開業助産師・訪問看護を営む人の確定申告|介助収入と移動・衛生材料費を解説
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確定申告

開業助産師や独立した訪問看護師の確定申告は、介助・訪問で得た収入を事業所得として捉え、移動費や衛生材料費を必要経費に整理するのが基本です。収入区分と経費の線引きを、具体例で解説します。
病院勤務のころは年末調整で完結していた税金を、独立後は自分で計算して申告することになります。専門職としての実務に自信はあっても、収入の区分や経費の線引きとなると手が止まってしまう——そんな不安を、順を追ってほどいていきましょう。
☑ 助産院や訪問看護を独立して始めたが、収入をどう区分して申告すればよいかわからない
☑ 利用者宅へ向かう車のガソリン代や、ガーゼ・手袋などの衛生材料費を経費にできるのか不安だ
☑ 病院勤務のころは年末調整だけで済んでいたので、確定申告のやり方が想像できない
長く病院やクリニックに勤めてきた助産師・看護師の方が独立して開業すると、それまで給与から自動で天引きされていた税金を、今度は自分で計算して申告することになります。専門職として日々の介助や看護には自信があっても、「収入の区分」「経費の線引き」となると、急に手が止まってしまう方は少なくありません。
以下では、開業助産師や独立した訪問看護師に向けて、事業所得としての収入の捉え方と、移動費・衛生材料費といった専門職ならではの経費の扱いを、具体例を交えて見ていきます。
開業助産師・訪問看護の収入はどう区分する?
独立して得た収入は「事業所得」が基本
助産院を開いたり、訪問看護師として自ら契約をとって看護サービスを提供したりして得た収入は、原則として事業所得になります。事業所得とは、独立した立場で継続的・反復的に行う仕事から得る所得のことです。病院に雇われて受け取る給与とは性質が異なり、自分で売上から必要経費を差し引いて所得を計算する点が大きな違いです。
たとえば、分娩の介助や妊産婦への保健指導、新生児訪問、利用者宅での療養上の世話や医療的ケアなど、事業として行ったサービスの対価は、まとめて事業の売上として記録していきます。誰から、いつ、いくら受け取ったのかがわかるように、日々こまめに記帳しておくことが申告の土台になります。
勤務先からの給与と事業収入が両方ある場合
独立直後は、開業した事業と並行して、以前の病院や別の施設で非常勤として勤務を続ける方も多くいます。この場合、勤務先から受け取る分は給与所得、自分の事業として得た分は事業所得と、収入の性質ごとに分けて考えます。
給与所得は勤務先が年末調整をしてくれることもありますが、事業所得がある以上は確定申告が必要です。確定申告では、給与所得と事業所得を合算したうえで税額を計算します。源泉徴収票と事業の帳簿を両方そろえて、混ざらないように区分しておきましょう。
委託料・報酬から源泉徴収されているケース
訪問看護ステーションや他の事業者から業務委託を受けて報酬を受け取る場合、支払いの段階で源泉徴収(報酬からあらかじめ税金が差し引かれること)がされていることがあります。差し引かれた源泉徴収税額は、確定申告のときに精算され、納めすぎていれば還付されることもあります。業務委託で報酬を受け取るときの経費や記録の考え方は、業務委託報酬と装備品・移動費の扱いも参考になります。
支払元から受け取る支払調書や、自分で発行した請求書をもとに、受け取った金額と源泉徴収された金額の両方を記録しておくことが大切です。記録が漏れると、本来戻ってくるはずの税金を取り戻せなくなってしまいます。訪問や介助で手一杯のなか、収入区分から申告書の作成までを一人で抱えるのは大変です。確定申告書の作成まで任せる方法もあると知っておくと、本業に時間を割けます。
移動にかかる費用はどこまで経費になる?
