個人事業主が使える雇用関係の助成金をやさしく解説
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税金

雇用関係の助成金は、要件を満たせば個人事業主でも受け取れる返済不要の資金です。ただし多くは「取り組み前の計画提出」と後払いが原則で、労働保険・社会保険の適正な加入や日ごろの書類整備が前提。受け取った助成金は収入として課税される点も押さえておきましょう。
事業が軌道に乗ってくると、ひとりでは手が回らなくなり、スタッフを雇うことを考える方が増えてきます。とはいえ、人を雇うとなると給与だけでなく社会保険料などの負担も発生し、踏み切るのに勇気がいるものです。そんなときに心強い味方になるのが、国が用意している「雇用関係の助成金」です。
☑ 「人を雇いたいけれど、人件費の負担が不安で踏み切れない」
☑ 「助成金という言葉は聞くけれど、個人事業主の自分でも使えるのか分からない」
☑ 「申請が難しそうで、どこから手をつければいいのか見当もつかない」
ここでは、雇用に関する助成金の基本的な仕組み、個人事業主が使いやすい代表的な制度、申請の流れと注意点、そして助成金を受け取ったときの税金の扱いまでを整理します。「自分の事業でも助成金を検討してみよう」と一歩踏み出せるはずです。
雇用関係の助成金とは何か
補助金との違いをまず押さえる
「助成金」と「補助金」は似ていますが、性格が少し異なります。助成金は主に厚生労働省が管轄し、雇用や労働環境の改善を目的としたものが中心です。要件を満たせば原則として受給できるのが特徴で、財源は事業主が納めている雇用保険料です。一方の補助金は経済産業省などが管轄し、設備投資や販路開拓などを後押しするもので、予算枠があり審査によって採否が決まるケースが多くなっています。
つまり、雇用関係の助成金は「要件をきちんと整えれば受け取りやすい」という点で、個人事業主にとって取り組む価値の高い制度だといえます。
返済不要だが「後払い」が原則
助成金は借入と違い、返済の必要がありません。これは大きな魅力です。ただし注意したいのは、多くの助成金が後払い(精算払い)である点です。つまり、先に人を雇って給与を支払い、一定の取り組みを実施したうえで、後からその実績に応じて支給される流れになります。手元資金がまったくない状態で「助成金をあてにして雇う」と資金繰りが苦しくなるため、まずは自分で支払える範囲で雇用を始め、後から助成金を受け取るという心構えが大切です。
個人事業主でも対象になる
助成金というと法人だけのものと思われがちですが、雇用関係の助成金の多くは個人事業主も対象です。重要なのは「労働者を雇用しているかどうか」です。従業員を雇って給与を支払い、雇用保険に加入させている個人事業主であれば、多くの制度で申請資格を得られます。逆に、家族だけで営んでいて雇用保険の被保険者がいない場合は、対象外となる助成金が多い点は理解しておきましょう。
個人事業主が使いやすい代表的な助成金
キャリアアップ助成金(正社員化など)
非正規雇用で働く人を正社員に転換したり、待遇を改善したりした事業主を支援するのがキャリアアップ助成金です。代表的なのが「正社員化コース」で、有期契約やパートの従業員を正社員に転換した場合に支給されます。小規模な事業でも取り組みやすく、最初に検討する助成金として人気があります。賃金規定の改定に関するコースは、キャリアアップ助成金の賃金規定改定コースで解説しています。アルバイトとして雇った人を将来正社員にしたいと考えているなら、最初から制度の存在を知っておくと有利です。
特定求職者雇用開発助成金(就職困難者の雇用)
高年齢者や障害のある方、母子家庭の母など、就職が難しい状況にある人をハローワーク等の紹介を通じて雇い入れた場合に支給されるのが特定求職者雇用開発助成金です。一定期間継続して雇用することが条件で、対象者の区分に応じて支給額が変わります。就職困難者の雇用に対する助成の実務は、特定求職者雇用開発助成金で詳しく解説しています。人手を募集する際に、こうした制度の対象になる方を採用することで、結果的に助成金の活用につながることがあります。
人材開発支援助成金(従業員の教育訓練)
雇った従業員にスキルアップのための研修を受けさせた場合、その訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支援してくれるのが人材開発支援助成金です。教育訓練への助成の詳細は、人材開発支援助成金で扱っています。専門的な技能を身につけてもらいたい、長く働いてもらうために育成に力を入れたいという個人事業主に向いています。研修を「コスト」だけで終わらせず、助成の対象にできる可能性があると知っておくと、教育投資のハードルが下がります。
申請の基本的な流れと押さえるべきポイント
多くは「計画の事前提出」が必要
