損益通算とは?赤字と黒字を相殺して税金を抑える仕組みをやさしく解説
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確定申告

損益通算とは、事業所得や不動産所得などの赤字を、他の所得の黒字と相殺して税負担を軽くできる仕組みです。対象になるのは4つの所得に限られ、確定申告をして初めて適用されます。対象・対象外の線引きと、手続きの注意点を整理しました。
「今年は赤字だったから、税金のことは考えなくていいや」——そんなふうに思っていませんか。実は、赤字が出た年こそ税金の知識が役に立ちます。所得税には、ある所得の赤字を別の所得の黒字とぶつけて相殺できる損益通算という仕組みがあり、これを使えるかどうかで納める税金が大きく変わることがあるのです。
☑ 副業や不動産投資が赤字になり、税金の扱いがどうなるのか気になっている
☑ 「損益通算」という言葉は聞いたことがあるが、仕組みはよく分からない
☑ 赤字の年でも確定申告をした方がいいのか迷っている
損益通算とは?赤字と黒字を相殺できる仕組み
課税対象になる所得を圧縮できる制度
所得税では、収入を事業所得・給与所得・不動産所得など10種類の所得に分けて計算します。この所得区分の全体像は、国税庁タックスアンサーNo.1000「所得税のしくみ」(国税庁)で確認できます。損益通算とは、このうち特定の所得で出た赤字(損失)を、他の所得の黒字から差し引ける制度のことです。赤字の分だけ課税対象となる所得が小さくなるため、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。
具体例:給与をもらいながら事業が赤字の場合
たとえば、会社員として給与所得400万円があり、個人で営む事業が100万円の赤字だったとします。事業所得の赤字は損益通算の対象なので、400万円から100万円を差し引いた300万円をもとに税金を計算できます。給与からはすでに源泉徴収で税金が引かれているため、確定申告をすることで払いすぎた分が還付されるケースも多くあります。
住民税などの負担にも影響する
損益通算で所得が小さくなると、所得税だけでなく、翌年の住民税や国民健康保険料の計算のもとになる所得も小さくなります。つまり、損益通算の効果はその年の所得税の還付だけにとどまりません。赤字を正しく申告することは、翌年にやってくる固定的な負担を軽くすることにもつながるのです。
損益通算できるのは4つの所得だけ
「ふ・じ・さん・じょう」で覚える
損益通算の対象になる赤字は、次の4つの所得に限られています。
不動産所得
事業所得
山林所得
譲渡所得
頭文字をとって「富士山上(ふじさんじょう)」と覚えるのが定番です。これら以外の所得で赤字が出ても、原則として他の所得と相殺することはできません。
雑所得の赤字は通算できない:副業は要注意
特に注意したいのが、副業の収入が「雑所得」に区分されるケースです。雑所得の赤字は損益通算の対象外なので、たとえ副業が赤字でも給与所得と相殺することはできません。副業が事業所得と雑所得のどちらにあたるかは、継続性や規模、帳簿の有無などから総合的に判断されます。事業として本格的に取り組み、日々しっかり記帳しているかどうかが、判断の大きなポイントになります。国税庁も、収入の区分にあたって帳簿書類の保存があるかどうかを重視する考え方を示しています。帳簿づけを事業として整えたい場合は、記帳代行というやり方で日々の記録を確実に残しておくと安心です。
不動産所得には対象外になる赤字もある
不動産所得の赤字のうち、土地を取得するための借入金の利子に対応する部分は、損益通算の対象から除かれます。不動産投資をしている方は、赤字の全額をそのまま通算できるとは限らない点を覚えておきましょう。また、別荘のような「生活に通常必要でない資産」の譲渡損失も通算の対象外です。土地と建物をまとめて借入金で購入した場合の利子の区分など、判断に迷いやすい部分でもあります。
株式やFXの損失は「別枠」で考える
上場株式の譲渡損失は給与と相殺できない
株式投資で損をした場合、「給与と相殺できるのでは」と期待する方が多いのですが、上場株式等の譲渡損失は申告分離課税という別枠で計算されるため、給与所得や事業所得とは損益通算できません。ただし、上場株式等の配当などとの間では通算が可能で、確定申告をすれば引ききれなかった損失を翌年以後3年間繰り越せる制度も用意されています。
FXの損失も分離課税の枠内だけで通算
