修繕費と資本的支出の違い|一度に経費にできる金額を解説
#
税務

修繕費と資本的支出の違いは、「壊れたものを元に戻したか」「資産の価値や寿命を高めたか」で判断します。20万円未満・60万円未満などの金額基準を押さえれば、迷ったときも整理でき、その年に全額経費にできるか数年に分けるかが見えてきます。具体例で振り分け方を確認しましょう。
事業を続けていると、設備の故障を直したり、店舗や事務所に手を入れたりする場面が必ず出てきます。そのときに頭を悩ませるのが、支払った費用を「その年に全額経費にできるのか」「それとも何年かに分けて少しずつ経費にするのか」という問題です。同じ修理でも、扱いを間違えるとその年の利益が大きく変わってしまいます。ここでカギになるのが「修繕費」と「資本的支出」という2つの考え方です。
☑ 店舗の改装費用を一度に経費にできるのか、何年かに分けるのか分からない
☑ 「修繕費」と「資本的支出」の線引きがあいまいで判断に迷う
☑ 高額な修理をしたら税務署に指摘されないか心配だ
修繕費と資本的支出は何が違うのか
まず大前提として、修理にかかった費用は「修繕費」と「資本的支出」のどちらかに分かれます。この振り分けによって、経費にできるタイミングが変わります。
修繕費は「元に戻す」ための費用
修繕費とは、壊れた部分を直して元の状態に戻したり、通常の維持管理をしたりするための費用です。これらは支払った年に全額を経費にできます。修繕費が必要経費に含まれる考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm)で確認できます。たとえば次のようなものが該当します。
壊れたエアコンの修理
雨漏りの補修
定期的な点検・メンテナンス費用
壁紙の張り替えなど原状回復にあたる工事
資本的支出は「価値を高める」ための費用
一方、資本的支出とは、固定資産の価値を高めたり、使用できる期間を延ばしたりする費用です。これは支払った年に全額を経費にはできず、固定資産として計上し、減価償却によって何年かに分けて経費化します。たとえば次のようなものです。
建物に新たな部屋や設備を増設する工事
耐震補強など建物の耐久性を高める工事
性能を大きく向上させる改造
固定資産として計上した後の経費化は、日々の帳簿づけの中で管理していくことになります。仕訳の基礎に不安がある方は、個人事業主の帳簿の付け方入門で単式簿記と複式簿記の違いから押さえておくと、資産計上の意味がつかみやすくなります。
判断に迷ったときの金額基準
「価値を高めたのか、元に戻しただけなのか」は、実際には判断が難しいケースが多くあります。そこで、形式的に判定できる金額の基準が設けられています。修繕費と資本的支出の区分については、国税庁のタックスアンサーで判定の考え方を確認できます。
20万円未満なら修繕費にできる
一つの修理や改良にかかった金額が20万円未満であれば、その内容にかかわらず修繕費として全額をその年の経費にできます。少額の工事であれば、細かく性質を判定しなくてよい、という考え方です。
おおむね3年以内の周期で行う修理
おおむね3年以内の周期で繰り返し行われる修理・改良であれば、金額にかかわらず修繕費として処理できます。定期的なメンテナンスは維持管理の費用と考えられるためです。
60万円未満などの形式基準
修繕費か資本的支出かが明らかでない場合でも、金額が60万円未満のとき、または前年末の取得価額のおおむね10%以下のときは、修繕費として処理できる取り扱いがあります。こうした基準は細かい条件があるため、判断に迷う場合は最新情報を国税庁サイト等でご確認ください。
具体例で考える振り分け
言葉だけでは分かりにくいので、よくある場面を例に振り分けを考えてみましょう。
店舗の床を張り替えた場合
傷んだ床を同じグレードの素材で張り替えるのは原状回復にあたり、修繕費になりやすいケースです。一方、より高級で耐久性の高い素材に変えて価値を高めた場合は、資本的支出と判断される部分が出てくる可能性があります。
エアコンを買い替えた場合
古いエアコンの修理は修繕費ですが、新しいエアコンへの買い替えは「修理」ではなく新しい資産の購入です。この場合は修繕費ではなく、エアコン本体を固定資産として計上し、減価償却していくことになります。なお、リースやレンタルで設備を導入した場合は科目の選び方が変わるため、地代家賃・賃借料・支払手数料の使い分けもあわせて確認しておくと迷いにくくなります。
外壁を塗り直した場合
定期的な外壁塗装は維持管理にあたり、修繕費とされることが一般的です。ただし、塗装と同時に大規模な補強や構造の変更を伴うときは、その部分が資本的支出になることもあります。同じ「外壁の工事」でも、傷んだ箇所を直すだけなのか、建物全体の耐久性を底上げするのかで判断が変わると考えておきましょう。
