益・含み損は課税対象にならないという点です。
円に換金するなど、外貨を実際に手放した取引を洗い出す
換金額と、その外貨を預け入れたときの円換算額との差額を計算する
差額を為替差益(収入)または為替差損(経費)として処理する
記帳の具体例とつまずきやすい点
記帳の流れとしては、まず一年間の外貨預金の入出金や円転の履歴を確認します。そのうえで、円に換金した取引について、換金額と預入時の円換算額との差額を為替差益または為替差損として計上します。差益であれば収入側に、差損であれば経費側に反映するイメージです。
つまずきやすいのは、法人の会計と混同して「年末に含み益まで評価替えして計上しなければならない」と思い込んでしまうことです。個人の場合、保有したままの含み損益は課税対象にならず、あくまで実際に円へ換金したときなどに損益が確定します。なお、同じ外貨のまま別の口座へ預け替えただけといった場合は、為替差損益を認識しないのが原則です。為替の扱いは判断に迷う場面も多いため、金額が大きい場合や扱いに不安がある場合は、早めに税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
円への換金などで確定した為替差損を必要経費として扱う際の基本的な考え方は、国税庁タックスアンサー「No.2210 必要経費の知識」(2026年7月時点)でも確認できます。
暗号資産の損益計算と記帳の進め方
個人が保有する暗号資産の損益が確定するタイミング
個人が暗号資産を保有している場合、損益は原則として「実際に手放したとき」に確定します。具体的には、暗号資産を売却して円に換えたとき、別の暗号資産と交換したとき、商品やサービスの支払いに使ったときなどが、損益を認識するタイミングです。
逆に言えば、買って持っているだけ(保有しているだけ)の状態では、原則として損益は確定しません。年末に値上がりしていても、売っていなければその含み益に対してそのまま課税される、という性質のものではない、という整理が基本です。この点は、円に換金したときに為替差損益が確定する外貨預金とも共通する考え方です。
取得価額の管理と利益計算の基本
暗号資産の損益は、「手放したときの価額」から「取得価額」を差し引いて計算します。何度も売買を繰り返していると、どの取得分をいくらで買ったかが分からなくなりがちなので、取得価額の管理がとても重要になります。
取得価額の計算方法には、一般に総平均法と移動平均法といった考え方があり、いったん選んだ方法は継続して使うのが原則です。日々の取引履歴(取得日、数量、取得時の円換算額、売却日、売却額など)を残しておかないと、年末にまとめて計算しようとしたときに苦労します。取引所からダウンロードできる年間取引報告書などを活用し、こまめに記録を残しておきましょう。
いつ・いくらで取得したかを数量とともに記録する
売却・交換・決済利用ごとに、そのときの円換算額を残す
取得価額の計算方法を決めて継続して使う
期末に向けてやっておきたい記帳の整理
個人の暗号資産は保有しているだけなら評価替えが不要という整理が基本なので、年末にやるべきことの中心は「その年に確定した損益を漏れなく集計すること」です。売却・交換・支払い利用など、損益が生じる取引をすべて洗い出し、取得価額と突き合わせて年間の損益を確定させます。
ここで注意したいのは、円に換金していなくても、暗号資産同士の交換や商品購入で損益が生じている場合がある点です。「日本円を一度も引き出していないから関係ない」と思い込んでいると、申告漏れにつながりかねません。取引所の履歴を一通り見直し、損益が動いた取引を取りこぼさないようにしましょう。
外貨と暗号資産が混在すると、レートの換算や取得価額の計算が重なり、日々の記帳は思いのほか重くなります。判断に迷う仕訳をまとめて外に出したいときは、領収書を送るだけで任せる記帳代行という進め方もあります。
記帳・申告で間違えやすいポイントと対処法
事業の損益と個人の資産運用を分けて考える
個人事業主の方がつまずきやすいのが、「事業のお金」と「個人としての資産運用」が混ざってしまうことです。たとえば、海外取引の決済に使う外貨預金は事業に関連する性質が強い一方、純粋に値上がりを狙って買った暗号資産は、事業とは切り離して考えるべきケースが多くなります。
どこまでを事業の帳簿に含め、どこからを個人の資産運用として扱うかは、その資産の使い方によって変わります。判断に迷う場合は自己流で決めつけず、専門家に相談して整理しておくと、後々の申告で慌てずに済みます。
運用目的で持つ外貨を円に戻して利益が出た場合、その差益は事業の損益とは分けて雑所得として扱う考え方が基本です。実現したときの課税の流れは、外貨預金の為替差益がある人の確定申告で具体的に整理しています。
記録の残し方とレートの根拠を統一する
外貨も暗号資産も、後から「なぜこの金額になったのか」を説明できるようにしておくことが大切です。為替レートの基準、暗号資産の取得価額の計算方法など、判断のもとになるルールを統一し、その根拠となる資料(取引明細、年間取引報告書、レートの記録など)を保管しておきましょう。
為替レートはどの基準を使うか決めて一貫させる
暗号資産の取得価額の計算方法を継続して使う
取引明細やレートの記録を年単位でまとめて保管する
記録さえきちんと残っていれば、年末の集計や評価はぐっと楽になります。逆に記録が散らばっていると、年末に一気にやろうとして大きな負担になりがちです。外貨や暗号資産を含めて手元資金の動きを先読みしたいときは、帳簿から資金不足を先読みする資金繰り表の作り方も役立ちます。
よくある質問
Q. 外貨預金は、売って円に戻さなくても年末に損益を計算するのですか?
個人(個人事業主)の場合、外貨預金は法人と違い、年末時点で含み損益を評価替えする必要は原則ありません。為替差損益は、円に換金するなど実際に外貨を手放したときに確定します。この点は、売却・交換・使用したときに損益が確定する暗号資産と考え方は共通しています。ただし判断に迷う点も多いため、金額が大きい場合などは専門家に確認すると安心です。
Q. 暗号資産を円に換金していなければ、確定申告は不要ですか?
円に換金していない場合でも、暗号資産同士を交換したり、商品やサービスの支払いに使ったりした時点で損益が生じていることがあります。「日本円を引き出していないから関係ない」と決めつけず、その年に手放した取引がないかを取引履歴で確認することが大切です。損益が出ていれば、申告の対象になる場合があります。
Q. 取引が多くて取得価額の管理が追いつきません。どうすればよいですか?
取引が多い場合は、取引所からダウンロードできる年間取引報告書や履歴データを活用し、こまめに記録を残すことが基本になります。それでも集計が大変な場合は、無理に年末にまとめてやろうとせず、日々の記録を専門家に渡して整理を任せるのもひとつの方法です。記録さえ残っていれば、計算自体は後からでも対応しやすくなります。
結論:評価のルールは資産ごとに分けて考える
外貨預金と暗号資産は、どちらも価値が変動する資産ですが、個人(個人事業主)の場合は、いずれも保有中の含み損益に課税されるわけではなく、実際に手放したとき——外貨は円に換金したとき、暗号資産は売却・交換・使用したとき——に損益が確定するという点で共通しています。年末には、どちらもその年に確定した損益を漏れなく集計する、という流れを押さえておけば、慌てずに対応できます。日々の取引明細やレートの根拠を一貫したルールで残しておくことが、なによりの近道です。
年末の外貨換算や暗号資産の損益計算は、取引が増えるほど手間がかさみ、判断に迷う場面も少なくありません。記帳から申告書類の作成までを一人で抱えると、本業に使える時間がどうしても削られてしまいます。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








