年金の繰下げ受給と個人事業の所得|手取りを最大化する受け取り方を解説
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税金

年金の繰下げ受給は受取額が増える一方、個人事業の所得と合算されて税金や社会保険料も増えます。受給額ではなく手取りで比べる視点と、事業所得側の控除を整えて手取りを高める考え方を整理します。
個人事業主やフリーランスの方は、会社員のように定年で一区切り、というわけにはいきません。体が動くうちは事業を続けながら、公的年金も受け取る、という方が多いのではないでしょうか。そのとき気になるのが、「事業の所得と年金を両方もらうと、税金や社会保険料はどうなるのか」「年金を遅らせて受け取る繰下げ受給は、自分にとって得なのか損なのか」という点です。
☑ 個人事業を続けながら年金をもらうと、税金や保険料がどう変わるのか不安だ
☑ 年金の繰下げ受給で受取額が増えると聞いたが、自分にとって本当に得なのか判断できない
☑ 事業所得と年金を両方受け取るとき、手取りを増やすにはどう受け取ればよいか知りたい
年金の繰下げ受給のしくみと、個人事業の所得と年金が組み合わさったときの税金・保険料への影響を整理しました。自分の状況で手取りを最大化するには、どんな受け取り方を検討すればよいか、判断の手がかりがつかめるよう順に見ていきます。
年金の繰下げ受給とは?基本のしくみを押さえましょう
受け取りを遅らせると受給額が増える
公的年金は、原則として65歳から受け取りが始まります。これを66歳以降に遅らせて受け取ることを繰下げ受給といい、遅らせた月数に応じて1か月あたり0.7%ずつ年金額が増えていきます。たとえば1年(12か月)遅らせれば8.4%、最大の上限まで遅らせれば大きく増額された年金を一生涯受け取れるしくみです。一度繰下げて増えた金額は、その後ずっと続くのが特徴です。繰下げ・繰上げの詳しい取り扱いは日本年金機構の案内で確認できます。
反対に、65歳より前から受け取りを始める繰上げ受給もあります。こちらは早くもらえる代わりに、繰上げた月数に応じて年金額が減額され、その減額も一生続きます。事業を続けていて当面の生活費に余裕がある方は、繰下げを検討する価値があるといえます。高齢になっても働きながら受け取る場合の税の考え方は高齢になっても働くときの節税もあわせて参考になります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に判断できる
公的年金には、自営業者なども加入する国民年金から支給される老齢基礎年金と、会社員時代などに厚生年金へ加入していた方が受け取る老齢厚生年金があります。繰下げ受給は、この2つをそれぞれ別々に選ぶことができます。
たとえば「基礎年金は65歳から受け取り、厚生年金だけ繰下げる」といった組み合わせも可能です。事業の収入状況や、ほかの所得とのバランスを見ながら、どちらをいつから受け取るかを設計できる柔軟さがあります。個人年金や企業年金もある場合の申告の考え方は個人年金・企業年金がある場合の確定申告で整理しています。
増額メリットと「何歳まで生きるか」の関係
繰下げ受給は受給額が増える一方で、受け取り開始が遅くなる分、受け取れる期間は短くなります。そのため、増額された年金を一定の年数以上受け取って初めて、65歳から普通に受け取った場合の総額に追いつく、という関係になります。長く受け取るほど繰下げが有利になりやすい、と考えるとイメージしやすいでしょう。
個人事業を続けていて当面は事業収入で生活できる方、健康に自信があり長く受け取る見込みのある方ほど、繰下げのメリットを生かしやすいといえます。逆に、早めにまとまった収入が必要な方には繰下げが合わないこともあり、画一的に「繰下げが得」とは言い切れない点に注意が必要です。
個人事業の所得と年金はどう課税される?