雇用関係の助成金で特に大切なのが、取り組みを始める前に計画を提出しておく必要があるものが多いという点です。たとえば正社員化を進めるなら、就業規則などに転換のルールを定め、計画を出したうえで実施し、その後に申請する、という順番になります。「すでに正社員にしてしまった後から助成金を申請しよう」としても、事前の手続きを踏んでいないと対象にならないことがあります。順番を間違えると受け取れないため、検討段階で早めに情報を集めることが何より重要です。
労働保険・社会保険の適正な加入が前提
助成金を受けるには、事業主としての基本的な義務を果たしていることが前提になります。具体的には、以下のような点が問われます。
従業員を雇用保険・労災保険に適正に加入させていること
労働保険料をきちんと納めていること
労働基準法に沿った労働条件で雇用していること(賃金台帳や出勤簿などの整備)
過去に不正受給や重大な労働関係法令違反がないこと
つまり、日ごろから雇用にまつわる書類を整え、ルールを守って事業を運営していることが、助成金を受け取る土台になります。
書類の整備と相談窓口の活用
助成金の申請では、賃金台帳、出勤簿、雇用契約書、就業規則など、雇用の実態を示す書類が求められます。これらは普段の労務管理がそのまま審査資料になるため、後からまとめて作るのではなく、日常的に整えておくことが大切です。制度の内容や要件は細かく、年度によって変わることもあるため、不明点はハローワークや都道府県労働局、あるいは社会保険労務士などの専門家に確認するのが確実です。募集中の助成金・補助金は、経済産業省・中小企業庁が運営するミラサポplusでも探せます。
助成金を受け取ったときの税金の扱い
助成金は原則「収入」として課税される
意外と見落とされがちですが、受け取った助成金は事業所得の収入金額(雑収入など)として扱われ、課税の対象になるのが原則です。「返済不要のお金だから税金はかからない」と思い込んでいると、確定申告で計上漏れが起き、後から指摘を受けることになりかねません。助成金の収入計上や対応する経費の記帳を負担に感じるなら、記帳代行の活用も選択肢になります。助成金を受け取った年度には、忘れずに収入として帳簿に記録する必要があります。
計上するタイミングに注意
助成金をいつの収入として計上するかは、実務でよく迷うポイントです。一般的には、支給が決定した時点で収入として認識する考え方が用いられます。実際の入金が翌年にずれ込むこともあるため、「入金された日」だけでなく「支給決定の通知を受けた時期」も意識して帳簿づけをすることが大切です。判断に迷う場合は、税務の専門家に相談すると安心です。
対応する経費との関係も意識する
助成金は収入として課税される一方、その助成金の対象となった人件費や研修費などは、当然ながら必要経費として計上できます。つまり「助成金で収入が増えるが、それに対応する支出も経費になる」という両面で捉えることが大切です。収入だけを見て不安になる必要はなく、事業全体の損益の中で適切に処理すれば問題ありません。記帳の段階できちんと区分しておくことが、正しい申告につながります。
よくある質問
Q. 開業したばかりでも助成金は申請できますか?
従業員を雇用し、雇用保険などに適正に加入していれば、開業直後でも対象になる制度はあります。ただし制度によっては一定期間の事業実績や雇用実績が要件になっている場合もあります。まずは雇用保険の手続きを正しく行い、対象になりそうな助成金をハローワークなどで確認することをおすすめします。
Q. 家族従業員(専従者)を雇った場合も助成金の対象になりますか?
多くの雇用関係助成金では、事業主と一定の親族関係にある方は対象外とされていることが一般的です。これは制度の趣旨が「雇用の創出・改善」にあるためです。家族を青色事業専従者として扱う場合は、助成金よりも専従者給与による所得分散などの仕組みを検討するとよいでしょう。
Q. 助成金を受け取ると税金が増えて損になりませんか?
助成金は収入として課税されますが、それに対応する人件費などは経費になります。受け取った金額がそのまま丸ごと税負担になるわけではありません。多くの場合、助成金を受け取るメリットのほうが大きいといえますが、事業全体の所得状況によって影響は変わるため、計画段階で見通しを立てておくと安心です。
結論|雇用の一歩を助成金で後押しし、記帳はプロに任せる
雇用関係の助成金は、人を雇いたい個人事業主にとって心強い制度です。要件を満たせば受け取りやすく、返済も不要ですが、「取り組み前の計画提出」「労働保険・社会保険の適正な加入」「日ごろの書類整備」といった土台が欠かせません。さらに、受け取った助成金は原則として収入に計上して課税される点や、対応する経費との関係も理解しておくことで、確定申告のミスを防げます。制度は細かく変わることもあるため、最新情報はハローワークや専門家に確認しながら進めるのが安心です。
とはいえ、助成金の検討や申請準備に加えて、日々の記帳や年に一度の確定申告まですべてを本業の合間に行うのは大きな負担です。雇用が増えればその分、賃金台帳や帳簿づけの手間も増えていきます。事務作業に追われて本業の時間が削られてしまっては本末転倒です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








