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簡易課税の事業区分とみなし仕入率をやさし...

2026/7/18

簡易課税の事業区分とみなし仕入率をやさしく解説

  • 税務

簡易課税は、売上にかかった消費税にみなし仕入率を掛けるだけで納税額が決まる制度です。そのカギとなる第1種〜第6種の事業区分と、自分の仕事がどれに当たるかの見分け方を整理します。

事務負担が軽く、小規模な個人事業主・フリーランスには心強い制度ですが、いざ計算しようとすると「事業区分」と「みなし仕入率」でつまずく方がとても多いところです。区分を一つ間違えるだけで納税額が変わるため、考え方を丁寧に押さえておきましょう。

☑ 簡易課税を選んだけれど、自分の仕事がどの「事業区分」になるのか分からない

☑ みなし仕入率って何のこと?数字が業種で違うのはなぜ?

☑ 一人で複数の仕事をしている場合、区分はどう考えればいいの?

消費税の申告方法のひとつに「簡易課税制度」があります。実際に支払った消費税を細かく計算しなくても、売上にかかった消費税に決められた割合をかけるだけで納める税額が決まる、というしくみです。事務負担が軽くなるため、小規模な個人事業主・フリーランスにとって心強い制度ですが、いざ計算しようとすると「事業区分」と「みなし仕入率」という言葉につまずく方がとても多いのです。

ここでは、簡易課税の中心となる「事業区分」と「みなし仕入率」を、できるだけかみ砕いて整理します。6つの区分それぞれの中身、自分の仕事がどこに当てはまるか、複数の事業をしている場合の考え方、そして区分を間違えるとどうなるかまで、実務に沿って順に見ていきます。

そもそも簡易課税の「みなし仕入率」とは何か

仕入れにかかった消費税を「みなし」で計算するしくみ

消費税は本来、「売上で預かった消費税」から「仕入れや経費で支払った消費税」を差し引いた残りを納めます。この差し引く方法を本則課税(原則課税)と呼びます。一方の簡易課税は、実際に支払った消費税をいちいち集計せず、「売上の消費税のうち、これくらいの割合は仕入れにかかっているはずだ」とあらかじめ決められた率を使って計算します。この割合がみなし仕入率です。消費税の基本的なしくみは国税庁タックスアンサーNo.6101「消費税の基本的なしくみ」で確認できます。

たとえば売上にかかる消費税が100万円で、みなし仕入率が60%なら、仕入れにかかった消費税を60万円とみなします。差し引きで納める消費税は40万円、という具合です。実際の領収書を一枚一枚計算しなくてよいので、計算がぐっと楽になるのが最大のメリットです。

みなし仕入率は業種によって決められている

みなし仕入率は、すべての事業者で同じではありません。業種によって「仕入れにかかる割合」は大きく違うからです。商品を仕入れて売る卸売業は仕入れの割合が高く、自分の労力で稼ぐサービス業は仕入れの割合が低い、というように、実態に近づけるため業種ごとに率が決められています。この業種のグループ分けが「事業区分」です。つまり、自分がどの事業区分かが決まれば、使うみなし仕入率も自動的に決まるという関係になっています。

簡易課税を使うための前提も押さえておく

簡易課税は誰でも自由に使えるわけではありません。基準期間(原則として前々年)の課税売上高が5,000万円以下であることが条件で、さらに事前に税務署へ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておく必要があります。届出は適用したい課税期間が始まる前までに出すのが原則です。制度全体は国税庁タックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」で確認でき、提出の期限や出し忘れたときの対処は簡易課税制度選択届出書の期限にまとめています。これから検討する方は、区分の話と合わせてこの届出のタイミングも忘れないようにしましょう。

6つの事業区分とみなし仕入率を一覧で理解する

第一種から第六種までの全体像

事業区分は第一種から第六種までの6つに分かれており、それぞれにみなし仕入率が決められています。数字が大きいほど「仕入れの割合が高い=差し引ける消費税が多い」ことを意味します。まずは全体を眺めてみましょう。

  • 第一種:卸売業 ── みなし仕入率90%

  • 第二種:小売業、農林漁業(飲食料品)など ── みなし仕入率80%

  • 第三種:製造業、建設業、農林漁業など ── みなし仕入率70%

  • 第四種:飲食店業、上記以外の事業など ── みなし仕入率60%

  • 第五種:サービス業、金融・保険業、運輸通信業など ── みなし仕入率50%

  • 第六種:不動産業 ── みなし仕入率40%

みなし仕入率が高いほど納める消費税は少なくなるため、自分の事業がどの区分になるかは納税額に直接影響します。だからこそ区分の判断は慎重に行う必要があります。業種別の率と損得の見方はみなし仕入率の業種別一覧で確認できます。

