少額減価償却資産の特例|30万円未満の備品を一括で経費にする方法を解説
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税金

少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている個人事業主が取得価額30万円未満の備品をその年に一括で経費にできる制度です。仕組みと使うための条件、対象になるもの、確定申告での書き方までを、専門用語をかみ砕きながら整理します。
事業用にパソコンや事務机、撮影機材などを購入したとき、「これって今年の経費にしていいのかな?」と迷った経験はありませんか。10万円を超えるものは原則として数年に分けて少しずつ経費にする「減価償却」という処理が必要で、ここでつまずいてしまう個人事業主の方はとても多いです。そんなときに頼りになるのが、これから説明する少額減価償却資産の特例です。まずは前提となる減価償却の考え方から押さえ、なぜこの特例がありがたいのかを見ていきましょう。
☑ パソコンや備品を買ったけれど、一度に経費にできるのか分からない
☑ 30万円未満なら全額経費にできると聞いたが、本当か不安だ
そもそも減価償却とは何かをやさしく整理
特例の話に入る前に、まずは「減価償却」という考え方を押さえておきましょう。ここが分かると、なぜ特例がありがたいのかがはっきり見えてきます。
高額なものは「使う年数」で分けて経費にする
事業で使う物のうち、長く使えて価値のあるものは「固定資産」と呼ばれます。パソコンや車、機械などがこれにあたります。こうしたものは、買った年に全額を経費にするのではなく、使える年数(これを「耐用年数」といいます)に分けて少しずつ経費にしていくのが原則です。この処理が減価償却です。減価償却の基本的な考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」で確認できます。
たとえば耐用年数4年のパソコンを買った場合、その金額をおおむね4年に分けて経費にしていくイメージです。一度にどんと経費にできないため、買った年の節税効果は限定的になります。
10万円が一つの区切りになる
購入した物の金額によって、処理の仕方は次のように変わります。
10万円未満:買った年に全額を「消耗品費」などとして経費にできる
10万円以上:原則として減価償却が必要(数年に分けて経費にする)
つまり、10万円を境に処理が大きく変わります。この「10万円以上は減価償却」というルールを、一定の条件のもとでぐっと使いやすくしてくれるのが、これから説明する特例です。
少額減価償却資産の特例とは
ここからが本題です。この特例を使えるかどうかで、買った年の経費の入れ方が大きく変わります。
30万円未満なら一括で経費にできる
少額減価償却資産の特例とは、青色申告をしている中小企業者等(個人事業主を含みます)が、取得価額30万円未満の資産を購入した場合に、その全額をその年の経費にできるという制度です。本来であれば数年かけて経費にするものを、買った年にまとめて経費計上できるため、その年の利益を圧縮し、結果として税負担を抑えられる可能性があります。
使うための主な条件
この特例を使うには、いくつかの条件があります。代表的なものを挙げます。
青色申告をしていること(白色申告では使えません)
1点あたりの取得価額が30万円未満であること
その年に取得して、実際に事業で使い始めていること
合計額には年間の上限があること(取得価額の合計で年間300万円まで)
年間の合計には上限が設けられているため、何でも無制限に一括経費にできるわけではない、という点は覚えておきましょう。前提となる青色申告そのものの制度は、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。なお、この特例は適用期限が定められている制度のため、最新の適用状況は国税庁サイト等でご確認ください。
具体的にどんなものが対象になるのか
「30万円未満の事業用の物」と聞いても、自分の場合に当てはまるのか分かりにくいものです。よくある例を見てみましょう。
対象になりやすい備品の例
15万円のノートパソコン
20万円台のデスクトップパソコンやモニター一式
10万円台のカメラやレンズ、撮影用照明
事務用のデスクやチェア、書棚
業務用のソフトウェア(一定のもの)
いずれも「1点あたり30万円未満」で、事業に使っていることが前提です。仕事とプライベートの両方で使うものは、事業で使っている割合の分だけが対象になる点に注意しましょう。
判定は「セット」か「単体」かに注意
