自家焙煎・菓子製造小売の確定申告|製造原価・包装材・保健所費用の処理を解説
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確定申告

自家焙煎や菓子の製造小売は、材料を仕入れて加工し販売する業態で、確定申告では材料費に製造経費を合わせた製造原価の考え方が必要です。包装材や保健所費用の勘定科目、年末の棚卸しまで、お店の数字を整理する順序をまとめます。
自家焙煎のコーヒーや手作りの焼き菓子を販売するお店は、「仕入れてそのまま売る」小売業とは違い、材料を加工して商品をつくる製造小売業にあたります。そのため、確定申告で考えるべきお金の流れが少し複雑になり、「原価ってどこまで入れるの?」「包装材は経費でいいの?」と手が止まってしまう方も多いのではないでしょうか。
☑ コーヒー豆を仕入れて焙煎し、自分で焼いた菓子も売っているが、原価をどう計算すればよいかわからない
☑ ラッピング材や紙袋、保健所の営業許可にかかった費用を、どの勘定科目で処理すればよいか迷っている
☑ 売れ残った商品や年末に残った材料を、確定申告でどう扱えばいいのか不安だ
製造原価の考え方、包装材や保健所関連費用の処理、棚卸しのポイント——自分のお店の数字をどう整理すればよいか、全体像を順に見ていきましょう。
製造小売業としての確定申告の基本
「製造小売」とはどういう業態か
自家焙煎店や手作りの菓子店は、生豆や小麦粉・砂糖・バターといった材料を仕入れて加工し、商品として販売するのが特徴です。仕入れた商品をそのまま並べて売る一般的な小売とは異なり、自分の手で価値を加えて販売する点で「製造小売業」と呼ばれます。
この違いは確定申告にも影響します。一般的な小売では「仕入れた商品の金額」がそのまま売上原価になりますが、製造小売では、材料費に加えて製造にかかったさまざまな費用を合わせて原価を考える必要があります。ここを理解しておくと、利益の計算がぐっと整理しやすくなります。
事業所得として申告する
お店としてコーヒーや菓子を継続的に販売して得た収入は、原則として事業所得になります。1年間(1月1日〜12月31日)の売上から必要経費を差し引いて所得を計算し、確定申告で申告します。申告期間は原則として毎年2月16日から3月15日までです(国税庁タックスアンサーNo.2020「確定申告」/参考:国税庁タックスアンサー No.2020 確定申告)。
帳簿をきちんとつけて青色申告を選べば、要件を満たすことで青色申告特別控除(最大65万円)を受けられるなどのメリットがあります。材料の仕入れや日々の売上が多い製造小売では、帳簿づけの習慣が節税にも直結します。
消費税の軽減税率にも注意
食品の販売は消費税の軽減税率(8%)の対象になりますが、店内で飲食できるイートインスペースを設けている場合、その分は標準税率(10%)の対象になるなど、扱いが分かれることがあります。テイクアウトと店内飲食の両方を行うお店では、レジでの区分や記録の仕方を整理しておくと、後の集計が楽になります。8%と10%が混ざる帳簿づけの具体的なやり方は、8%と10%の区分経理のやり方で確認できます。軽減税率とインボイス制度の全体像は、国税庁の特集ページ「インボイス制度」でも確認できます(参考:国税庁 特集 インボイス制度)。判断に迷う場合は、一般論で済ませず税務署や専門家に確認すると安心です。
製造原価の考え方と計算のポイント
原価に含まれる主な費用
製造小売の原価は、材料費だけではありません。商品をつくり、売れる状態にするまでにかかった費用をまとめて考えます。代表的なものは次のとおりです。
材料費:コーヒーの生豆、小麦粉・砂糖・バター・卵・チョコレートなどの製菓材料
労務費:製造を手伝ってもらった従業員やアルバイトへの給与(家族への給与は青色専従者給与などのルールあり)
製造経費:焙煎やオーブンで使う電気・ガス代、製造に使う消耗品など
これらを正しく把握することで、「1袋・1個あたりいくらでつくっているのか」が見えてきます。値付けや利益管理の土台にもなる大切な数字です。