事業所得と公的年金等の雑所得は合算される
所得税は、1年間のさまざまな所得を合算して計算する「総合課税」が基本です。個人事業から得られる事業所得と、公的年金から得られる所得は、いずれも合算の対象になります。年金収入が増えれば、その分だけ合計の所得が増え、所得税や住民税の計算のもとになる金額も大きくなります。
つまり、繰下げ受給で年金額が増えると受け取る金額は増えますが、同時に課税される所得も増えるため、「増えた分がそのまま手取りになるわけではない」という点を理解しておくことが大切です。年金と事業所得を合わせた申告を任せたいときは、確定申告代行の内容を知っておくと見通しが立ちます。
公的年金等控除で年金所得は圧縮される
公的年金は受け取った金額がそのまま所得になるわけではなく、公的年金等控除を差し引いた残りが所得(公的年金等にかかる雑所得)として扱われます。これは、年金生活者の税負担に配慮した控除で、年齢や年金以外の所得の状況に応じて控除額が決まります。
この控除があるため、同じ金額を受け取る場合でも、給与や事業の収入に比べて年金は税負担が軽くなりやすい面があります。一方で、年金額が大きくなると控除しきれない部分が増え、課税される所得も増えていく点は押さえておきましょう。年金受給者を扶養に入れる場合の考え方は年金受給者と扶養制度の確定申告で確認できます。
事業所得側で使える控除を最大限に活用する
年金と事業所得を両方受け取る方ほど、事業所得側で使える控除を丁寧に活用することが手取りを左右します。代表的なのが、青色申告を行うことで受けられる青色申告特別控除(最大65万円)です。複式簿記による記帳と、e-Taxによる申告などの要件を満たすことで、最大65万円を所得から差し引けます。
青色申告特別控除で事業所得そのものを圧縮する
事業に必要な経費を漏れなく計上する
社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除など、所得控除を取りこぼさない
年金収入は受け取り方をある程度選べますが、事業所得側の控除は日々の記帳と申告の積み重ねで決まります。国民健康保険料や国民年金保険料は社会保険料控除の対象で、そのしくみは国税庁タックスアンサー「No.1130 社会保険料控除」(国税庁)で確認できます。両面から整えることで、合計の課税所得を抑え、手取りを高めやすくなります。
繰下げ受給が税金・保険料に与える影響
年金額が増えると所得税・住民税の負担も増える
繰下げ受給で年金額が増えると、公的年金等控除を差し引いた後の年金所得が増えます。これが事業所得と合算されることで、所得税や住民税の対象となる課税所得が押し上げられます。所得税は所得が大きいほど税率が高くなる累進課税のため、合計所得が増えると、その上乗せ部分に対してより高い税率がかかることもあります。
そのため、「繰下げで年金額は増えたのに、税金や保険料の増加で手取りの増え方は思ったほどではなかった」というケースも起こり得ます。受給額の増加だけでなく、税・保険料を差し引いた後の手取りで比較する視点が欠かせません。
国民健康保険料・介護保険料にも影響する
個人事業主の多くが加入する国民健康保険の保険料は、前年の所得をもとに計算されます。年金所得も事業所得も保険料計算のもとになるため、年金額が増えればその分、翌年度以降の国民健康保険料や介護保険料に影響することがあります。さらに、医療機関の窓口負担の割合など、所得に応じて変わる制度にも関わってくる場合があります。
税金だけでなく、こうした社会保険料や各種制度への波及も含めて、トータルでどうなるかを見ておくことが、後悔のない選択につながります。
「いつ・いくら受け取るか」を分散して設計する
事業がまだ忙しく事業所得が大きい時期に年金も満額受け取ると、その年の所得が一気に膨らみ、税率や保険料が高くなりやすくなります。そこで、事業の繁忙が落ち着いて所得が下がってくる時期に合わせて年金の受け取りを始める、基礎年金と厚生年金で受け取り開始時期をずらす、といった形で所得の山を分散する設計が有効になることがあります。
どの年にどれだけの所得が集中するかをならすことで、高い税率がかかる部分や、保険料が跳ね上がる部分を抑えやすくなります。自分の事業の見通しと合わせて、年金の受け取り開始時期を考えることがポイントです。
手取りを最大化するための受け取り方の考え方
事業の引退時期から逆算して受給開始を決める