金額の判定は、原則として通常一緒に使われる単位ごとに行います。たとえばパソコン本体とモニター、キーボードをセットで購入し、それらが一体として機能する場合は、合計額で30万円未満かどうかを判定することがあります。「単体では30万円未満だから大丈夫」と早合点せず、どの単位で判定するかを意識しておくと安心です。設備投資が大きい年は、この特例だけでなく中小企業投資促進税制の特別償却・税額控除とどちらが有利かも見比べておくとよいでしょう。
特例を使うときの手続きと注意点
制度を正しく使うためには、申告のときの書き方にも気を配る必要があります。
確定申告での書き方
この特例を使うときは、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の欄に、特例を適用した資産の内容や金額を記載します。摘要欄に「措置法28の2」と記す、といった一定の書き方が求められます。記載が漏れていると特例が認められないこともあるため、丁寧に記入しましょう。こうした記帳や決算書の作成に手が回らないなら、減価償却の処理まで含む記帳代行に任せる方法もあります。
固定資産として残る点に注意
一括で経費にできても、その物自体は事業で使い続ける「資産」です
地域によっては、一定額以上の資産に対し「償却資産税」という税金がかかる場合があります
売却したり廃棄したりしたときには、別途処理が必要になることがあります
「経費にしたから関係ない」と考えず、購入した備品は記録として管理しておくことが大切です。
一括経費にするか、あえて分けるか
特例が使えるからといって、必ず一括経費にするのが得とは限りません。状況に応じた判断が必要です。
利益が出ている年はメリットが大きい
その年に利益がしっかり出ていて、税負担を抑えたい場合は、一括で経費にすることで節税につながりやすくなります。一方、もともと利益が少ない年に大きく経費を入れても、効果が薄くなることがあります。赤字になりそうな年は、無理に経費を前倒しするより、赤字を3年繰り越して翌年以降の税を抑える純損失の繰越を活かす選択肢も検討に値します。
翌年以降の見通しも考える
事業の状況は年によって変わります。「来年のほうが利益が大きくなりそう」という場合は、通常の減価償却で数年に分けたほうが、トータルで見てバランスがよくなることもあります。この特例だけでなく、通常の償却や他の特例をどう組み合わせるかは、減価償却の特例を組み合わせて節税効果を最大化する方法の考え方が参考になります。目先の一年だけでなく、数年単位で考える視点を持つとよいでしょう。ただし、過度な節税の追求は本末転倒になりかねません。あくまで事業に必要なものを、無理のない範囲で計上することが基本です。
よくある質問
Q. 白色申告でもこの特例は使えますか?
いいえ、少額減価償却資産の特例は青色申告をしている方が対象です。白色申告の場合は使えません。ただし、10万円以上20万円未満の資産については「一括償却資産」という別の方法で3年に分けて経費にできる仕組みがあり、こちらは白色申告でも利用できます。青色申告には他にもさまざまなメリットがあるため、これを機に検討してみるのもよいでしょう。
Q. 中古で買ったパソコンも対象になりますか?
はい、新品か中古かは問いません。事業で使うために取得した30万円未満の資産であれば、中古品でも特例の対象になります。フリマアプリや中古ショップで購入した事務機器なども、事業で使っているのであれば対象として考えられます。購入を証明できるよう、領収書やレシートはきちんと保管しておきましょう。
Q. 年の途中で買ったものでも全額経費にできますか?
はい、この特例の大きな利点の一つがそこです。通常の減価償却では、年の途中で使い始めた場合は使った月数に応じて経費が少なくなりますが、この特例を使えば、取得して事業で使い始めた年に取得価額の全額を経費にできます。年末に駆け込みで備品を購入するケースでも、しっかり経費にできる点は心強いところです。
少額減価償却の特例を上手に活かすには
少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている個人事業主にとって、とても使い勝手のよい制度です。本来なら数年かけて経費にするはずの30万円未満の備品を、買った年に一括で経費にできるため、利益が出ている年の税負担を抑える助けになります。パソコンやカメラ、事務用品など、事業に必要なものを購入する機会は意外と多いものですから、この制度を知っているかどうかで結果は変わってきます。
一方で、青色申告であることや年間の合計上限、申告書への正しい記載など、いくつかの条件や注意点があります。判定の単位や償却資産税の扱いなど、細かい部分でつまずきやすいのも事実です。自分のケースで本当に使えるのか不安なときは、無理に一人で抱え込まず、専門家に確認しながら進めると安心です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