家事按分が必要なケース
自宅の一角を工房や厨房として使っている場合や、店舗と自宅が一体になっている場合は、電気代・ガス代・水道代などを事業で使った分と私用の分に分ける(家事按分)必要があります。焙煎機やオーブンは電力やガスを多く使うため、按分の割合は使用実態に合わせて、合理的に説明できる基準で決めましょう。
たとえば、店舗併用住宅で事業に使っている床面積の割合や、製造に使う時間の割合などをもとに按分する方法が考えられます。按分率をどう根拠づけるかは、家賃や光熱費の家事按分の決め方が参考になります。どんな基準で計算したかをメモに残しておくと、後から見直すときにも役立ちます。
原価率を意識して数字を見る
売上に対して原価がどのくらいの割合を占めるかを示す「原価率」を意識すると、お店の状態がつかみやすくなります。材料の値上がりが続く中で同じ価格で売り続けていると、知らないうちに利益が薄くなっていることもあります。確定申告のために数字を整理する作業は、こうした経営状態を振り返る良い機会にもなります。原価率の見方と帳簿への落とし込みは、原価率の管理と帳簿の付け方もあわせて確認しておくと、数字の読み方がつかめます。
包装材・消耗品の勘定科目と処理
包装材は何費で処理する?
コーヒー豆を入れるアルミ袋やバルブ付き袋、焼き菓子を包む個包装フィルム、紙箱、ギフト用のラッピング材、持ち帰り用の紙袋やレジ袋などは、商品を販売するために使う消耗品費として処理するのが一般的です。お店によっては「荷造運賃」や「包装費」といった科目を使うこともあります。
大切なのは、毎年同じ考え方で同じ科目に計上することです。一度決めたルールを継続すると、前年との比較がしやすく、帳簿の見通しも良くなります。
商品に直接かかるものと販売用のものを分けて考える
包装材の中でも、個包装のフィルムのように商品そのものの一部として使うものと、ギフト箱や手提げ袋のように販売・贈答のために使うものは、性格が少し異なります。厳密に分けることが難しい場合もありますが、どちらも事業に必要な支出であることに変わりはありません。自分のお店で扱いやすいよう、あらかじめ区分の方針を決めておくとよいでしょう。
厨房まわりの消耗品・備品の扱い
製菓用の型・絞り袋・クッキングシート・手袋といった少額で消耗するものは消耗品費で処理します。一方で、焙煎機・業務用オーブン・大型ミキサー・冷蔵ショーケースなど、ある程度高額で長く使う設備は固定資産として扱い、減価償却を通じて数年に分けて経費にしていきます。
少額か高額かの線引きには一定の基準があり、青色申告であれば少額減価償却資産の特例を使える場合もあります。設備投資をしたときは、レシートや契約書を保管したうえで、減価償却が必要かどうかを確認しておきましょう。仕込みや接客に追われて数字の整理まで手が回らないときは、飲食店の記帳代行のサポート内容もご用意しています。
保健所・営業許可など開業まわりの費用
営業許可・保健所関連の費用
菓子製造業や飲食店として営業するには、保健所への営業許可申請が必要です。申請時にかかる手数料は、事業に必要な支出として経費に計上できます。勘定科目としては「租税公課」や「支払手数料」などが使われます。
また、食品を扱う事業者に求められる衛生管理の取り組みに関連して用意した備品や、検便・健康診断にかかった費用なども、事業のための支出として整理しておきましょう。領収書はまとめて保管しておくと、申告のときに探す手間が省けます。
開業前にかかった費用は「開業費」に
お店をオープンする前に支払った費用のうち、開業準備のためのものは開業費としてまとめて計上できる場合があります。たとえば、開業のための調査費用、チラシやメニューの作成費、開店前の研修費用などが考えられます。開業費は「繰延資産」として扱い、好きなタイミングで経費にできる(任意償却)という特徴があります。