FXなどの先物取引による損失も同じく、申告分離課税の枠の中だけで通算します。同じ区分の利益との相殺や3年間の繰越控除はできますが、事業所得や給与所得との相殺はできません。投資の損失は「同じグループの中でしか相殺できない」とイメージしておくと整理しやすいでしょう。
損益通算には決められた順序がある
所得のグループごとに段階的に相殺する
損益通算は、好きな所得から自由に差し引けるわけではなく、所得をいくつかのグループに分け、段階的に相殺していく順序が決められています。たとえば事業所得や不動産所得の赤字は、まず給与所得などの経常的な所得から差し引き、それでも引ききれない場合に譲渡所得などへ進む、という流れです。複数の屋号や店舗で損益が分かれる場合の帳簿の分け方は、複数の屋号・複数店舗を持つ個人事業主の確定申告も参考になります。
計算は申告書類の作成過程で自動的に行われる
順序と聞くと難しく感じるかもしれませんが、国税庁の確定申告書等作成コーナーや会計ソフトを使えば、数字を入力するだけで正しい順序で自動計算されます。大切なのは細かい手順を暗記することではなく、「自分の赤字は通算できる種類なのか」を判断できるようになることです。入力後は、申告書の所得金額欄が通算後の金額になっているかを確認しておくと安心です。
損益通算を受けるためのポイント
確定申告をしなければ適用されない
損益通算は、確定申告をして初めて適用される仕組みです。この点は国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」(国税庁)でも前提となっています。「赤字だから申告しなくていい」と放置すると、給与から源泉徴収された税金の還付を受けられないなど、かえって損をしてしまう可能性があります。夫婦それぞれに所得がある世帯での申告の考え方は、夫婦ともに個人事業主の確定申告で整理しています。赤字の年こそ、面倒がらずに申告することが節税の第一歩です。
引ききれない赤字は繰越控除につなげられる
損益通算をしてもなお赤字が残る場合、青色申告をしていれば、その赤字(純損失)を翌年以後3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。損益通算と繰越控除はセットで活用してこそ効果を発揮します。日頃から帳簿をきちんとつけ、青色申告で申告できる体制を整えておくことが大切です。病気などで年の途中に休業して赤字になった年の申告は、病気・療養で年の途中に休業した個人事業主の確定申告の考え方もあわせて確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 赤字なら確定申告はしなくてもいいのではないですか?
申告義務がないケースもありますが、申告しなければ損益通算も赤字の繰り越しも適用されません。給与所得がある方なら源泉徴収された税金の還付を受けられる可能性もあるため、赤字の年こそ申告するのがおすすめです。青色申告で赤字を翌年に繰り越すためにも、申告は欠かせません。
Q. 副業の赤字を給与と相殺して節税できると聞きましたが本当ですか?
副業が「事業所得」と認められる場合は損益通算できますが、「雑所得」と判断された場合は相殺できません。実態のない赤字をつくって還付を受けようとする行為は、税務署のチェック対象にもなっています。記帳や帳簿書類の保存など、事業としての実態を整えることが前提です。
Q. 損益通算と繰越控除はどう違うのですか?
損益通算は「同じ年の中で」赤字と黒字を相殺する仕組みで、繰越控除は「年をまたいで」赤字を将来の黒字と相殺する仕組みです。まずその年の損益通算を行い、それでも残った赤字を翌年以降に繰り越す、という順番で適用されます。
損益通算で迷ったときの結論
損益通算は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の赤字を他の所得の黒字と相殺し、税負担を軽くできる制度です。ただし、雑所得の赤字や株式・FXの損失は対象外になるなど細かいルールがあるため、「自分の赤字は通算できるのか」を見極めることが重要です。そして、損益通算は確定申告をして初めて受けられます。赤字の年は気持ちの面でも申告がおっくうになりがちですが、正しく申告すれば還付や翌年以降の節税につながります。帳簿づけを習慣にして、赤字も黒字も漏れなく申告に反映させましょう。判断に迷う点があれば、最新情報を国税庁サイト等で確認するか、専門家に相談すると安心です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








