個人事業主が確定申告書を金融機関に提出する場面|融資・賃貸・保育で使う書類を解説
#
確定申告

個人事業主が融資・賃貸・保育などで確定申告書の控えを求められる場面は意外と多く、第一表・第二表に加えて決算書や納税証明書、e-Taxの受信通知が必要になることもあります。場面別に必要な書類と、準備のポイントを整理します。
会社員なら源泉徴収票を1枚出せば収入を証明できますが、個人事業主やフリーランスの場合はそうはいきません。人生の節目で確定申告書の控えの提出を求められて、「どの書類を、どんな形で出せばよいのか」と慌ててしまう方は少なくありません。いざという場面で困らないよう、準備の勘どころを押さえておきましょう。
☑ 住宅ローンや事業資金の融資を申し込んだら確定申告書の控えを求められた
☑ 賃貸契約や保育園の申請で「収入を証明する書類」を出すよう言われて困っている
☑ 提出するのは第一表だけでよいのか、控えに何が必要なのかわからない
融資・賃貸・保育の場面ごとに、必要になる書類とその準備のポイントを見ていきます。
なぜ個人事業主は確定申告書の控えを求められるのか
源泉徴収票の代わりになる収入証明だから
会社員の収入は勤務先が発行する源泉徴収票で証明できますが、個人事業主には源泉徴収票がありません。その代わりになるのが、自分で税務署に提出した確定申告書の控えです。確定申告書には1年間の売上(収入金額)や所得金額、納めた税額が記載されているため、第三者が「この人にどれくらいの収入があるのか」を客観的に確認できる、信頼性の高い書類として扱われます。
金融機関や行政機関が確定申告書の控えを求めるのは、申告者本人の自己申告ではなく、税務署という公的機関に提出済みの公式な数字を確認したいからです。だからこそ、後述する「税務署に提出した証拠」が重要になります。
収入の「安定性」も見られている
提出を求められる場面では、単年度の数字だけでなく収入の安定性が見られることも多くあります。融資審査では直近2〜3年分の確定申告書を求められるのが一般的で、年ごとに収入が大きく上下していないか、赤字が続いていないかといった点も確認されます。1年だけ良い数字でも、他の年が大きく落ち込んでいると評価が下がることがあります。事業資金の融資については、日本政策金融公庫の案内も参考になります。
「控え」と「提出用」は別物
確定申告書には、税務署に提出する「提出用」と、手元に残しておく「控え」があります。第三者に提示するのはこの控えのほうです。提出用を出してしまうと自分の手元に記録が残らなくなるため、コピーや控えを渡すのが基本だと覚えておきましょう。控えは原本を貸し出すのではなく、コピーを渡して対応できる場合がほとんどです。申告書の控えを日ごろから活用する方法は、確定申告書の控えの保存と活用にまとめています。
場面別に見る:必要な書類と注意点
融資・ローンを申し込むとき
住宅ローン、事業資金の借入、自動車ローンなどを申し込む際は、確定申告書の控えが収入証明の中心になります。一般的に求められるのは次のような書類です。
確定申告書(第一表・第二表)の控え:直近2〜3年分を求められることが多い
青色申告決算書または収支内訳書の控え:売上や経費の内訳を確認するため
納税証明書:税金をきちんと納めているかを確認するため別途求められることがある
融資審査では、所得金額(もうけ)が返済能力の目安として重視されます。節税のために経費を多く計上して所得を低く抑えていると、審査でマイナスに働くことがある点は知っておきたいポイントです。融資を予定している年は、節税と収入証明のバランスを意識して帳簿づけを行うとよいでしょう。返済計画を立てる際は、資金繰り表の作り方もあわせて確認しておくと安心です。
賃貸物件を契約するとき
賃貸住宅や店舗・事務所を借りる際、入居審査で収入証明として確定申告書の控えを求められることがあります。会社員と違って安定収入の証明がしにくいぶん、個人事業主は審査で確定申告書の提示を求められやすい傾向があります。
このとき見られるのは、家賃を継続して支払えるだけの所得があるかどうかです。一般的に、年収(所得)に対して家賃が高すぎないかが一つの判断材料になります。直近の確定申告書の控えに加え、業種によっては事業の安定性を示す資料を求められることもあります。
保育園・学童などの申請をするとき
保育園の入園申請では、保育の必要性や保育料の算定のために就労状況と収入の確認が行われます。個人事業主の場合、就労を証明する「就労(自営)申立書」のような書類に加え、確定申告書の控えの提出を求められるのが一般的です。
保育料は世帯の所得(住民税額)をもとに決まる仕組みのため、確定申告書の所得金額が保育料に影響します。申請のタイミングによっては、前年分の確定申告書が必要になることが多いので、提出期限から逆算して申告を済ませておくことが大切です。自治体によって必要書類や様式が異なるため、申請前に窓口で確認しておくと安心です。
「税務署に提出した証拠」をどう残すか
e-Taxなら「受信通知」が証拠になる
e-Tax(電子申告)で提出した場合、紙の収受印は押されません。その代わり、送信後にメッセージボックスに届く受信通知(受付結果)が、税務署に正しく提出されたことの証拠になります。e-Tax(国税電子申告・納税システム)の仕組みを確認しておくと、控えの取り扱いがイメージしやすくなります。融資や各種申請の場面では、確定申告書の控えとあわせてこの受信通知の内容(受付日時や受付番号がわかるもの)の提示を求められることがあります。
e-Taxの控えを準備するときは、確定申告書の控えのデータと受信通知の両方をセットで保存しておきましょう。スマホとマイナンバーカードでの申告の流れは、スマホとマイナンバーカードでの確定申告にまとめています。後から提出を求められたときに慌てずに済みます。
