決算前に資産・負債の残高を整える手順|貸借対照表を合わせる方法を解説
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税務

決算前の残高合わせは、現金・預金から始めて、売掛金・固定資産などの資産、買掛金・借入金・預り金などの負債を、通帳・請求書・返済予定表・台帳といった資料と突き合わせる作業です。貸借対照表を実態に合わせるための手順を、勘定科目ごとに整理していきます。
1年分の記帳がひととおり終わっても、いざ決算を組もうとすると「帳簿の残高と実際の金額が合わない」「資産や負債の欄に見慣れない数字が残っている」と戸惑う方は多いものです。日々の入力は正しく見えても、残高のズレは積み重なって決算のときに表面化します。
☑ 帳簿上の現金や預金の残高が、実際の通帳や手元の金額と合わない
☑ 貸借対照表(B/S)に意味のわからない残高が残っていて気持ち悪い
☑ 決算前に何をどう確認すれば残高が整うのか、手順がわからない
このコラムでは、決算前に資産・負債の残高を整え、貸借対照表をきちんと合わせるための手順を、個人事業主・フリーランスの方向けに整理します。どの勘定科目を、どんな資料と突き合わせて確認すればよいか、全体の流れをつかんでいきましょう。
なぜ決算前に残高を整える必要があるのか
貸借対照表は「期末時点の財産の写真」
貸借対照表(B/S)は、期末時点(個人事業主なら12月31日)で、どれだけの資産・負債が残っているかを一覧にしたものです。青色申告で65万円の特別控除を受けるには、損益計算書(P/L)だけでなく、この貸借対照表まで含めた複式簿記での記帳が求められます。残高が実態と合っていない貸借対照表は、控除の前提を満たさないだけでなく、利益の金額そのものを狂わせるため、決算前の確認はとても大切です。
残高のズレが利益と税額に直結する理由
たとえば、回収済みの売掛金を消し込み忘れていると、資産が過大に残り、入金処理の重複で売上が二重計上されることもあります。逆に、支払った経費を計上し忘れていれば、利益が実態より大きく出てしまいます。貸借対照表の残高は損益計算書とつながっているため、残高のズレはそのまま所得金額、ひいては税額のズレになります。
「合わない」を放置すると翌年も尾を引く
期末の残高は、そのまま翌期の期首残高として引き継がれます。今年のズレを「とりあえずそのまま」にしてしまうと、誤った残高が毎年持ち越され、原因の特定がどんどん難しくなります。残高合わせは、その年のためだけでなく、来年以降の自分のためにも、決算のたびにきちんと行う価値のある作業です。
資産の残高を整える手順
現金・預金から確認する
残高合わせは、もっとも確認しやすい現金と預金から始めるのがおすすめです。預金は、期末日時点の通帳やネットバンキングの残高と、帳簿の各口座の残高がぴったり一致しているかを確認します。事業用の口座が複数ある場合は、口座ごとに帳簿を分けておくと突き合わせが楽になります。日々の突き合わせを軽くしたいなら、銀行口座の連携による記帳の自動化もあわせて確認しておくと役立ちます。
現金(手元の事業用現金)は、帳簿上の現金残高がマイナスになっていないかを必ずチェックしましょう。現金残高のマイナスは「実際にはあり得ない状態」で、入力漏れや事業用とプライベートの混同を示すサインです。手元現金と帳簿が大きくずれている場合は、事業主貸・事業主借での調整も検討します。
売掛金・前払金など「これから入る・出る」資産
売掛金は、期末時点でまだ入金されていない売上代金の残高です。請求書の控えや取引先ごとの入金状況と突き合わせ、次のような点を確認します。
すでに入金された売掛金の消し込み漏れがないか
年内に請求すべき売上の計上漏れがないか(発生主義での計上)
取引先ごとの残高が、実際の未回収額と一致しているか
前払金(前払費用)や立替金など、「将来に効果が及ぶ支出」も同様に、内容と残高が説明できる状態かを確認しましょう。何年も動いていない正体不明の残高があれば、過去の処理ミスの可能性が高いため、内容を洗い出します。
固定資産と減価償却の残高
パソコンや車、機械などの固定資産は、減価償却費を計上したあとの帳簿価額(未償却残高)が、固定資産台帳(減価償却の計算明細)と一致しているかを確認します。減価償却の基本的な考え方は、国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」で確認できます。年の途中で取得・売却・廃棄した資産があれば、その処理も忘れずに反映させましょう。減価償却は決算時にまとめて計上することが多いため、計上漏れがないかは特に注意したいポイントです。なお、商品や材料の在庫を抱える事業では、年末の棚卸も残高に影響します。棚卸の進め方は決算の棚卸(実地棚卸)の実務にまとめています。
負債の残高を整える手順
買掛金・未払金の計上漏れを防ぐ
買掛金は仕入の未払分、未払金はそれ以外の経費の未払分を表します。期末時点で「商品やサービスは受け取ったが、まだ支払っていない」ものがあれば、その年の経費として計上したうえで、負債として残高に反映させます。クレジットカードで支払った経費のうち、引き落としが翌年になるものは未払金として残るのが基本です。こうした期末の未収・未払の計上のしかたは決算の未収・未払の計上実務で確認できます。請求書や利用明細を確認し、計上漏れがないかを点検しましょう。
