事業をやめる前年から始める節税|廃業を見据えた所得調整を解説
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税金

廃業の年は最後の売上や在庫・設備の処分で所得が偏り、累進課税で税率が上がりやすくなります。だからこそ、事業を続けている前年から所得の平準化や共済の活用を進めておくと、税負担を抑えて落ち着いて区切りを迎えられます。
長く続けた事業をやめる決断には、「税金で損をしたくない」という現実的な悩みがついて回ります。廃業の前後は所得が大きく動きやすく、無準備だと思わぬ税負担に驚くことも。前年から打てる手を、所得調整という視点で整理していきましょう。
☑ そろそろ事業をたたもうと考えているが、税金で損をしないか不安だ
☑ 廃業の年は所得が偏りそうで、何か手を打てないか知りたい
☑ 在庫や設備が残っているけれど、どう処理すれば節税になるのかわからない
なぜ「廃業の前年」から節税を考えるのか
廃業の年は所得が偏りやすい
事業をやめる年は、最後の取引の入金や、在庫・設備を処分したことによる収入が一度に集中しがちです。一方で、廃業後は事業に関わる経費を計上できる範囲が限られていきます。その結果、最終年度だけ所得が大きく膨らみ、税率の高い区分に押し上げられてしまうということが起こり得ます。事業を縮小・撤退するときの節税全般の考え方は事業縮小・撤退時の節税で整理しています。
所得税は所得が大きいほど税率が上がる累進課税です。だからこそ、所得が一年に偏らないよう、前年から少しずつ調整していく発想が大切になります。「やめる年に考えればいい」では、打てる手が限られてしまうのです。所得税の税率(累進課税)の区分は、国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」で確認できます。
前年なら使える選択肢が多い
廃業の前年であれば、まだ通常どおり事業を続けている状態です。つまり、必要な備品の買い替えや、加入している共済の見直し、所得控除の活用など、平時に使える節税策をひととおり検討できます。やめる直前になってから動くよりも、選べる手段がはるかに多いのが「前年」というタイミングです。
資金繰りとのバランスも見据える
節税は大切ですが、手元の資金を無理に減らしてまで行うものではありません。廃業後は事業収入が途絶えるため、当面の生活資金や納税資金を確保しておく必要があります。「税金を減らすこと」と「手元にお金を残すこと」のバランスを、前年のうちから意識しておきましょう。
所得を平準化する基本の考え方
売上と経費のタイミングを整える
所得の偏りをやわらげる第一歩は、売上と経費の計上時期を意識することです。たとえば、廃業の前年にまとめて発生しそうな大きな経費があるなら、前年のうちに計上できるか検討します。逆に、最終年度に売上が集中しそうな場合は、その年に対応する経費がきちんと残るように整理しておくと、所得のバランスが取りやすくなります。所得を年ごとにならす具体的な工夫は決算期を見据えた所得の平準化が参考になります。
ただし、売上や経費の計上時期には会計上のルールがあり、自由に動かせるわけではありません。あくまで正しいルールの範囲内で、できることを整えるという姿勢が前提です。
必要な設備投資は前倒しで検討する
もともと買い替えを予定していたパソコンや業務用の機器などがあるなら、廃業前のまだ事業を使っている期間に購入を検討する余地があります。事業で使う資産であれば経費(または減価償却)として扱えるためです。ただし、廃業間際に「節税のためだけ」に高額なものを購入しても、使わないまま処分することになれば本末転倒です。本当に必要かどうかを基準に判断しましょう。
少額の備品は早めに使い切る
消耗品や事務用品など、どのみち使うものは前年のうちに整える
修繕が必要な箇所があれば、事業を続けている間に対応する
サブスクや年払いの費用は、契約期間と廃業時期の整合を確認する
こうした細かな経費も、計上できるタイミングを逃さないことで、所得の平準化に役立ちます。
在庫・設備の処分と最終年度の所得
在庫(棚卸資産)の扱いに注意する
商品や材料などの在庫がある事業では、廃業時に残った在庫の処分方法が所得に影響します。販売して現金化すれば、その売上は収入になります。値引きして売り切るのか、廃業前から計画的に在庫を減らしておくのかによって、最終年度の所得の出方が変わってきます。
売れ残った在庫を廃棄する場合は、廃棄したことがわかる記録(廃棄の日付や数量、写真など)を残しておくことが大切です。記録がないと、適切に処理したことを後から説明しづらくなります。
設備や車両を売却・処分するとき
事業で使っていた設備や車両を売却した場合、その扱いは内容によって異なります。事業用資産の売却損益が出るケースもあるため、金額が大きいものについては早めに専門家へ相談すると安心です。処分の際にも、いつ・何を・どうしたのかという記録を残しておきましょう。
家事用に転用するものの整理
パソコンや車など、廃業後も自分用(家事用)として使い続ける資産もあるでしょう。こうした資産は事業用から外れることになります。何を事業用として処理し、何を私用に切り替えるのかを、前年のうちから棚卸ししておくと、最終年度の整理がスムーズになります。
