介護離職して開業した人の確定申告|介護と事業の両立と控除を解説
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確定申告

介護離職して開業した年の確定申告は、1月から退職までの給与所得と開業後の事業所得を1枚にまとめて申告し、扶養控除や医療費控除など介護に関わる控除を取りこぼさないのがポイントです。退職した年ならではの申告と、両立しながら帳簿を整えるコツまで整理します。
家族の介護をきっかけに会社を退職し、在宅でできる仕事として個人事業を始めた方が増えています。決まった時間に出勤する働き方が難しくなる中で、自分のペースで働ける事業は介護との両立に向いた選択肢です。一方で、退職と開業が重なった年の確定申告は、給与所得と事業所得が混ざり、使える控除も多いため、何から手をつければよいか迷いやすいものです。
☑ 介護のために会社を辞めて開業したが、確定申告の進め方がわからない
☑ 退職した年は給与と事業の両方があり、どう申告すればよいか不安だ
☑ 親を介護していると使える控除があると聞いたが、自分が対象か判断できない
ここでは、退職した年の申告の考え方、介護に関わる控除、介護と事業を両立しながら帳簿を整えるコツに分けて取り上げます。自分が何を申告し、どの控除を検討すればよいか、全体像がつかめるようになります。
介護離職して開業した年の確定申告の全体像
退職した年は「給与所得」と「事業所得」が両方ある
会社を辞めて開業した年は、1月から退職までに受け取った給与と、開業後に得た事業の収入の両方が発生します。確定申告では、この両方を1枚の確定申告書にまとめて申告します。給与については勤務先から受け取る源泉徴収票の金額を使い、事業については売上から必要経費を差し引いて所得を計算します。同じく介護・在宅の分野で開業した例として、訪問看護など在宅で開業した人の確定申告も参考になります。
退職した年は年末調整を受けていないことが多く、給与から源泉徴収された所得税が納めすぎになっているケースがよくあります。確定申告をすることで、その払い過ぎた税金が還付される可能性がある点も覚えておきましょう。退職と開業が重なった年の申告をまるごと任せたいなら、確定申告の丸投げ代行に頼る方法もあります。
退職金は原則として申告とは別枠で考える
退職時に退職金を受け取った場合、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金にかかる税金は受け取り時に精算が済んでいるのが一般的です。退職所得は他の所得と分けて計算される仕組みのため、原則として確定申告で改めて合算する必要はありません。ただし、申告書を出していなかった場合や、他の所得控除を使い切れていない場合には、確定申告で精算した方が有利になることもあります。判断に迷うときは、源泉徴収票の内容を手元に置いて確認しましょう。
開業届と青色申告承認申請書を出しているか確認する
事業を始めたら、税務署へ「開業届」を提出します。あわせて「青色申告承認申請書」を出しておくと、最大65万円の青色申告特別控除など、税制上の優遇を受けられます。年の途中で開業した場合、青色申告の承認申請には開業日から2か月以内という期限があります。期限の数え方は年の途中で開業したときの青色申告承認申請の期限で詳しく確認できます。介護に追われて提出を忘れていないか、早めに確認しておくことが大切です。
退職した年ならではの申告のポイント
給与の源泉徴収票は捨てずに保管する
退職した年の確定申告では、勤務先から受け取った源泉徴収票が欠かせません。ここに記載された支払金額、源泉徴収税額、社会保険料の額などを確定申告書に転記していきます。退職後の慌ただしさで紛失してしまうと再発行を依頼する手間がかかるため、受け取ったらすぐに他の申告書類とまとめて保管しておきましょう。
退職後に自分で払った社会保険料は控除できる
退職して会社の社会保険を抜けると、その後は国民健康保険や国民年金に切り替えるのが一般的です。退職後に自分で支払った保険料は、全額が社会保険料控除の対象になります。社会保険料控除の範囲は、国税庁タックスアンサーNo.1130「社会保険料控除」(国税庁 No.1130)で確認できます。あわせて、在職中に給与から天引きされていた社会保険料も源泉徴収票に記載があり、こちらも控除できます。
国民健康保険料・国民年金保険料の納付額がわかる書類
任意継続を選んだ場合の健康保険料の領収書
退職後に支払った国民年金基金などの掛金
これらは納めた金額がそのまま所得から差し引かれ、税負担を軽くしてくれます。納付書や口座引落の記録を年間でまとめておくと、申告のときに集計しやすくなります。
事業の必要経費を正しく拾い上げる
開業後の事業所得は、売上から必要経費を差し引いて計算します。介護をしながら在宅で働く場合、自宅の一部を仕事に使うことが多く、その分の家賃や電気代などを事業で使った割合に応じて経費にできます。これを家事按分といいます。仕事に使う面積や使用時間など、合理的な基準で割合を決めておくと、後から説明しやすくなります。
介護に関わって使える控除を確認する
親などを扶養していれば扶養控除の対象になることがある