利用者宅への訪問にかかる交通費
訪問看護や新生児訪問では、利用者のご自宅へ出向くための移動が日常的に発生します。この業務に必要な移動の費用は、必要経費として扱えます。具体的には、電車やバスを使ったときの交通費、訪問先が遠方の場合の高速道路料金や駐車場代などが該当します。
移動費を経費にするときは、いつ・どこへ・何の目的で移動したのかがわかる記録を残しておくことがポイントです。訪問記録やスケジュールと照らし合わせられるようにしておくと、後から整理する際に困りません。
自家用車を使う場合のガソリン代・車両費
訪問のために自家用車を使う方も多いでしょう。車にかかるガソリン代、駐車場代、車検費用、自動車保険料などは、業務に使った分を経費にできます。ただし、その車をプライベートでも使っている場合は、業務に使った割合(家事按分)を見積もって、その分だけを経費にするのが原則です。
たとえば、走行距離のうち訪問業務がおおむね7割、私用が3割といった実態に近い割合を、合理的な基準で決めて按分します。按分の根拠として、訪問件数や走行距離の記録を残しておくと、割合の説明がしやすくなります。
自転車・公共交通機関中心の場合の考え方
業務用に購入・整備した自転車の費用は、業務に使う分を経費にできます
定期券や回数券を業務で使う場合は、業務利用分を経費として計上できます
ICカードで支払う交通費は、利用履歴を印刷・保存しておくと記録になります
移動手段が何であっても、考え方の根本は同じです。「その支出が事業のための移動かどうか」を基準に、私的な移動と区別して整理していきましょう。
衛生材料費・医療消耗品の経費計上
ガーゼ・手袋など消耗品の扱い
助産・看護の現場では、ガーゼ、ディスポーザブル手袋、マスク、消毒用アルコール、絆創膏、注射器具などの衛生材料を日常的に使います。これらの業務のために購入した消耗品は、必要経費になります。勘定科目としては「消耗品費」や「衛生材料費」などで整理するとわかりやすいでしょう。
購入時のレシートや納品書を保管し、何を・いくつ・いくらで買ったのかがわかるようにしておきます。まとめ買いをすることも多い分野ですが、業務で使うものとご家庭で使うものが混ざらないよう、買い物の段階から分けておくと記帳が楽になります。実際にお預かりする帳簿でも、衛生材料のまとめ買いと私用の買い物が同じレシートに混在して、区分に手間取るご相談は少なくありません。
器具・備品は金額によって扱いが変わる
血圧計、体重計、聴診器、分娩や処置に使う器具など、繰り返し使う備品も事業に欠かせません。比較的安価なものはその年の経費にできますが、一定金額以上の器具・備品は「減価償却」といって、数年に分けて少しずつ経費にしていく扱いになることがあります。減価償却の基本は国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」で確認できます。
高額な医療機器を購入したときは、購入金額や購入日を記録し、何年かけて経費にするのかを確認しておきましょう。判断に迷う金額のものは、購入前後に専門家へ相談すると安心です。
研修費・賠償保険・会費なども忘れずに
助産・看護の専門性を保つための研修費や学会参加費
万一に備える看護職向けの賠償責任保険の保険料
職能団体や専門職の団体に支払う会費
これらも事業に関連する支出であれば経費にできます。専門職として継続的に発生する費用は意外と多いものです。「事業に必要だから払っている」支出は、見落とさず拾い上げていきましょう。
自宅を拠点にする場合の経費と按分
自宅兼事務所の家賃・光熱費
自宅の一室を事務作業や記録、相談の場として使っている場合、その部屋にかかる家賃や電気代などのうち、業務に使っている割合を経費にできます。これも先ほどの車と同じく家事按分の考え方です。部屋の面積の割合や使用時間などをもとに、合理的な基準で業務分を見積もります。
持ち家の場合でも、固定資産税や住宅にかかる費用の一部を按分できることがあります。按分の基準は一度決めたら毎年そろえておくと、説明がしやすく管理も簡単です。
通信費・事務用品の扱い
利用者やステーションとの連絡に使う携帯電話の通信費、訪問記録や請求書の作成に使うパソコン・プリンターのインク・用紙なども、業務に使う分は経費になります。スマートフォンを仕事とプライベートで兼用している場合は、こちらも業務利用の割合で按分します。
青色申告で控除を活用する