卸売業と小売業の違い(第一種と第二種)

第一種の卸売業と第二種の小売業は、どちらも「他から買ったものをそのまま売る」点では同じです。違いは売る相手にあります。買った商品を性質や形を変えずに、事業者(他の会社や店)へ販売するのが卸売業(第一種)同じく性質を変えずに消費者へ販売するのが小売業(第二種)です。たとえばネットショップで仕入れた雑貨を個人のお客様に売れば第二種、同じ商品を小売店に卸せば第一種になります。「誰に売るか」で区分が変わる点に注意が必要です。

サービス業とそれ以外(第四種・第五種・第六種)

第五種は人的サービスを中心とする事業が広く含まれ、フリーランスのデザイナー、コンサルタント、士業、IT関連の受託など、いわゆる「自分の技能・労力を提供して対価を得る仕事」の多くがここに入ります。一方、飲食店業は第五種のサービス業ではなく第四種です。また、第四種には他のどの区分にも当てはまらない事業も含まれます。不動産の貸付けや仲介などの不動産業は第六種で、みなし仕入率は最も低い40%です。「サービス業っぽいから第五種だろう」と早合点せず、自分の業務の中身を一つずつ確認することが大切です。

自分の事業がどの区分か迷ったときの考え方

判断の出発点は「何をして対価を得ているか」

区分を決めるときは、業種名のイメージではなく、実際の取引の中身で判断します。ポイントは「商品を仕入れて売っているのか」「自分が作っているのか」「労力やサービスを提供しているのか」という取引の性質です。たとえば同じ「ものづくり」でも、材料を仕入れて自分で加工・製造して売れば第三種(製造業)に近くなりますし、できあがった商品を仕入れてそのまま売るなら卸売・小売(第一種・第二種)になります。同じ人が手を動かしていても、何の対価を受け取っているかで区分が変わるのです。

具体例で考えてみる

イメージしやすいよう、フリーランスに多いケースを並べてみます。あくまで一般的な考え方の例であり、実際の取引内容によって変わる点はご了承ください。

  • Webデザイン・プログラミングの受託:技能を提供するサービスとして第五種になることが多い

  • ハンドメイド作品を仕入れた材料で作って販売:製造の要素があり第三種に近い

  • 仕入れた完成品を個人客に転売:消費者向けの小売として第二種

  • 飲食店・カフェの営業:第四種

  • 賃貸アパートの家賃収入(課税対象となる部分):不動産業として第六種

このように、同じ「フリーランス」でも仕事の中身によって区分はばらばらです。自分の主な収入が「何の対価か」を書き出してみると、当てはまる区分が見えてきます。

加工が加わると区分が変わることがある

仕入れた商品でも、性質や形を変える「加工」を加えて売る場合は、卸売・小売ではなく製造業(第三種)とみなされることがあります。たとえば食材を仕入れてそのまま売れば小売ですが、調理・加工して別の商品に仕立てて売れば製造の要素が出てきます。製造と小売が混ざる事業の具体的な処理は、自家焙煎・菓子製造小売の確定申告が参考になります。判断に迷うラインなので、加工の有無は区分を考えるうえで重要なチェックポイントです。

複数の事業を行っている場合の計算ルール

原則は区分ごとに分けて計算する

一人で複数の種類の仕事をしている個人事業主は珍しくありません。たとえば「ネットショップ(小売・第二種)」と「デザインの受託(サービス・第五種)」を兼ねている、というケースです。この場合、簡易課税では原則として売上を事業区分ごとに分け、それぞれのみなし仕入率を使って計算します。第二種の売上には80%、第五種の売上には50%、というふうに別々に当てはめるわけです。

そのため、複数事業を行う方は、日ごろから売上を区分ごとに区別して記録しておくことがとても大切です。区分ごとの売上が分からないと、正しい計算ができなくなってしまいます。この区分ごとの記録が難しいと感じたら、区分ごとの売上管理を任せる記帳代行という方法もあります。

