不測の事態に備える積立と節税を両立する個人事業主の資金準備を解説
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税金

不測の事態への備えは、まず生活防衛のための預金を確保し、そのうえで小規模企業共済やiDeCoといった節税効果のある制度、さらに事業リスク向けの共済や保険へと、優先順位をつけて積み上げるのが基本です。備えながら税負担も軽くする資金準備の考え方を整理していきます。
会社員と違って、個人事業主やフリーランスには有給休暇も傷病手当金もありません。体調を崩したり、災害で仕事道具を失ったりすれば、収入はその日からゼロに近づいてしまいます。だからこそ「いざというときのお金」を自分で準備しておく必要があるのですが、ただ通帳に貯めるだけでは税金面でのメリットがなく、もったいないと感じている方も多いのではないでしょうか。
☑ 病気やケガ、災害で仕事が止まったときの生活費が不安で、何から備えればよいかわからない
☑ 手元にお金を残しておきたいが、ただ預金しておくだけでは節税につながらず損をしている気がする
☑ 備えのための積立制度がいくつもあって、自分にどれが合っているのか判断できない
このコラムでは、不測の事態に備える資金の作り方を、節税効果のある制度を中心に整理します。自分の状況に合った「備えながら税負担も軽くする」資金準備の方向性を、具体的につかんでいきましょう。
なぜ個人事業主に「備えの資金」が必要なのか
収入が途切れたときに頼れる仕組みが少ない
会社員であれば、病気やケガで働けなくなっても傷病手当金や有給休暇でしばらく収入が支えられます。一方、個人事業主はこうした公的な所得補償が原則なく、仕事を休めばそのまま売上が落ち込みます。取引先の事情や景気の変化で売上が急減することもあり、収入の波が大きいのが事業者の特徴です。
そのため、何かあったときに数か月は生活と事業を維持できるだけの手元資金(予備費)を持っておくことが、安心して事業を続ける土台になります。
「貯めるだけ」では税金面でもったいない
備えとして単に普通預金に積み上げるのも一つの方法ですが、預金そのものには所得を減らす効果はありません。一方で、後述する小規模企業共済やiDeCoなどの制度を使えば、将来や万一に備えながら、その掛金が所得控除の対象になり、結果として所得税や住民税の負担を軽くできます。同じ「お金を取り分ける」行為でも、置き場所によって税金の扱いが変わるのです。
備えは「すぐ使えるお金」と「将来のためのお金」に分ける
備えの資金は、性質の違う2つに分けて考えると整理しやすくなります。
すぐ引き出せるお金…急な出費や数か月の生活費をまかなうための、預金など流動性の高い資金
将来のために寝かせるお金…老後資金や廃業時の生活費など、長く使わない前提で積み立てる資金
節税効果が大きい制度ほど引き出しに制限がある傾向があります。すべてを節税優先で固めてしまうと、いざというときに動かせず困ることもあるため、まずは生活防衛のための預金を確保したうえで、余力を制度に回す順番がおすすめです。
節税しながら備えられる代表的な制度
小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が、廃業や引退に備えて積み立てる「経営者の退職金」とも呼ばれる制度です。掛金は毎月一定の範囲内で自分で設定でき、支払った全額がその年の所得控除の対象になります。つまり、将来の自分のために積み立てながら、その年の課税所得を下げられるのが大きな特徴です。掛金による節税効果は小規模企業共済の節税シミュレーションで試算できます。
積み立てた共済金は、廃業時や65歳以降などに受け取れます。掛金の範囲内で貸付を受けられる制度もあり、急な資金需要があったときの備えとしても機能します。長く事業を続けるほど受け取れる金額が増える仕組みのため、早めに少額からでも始めておく価値があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で積み立てて運用し、老後に受け取る私的年金の制度です。掛金は全額が所得控除の対象になるうえ、運用で得た利益にも税金がかからず、受け取るときにも一定の控除が用意されています。「積み立て・運用・受け取り」のそれぞれの段階で税制上の優遇があるのが強みで、所得への効果はiDeCoの節税と所得への効果にまとめています。
ただし、iDeCoは原則として60歳まで引き出せません。あくまで老後資金を作るための制度であり、近い将来に使うかもしれないお金を入れる場所ではない点に注意が必要です。生活防衛資金とは切り分けて考えましょう。
国民年金基金・付加年金
国民年金だけでは老後の備えが心もとないと感じる方には、国民年金基金や付加年金という上乗せの仕組みもあります。これらのしくみは日本年金機構のサイトで確認できます。国民年金基金の掛金も所得控除(社会保険料控除)の対象で、その扱いは国税庁タックスアンサーNo.1130「社会保険料控除」で確認できます。付加年金は月数百円程度の少ない負担で将来の年金額を増やせる制度で、手軽に始められます。なお、国民年金基金と付加年金は同時には利用できないため、どちらを選ぶかは事前に確認しておきましょう。
事業のリスクに直接そなえる制度
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
