株の配当・売却益がある個人事業主の確定申告|総合課税と申告分離課税の選び方
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確定申告

株の配当・売却益がある個人事業主の確定申告は、申告不要・総合課税・申告分離課税という課税方式の選び方で、税額も国民健康保険料も変わります。所得水準ごとの有利・不利と、損益通算・繰越控除のポイントを、事業所得との関係を踏まえて整理します。
事業で得た利益の一部を株式投資に回し、配当や売却益という形で資産を育てている個人事業主・フリーランスの方が増えています。ところが、株の税金は事業の税金とルールが大きく異なるため、「申告書のどこに書くのか」「そもそも申告すべきなのか」と迷ってしまう方が少なくありません。まずは所得の区分と口座の種類を押さえ、自分に合った課税方式を選ぶ道筋を確認していきましょう。
☑ 事業の確定申告はしているけれど、株の配当や売却益をどう扱えばいいのか分からない
☑ 「総合課税」と「申告分離課税」の違いが分からず、毎年なんとなくで済ませている
☑ 配当や売却益を申告すると、かえって税金や保険料が増えるのではないかと不安
個人事業主の株取引はどう課税される?基本の仕組み
事業の所得と株の所得は別々に計算する
所得税では、所得をその性質ごとに区分して計算します。事業の儲けは「事業所得」、株の売却益は「譲渡所得」、配当金は「配当所得」と、それぞれ別の区分です。所得を性質ごとに分けて計算する仕組みは、国税庁タックスアンサーNo.1000「所得税のしくみ」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm)で確認できます。
大切なのは、事業の損益と株の損益は原則として相殺できないという点です。事業が赤字だから株の利益とぶつけて税金を減らす、といったことは基本的にできません。まずは「事業は事業、株は株」と分けて考えるのが出発点です。事業と投資のように複数の収入源がある場合の考え方は、複数事業を営む個人事業主の確定申告で扱う収支の分け方も参考になります。
なお、株式投資の利益が事業所得になるのは、証券業として営むような特別な場合に限られます。一般的な個人の株取引は、取引の規模にかかわらず譲渡所得・配当所得として扱われると考えておきましょう。
口座の種類で申告の手間が大きく変わる
株式投資に使う口座には、主に次の種類があります。
特定口座(源泉徴収あり):証券会社が税金を計算・納付してくれるため、申告しない選択も可能
特定口座(源泉徴収なし):証券会社が年間の損益を計算してくれるが、申告は自分で行う
一般口座:損益の計算から申告まですべて自分で行う
NISA口座:利益が非課税のため、原則として申告は不要
自分がどの口座で取引しているかを確認することが、申告準備の第一歩です。
配当金の課税方法は3つから選べる
上場株式の配当金については、次の3つの課税方法の中から自分で選ぶことができます。どれを選ぶかによって税額や手間が変わるため、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
申告不要制度:源泉徴収だけで完結させる
上場株式の配当金は、受け取る時点で税金が源泉徴収されています。そのため、確定申告をせずにそのまま完結させる「申告不要」という選択が可能です。手間がかからない反面、後述する配当控除や損益通算のメリットは受けられません。
なお、申告不要を選んだ配当は合計所得金額に含まれないため、各種控除の判定や国民健康保険料に影響しにくいという特徴もあります。
総合課税:配当控除を使いたい方向け
総合課税を選ぶと、配当所得を事業所得などと合算し、累進税率で税金を計算します。このとき「配当控除」という税額控除が使えるため、所得が比較的少ない方は、源泉徴収された税金の一部が戻ってくることがあります。
一方で、総合課税を選んだ配当は、上場株式の売却損と相殺することができません。損益通算を優先したい年は、次に紹介する申告分離課税を検討しましょう。事業と投資の申告が重なって手が回らない場合は、株の申告まで含めて確定申告を任せる方法もあります。
申告分離課税:株の損失と相殺したい方向け
申告分離課税を選ぶと、配当所得を他の所得と分けて一律の税率で計算します。最大のメリットは、上場株式の売却損と損益通算できることです。売却で損失が出た年は、配当と相殺することで、源泉徴収された税金の還付を受けられる場合があります。
売却益・売却損の申告のポイント
売却益には約20%の税金がかかる