借入金の残高は返済予定表と突き合わせる
金融機関からの借入金は、期末時点の元本残高を返済予定表(償還予定表)と突き合わせて確認します。毎月の返済額のうち、元本部分は借入金の減少、利息部分は支払利息(経費)として分けて処理する必要があります。返済額をすべて経費にしてしまうミスは起こりがちなので、元本と利息の内訳を明細で確かめましょう。
預り金(源泉所得税など)の残高
従業員の給与や、税理士・デザイナーなどへの報酬から源泉徴収をしている場合、まだ納付していない源泉所得税は預り金として負債に残ります。期末の預り金残高が、これから納付すべき金額と一致しているかを確認しましょう。納付済みなのに帳簿で消し込めていない、あるいはその逆、といったズレがよく見られる科目です。
残高が合わないときの原因と探し方
よくあるズレの原因
残高が合わない場合、原因の多くは次のいずれかに当てはまります。
取引の二重入力、または入力漏れ
金額の桁ミス・誤入力
事業用とプライベートの支出が混ざっている
期ずれ(年をまたぐ取引を、間違った年に計上している)
消し込み(入金・支払の対応付け)の漏れ
原因が思い当たらないときは、まず「いつから合わなくなったのか」をさかのぼると、調査範囲を絞り込めます。原因不明のズレに時間を取られたくないときは、記帳代行に残高整理ごと任せる方法もあります。
差額から原因を推測するコツ
合わない金額(差額)には、原因のヒントが隠れています。差額がきりのよい金額なら入力漏れ、差額が特定の取引額の2倍なら二重計上、差額が9で割り切れるなら桁の入れ替えミス、といった見当をつけられます。やみくもに全件を見直すより、差額の性質から当たりをつけたほうが、はるかに効率的です。
どうしても合わないときの落ち着いた対処
少額のズレで原因がどうしても特定できない場合は、事業主貸・事業主借や雑損失・雑収入などで調整することもあります。ただし、これは安易な「丸め込み」ではなく、十分に調査したうえでの最終手段です。大きな金額のズレを安易に調整科目で処理すると、根本原因が隠れてしまうため、まずは原因究明を優先しましょう。会計ソフトの残高試算表や元帳をうまく使うと、科目ごとの動きを追いやすくなります。
決算前に整えておきたいチェックリスト
資料をそろえてから着手する
残高合わせをスムーズに進めるには、先に資料をそろえておくことが近道です。期末日(12月31日)時点の通帳残高、未回収の請求書一覧、未払いの請求書・カード明細、借入金の返済予定表、固定資産台帳などを手元に用意してから始めましょう。資料が途中で足りなくなると、作業が何度も止まってしまいます。
科目ごとに「残高の根拠」を言えるか確認する
整え終わったら、貸借対照表の各科目について「この残高は何を表しているか」を自分の言葉で説明できるかを確認します。説明できない残高は、どこかに誤りが残っているサインです。とくに、前払金・立替金・仮払金・仮受金といった経過的な科目に、年をまたいで動かない残高が残っていないかは要チェックです。
翌期にきれいに引き継ぐ意識を持つ
整えた期末残高は、翌期の期首残高としてそのまま引き継がれます。今年のうちに正しい残高にしておけば、来年の記帳も正確なスタートを切れます。決算は1年の締めくくりであると同時に、翌年の出発点でもある、という意識を持っておきましょう。
よくある質問
Q. 白色申告でも貸借対照表の残高合わせは必要ですか?
白色申告(収支内訳書)の場合、貸借対照表の提出は必須ではありません。そのため厳密な残高合わせは求められませんが、現金・預金が実際の残高と合っているか、売上や経費の計上漏れがないかは確認しておくべきです。なお、青色申告の65万円控除を目指すなら、複式簿記による貸借対照表の作成と残高合わせが前提になります。
Q. 事業用とプライベートの口座を分けていません。どうすればよいですか?
口座を分けていない場合でも残高合わせは可能ですが、プライベートの入出金を事業主貸・事業主借として正しく仕分ける必要があり、手間も間違いも増えがちです。可能であれば、事業用の口座とクレジットカードを分けることを強くおすすめします。来期からでも分けておくと、残高合わせの負担が大きく軽くなります。
Q. 自分で残高を合わせる自信がありません。どうしたらよいですか?
残高合わせは複式簿記の知識が必要で、慣れないうちは時間も神経も使う作業です。原因不明のズレに何時間も向き合うより、専門家に整理を任せて、ご自身は本業に集中するという選択もあります。日々の領収書や請求書をきちんと残しておけば、専門家が残高を整える際の大きな助けになります。
決算前に迷ったときの結論|残高合わせは資料との突き合わせが基本
決算前の残高合わせは、現金・預金から始めて、売掛金・固定資産などの資産、買掛金・借入金・預り金などの負債を、それぞれ通帳・請求書・返済予定表・台帳といった資料と突き合わせていく作業です。各科目の残高の根拠を説明できる状態になれば、貸借対照表は自然と整います。差額の性質からズレの原因を推測するコツを押さえておけば、調査もぐっと楽になります。
ただ、複式簿記に不慣れな個人事業主・フリーランスの方にとって、原因不明の残高ズレと向き合う時間は重くのしかかります。本業の合間に決算作業まで抱え込み、申告期限の直前で慌ててしまうケースも少なくありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








