2年目以降の期首残高の引き継ぎ実務|前年決算から正しく繰り越す手順を解説
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税務

2年目以降の期首残高は、前年の青色申告決算書の貸借対照表に並ぶ「期末」の金額を、そのまま当年の「期首」に写すのが基本です。前年決算のどこを見て何を引き継ぐのか、現金・預金・売掛金から固定資産・元入金までを迷わず繰り越す手順を解説します。
開業して1年目の確定申告を無事に終えても、2年目の帳簿づけを始めるときに「あれ、最初の残高は何を入れればいいの?」と手が止まってしまう個人事業主やフリーランスの方は少なくありません。1年目は残高がゼロからのスタートでしたが、2年目以降は前年から引き継ぐべき数字があるためです。
☑ 2年目の帳簿を始めようとしたら、現金や預金の最初の残高が合わずに戸惑っている
☑ 前年の決算で出した数字を、今年の帳簿のどこにどう引き継げばよいのかわからない
☑ 会計ソフトの「期首残高」という欄が空欄のままで、入力していいのか不安だ
以下では、2年目以降の帳簿で必要になる「期首残高(きしゅざんだか)」の意味から、前年の決算書のどこを見て何を引き継ぐのか、その具体的な手順までを順に確認していきます。年が変わるたびに迷わず残高を繰り越せるようになります。
前年決算の締めから引き継ぎまでをまとめて任せたいときは、日々の記帳を支える記帳代行という方法もあります。まずは期首残高の意味から押さえましょう。
期首残高とは?まず言葉の意味から押さえましょう
期首残高は「今年のスタート時点の残高」
期首残高とは、その年の帳簿を始める最初の日(個人事業主なら原則1月1日)の時点で持っている資産や負債の残高のことです。たとえば1月1日の時点で事業用の預金が50万円あれば、その50万円が「普通預金の期首残高」になります。
1年目は事業を始めた時点の元入金などからスタートしますが、2年目以降は前年の12月31日の残高をそのまま今年の1月1日に引き継ぐのが基本です。前年末(期末)の残高が、そのまま翌年初め(期首)の残高になる、という関係を覚えておきましょう。
「期末残高」と「期首残高」はつながっている
会計には「継続性」という考え方があり、前年の期末残高と当年の期首残高は必ず一致します。前年12月31日に普通預金が50万円で締めくくられたなら、当年1月1日も同じ50万円から帳簿が始まります。ここがずれてしまうと、その年の利益計算そのものが狂ってしまうため、期首残高の引き継ぎはとても大切な作業です。
期首残高を引き継ぐ対象となる科目
現金・普通預金などの資産
売掛金・未収金(まだ受け取っていない売上)
固定資産(パソコンや車など)と減価償却の残り(未償却残高)
買掛金・未払金・借入金などの負債
元入金(もといれきん)と事業主貸・事業主借の精算後の金額
損益計算書に出てくる売上や経費などの「収益・費用」の科目は、毎年いったんゼロにリセットされるため期首残高の引き継ぎ対象にはなりません。引き継ぐのは、あくまで貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)に並ぶ資産・負債・元入金の科目だと理解しておきましょう。
前年の決算書のどこを見ればよいか
引き継ぎの元になるのは「貸借対照表」
期首残高を引き継ぐとき、参照すべきは前年に作成した青色申告決算書の貸借対照表です。青色申告で65万円(または55万円)の特別控除を受ける方は、この貸借対照表を作成しているはずなので、その一番右側にある「期末(12月31日)」の列の金額を見ます。
白色申告の方や、青色でも貸借対照表を作っていない方は、12月31日時点の通帳残高・現金の有り高・未回収の売掛金などを自分で集計して期首残高を組み立てる必要があります(白色申告者の記帳・保存のルールは国税庁タックスアンサーNo.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」で確認できます)。いずれにしても、年末時点の「持っているもの」と「支払うべきもの」を正確に把握することが出発点です。
貸借対照表の「資産の部」と「負債・資本の部」
貸借対照表は左右に分かれており、左側(資産の部)には現金・預金・売掛金・固定資産などが、右側(負債・資本の部)には買掛金・借入金・元入金などが並びます。この一覧の「期末」の金額が、そっくりそのまま翌年の期首残高になります。前年の決算書の数字を書き写すイメージで進めると確実です。
元入金の金額に注意
個人事業主に特有の科目として「元入金」があります。元入金は2年目以降、前年の元入金に前年の利益(青色申告特別控除前の所得)を足し、事業主貸を引いて事業主借を足す、という形で金額が変わります。前年の決算書の貸借対照表に記載された「期末」の元入金が、当年の期首の元入金になります。自分で計算し直すよりも、前年の決算書に載っている期末の元入金をそのまま引き継ぐのが確実です。
会計ソフトでの期首残高の入力手順
多くのソフトに「期首残高」の登録画面がある
クラウド会計ソフトや市販の会計ソフトには、たいてい「期首残高の登録」「開始残高設定」といったメニューが用意されています。年度を切り替えた後、この画面に前年の貸借対照表の期末金額を科目ごとに入力していくのが基本的な流れです。
同じソフトを前年から続けて使っている場合は、年度更新(繰越処理)をするだけで期首残高が自動で引き継がれることがほとんどです。この場合、自分で手入力する必要はありません。ソフトを乗り換えた年や、初めて2年目の入力をする年だけ、手入力が必要になると考えておきましょう。
入力後は貸借が一致しているか確認
期首残高を入力したら、必ず「資産の合計」と「負債・資本の合計」が一致しているかを確認します。会計では左右の合計が必ず釣り合う仕組みになっているため、ここが一致しなければどこかに入力ミスがあるサインです。差額が出た場合は、入力した科目と金額を前年の決算書と一つずつ照合しましょう。