事業所得がある方は、事前に届け出をして帳簿をきちんとつけることで青色申告を選べます。青色申告で要件を満たすと、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるほか、赤字を翌年以降に繰り越せるなどのメリットがあります。制度の概要は国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」で確認できます。開業初期は設備投資などで支出がかさみやすいので、こうした制度を知っておくと役立ちます。将来を見据えた資産形成と節税を両立する制度の組み合わせ方も、早めに知っておくと安心です。
青色申告を希望する場合は、開業届とあわせて「青色申告承認申請書」を期限内に提出する必要があります。独立を決めたら、早めに手続きの段取りを確認しておきましょう。
申告に向けた日々の記帳のコツ
収入と経費はその都度わけて記録する
確定申告で一番大変なのは、1年分のお金の動きをまとめて整理する作業です。訪問や介助で忙しいと、領収書がたまっていく一方になりがちです。だからこそ、収入は受け取った都度、経費は支払った都度、こまめに記録する習慣が、申告期の負担を大きく減らします。
現金とは別に事業用の口座やカードを用意して、事業のお金とプライベートのお金を分けておくと、後から見返したときに区別がつきやすくなります。
領収書・請求書の保管ルールを決める
衛生材料のレシート、交通費の記録、研修費の領収書など、経費の根拠となる書類は、月ごとや科目ごとにまとめて保管しておきましょう。後から「これは何の支出だったか」を思い出す手間が省け、記帳の精度も上がります。これらの帳簿や書類は、一定期間保存しておくことが求められます。
申告期間と早めの準備
確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。この時期はちょうど年度末で訪問や相談の依頼が増える方も多く、申告準備に手が回りにくくなりがちです。年明け早々から少しずつ前年分の整理を始めておくと、ぎりぎりで慌てずに済みます。利用者やご家族の介護・療養に日々関わる仕事だからこそ、ご自身の家庭で介護が始まったときの節税・控除の考え方も知っておくと役立ちます。詳しくは家族の介護・療養が始まった年の節税と控除で確認できます。
よくある質問
Q. 訪問先でいただいたお茶代やお菓子代も経費になりますか?
業務に直接関係する打ち合わせや手土産など、事業のための支出であれば経費にできる場合があります。一方で、個人的な飲食はプライベートの支出となり経費にはなりません。判断のポイントは「事業のための支出かどうか」です。記録の際には、誰とどのような目的で支出したのかをメモしておくと、区別がつきやすくなります。
Q. 開業前に買った器具や研修費も経費にできますか?
開業のために事業を始める前に支出した費用は「開業費」として扱い、開業後に少しずつ経費にしていける場合があります。開業準備で購入した器具や受けた研修の領収書は、開業前のものでも捨てずに保管しておきましょう。どの支出が開業費に該当するか迷う場合は、専門家に相談すると安心です。
Q. 病院勤務時代の収入と独立後の収入は、まとめて申告するのですか?
その年に勤務して得た給与と、独立後に事業として得た収入は、収入の性質ごとに区分したうえで、最終的にひとつの確定申告書にまとめて申告します。給与の源泉徴収票と事業の帳簿の両方を用意し、それぞれを正しく区分して記載することが大切です。
専門職の確定申告で迷ったときの結論
開業助産師や独立した訪問看護師の確定申告は、独立して得た収入を事業所得として捉え、移動費や衛生材料費といった専門職ならではの支出を必要経費としてもれなく拾い上げ、私的な支出とは按分で区別していく――この流れをつかめば、決して特別に難しいものではありません。日々こまめに記帳し、領収書を整理しておくことが、スムーズな申告への一番の近道です。
とはいえ、訪問や介助で利用者に向き合う本業が忙しい中で、記帳から申告書類の作成までを自分一人で行うのは、大きな負担になりがちです。専門職としての時間を本来の仕事に集中させるためにも、お金まわりの作業は専門家の力を借りるという選択肢があります。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