ただし、店舗の保証金や高額な設備そのものは開業費に含めない扱いになるなど、線引きには注意が必要です。開業前後の支払いは特に種類が多いので、いつ・何に・いくら使ったかを一覧にしておくと整理がスムーズです。
店舗の家賃・内装・設備
店舗の家賃は地代家賃、内装工事や厨房設備は金額に応じて固定資産として減価償却の対象になります。物件取得時の礼金や保証金の扱いも、それぞれルールが異なります。開業初年度は支出の種類が多く判断に迷いやすいため、迷ったときは無理に断定せず、確認しながら進めるのが安心です。
棚卸しと在庫管理のポイント
年末に棚卸しが必要な理由
確定申告では、12月31日時点で売れ残っている商品や材料の在庫を金額として把握する「棚卸し」が必要です。その年に仕入れた材料のうち、まだ売上につながっていない分は、その年の経費にはせず、翌年に繰り越して考えます。これにより、売上に対応した正しい原価が計算でき、利益も実態に合ったものになります。実際の数え方や手順は、実地棚卸しの進め方が参考になります。
棚卸しを省いてしまうと、利益が実際より多くも少なくも見えてしまい、納める税額にも影響します。年末の忙しい時期ではありますが、欠かせない作業です。
何を棚卸しの対象にするか
仕入れたままの生豆や製菓材料(小麦粉・砂糖・バターなど)
焙煎済みで袋詰めし、販売を待っている商品
まだ売れていない焼き菓子や、ギフト用の包装済み商品
仕入れて未使用の包装材のうち、金額が大きいもの
食品は鮮度が大切なため、廃棄が出ることもあります。廃棄した分の扱いについても記録を残しておくと、在庫の数字と実態のずれを説明しやすくなります。
在庫を正しく数えるための工夫
日ごろから入出庫をこまめに記録しておくと、年末の棚卸しがぐっと楽になります。材料ごとに保管場所を決めておく、賞味期限の近いものから使う、といった日常の管理が、結果的に正確な申告にもつながります。数えた在庫の数量と単価をメモに残しておけば、計算の根拠としても役立ちます。
よくある質問
Q. コーヒーの生豆を仕入れた費用は、買った年に全部経費にできますか?
仕入れた生豆のうち、その年に焙煎・販売して売上につながった分は経費になりますが、年末に売れ残っている在庫分は棚卸しで翌年に繰り越します。つまり「仕入れた金額すべて」ではなく、「その年の売上に対応した分」が原価になる、と考えるとわかりやすいです。
Q. ギフト用のラッピングにかかる費用も経費になりますか?
はい、贈答用の箱やリボン、手提げ袋などのラッピング材は、商品を販売するために必要な支出として経費に計上できます。消耗品費や包装費などの科目で、毎年同じ考え方で処理しましょう。私用で使った分があれば、その分は除いて計上します。
Q. 自宅の台所でつくった菓子を販売する場合、光熱費はどう扱いますか?
自宅と事業で共用している光熱費は、事業に使った割合を見積もって家事按分します。製造に使う時間や使用量など、自分なりに合理的な基準を決め、その根拠をメモに残しておきましょう。なお、自宅での製造販売には保健所の許可や設備の要件が関わることもあるため、開業前に確認しておくと安心です。
まとめ:製造小売の数字は「つくる流れ」で整理する
自家焙煎店や菓子製造小売の確定申告は、材料を仕入れ、加工し、包装して売るという「つくる流れ」に沿って費用を整理すると、ぐっと見通しが良くなります。製造原価には材料費だけでなく製造にかかる費用も含めて考え、包装材は消耗品費などで継続的に処理し、保健所費用や開業費も忘れずに計上しましょう。そして、年末の棚卸しで正しい原価と利益を確定させることが、適切な申告への近道です。
とはいえ、毎日の仕込みや接客、焙煎に追われる中で、材料の仕入れから売上、棚卸しまでの記帳をすべて自分で行い、確定申告書類まで仕上げるのは大きな負担になりがちです。数字に向き合う時間がなかなか取れず、申告期限が近づいてから慌ててしまう店主の方も少なくありません。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