同居して介護している親などを生計を一にして扶養している場合、その親の年間の合計所得金額が一定額以下であれば、扶養控除の対象になることがあります。特に70歳以上の親を扶養している場合は控除額が大きくなり、同居している場合にはさらに上乗せされる区分が設けられています。親を同居で扶養に入れるときの考え方は親を同居で扶養に入れるときの節税にまとめています。年金収入のみの親であっても、収入額によっては扶養に入れられるケースがあるため、親の収入状況を確認してみましょう。
介護を受ける家族に障害がある場合の障害者控除
介護が必要な家族が一定の障害の状態にある場合、扶養している方は障害者控除を受けられることがあります。市区町村から障害者手帳の交付を受けているケースのほか、要介護認定を受けている高齢者について、市区町村長から「障害者控除対象者認定書」の交付を受けることで対象となる場合もあります。該当しそうなときは、お住まいの自治体の窓口に確認してみるとよいでしょう。
介護にかかった費用と医療費控除
介護に関連する費用の一部は医療費控除の対象になります。たとえば、医師の指示に基づく在宅療養や、施設サービス・居宅サービスの自己負担分の一部、おむつ代などが対象になる場合があります。医療費控除の対象範囲は、国税庁タックスアンサーNo.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(国税庁 No.1120)で確認できます。ただし、すべての介護費用が対象になるわけではなく、対象となる範囲には決まりがあります。
介護サービス利用時に受け取る領収書や明細書
医師が発行する「おむつ使用証明書」(おむつ代を医療費控除に含める場合)
薬局や病院で支払った医療費の領収書
家族全員分の医療費を合算して計算できるため、領収書は本人だけでなく家族の分もまとめて保管しておくと、控除の取りこぼしを防げます。
介護と事業を両立しながら帳簿を整えるコツ
「まとめてやる」より「こまめに残す」
介護をしながらの事業では、申告直前にまとめて帳簿を作ろうとすると、介護の合間に時間が取れず後回しになりがちです。日々の取引はその都度メモや写真で記録を残し、月に一度だけ整理する、といった小さな習慣にしておくと負担が分散されます。完璧を目指すよりも、まずは記録を「残すこと」を優先するのがコツです。
事業の出費と介護・家庭の出費を分ける
個人事業では、事業の支払いと家庭・介護の支払いが混ざりやすくなります。できれば事業用の口座やクレジットカードを1つ用意し、事業の入出金はそこに集約しておくと、後で仕分ける手間が大きく減ります。分けるための具体的な工夫は事業と家計のお金を分ける記帳のコツにまとめています。介護費用は医療費控除や生活費として別に管理し、事業経費とはっきり区別しておきましょう。
無理のない範囲で専門家やサービスを頼る
介護は先の見通しが立ちにくく、申告作業に十分な時間を割けない時期もあります。そんなときは、すべてを自分で抱え込まず、記帳代行サービスや税理士などの専門家に頼ることも検討しましょう。帳簿づけにかかる時間を介護や本来の事業に回せるようになり、結果として心の余裕にもつながります。
よくある質問
Q. 退職した年は、給与と事業のどちらか一方だけ申告すればよいですか?
いいえ、退職した年は給与所得と事業所得の両方を1つの確定申告書にまとめて申告します。給与は勤務先の源泉徴収票の金額を使い、事業は売上から経費を差し引いた所得を計算して合算します。退職時に年末調整を受けていない場合は、確定申告をすることで源泉徴収された税金が還付される可能性もあります。
Q. 親が年金を受け取っていても扶養控除の対象にできますか?
親の年間の合計所得金額が一定の範囲内であれば、年金を受け取っていても扶養控除の対象にできる場合があります。年金収入は一定額を差し引いて所得を計算する仕組みのため、収入額によっては所得が基準内に収まることがあります。親の年金額がわかる書類を確認し、判断に迷う場合は税務署や専門家に相談してみましょう。
Q. 介護で時間が取れず、青色申告承認申請書を出しそびれました。今からでも青色申告できますか?
年の途中で開業した場合、青色申告の承認申請には開業日から原則2か月以内という期限があります。この期限を過ぎると、その年分は青色申告ではなく白色申告となり、青色申告特別控除などは翌年分から適用されることになります。来年以降のために、まだ申請していなければ早めに提出しておきましょう。
今日から整える、介護と両立できる申告の準備
介護離職して開業した年の確定申告は、給与所得と事業所得を合算して申告し、退職後に自分で払った社会保険料、親を扶養していれば扶養控除、状況に応じて障害者控除や医療費控除など、使える控除を取りこぼさないことがポイントです。源泉徴収票や保険料・介護費用の領収書をこまめに保管し、事業の出費と家庭の出費を分けておくだけでも、申告はぐっと楽になります。
介護に追われる毎日の中で、帳簿づけから控除の確認、申告書の作成までをすべて一人でこなすのは、時間的にも気持ちのうえでも重くのしかかります。介護にも事業にも時間を使いたいときこそ、面倒な経理は思い切って手放すことを考えてみてはいかがでしょうか。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