退職金代わりに使える制度を前年から準備する
小規模企業共済という選択肢
個人事業主には会社員のような退職金制度がありませんが、その代わりとして広く知られているのが小規模企業共済です。掛金は全額が所得控除の対象になり、事業を廃業した際には共済金を受け取れる仕組みです。受け取り方によって税制上の扱いが変わるため、廃業を見据えるなら、加入や掛金の見直しを前年のうちに検討しておく価値があります。掛金による節税額の目安は小規模企業共済の節税シミュレーションで試算できます。
すでに加入している方は、掛金を増額する、あるいは前納するといった調整で、その年の所得控除を厚くできる場合があります。制度の詳細や上限は変わることがあるため、最新の内容は必ず公式情報で確認してください。
iDeCoなど将来に向けた積み立て
老後資金の準備として、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用している方も多いでしょう。掛金が所得控除の対象になる点は節税にもつながります。ただし、廃業後の働き方や収入によって加入条件や使い方が変わることがあるため、廃業前にご自身の状況を整理しておくと安心です。
制度は「加入のタイミング」が肝心
これらの制度は、廃業してから慌てて加入しても間に合わないことがあります。控除のメリットを受けながら将来に備えるには、事業を続けている前年のうちに動き始めるのが理想的です。「やめると決めた今」が、検討を始めるよいきっかけになります。
廃業手続きと申告で押さえておくこと
廃業届などの提出を忘れない
事業をやめるときは、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。青色申告をしていた方は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」、消費税の課税事業者だった方は消費税に関する届出など、状況に応じた書類があります。提出期限が定められているものもあるため、廃業を決めたら早めに必要な手続きを一覧化しておきましょう。
廃業年も確定申告は必要
年の途中で廃業した場合でも、その年に事業所得があれば確定申告が必要です。申告期間は原則として翌年の2月16日から3月15日までで、廃業した年の1月1日から廃業日までの所得をまとめて申告します。最終年度こそ数字が複雑になりやすいので、帳簿を整えておくことが何より大切です。最終年度の複雑な申告に不安があれば、確定申告の代行を利用する方法もあります。
青色申告特別控除も最後まで活かす
青色申告をしている方は、要件を満たせば最終年度も青色申告特別控除(最大65万円など)を受けられます。複式簿記による記帳や期限内申告といった条件があるため、廃業でばたついていても、帳簿づけと申告のルールはきちんと守りましょう。控除を取りこぼすと、最後の年の税負担に直接響いてしまいます。青色申告の制度とメリットは、国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。
よくある質問
Q. 廃業の前年と当年、どちらで経費を使うほうが得ですか?
一概には言えませんが、所得が一年に偏ると税率が上がりやすいため、両年の所得バランスを見ながら判断するのが基本です。前年と当年の所得見込みを比べ、どちらに経費を寄せると全体の税負担が軽くなるかを考えます。判断が難しい場合は、数字を整理したうえで専門家に相談すると安心です。
Q. 廃業後に入ってきた売掛金は、いつの所得になりますか?
事業に関連して生じた売掛金は、原則として事業を行っていた年の所得として扱います。廃業後に入金された場合でも、その取引が事業期間中のものであれば、廃業した年の所得に含めて考えるのが基本です。回収予定の売掛金がある方は、最終年度の所得に反映されることを前提に資金計画を立てておきましょう。
Q. 赤字のまま廃業する場合でも節税は関係ありますか?
はい、関係します。青色申告をしていれば、その年の赤字(損失)を一定期間繰り越せる制度などもあり、状況によっては他の所得と相殺できる場合があります。赤字だからと申告をおろそかにせず、最後まできちんと記帳・申告することが、結果的にご自身を守ることにつながります。
結論|廃業の節税は「前年からの準備」で差がつく
事業をやめる前後は、最終年度に所得が偏りやすく、在庫や設備の処分、各種届出など、やるべきことが一気に増えます。だからこそ、廃業の前年から所得の平準化や共済などの制度活用を意識しておくことで、税負担を抑えつつ、落ち着いて区切りを迎えることができます。ポイントは、無理に税金を減らすことではなく、手元の資金とのバランスを取りながら、使える選択肢を前もって整えておくことです。
廃業を控えた時期に、日々の記帳から在庫の整理、最終年度の確定申告まで自分でこなすのは、想像以上に重い作業です。数字が複雑で手がつかない、最後の申告でミスをしたくない——そんなときは専門家の力を借りるのも賢い選択です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








