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個人事業主のインボイス値引き・返品・割戻...

2026/8/11

個人事業主のインボイス値引き・返品・割戻しの処理をやさしく解説

  • 税務

インボイス制度での値引き・返品・割戻しは、いずれも「売上に係る対価の返還」として扱い、売る側は返還インボイス、買う側は仕入税額控除の調整で対応します。少額なら書類が省ける点まで整理します。

インボイス制度が始まってから、ふだんの売上や仕入だけでなく、後から発生する値引き・返品・割戻しの処理にも頭を悩ませる個人事業主の方が増えています。一度発行したインボイスの金額が変わると、消費税の計算もやり直しになるため、「正しく直せているのだろうか」と不安になるのも当然です。

☑ 売った商品が返品されたとき、インボイスの消費税をどう直せばよいかわからない

☑ 値引きや割戻しをしたら「返還インボイス」が必要と聞いたが、何を作ればいいのか不安だ

☑ 受け取った側として、返品や値引きがあったときの記帳と仕入税額控除の扱いがあいまいだ

返還インボイス(適格返還請求書)の基本、少額なら不要になるルール、記帳のしかたまでを売る側・買う側の両面から整理し、「どんなときに何を作り、どう帳簿に書けばよいか」がイメージできるように進めます。

値引き・返品・割戻しはインボイスでどう扱われる?

三つはすべて「売上に係る対価の返還」

値引き・返品・割戻しは、言葉は違っても消費税のうえでは同じグループに入ります。いずれも、いったん成立した売上の代金を後から相手に返す(または減らす)取引で、まとめて「売上に係る対価の返還等」と呼ばれます。具体的には次のようなものが当てはまります。

  • 値引き:販売後に「少し安くします」と代金を減らすこと。品質不良へのお詫び値引きなどが典型です。

  • 返品:売った商品が返ってきて、代金を返す(または請求しない)こと。

  • 割戻し(リベート):一定期間にたくさん買ってくれた取引先へ、後から代金の一部を戻すこと。

これらが発生すると、当初の売上に含まれていた消費税も一緒に減ることになります。だからこそ、「いくら返したか」「そのうち消費税はいくらか」をきちんと記録しておく必要があるのです。返還や割戻しを含む消費税額の計算方法は消費税の積上げ・割戻し計算の実務で整理しています。

支払う側から見れば「仕入に係る対価の返還」

同じ取引を、代金を受け取る買い手の側から見ると「仕入に係る対価の返還等」になります。仕入の値引きや返品、受け取った割戻しがこれに当たり、こちらは仕入税額控除を減らす方向に働きます。売る側と買う側で名前は変わりますが、「一度の取引の金額が後から変わった」という実態は共通です。立場によって帳簿の向きが反対になる、と覚えておくとわかりやすくなります。制度の全体像は国税庁のインボイス制度の特集ページで確認できます(2026年7月時点)。

売掛金の貸倒れとは区別して考える

似て見えるものに「貸倒れ」がありますが、これは扱いが別です。値引きや返品は当事者の合意で代金を減らす取引であるのに対し、貸倒れは相手の倒産などで売掛金が回収できなくなった事故です。消費税では「貸倒れに係る消費税額の控除」という別の仕組みで処理し、返還インボイスの発行も不要です。貸倒れが起きたときの売上の扱いは貸倒れと売上の記帳で解説しています。後述する返還インボイスの話は、あくまで合意にもとづく値引き・返品・割戻しが対象だと整理しておきましょう。

売る側がすること:返還インボイス(適格返還請求書)

返還インボイスとは何か

インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)が、課税売上に対して値引き・返品・割戻しを行ったときは、原則として適格返還請求書(返還インボイス)を相手に交付する義務があります。最初に発行したインボイスが「これだけいただきます」という書類なら、返還インボイスは「このぶんをお返しします」という書類だとイメージするとわかりやすいでしょう。記載しておきたい主な項目は次のとおりです。

  • 発行する自分の氏名(屋号)と登録番号

  • 対価の返還等を行う年月日と、その元になった取引のおおむねの年月日

  • 返還等の内容(商品名など。軽減税率対象ならその旨)

  • 税率ごとに区分した返還等の金額

  • 返還等の金額に係る消費税額または適用税率

取引日は「いつごろの売上に対する返還か」がわかればよく、月単位などのまとめ書きも認められています。日々の取引が多い業種でも、現実的に対応できるよう配慮されています。

1万円未満の返還ならインボイスは不要

少額の返還にまで毎回書類を出すのは負担が大きいため、税込1万円未満の売上対価の返還等については、返還インボイスの交付が免除されています。これは事業者の規模を問わず使えるルールで、たとえば振込手数料相当額を売り手が負担するケースのように、少額の調整で発行義務を心配しなくてよくなりました。1万円未満かどうかは、一回の返還ごとの金額で判断します。免除されても帳簿への記録は必要なので、「書類は省略できても記帳は省略しない」と覚えておきましょう。

値引き後の請求書にまとめて書く方法もある

返還インボイスは、必ずしも単独の書類にする必要はありません。たとえば継続的な取引先に対しては、当月の売上を記載するインボイスと、前月分の返品・値引きを記載する返還インボイスを1枚の請求書にまとめて発行することも認められています。その場合は、売上額と返還額をそれぞれ税率ごとに区分し、差引き後の金額がわかるように書きます。毎月の請求書フォーマットに「今回のお値引き」欄を設けておくと、実務がぐっと楽になります。

