自家消費・棚卸資産の評価を見直して所得を最適化する節税のコツを解説
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税金

自家消費した商品は売上として計上し、棚卸資産は自分の商売に合った評価方法を選ぶ——この2つを年末に見直すだけで所得は実態に近づきます。自家消費の正しい処理と、棚卸資産の評価方法で所得を最適化するコツを解説します。
商品を扱う事業をしていると、「店の商品を自分や家族で消費した分はどう申告するの?」「年末の在庫はどう数えて、いくらで評価すればいいの?」といった疑問にぶつかりやすいものです。日々の売上や経費には気を配っていても、自家消費や棚卸資産の扱いまでは手が回らない、という方も少なくないのではないでしょうか。
☑ 飲食店や小売業で自分用に使った商品を、確定申告でどう処理すればよいかわからない
☑ 棚卸資産の評価方法に種類があると聞いたが、自分にどれが向いているのか判断できない
☑ 期末の在庫の付け方ひとつで税額が変わると知り、もっと有利な方法がないか気になっている
以下では、個人事業主が見落としがちな「自家消費」の正しい処理と、「棚卸資産の評価方法」を見直して所得を最適化するコツを整理します。利益が出る年・出ない年に応じてどう考えればよいか、全体のイメージがつかめるようになります。
自家消費や在庫評価まで含めた記帳を任せたいときは、記帳代行という方法もあります。まずは自家消費の基本の考え方から確認しましょう。
自家消費とは?まず基本の考え方を押さえましょう
自家消費は「売上」として計上するのが原則
自家消費とは、販売目的で仕入れた商品や、事業で作った製品を、事業主自身や家族のために使ったり食べたりすることをいいます。飲食店で従業員のまかないとは別に自分の食事を店の食材でまかなった、雑貨店で売り物の商品を自宅用に持ち帰った、といったケースが典型です(飲食店の原価と在庫の管理は飲食店の原価率管理と帳簿も参考になります)。
このとき大切なのは、自家消費した分も売上(収入)として計上する必要があるという点です。お金のやり取りがないため経理上は見落としがちですが、税務上は「自分で自分に販売した」と同じように扱います。仕入れたときに経費(仕入高)として落としている以上、私的に使った分を収入に戻さないと、経費だけが残って所得が不当に小さくなってしまうためです。
いくらで計上すればよいのか
自家消費の金額は、原則としてその商品の通常の販売価額で計上するのが基本です。ただし実務上は、仕入価額と販売価額のうちいずれか高い方以上で計上していれば認められる、という考え方が広く用いられています。具体的には、おおむね次のような目安で処理されることが多いです。
仕入価額以上で、かつ通常の販売価額のおおむね7割以上の金額で計上する
飲食業など一部の業種では、別途定められた基準を用いることもある
判断に迷うときは「通常の販売価額」で計上しておけば、後から金額が低すぎると指摘される心配はありません。控えめに見積もりすぎて税務上の問題を招くより、わかりやすい基準で一貫して処理することをおすすめします。
記帳のしかたと帳簿への残し方
自家消費は、決算のときにまとめて計上するのが一般的です。帳簿上は「家事消費」や「自家消費」といった科目を使い、売上の一部として扱います。日々こまめに記録するのが難しい場合でも、「いつ・何を・いくつ自家用に使ったか」をメモやアプリで残しておくと、年末にあわてずに済みます。記録がまったくないと、税務署とのやり取りで根拠を示せず不利になることもあるため、ざっくりでも残しておくことが大切です。
棚卸資産とは?在庫の数え方と評価の関係
棚卸資産は「まだ売れていない仕入れ」
棚卸資産とは、商品・製品・原材料・仕掛品など、販売を目的として持っている在庫のことです。年末の時点で売れ残っている在庫は、その年の経費にはできず、翌年以降に持ち越して、実際に売れたときにはじめて経費(売上原価)になります。つまり在庫は「来年以降の経費の前借り」ではなく、売れるまで待たされる経費という性質を持っています。
この仕組みがあるため、年末の在庫をいくらと評価するかによって、その年の所得(利益)が変わってきます。在庫の評価額を大きく見積もれば経費に回せる金額が減って利益が増え、小さく見積もれば利益が減る、という関係です。だからこそ、評価方法の選び方が節税の観点で重要になります。
売上原価の計算と在庫の関係
商品の売上原価は、ざっくり「期首の在庫+その年の仕入れ−期末の在庫」で計算します。式の最後にある期末の在庫が、まさに棚卸しで数えて評価する金額です。ここが大きいほど売上原価は小さくなり、利益は大きく出ます。逆に期末在庫が小さければ売上原価が大きくなり、利益は圧縮されます。
在庫を「数える(棚卸し)」ことと「いくらで評価するか」は別の作業です(決算での棚卸しの進め方は決算棚卸の実施を参照)。数を正確に把握したうえで、次に説明する評価方法に沿って単価を当てはめ、金額を確定させていきます。
棚卸資産の評価方法には種類があります
原価法と低価法の違い
棚卸資産の評価方法は、大きく原価法と低価法の2つに分かれます。原価法は、仕入れたときの取得原価をもとに在庫を評価する方法です。低価法は、取得原価と期末時点の時価を比べて、低い方の金額で評価できる方法をいいます。
商品の値下がりが起きている場合、低価法を選んでいれば在庫を時価まで下げて評価でき、その分だけ利益を圧縮して所得を抑えられます。流行り廃りの早い商品や、相場の変動が大きい商材を扱う事業では、低価法の方が有利になりやすいといえます。なお、低価法を採用するには、あらかじめ所轄の税務署へ届け出ておくことが必要です。