固定資産と減価償却の引き継ぎ
パソコンや車などの固定資産は、購入額そのものではなく、前年末時点で残っている「未償却残高(まだ経費にしていない金額)」を引き継ぎます。あわせて、減価償却資産の台帳に登録された取得日・取得価額・耐用年数などの情報も当年に引き継ぎ、その年の減価償却費を計算していきます(繰延資産の償却の引き継ぎは繰延資産の償却も参考になります)。固定資産は引き継ぎ漏れが起きやすい部分なので、前年の青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄を見ながら確認すると安心です。
引き継ぎでつまずきやすいポイント
事業用とプライベートの口座が混ざっている
個人事業主の場合、事業用の口座とプライベートの口座をきちんと分けていないと、期首残高をいくらにすればよいか判断が難しくなります。預金口座を1つ事業専用にしておくと、12月31日の通帳残高がそのまま期首残高になり、引き継ぎが一気に楽になります。これから整える方は、まず事業用口座を1つ決めることをおすすめします。
売掛金・買掛金の計上漏れ
12月に売り上げたが、入金は翌年1月という売掛金
12月に仕入れ・購入したが、支払いは翌年というに買掛金・未払金
これらは年末時点ではお金が動いていないため、つい計上を忘れがちです。しかし発生主義で記帳する場合、年末にまたがる取引は売掛金・買掛金として期首残高に含める必要があります(年末をまたぐ未収・未払の計上は決算時の未収・未払の計上を参照)。漏らすと2年分の利益がずれてしまうので注意しましょう。
前年の決算が確定していない状態で始めてしまう
前年の確定申告がまだ終わっていない、あるいは数字が固まっていない段階で当年の期首残高を入れてしまうと、後から前年の数字が変わったときに期首残高もすべて直す手間が発生します。期首残高の引き継ぎは、前年の決算がきちんと確定してから行うのが鉄則です。年が明けてすぐ当年の取引を入力すること自体は問題ありませんが、期首残高の確定は前年決算の完了を待ちましょう。
正しく引き継ぐための実務の流れ
前年決算の確定から当年スタートまでの順番
実務としては、(1)前年の帳簿を締めて決算を確定させる、(2)青色申告決算書の貸借対照表を完成させる、(3)その期末残高を当年の期首残高として登録する、(4)資産と負債・資本の合計一致を確認する、という順番で進めると迷いません。前年の決算書という「正解」を手元に置いて作業することが、ミスを防ぐ最大のコツです。
毎年の繰り返しで負担を減らす工夫
期首残高の引き継ぎは毎年発生する作業です。同じ会計ソフトを継続して使い、年度更新機能を活用すれば、2年目以降はほぼ自動で引き継げます。また、年末に一度「現金・預金・売掛金・買掛金の残高をメモにまとめる」習慣をつけておくと、決算と引き継ぎの両方がスムーズになります。在庫がある事業では決算棚卸の実施もあわせて行うと、期首の棚卸資産も正しく引き継げます。
少額減価償却資産など特例の扱いも確認
青色申告では、一定額未満の資産をその年に全額経費にできる特例などがあります。こうした特例で前年に経費化した資産は、当年の固定資産として引き継ぐ必要はありません。一方、通常の減価償却を選んだ資産は未償却残高を引き継ぎます。前年にどの方法を選んだかによって引き継ぐ・引き継がないが変わるため、前年の決算内容を確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 1年目の確定申告が白色申告で、貸借対照表を作っていません。2年目の期首残高はどうすればよいですか?
白色申告で貸借対照表を作成していなかった場合でも、2年目を始めるにあたって12月31日時点の状況を自分で集計すれば期首残高は組み立てられます。具体的には、年末の通帳残高、手元現金、未回収の売掛金、未払いの経費などを書き出し、それを当年1月1日の期首残高として登録します。2年目から青色申告に切り替えたい場合は、その年の3月15日までに承認申請が必要になる点もあわせて確認しておきましょう。
Q. 会計ソフトを別のものに乗り換えました。期首残高はどう移せばよいですか?
ソフトを乗り換えた場合は、自動引き継ぎが使えないため、新しいソフトの「期首残高登録」画面に前年の貸借対照表の期末金額を手入力します。前のソフトで出力した貸借対照表や、前年の青色申告決算書を見ながら、科目ごとに金額を写していきましょう。入力後に資産合計と負債・資本合計が一致していれば、正しく移行できています。
Q. 期首残高を間違えて登録したまま申告してしまいました。どうすればよいですか?
期首残高の誤りは、その年の利益や貸借対照表に影響します。気づいた時点で早めに正しい数字に直し、申告に影響が及ぶ場合は訂正申告や修正申告などの手続きを検討します。判断が難しいときは、自己流で進めず税務署や税理士などの専門家に相談するのが安心です。
期首残高は「前年の期末をそのまま写す」|まとめ
2年目以降の期首残高は、前年の青色申告決算書の貸借対照表に並ぶ「期末」の金額を、そのまま当年の「期首」に写すのが基本です。引き継ぐのは現金・預金・売掛金・固定資産・買掛金・借入金・元入金といった資産と負債・資本の科目で、売上や経費などの損益科目は引き継ぎません。前年の決算をきちんと確定させてから引き継ぎ、入力後に左右の合計が一致しているかを確認すれば、大きなミスは防げます。
とはいえ、本業が忙しい中で前年の決算を締め、貸借対照表を整え、固定資産の未償却残高まで正確に引き継いで2年目の帳簿を回していくのは、決して軽い負担ではありません。残高がどうしても合わない、固定資産や元入金の扱いに自信が持てない、という方も多いはずです。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








