個人事業主は売上ゼロ・赤字でも確定申告すべき?しないデメリットと判断基準を解説
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確定申告

売上ゼロや赤字の年でも、確定申告をしたほうが得になる個人事業主は多くいます。青色申告なら赤字を3年間繰り越せ、損益通算で払いすぎた税金が戻ることもあります。申告すべきかどうかの判断基準を、具体例を交えて確認します。
活動していても「今年はほとんど売上がなかった」「経費がかさんで赤字になった」という年はあります。義務がないからと放置すると、将来の節税や事業の信用面で損をすることも少なくありません。まずは申告義務の考え方から見ていきましょう。
☑ 今年は売上がなかったけど、確定申告は必要なの?
☑ 赤字の年に確定申告するメリットはあるの?
☑ 開業届を出していないけど、確定申告はどうすればいい?
個人事業主やフリーランスとして活動していても、「今年は売上がほとんどなかった」「経費がかさんで赤字になった」という年もあるでしょう。そんなとき、「確定申告しなくてもいいのでは?」と考える方も少なくありません。
結論からいうと、売上がゼロや赤字であっても、確定申告をした方がよいケースは多くあります。特に青色申告をしている方は、赤字の年こそ確定申告をすることで将来の節税につなげることができます。
個人事業主は売上ゼロでも確定申告が必要?判断基準を解説
確定申告が必要かどうかは、「開業届を出しているかどうか」ではなく、「所得税が発生するかどうか」で判断します。確定申告そのものの基本的な考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」でも確認できます。
具体的な判断の流れは以下の通りです。
1. 1年間の各種所得(事業所得、給与所得、雑所得など)を合計する
2. 所得控除(基礎控除、社会保険料控除など)を差し引く
3. 課税所得に税率をかけて所得税額を算出する
4. 税額控除を差し引く
5. 復興特別所得税(所得税額×2.1%)を加算する
この計算の結果、納める所得税が発生しなければ、原則として確定申告の義務はありません。
売上ゼロ・収入なしの場合
事業の売上がゼロで、他に給与所得や雑所得などの収入もない場合は、所得税が発生しないため確定申告は不要です。
ただし、以下のケースに該当する場合は注意が必要です。
・事業の売上はゼロでも、株式の譲渡益や不動産収入、一時所得など他の所得がある場合は申告が必要になることがあります
・会社員として給与所得があり年末調整が済んでいる場合は、基本的に確定申告は不要です。ただし、医療費控除やふるさと納税の控除を受ける場合は申告が必要です
また、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。住民税の申告をしないと、国民健康保険料の算定や各種行政サービスに影響が出る可能性があるため、忘れずに市区町村へ申告しましょう。
赤字の場合は確定申告した方がお得
事業が赤字の場合、確定申告の義務はないケースが多いですが、確定申告をすることで大きな節税メリットを得られる可能性があります。詳しくは次のセクションで解説します。
赤字の年に確定申告をする2つの大きなメリット
メリット①:損益通算で他の所得と相殺できる
「損益通算」とは、事業所得の赤字を、給与所得など他の所得と相殺できる仕組みです。
例えば、副業として個人事業を行っている会社員の場合を考えてみましょう。
・事業所得:マイナス50万円(赤字)
・給与所得:400万円
この場合、損益通算により課税対象の所得は350万円(400万円−50万円)となります。給与から源泉徴収されている所得税は400万円ベースで計算されているため、確定申告をすることで払いすぎた税金が還付される可能性があります。会社員として給与と事業の両方がある世帯での手取りの考え方は、夫婦で事業と給与がある世帯の手取り最適化も参考になります。
こうした還付を受けるための申告は、マイナンバーカードがあればスマホからでも完結できます。実際の入力手順は確定申告のスマホ申告(マイナンバーカード方式)の手順にまとめています。
メリット②:青色申告なら赤字を3年間繰り越せる
青色申告をしている個人事業主は、「純損失の繰越控除」を利用できます。これは、赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できる制度です。青色申告の各特典は、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」にまとまっています。
例えば、開業1年目に100万円の赤字が出て、2年目に150万円の黒字が出た場合、2年目の課税所得は50万円(150万円−100万円)に抑えられます。開業初年度の赤字を将来に活かす考え方は、開業年に赤字が出たときの備えでも整理しています。
ただし、この繰越控除を利用するには、赤字の年にも確定申告をしておく必要があります。「赤字だから申告しなくていい」と放置してしまうと、将来の節税チャンスを逃してしまうのです。赤字を無駄にしないための繰越の活用法は青色申告の赤字繰越を活用した節税で詳しく解説しています。
なお、白色申告の場合、繰越控除が認められるのは災害による損失に限られます。この点でも、青色申告の方が有利です。
副業の確定申告が必要になる「20万円ルール」とは
会社員が副業を行っている場合によく聞く「20万円ルール」について整理しておきましょう。