区分が分けられないと不利になることがある

もし売上を事業区分ごとに区分していない場合、その区分していない部分については、自分が行う事業の中で最も低いみなし仕入率が適用される取り扱いになります。みなし仕入率が低いほど差し引ける消費税が少なくなり、結果として納税額が増えてしまいます。つまり、記録を分けていないことが税負担の増加につながりかねないということです。区分ごとの売上管理は、手間というより「節税のための土台」と考えるとよいでしょう。

特定の区分が大部分を占めるときの特例もある

複数事業を営む場合でも、ひとつの事業区分の売上が全体の大きな割合を占めるようなときは、計算を簡便にできる特例的な取り扱いが設けられています。条件や計算方法はやや細かいため、複数の事業を兼ねていて売上の偏りがある方は、自己流で判断せず専門家に確認すると安心です。いずれにしても、出発点となるのは「区分ごとに売上を把握できているか」という点に変わりはありません。

区分を間違えるとどうなるか・注意点

区分の誤りは納税額の誤りに直結する

事業区分はみなし仕入率と一対一でつながっているため、区分を間違えれば納める消費税の金額そのものが変わってしまいます。本来より高い率(納税額が少なくなる区分)で計算していた場合、後から指摘されると不足分の納税に加えて追加の負担が生じる可能性があります。簡易課税は計算が楽な反面、「区分の判断」という一点に正確さが求められる制度だといえます。

一度選ぶと原則2年間は続ける必要がある

簡易課税はいったん選択届出書を提出すると、原則として2年間は本則課税に戻せないルールがあります。大きな設備投資の予定があり支払う消費税が多くなりそうな年でも、簡易課税のままだと支払った消費税を実額で差し引けず、かえって不利になることもあります。事業区分の確認とあわせて、「来年・再来年にどんな支出がありそうか」という見通しも持って選ぶことが大切です。

業務内容が変わったら区分も見直す

事業区分は「最初に決めたら終わり」ではありません。新しいサービスを始めた、物販を増やした、業態を変えたなど、仕事の中身が変われば区分も変わる可能性があります。とくに複数事業へ広がったときは、売上の記録方法から見直す必要が出てきます。毎年の申告の前に、「今の自分の仕事はどの区分か」を改めて確認する習慣をつけておきましょう。

よくある質問

Q. 自分の事業区分が分からないときはどうすればいいですか?

まずは「自分は何をして対価を得ているか」を具体的に書き出すことをおすすめします。仕入れたものをそのまま売っているのか、自分で作っているのか、技能やサービスを提供しているのかで区分は変わります。それでも判断に迷う場合は、自己判断で決めてしまうと納税額の誤りにつながるおそれがあるため、税務署や税理士など専門家に確認すると安心です。

Q. 複数の仕事をしていますが、ひとつの区分にまとめてもいいですか?

原則は事業区分ごとに売上を分けて、それぞれのみなし仕入率で計算します。まとめて計算したいからと区分を分けずにいると、最も低いみなし仕入率が適用されて納税額が増えてしまう取り扱いになることがあります。日ごろから売上を区分ごとに記録しておくことが、結果的に有利な計算につながります。

Q. 簡易課税と本則課税はどちらが得ですか?

一概には言えません。仕入れや経費で支払う消費税が多い事業や、大きな設備投資を予定している場合は、実額で差し引ける本則課税が有利になることがあります。逆に、仕入れが少なくサービス中心の事業では簡易課税が有利になりやすい傾向があります。みなし仕入率と実際の仕入れ割合を比べて検討するのがよいでしょう。

まとめ|事業区分とみなし仕入率で簡易課税を活かす

簡易課税は、売上にかかった消費税にみなし仕入率をかけるだけで納税額が計算できる、事務負担の軽い制度です。そのカギとなるのが第一種から第六種までの「事業区分」で、どの区分になるかでみなし仕入率(90%〜40%)が決まり、納める消費税が変わります。区分は業種名のイメージではなく「何の対価を得ているか」という取引の中身で判断すること、複数事業の場合は区分ごとに売上を分けて記録すること、そして一度選ぶと原則2年間続く点に注意することが大切でした。

とはいえ、自分の仕事がどの区分に当たるのかを正しく見極め、複数事業の売上を区分ごとに分けて記録し、毎年の消費税まで自分で計算するのは、本業が忙しい個人事業主にとって決して軽い負担ではありません。区分の判断を一つ誤るだけで納税額が変わってしまうことを考えると、なおさら気が重くなる方も多いはずです。

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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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