紙で提出した場合は控えにも収受印を
窓口や郵送で紙の確定申告書を提出する場合、提出用と控え用の2部を用意し、控えにも収受日を確認できる対応をしてもらう方法があります。郵送の場合は、控えと返信用封筒(切手貼付)を同封しておくと、控えを返送してもらえます。手元に「いつ提出したか」がわかる控えがあると、収入証明として提示する際の信頼性が高まります。
控えやデータは数年分まとめて保管
融資審査では複数年分を求められるため、確定申告書の控えは少なくとも数年分をまとめて保管しておくと安心です。紙の控えはファイルに年度ごとに整理し、e-Taxのデータは申告書控えと受信通知をペアにして保存しておきましょう。いざというときに「去年の控えが見つからない」と探し回らずに済みます。
控えが手元にないときの対処法
納税証明書を取得する
確定申告書の控えを紛失してしまった場合でも、税務署で納税証明書を取得すれば、所得金額や納税額を公的に証明できます。納税証明書にはいくつか種類があり、所得金額を証明するもの(その2)などがあります。融資や各種手続きで何を求められているかを確認したうえで、必要な種類を申請しましょう。e-Taxでオンライン請求できる場合もあります。
申告内容の確認・開示請求を行う
過去に提出した申告書の内容そのものを確認したい場合は、税務署に対して保有個人情報の開示請求を行う方法があります。手続きには一定の時間がかかるため、提出期限が迫っている場面では間に合わないこともあります。やはり、日ごろから控えをきちんと残しておくことが何よりの備えになります。
提出先に代替書類を確認する
確定申告書の控えがすぐに用意できないときは、提出先に「納税証明書や課税証明書でも代用できるか」を確認してみましょう。求められている目的(収入の証明なのか、納税の証明なのか)によって、受け付けてもらえる書類が変わることがあります。あきらめる前に、まずは提出先に相談するのが近道です。
スムーズに提出するための日ごろの準備
正確な帳簿づけを習慣にする
収入証明として確定申告書を出す場面では、数字の正確さがそのまま信頼につながります。日ごろから売上や経費を正確に帳簿づけしておけば、申告内容に自信を持って書類を提出できます。逆に、決算間際にまとめて作業をして数字があいまいなままだと、いざというときに「この数字で本当に大丈夫だろうか」と不安になりがちです。帳簿づけそのものを任せたい場合は、記帳代行というやり方もあります。
青色申告で信頼性を高める
青色申告では、複式簿記による帳簿づけと青色申告決算書の作成が求められます。手間はかかりますが、収支の内訳がきちんと整理されるため、融資審査などで提出する書類としての説得力が増します。あわせて青色申告特別控除(最大65万円)などの税制上のメリットも受けられるため、収入証明の場面が想定される方ほど青色申告を検討する価値があります。
提出時期から逆算してスケジュールを組む
融資や保育園の申請には、それぞれ提出のタイミングがあります。確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日までですが、申告を期限ぎりぎりに済ませると、その控えが必要な手続きに間に合わないことがあります。控えが必要になりそうな予定があるなら、早めに申告を終えておくことを意識しましょう。
よくある質問
Q. 提出するのは第一表だけでよいですか?
提出先によって異なりますが、融資審査などでは第一表だけでなく第二表や、青色申告決算書(または収支内訳書)の控えまで求められることが一般的です。第一表だけでは収入や経費の内訳がわからないためです。何が必要かは提出先に事前に確認し、関連する書類をまとめて準備しておくと安心です。
Q. e-Taxで申告したので紙の控えがありません。どうすればよいですか?
e-Taxの場合は、申告書控えのデータ(PDFなど)を印刷したものと、メッセージボックスに届く受信通知をあわせて提示すれば、提出済みであることを示せます。提出先によっては受信通知の提示を求められることもあるので、申告書控えと受信通知はセットで保存しておきましょう。
Q. 開業したばかりで、まだ確定申告をしたことがありません。収入はどう証明すればよいですか?
開業初年度などで確定申告書がまだない場合は、収入を証明する書類として開業届の控えや、売上のわかる請求書・通帳の入金記録などを求められることがあります。提出先によって受け付けてもらえる書類が異なるため、まずは「確定申告書がない場合は何で代用できるか」を提出先に確認しましょう。
確定申告書は「使う書類」でもある
確定申告書は税金を計算して納めるためだけの書類ではなく、融資・賃貸・保育の申請など、人生の大切な場面で収入を証明する「使う書類」でもあります。控えや受信通知をきちんと残しておくこと、そして日ごろから正確な帳簿づけを習慣にしておくことが、いざというときにスムーズに書類を提出できる一番の備えになります。
本業が忙しい中で日々の記帳から確定申告書類の作成、控えの管理までをすべて自分で行うのは、重い作業になりがちです。数字があいまいなまま申告して、後から収入証明で困ってしまうのは避けたいところです。領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送またはスマホ撮影で送るだけで、税理士監修のもと日々の記帳から確定申告書類の作成までをサポートします。正確な帳簿で書類を出せる体制を無料で相談することができます(相談は無料です)。確定申告まで任せたい方は確定申告代行のご案内もご覧ください。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