パソコンの部品を交換した場合
故障した部品を同等のものに交換するのは修繕費にあたります。一方、メモリやストレージを大幅に増設して処理能力を大きく高めたような場合は、性能向上として資本的支出の要素が出てくることがあります。「壊れたから直した」のか「より良くした」のかという視点が、ここでも判断の軸になります。判断を先送りにして請求書をためこんでしまうより、迷った段階で修繕費か資本的支出かの仕分けごと任せる記帳代行を使い、処理そのものを預けてしまうのも一つの方法です。
判断のための実務ポイント
正しく処理するために、日ごろから意識しておきたいポイントをまとめます。
見積書・請求書の内訳を残す
工事の内容が「修理なのか、価値を高めたのか」を後から説明できるよう、見積書や請求書には作業内容の内訳を記載してもらいましょう。「一式」とだけ書かれた書類では、判断の根拠を示しにくくなります。工事を依頼する段階で、業者に「作業ごとに金額が分かるように書いてほしい」と一言伝えておくだけで、後の処理がずっと楽になります。完成後に内訳を書き直してもらうのは手間がかかるため、最初の見積もりの時点で意識しておくのがおすすめです。記帳代行の現場でも、「一式」表記の請求書は判断材料が足りず、追加で内容を確認するケースが少なくありません。
修繕費にしたい意図だけで決めない
その年の利益を抑えたいからといって、本来は資本的支出にあたるものを修繕費にしてしまうと、後から指摘を受ける可能性があります。あくまで工事の実態に沿って判断することが大切です。利益が大きい年に一度に経費化したくなる気持ちは自然ですが、判断の根拠はあくまで工事の内容に置きましょう。こうした思い込みによる処理は、個人事業主の帳簿づけでよくある間違い10選でも取り上げられる典型的なつまずきの一つです。
判断の手順を整理しておく
迷ったときは、次のような順番で考えると整理しやすくなります。一つずつ当てはめていくことで、無理なく振り分けられます。
金額が20万円未満か、おおむね3年周期の修理か(該当すれば修繕費)
明らかに価値や寿命を高める工事か(該当すれば資本的支出)
判断がつかない場合は60万円未満などの形式基準を確認する
このように段階を踏んで考えれば、すべてを感覚で決めずに済みます。それでも判断がつかないときは、無理に自己判断せず専門家に確認するのが安全です。
よくある質問
Q. 一度の工事で修繕費と資本的支出が混ざっている場合はどうしますか?
工事の内容ごとに分けて判断します。たとえば原状回復部分は修繕費、機能を向上させた部分は資本的支出、というように内訳を分けて処理します。見積書の段階で項目を分けてもらうと処理がスムーズです。
Q. 賃貸物件に内装工事をした場合はどうなりますか?
借りている物件に施した内装や設備の工事は、原状回復にあたるものでなければ、資本的支出として固定資産に計上し、減価償却していくのが一般的です。契約内容や工事の性質によって扱いが変わるため、判断に迷う場合は専門家に確認しましょう。
Q. 資本的支出にすると損なのですか?
損得というより、経費にするタイミングが変わるだけです。修繕費はその年に全額、資本的支出は数年に分けて経費にします。長い目で見れば経費にできる総額は同じですので、実態に合った処理を選ぶことが何より大切です。
修繕費か資本的支出かで迷ったときの結論
修繕費と資本的支出の振り分けは、「壊れたものを元に戻したのか」「資産の価値や寿命を高めたのか」という視点で考えるのが基本です。元に戻すための費用は修繕費としてその年に全額経費に、価値を高める費用は資本的支出として数年に分けて経費にしていきます。
判断に迷うときは、20万円未満や60万円未満といった金額基準も助けになります。大切なのは、工事の実態に沿って処理し、その根拠を書類で残しておくことです。後から見返したときに、なぜそう判断したのかを説明できる状態にしておきましょう。
店舗の改装や設備の入れ替えをしたものの、「これは一度に経費にできるの?」と請求書を前に固まってしまう。そんな判断のもやもやを抱える個人事業主は少なくありません。領収書丸投げドットコムでは、工事の見積書や請求書をお送りいただければ、修繕費か資本的支出かの振り分けや減価償却の計算まで含めて帳簿を整えます。何枚でも定額 月額6,600円(税込)・税理士監修の体制でサポートします。修繕費の判断を丸ごと任せられるか無料で聞いてみることから始めてみませんか。相談は無料です。ほかの事業者がどう活用しているかは導入事例でご覧いただけます。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