給与所得者(会社員)が副業で得た所得が年間20万円以下であれば、原則として確定申告は不要です。ただし、以下のケースでは20万円以下でも確定申告が必要になります。
・医療費控除や住宅ローン控除など、他の理由で確定申告を行う場合
・給与を2か所以上からもらっている場合で、年末調整されなかった給与と副業所得の合計が20万円を超える場合
また、20万円ルールはあくまで「所得税の確定申告」に関するルールです。住民税については20万円以下でも申告が必要ですので、注意してください。
確定申告をしないことのデメリット
確定申告をしなければ帳簿作成や書類準備の手間が省けるというメリットはあります。しかし、それ以上に大きなデメリットがあることを理解しておきましょう。
青色申告の特典を受けられない
確定申告をしなければ、当然ながら青色申告特別控除(最大65万円)を受けることができません。また、赤字の繰越控除も利用できないため、将来黒字になった際の税負担が大きくなります。
さらに、2年連続で期限内に申告しなかった場合、青色申告の承認が取り消される可能性もあります。一度取り消されると、再申請しても1年間は青色申告ができなくなるため、注意が必要です。
事業の実態を証明しにくくなる
確定申告書の控えは、個人事業主の「収入証明書」の役割を果たします。確定申告をしていないと、以下のような場面で困ることがあります。
・銀行や日本政策金融公庫からの事業融資の審査
・クレジットカードやローンの申し込み
・賃貸物件の入居審査
・補助金や助成金の申請
特に、事業拡大のために融資を検討している方は、売上が少ない年でも確定申告をしておくことが重要です。売上が少ない年でも申告書を整えておきたいものの、帳簿づくりに手が回らないという場合は、赤字でも申告書まで仕上げる確定申告代行に任せる方法もあります。
正しい経営判断ができなくなる
確定申告のために帳簿を整理する作業は、事業の数字を客観的に把握する貴重な機会でもあります。申告をしないと、キャッシュフローの管理や経費の分析がおろそかになり、経営改善のチャンスを逃してしまう可能性があります。
開業届を出していない場合の確定申告はどうなる?
「開業届を出していないから確定申告できない」と思っている方もいますが、それは誤解です。開業届の提出と確定申告は別の手続きであり、開業届を出していなくても確定申告は可能です。
開業届の基本ルール
開業届は、事業を開始してから1か月以内に税務署に提出することが法律で定められています。ただし、提出しなかったとしても罰則はありません。
とはいえ、開業届を提出しておくことには以下のメリットがあります。
・青色申告承認申請書を同時に提出できる(青色申告の要件)
・屋号付きの銀行口座を開設する際の証明書になる
・補助金・助成金の申請時に個人事業主であることの証明になる
まだ開業届を出していない方は、確定申告のタイミングで一緒に提出することをおすすめします。
開業届を出していなくても確定申告は必要
開業届の有無にかかわらず、事業で所得が発生していれば確定申告の義務があります。「届出を出していないから大丈夫」と考えて申告しないのは、無申告として扱われるリスクがあるため注意しましょう。
よくある質問
Q. 売上ゼロでも住民税の申告は必要ですか?
はい、所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告は原則必要です。住民税の申告をしないと、国民健康保険料が正しく算定されなかったり、所得証明書が発行できなくなったりする場合があります。お住まいの市区町村の窓口で手続きしましょう。
Q. 赤字が続いている場合、何年も繰越控除できますか?
青色申告の繰越控除は最長3年間です。例えば、1年目の赤字を2年目〜4年目の黒字と相殺できますが、4年目までに相殺しきれなかった分は消滅します。毎年きちんと確定申告をして、繰越控除の権利を維持しておくことが大切です。
Q. 確定申告をしなかったら、後からでもできますか?
はい、期限後でも確定申告(期限後申告)は可能です。ただし、無申告加算税や延滞税が課される場合があります。還付申告(税金を返してもらう申告)の場合は、対象年の翌年1月1日から5年以内であればペナルティなく申告できます。
Q. 開業届を出していなくても青色申告はできますか?
青色申告をするには、「青色申告承認申請書」を事前に税務署に提出している必要があります。開業届自体は出していなくても青色申告承認申請書を提出していれば可能ですが、通常は開業届と一緒に提出するのが一般的です。
結論:赤字でも申告して「使える権利」を残す
個人事業主が売上ゼロや赤字の年であっても、確定申告をするメリットは大きいです。
・赤字を他の所得と損益通算することで、払いすぎた税金が還付される可能性がある
・青色申告なら赤字を3年間繰り越して、将来の黒字と相殺できる
・確定申告書の控えが収入証明書の代わりになり、融資やローンの審査に役立つ
・住民税の申告は、所得税の確定申告が不要な場合でも別途必要
「赤字だから申告しなくていい」と考えるのは、節税のチャンスを逃すだけでなく、事業の信用力を低下させることにもなりかねません。
赤字の年こそ帳簿を整えておきたいのに、売上が少ない時期は経理に手が回りにくいものです。記帳代行の現場でも、忙しさで赤字年の記帳を後回しにし、繰越の権利を取りこぼしそうになるご相談をよくいただきます。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