上場株式の売却益は申告分離課税の対象で、税率は所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%です。事業所得のように利益が増えるほど税率が上がる累進課税とは異なり、利益の大きさにかかわらず一律である点が特徴です。
損失が出たら「損益通算」と「繰越控除」
売却で損失が出た場合、申告分離課税を選んだ配当所得と相殺(損益通算)できます。それでも引ききれない損失は、確定申告をすることで翌年以後3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺することができます。
たとえば売却損が30万円、申告分離課税を選んだ配当が10万円なら、相殺後に残る損失20万円を翌年以後に繰り越せるイメージです。
繰越控除を続けるには、取引のない年も含めて毎年連続して確定申告をすることが条件です。「損した年は申告しなくていい」と思い込まず、損失の年こそ申告を検討しましょう。
複数の証券会社で取引している場合
A社の口座では利益、B社の口座では損失というように、複数の証券会社で取引している場合は、確定申告をすることで全体の損益を通算できます。源泉徴収ありの特定口座だけで取引していると、申告不要のまま完結してしまい、払いすぎた税金に気づかないことがあります。年明けに各社から交付される特定口座年間取引報告書をそろえて、全体の損益を確認してみましょう。なお、クラウドファンディングなどで受け取った資金がある場合の所得区分は、クラウドファンディング・寄付型支援を受けた人の確定申告で整理しています。
総合課税と申告分離課税、どう選ぶ?
所得水準によって有利・不利が変わる
総合課税は累進税率のため、事業所得が大きい方ほど配当に対する税率も高くなり、不利になりやすい傾向があります。逆に所得が少なめの方は、配当控除の効果で申告分離課税や申告不要よりも有利になることがあります。事業の利益が年によって変動しやすい個人事業主は、その年ごとに損得を確認するのがおすすめです。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、入力内容を変えながら税額を試算できるので、申告前に複数のパターンを比較してみると判断しやすくなります。夫婦それぞれに所得がある世帯では、夫婦ともに個人事業主の確定申告で扱う世帯単位の考え方も、有利・不利を見極める助けになります。
国民健康保険料への影響も忘れずに
個人事業主の多くが加入する国民健康保険の保険料は、前年の所得をもとに計算されます。配当や売却益を確定申告すると、その分が保険料の計算に含まれ、翌年の保険料が上がることがあります。税金だけを見て判断せず、保険料への影響も含めたトータルで考えることが大切です。
所得税と住民税で別々の方式は選べない
以前は所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことができましたが、現在は一本化され、同じ方式が適用されます。古い情報をもとに判断しないよう注意しましょう。最新の取り扱いは国税庁サイト等でご確認ください。
よくある質問
Q. 特定口座(源泉徴収あり)なら、申告しなくてもいいのですか?
はい、申告しないことも選べます。ただし、損失の繰越控除を使いたい場合や、複数の証券会社の損益を通算したい場合、配当控除で還付を受けたい場合などは、あえて申告したほうが有利になることがあります。なお、確定申告で一度選んだ課税方式は後から変更できないのが原則のため、申告するかどうかは提出前に慎重に検討しましょう。
Q. 株の損失と事業の利益は相殺できますか?
原則としてできません。上場株式の売却損は、申告分離課税を選んだ配当所得など、株式関係の所得との間でのみ損益通算が可能です。事業所得の黒字と株の赤字をぶつけることはできない、と覚えておきましょう。
Q. NISA口座の配当や売却益は申告が必要ですか?
NISA口座内の利益は非課税のため、確定申告は不要です。一方で、NISA口座で損失が出ても、課税口座の利益と損益通算したり、翌年に繰り越したりすることはできません。課税口座とNISA口座の損益は分けて管理しておきましょう。
押さえておきたい株の申告のポイント
株の配当・売却益の税金は、申告不要・総合課税・申告分離課税という選択肢の中から、自分の所得状況に合った方式を選べるのが特徴です。同じ取引内容でも、選び方によって税金や国民健康保険料が変わるため、毎年の状況に合わせて検討する価値があります。
とはいえ、事業の決算と株の損益計算を同時に進めるのは、なかなか骨の折れる作業です。判断に迷う部分は専門家の力も借りながら、不利な選択をしてしまわないように備えましょう。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