手取りを意識するなら、まず「いつごろ事業を縮小・引退する見込みか」を起点に考えると整理しやすくなります。事業所得が高いうちは年金を繰下げて受け取りを後ろにずらし、事業所得が下がってから増額された年金を受け取る、という流れにすれば、所得が高い年に年金を上乗せして税負担を重くする事態を避けやすくなります。
逆に、早めに事業を縮小して年金が主な収入になる場合は、繰下げによる増額メリットを生かしつつ、生活費とのバランスをとることが大切です。事業の将来像と年金の受け取り方は、セットで考えるとうまくかみ合います。
基礎年金と厚生年金で受け取り方を分ける
前述のとおり、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げを選べます。たとえば、生活の土台となる基礎年金は早めに受け取って当面の安心を確保し、厚生年金は繰下げて将来の増額を狙う、といった組み合わせも考えられます。
どちらをどう受け取るかで、毎年の所得の大きさや受け取れる総額が変わってきます。一度にすべてを決めず、2つの年金を別々の選択肢として検討することで、自分の状況に合った受け取り方を設計しやすくなります。
所得控除・経費を整えて課税所得を抑える
受け取り方の工夫と並んで重要なのが、事業所得側の課税所得を抑えることです。青色申告特別控除を確実に受ける、必要経費を漏れなく計上する、小規模企業共済や国民年金基金などの掛金を所得控除として活用する、といった対策は、年金と事業所得が重なる時期ほど効果を発揮します。
年金の受給額そのものは、いったん繰下げを選ぶと変えにくい面があります。一方で、事業所得側の控除や経費は毎年の記帳と申告で積み上げられる部分です。コントロールしやすい事業側を整えておくことが、結果として手取りを底上げします。
よくある質問
Q. 年金を受け取り始めても、確定申告は必要ですか?
個人事業を続けていて事業所得がある方は、年金を受け取っているかどうかにかかわらず、確定申告が必要になるのが基本です。年金収入と事業所得を合算して申告し、各種控除を反映して最終的な税額を計算します。確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日までですので、年金の源泉徴収票や事業の決算書類を早めにそろえておきましょう。
Q. 繰下げ受給は、後から「やっぱり65歳からもらう」と変更できますか?
繰下げ受給の取り扱いには細かいルールがあり、受給を待っている間に方針を変える余地が用意されている場合もあります。ただし、いつ・どのように受け取るかによって、増額の扱いやさかのぼっての受け取りの可否が変わってきます。自分のケースで何ができるかは、年金事務所など公的な窓口で最新の取り扱いを確認するのが確実です。
Q. 「繰下げで年金が増える」と「税金が増える」は、結局どちらで考えればよいですか?
判断の軸は、受給額そのものではなく、税金や社会保険料を差し引いた後の「手取り」です。繰下げで受給額が増えても、所得税・住民税・国民健康保険料などが増えれば、手取りの増え方は受給額の増え方より小さくなります。受け取り開始時期の異なるいくつかのパターンで、手取りベースで比較してみると、自分に合った選択が見えてきます。
結論:受け取り方と事業の控除を両面から整える
年金の繰下げ受給は、受け取りを遅らせるほど受給額が増える有利なしくみですが、個人事業の所得と合算されることで税金や社会保険料も増える点には注意が必要です。手取りを最大化するには、事業の引退時期から逆算して受給開始を決める、基礎年金と厚生年金で受け取り方を分ける、そして青色申告特別控除や経費といった事業側の控除を整えるという、受け取り方と所得対策の両面からの設計が鍵になります。
年金と事業所得が重なる時期に、毎日の記帳から確定申告書類の作成までをすべて自分で行うのは、本業が忙しい中で大きな負担になりがちです。数字の整理に追われて、肝心の受け取り方を落ち着いて検討する時間がとれない、という方も少なくありません。領収書丸投げドットコムは、領収書・請求書を郵送かスマホ撮影で送るだけで、記帳から確定申告書類の作成までを代行します。事業側の控除を取りこぼさない記帳を、税理士監修のもとでお預かりします。事業側の控除を整えて年金と両立した手取りを高める方法を相談する(相談は無料です)。日々の記帳から預けたい方は記帳代行のしくみもご覧ください。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