経営セーフティ共済は、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったときに、無担保・無保証で借入れができる制度です。連鎖的に資金繰りが悪化するのを防ぐためのもので、掛金は事業の必要経費として扱えます。掛金を経費にできる仕組みと節税効果は経営セーフティ共済の掛金と節税で確認できます。所得控除ではなく経費になる点が、小規模企業共済との大きな違いです。
取引先の倒産がなくても、一定期間以上掛金を納めていれば解約時に掛金が戻る仕組みがあります。ただし、納付期間が短いうちに解約すると元本割れすることがある点や、解約して受け取ったお金はその年の収入として課税される点には注意しましょう。「経費にできた分が、戻ってきたときに収入になる」という性質を理解して活用することが大切です。
事業用の損害保険・火災保険
地震や火災、水害などで店舗・事務所・機材といった事業用資産が損害を受けると、復旧に多額の費用がかかります。こうした物的なリスクには、事業用の火災保険や、特約による備えが有効です。事業のために契約した損害保険の保険料は、原則として必要経費に計上できます。保険金を受け取ったときの扱いも含めて、火災保険と実質弁済の確定申告が参考になります。
自宅兼事務所の場合は、事業に使っている割合に応じて経費にできる部分が決まります。プライベートと事業が混ざる支出は、合理的な基準で按分して考えるのが基本です。
所得補償・就業不能に備える保険
病気やケガで長期間働けなくなったときに、その間の収入を補う「所得補償保険」や「就業不能保険」もあります。傷病手当金のない個人事業主にとって、収入が止まるリスクへの備えとして検討する価値があります。保険によって税務上の取り扱いが異なるため、契約前に補償内容と税金の扱いの両面を確認しておくと安心です。
制度を選ぶときの考え方と進め方
「引き出しやすさ」と「節税効果」のバランスで考える
節税効果が大きい制度ほど、お金を自由に動かしにくい傾向があります。下の順番を意識すると、無理なく備えを組み立てられます。
まず、生活費の数か月分をすぐ使える預金として確保する
次に、廃業や老後に備える小規模企業共済・iDeCoなどで節税しながら積み立てる
余力があれば、事業リスク向けの経営セーフティ共済や保険で守りを固める
すべてを一度に始める必要はありません。手元資金の余裕や事業の安定度を見ながら、少しずつ厚くしていく姿勢で十分です。
無理のない掛金から始める
節税になるからと掛金を高く設定しすぎると、売上が落ちた月に資金繰りが苦しくなりかねません。多くの制度は掛金の増減ができるため、まずは無理のない金額から始め、事業が安定してきたら増やしていくのが現実的です。「続けられる範囲」で長く積み立てることが、結果として大きな備えにつながります。
記帳で資金の流れを「見える化」する
どの制度にいくら入れるかを判断するには、自分の事業の収支や手元資金の状況を正しく把握していることが前提になります。日々の取引をきちんと記帳しておけば、いくらまでなら備えに回せるか、利益がどのくらい出ているかが見えてきます。備えの前提となる数字の把握や申告まで任せたいときは、確定申告の丸投げ代行という方法もあります。逆に、帳簿があいまいだと、節税のつもりが資金繰りを圧迫してしまうこともあります。備えと節税を両立させる第一歩は、足元の数字を整えることです。
よくある質問
Q. 預金で備えるのと、共済やiDeCoで備えるのはどちらがよいですか?
どちらか一方ではなく、役割を分けて両方を持つのが基本です。急な出費や数か月の生活費は、いつでも引き出せる預金で確保します。そのうえで、当面使う予定のない資金を小規模企業共済やiDeCoに回すと、節税しながら将来の備えを厚くできます。生活防衛資金を確保する前に、引き出しにくい制度へ多くを入れてしまわないよう注意しましょう。
Q. 掛金が所得控除になる制度と、経費になる制度は何が違うのですか?
所得控除は、計算した所得から一定額を差し引いて課税対象を小さくする仕組みで、小規模企業共済やiDeCoの掛金が当てはまります。一方、経費は事業の売上から差し引いて利益そのものを小さくするもので、経営セーフティ共済の掛金や事業用保険料が該当します。どちらも最終的な税負担を軽くしますが、帳簿上の扱いや申告書での記入箇所が異なります。それぞれの証明書類を保管しておくことが大切です。
Q. 節税のためにできるだけ多く積み立てたほうが得ですか?
節税額だけを見て掛金を増やすのはおすすめできません。積み立てたお金の多くはすぐには使えず、売上が落ちたときに手元の現金が足りなくなるおそれがあります。あくまで「事業と生活に支障が出ない範囲」で続けられる金額にとどめ、税負担の軽減はその結果として受け取るものと考えるのが安全です。
結論|備えと節税は順番と見える化がカギ
不測の事態への備えは、まず生活防衛のための預金を確保し、そのうえで小規模企業共済やiDeCoといった節税効果のある制度、さらに事業リスク向けの共済や保険へと、優先順位をつけて積み上げていくのが基本です。引き出しやすさと節税効果のバランスを意識し、続けられる金額から始めれば、安心とゆとりを少しずつ大きくしていけます。
もっとも、こうした判断の前提となるのは、自分の事業の収支や手元資金を正しく把握していることです。とはいえ、本業が忙しい中で記帳から申告まで自分で行うのは重くのしかかり、数字の整理が後回しになってしまう方も少なくありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