原価法の中にもいくつかの方法がある
原価法と一口に言っても、単価の決め方によってさらに細かく分かれます。代表的なものを挙げると次のとおりです。
最終仕入原価法:その年の最後に仕入れた単価を、在庫全体に当てはめる方法。計算が簡単で、届け出をしない場合に適用される法定評価方法でもある
総平均法・移動平均法:仕入単価を平均して在庫を評価する方法。価格変動の影響をならしやすい
先入先出法:先に仕入れたものから先に売れたと考え、期末在庫は新しい仕入分が残っているとみなす方法
多くの個人事業主は、特別な届け出をしないため、自動的に最終仕入原価法が適用されています。手間がかからない反面、値動きの大きい商材では実態と合わない金額になることもあるため、自分の商売に合っているかを一度見直してみる価値はあります。
評価方法を選ぶ・変える手続き
最終仕入原価法以外の方法を使いたい場合は、原則としてその年の確定申告期限までに、所轄の税務署へ評価方法の届出書を提出する必要があります。いったん選んだ方法は継続して使うのが原則で、コロコロ変えることは認められていません。変更したいときも事前の手続きが必要になります。有利だからとその年だけ都合よく切り替える、ということはできない点に注意しましょう。
所得を最適化するための見直しのコツ
利益が出る年・出ない年で考え方を分ける
節税というと「とにかく利益を減らす」と考えがちですが、所得税は所得が大きいほど税率が高くなる累進課税です(所得税の税率は国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」で確認できます)。そのため、年ごとの利益の波をならすように考えると、トータルの税負担を抑えやすくなります。たとえば在庫の評価方法を見直すことで、利益が大きく出た年に過度な税負担がかからないよう調整できる場合があります。
一方で、利益が少ない年や赤字の年に無理に在庫評価を下げても、控除しきれず効果が薄いこともあります。自分の事業の利益が今どの局面にあるかを踏まえて、評価方法の見直しを検討することが大切です。
不良在庫・滞留在庫を放置しない
売れ残ったまま何年も倉庫に眠っている在庫は、評価額として帳簿に残り続け、利益を実態より大きく見せてしまうことがあります。実際に値崩れしている、あるいはもう売り物にならない在庫があるなら、低価法による評価減や、廃棄・処分による損失計上を検討しましょう。ただし、単に「売れないから」という理由だけで評価を下げることはできません。値下がりや品質劣化など、評価を下げる客観的な根拠を残しておくことが重要です(在庫ロスや廃棄の記帳は在庫ロス・廃棄の記帳を参照)。
廃棄するときは、廃棄の日・数量・理由がわかる記録や写真を残す
値下げ販売やセールの記録も、時価が下がっている根拠の一つになる
自家消費と在庫管理をセットで見直す
自家消費の計上漏れと、在庫評価の見直しは、どちらも「仕入れたものをどう経費にするか」という点でつながっています。私的に使った分を売上に戻し、売れ残りは適切に評価する。この両輪を年末にきちんと整理することで、所得が実態に沿った正しい金額に近づきます。結果として、過大な納税も、後から指摘されるリスクも避けやすくなります。日々の記帳の段階で在庫や自家用の動きをメモしておくと、決算のときの作業がぐっと楽になります。
よくある質問
Q. 飲食店で自分が食べた食材も、必ず自家消費として計上しないといけませんか?
事業用に仕入れた食材を事業主自身が私的に消費したのであれば、原則として自家消費として収入に計上します。仕入れの段階で経費にしている以上、私的に使った分を収入へ戻さないと所得が正しく計算できないためです。少額だからと省略すると、後から指摘される可能性があります。金額の目安に迷うときは、通常の販売価額で計上しておくと安心です。
Q. これまで在庫の評価方法を気にしたことがありません。何法を使っていることになりますか?
税務署へ評価方法の届け出をしていない場合は、原則として最終仕入原価法が適用されています。多くの個人事業主はこの方法になっています。値動きの大きい商材を扱っているなら、他の方法の方が実態に合うこともあるので、一度確認してみるとよいでしょう。方法を変えるには事前の届け出が必要です。
Q. 売れ残った在庫を、自分の判断で安く評価して利益を減らしてもよいですか?
自己判断だけで在庫の評価額を下げることはできません。評価を下げる(評価減や低価法の適用)には、値下がりや品質劣化といった客観的な根拠と、それを裏づける記録が必要です。根拠のない評価減は否認されるおそれがあるため、セールの記録や廃棄時の写真など、説明できる材料を残しておくことが大切です。
自家消費と在庫評価を整えれば所得は実態に近づく|まとめ
自家消費は売上として正しく計上し、棚卸資産は自分の商売に合った評価方法を選ぶ。この2つを年末にきちんと見直すだけで、所得が実態に沿った金額に近づき、過大な納税や後からの指摘を避けやすくなります。評価方法には原価法と低価法、さらに最終仕入原価法や平均法などの種類があり、利益が出る年・出ない年で考え方を分けることが、無理のない節税につながります。
とはいえ、自家消費の計上や棚卸資産の評価は、日々の売上や経費の処理に比べて判断が難しく、本業が忙しい中で記帳から申告まですべて自分で行うのは大きな負担になりがちです。在庫の数え方や評価方法の選び方に自信が持てないまま、なんとなく申告してしまっている方も多いのが実情です。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