買う側がすること:仕入税額控除の調整

受け取った値引き・返品は控除を減らす

仕入をした側が値引きや返品、割戻しを受けたときは、その分だけ過去に計上した仕入税額控除を減らす調整が必要です。仕入そのものをなかったことにするわけではなく、「実際に支払う金額が減ったぶん、控除できる消費税も減る」という考え方です。原則課税で消費税を計算している方は、この調整を忘れると控除を取りすぎてしまうことになるため注意しましょう。

相手からの返還インボイスは保存が基本

売り手が返還インボイスを発行した場合、買い手はそれを受け取って保存しておくのが基本です。ただし、仕入側の調整は自分の帳簿の数字を直す処理が中心になるため、売上側ほど書類の取り回しに神経質になる必要はありません。受け取った値引きの通知や、差引き後の金額が書かれた請求書を、根拠資料としてあわせて保管しておけば安心です。

簡易課税・2割特例なら調整の手間は軽い

消費税の計算方法によって、買う側の手間は変わります。簡易課税制度を選んでいる場合や、いわゆる2割特例を使っている場合は、納める消費税を売上(預かった消費税)だけをもとに計算します。そのため、仕入側で受けた値引き・返品について、仕入税額控除を細かく減らす調整は基本的に不要です。簡易課税のしくみは国税庁タックスアンサーNo.6505「簡易課税制度」で確認できます。どの方式が有利かは年によって変わることもあり、簡易課税で損をする年もあわせて押さえておくと判断しやすくなります。一方、原則課税の方は実際の仕入にもとづいて控除額を出すため、受けた返還の反映が欠かせません。

帳簿への記帳のしかた

売上の値引き・返品の記帳例

売る側が返品を受けたときは、「売上値引・返品高」などの科目を使って、当初の売上を取り消す向きで記帳します。たとえば税込11,000円(うち消費税1,000円)の商品が返品され、代金を現金で返した場合は、売上値引・返品高10,000円と仮受消費税1,000円を計上し、相手科目を現金とするイメージです。割戻しを支払ったときも考え方は同じで、後から減らした金額と、それに含まれる消費税を分けて記録します。こうした値引き・返品の記帳をまとめて任せたい方は、記帳代行というやり方もあります。

仕入の値引き・割戻しの記帳例

買う側が値引きや割戻しを受けたときは、「仕入値引・割戻高」などの科目で、仕入を減らす向きに記帳します。受け取った金額のうち消費税相当額を仮払消費税から取り消すことで、仕入税額控除が自動的に正しい金額に調整されます。会計ソフトを使っている場合は、専用の値引・返品メニューや、マイナスの金額を入れる方法であらかじめ用意されていることが多いので、それに沿って入力すると間違いが起きにくくなります。

軽減税率と日付の扱いに注意

記帳でつまずきやすいのが、税率と日付の扱いです。元の取引が軽減税率8%の食品などであれば、返還も同じ8%で処理します。標準税率10%のものと混在しているときは、税率ごとに分けて記録しなければなりません。また、年をまたいで返品が起きた場合、いつの売上・仕入として処理するかで所得や消費税額が変わります。基本は返還が確定した日で処理しますが、判断に迷うときは早めに専門家へ確認すると安心です。

よくある質問

Q. 免税事業者やインボイスに登録していない場合も、返還インボイスは必要ですか?

返還インボイスの交付義務があるのは、インボイス発行事業者として登録している方だけです。免税事業者や未登録の方には交付義務はありません。ただし、相手とのトラブルを避けるため、値引きや返品の内容を書面やメールで残しておくことはおすすめします。帳簿上は登録の有無にかかわらず、値引き・返品があった事実を記録しておきましょう。

Q. 振込手数料を売り手が負担した場合も対価の返還になりますか?

取引先が代金から振込手数料を差し引いて入金し、その分を売り手が実質的に負担する形にした場合、その手数料相当額を「売上値引き(対価の返還)」として処理する方法があります。金額は通常1万円未満であることがほとんどなので、先ほどの少額免除により返還インボイスの発行は不要です。帳簿には値引きとして記録しておきましょう。記帳の具体例は振込手数料・為替差額の記帳が参考になります。なお支払手数料として処理する方法もあり、どちらにするかは社内ルールとして決めておくと迷いません。

Q. 一度作った返還インボイスを間違えてしまいました。どう直しますか?

金額や税率を誤って交付してしまった場合は、正しい内容の返還インボイスを改めて発行して相手に渡し直すのが基本です。修正した書類であることがわかるようにし、自分の控えも差し替えておきましょう。帳簿の数字も合わせて訂正します。誤りに気づいたら、そのままにせず早めに対応することが大切です。

結論:値引き・返品・割戻しは「金額が変わった記録」を残すこと

インボイス制度のもとでの値引き・返品・割戻しは、いずれも「いったん成立した取引の金額が後から変わった」処理だと考えると整理しやすくなります。売る側は原則として返還インボイスを交付し(税込1万円未満なら省略可)、買う側は原則課税であれば仕入税額控除を調整する。そして双方とも、税率ごとに金額と消費税を分けて帳簿に記録する。この流れさえつかめば、難しく身構える必要はありません。

本業のかたわらで売上・仕入の記帳に加えて、値引きや返品のたびに税率を分けて処理し、返還インボイスまで管理するのは、想像以上に手間のかかる作業です。処理を後回しにすると、年度末や確定申告の時期に一気にしわ寄せが来てしまいます。領収書丸投げドットコムでは、領収書や請求書を郵送かスマホ撮影で送るだけで、日々の記帳から値引き・返品・割戻しといった消費税のこまかな処理、確定申告書類の作成までを税理士監修のもとで代行しています。返還処理の手間ごと任せられるか相談してみる(無料)。相談は無料です。依頼開始までの流れはご利用の流れでご確認いただけます。

【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。

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