個人事業主の保険料の経理|事業用と私用の分け方を解説
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税務

個人事業主の保険料の経理は、「事業のための保険は経費」「本人や家族のための保険は所得控除」とまず見分けるのが出発点です。事業用と私用が混ざる火災保険や自動車保険は家事按分で処理します。区分の考え方から按分の根拠、控除証明書の扱いまで実務目線で整理します。
会社員のころは会社がまとめて処理してくれていた保険料も、独立すると自分で仕訳しなければならず、確定申告の時期になって初めて手が止まってしまう方も少なくありません。実は、保険料は「事業のために払ったもの」と「自分や家族の生活のために払ったもの」をきちんと分けて考えれば、それほど複雑ではありません。順番に見ていきましょう。
☑ 自宅と事務所を兼ねていて、火災保険や自動車保険をどこまで経費にできるか分からない
☑ 国民健康保険や生命保険を「経費」と「控除」のどちらで処理するのか毎回迷ってしまう
そもそも「経費になる保険料」と「ならない保険料」がある
保険料と一口に言っても、その性質はさまざまです。まず大切なのは、すべての保険料が「事業の経費」になるわけではない、という点を押さえることです。
事業に関係する保険料は経費になる
事業を続けるうえで必要な保険料は、原則として経費(損害保険料など)に計上できます。たとえば次のようなものです。
事務所や店舗の火災保険・地震保険
事業用の自動車にかける自動車保険
業務上の賠償リスクに備える賠償責任保険
商品や在庫にかける動産保険
本人や家族のための保険料は経費にならない
一方で、事業主自身や家族の生活を守るための保険料は、事業の経費にはなりません。これらは「経費」ではなく、確定申告の際に所得から差し引く「所得控除」として扱うものが多くあります。代表的なのは生命保険料や地震保険料(自宅部分)、国民健康保険料、国民年金保険料などです。損害保険料を経費にするか控除にするかで迷ったときは、勘定科目の使い分けを整理した帳簿の付け方の基本もあわせて確認しておくと、仕訳の判断がぶれにくくなります。
経費と所得控除はどちらも納める税金を抑える効果がありますが、計算の場所も上限の有無も異なります。混同しないよう、最初に性質を見分けることが大切です。
家事按分が必要になる保険料の考え方
個人事業主でとくに悩ましいのが、事業とプライベートの両方にまたがる保険です。この場合は「家事按分(かじあんぶん)」という考え方で、事業に使った割合だけを経費にします。家賃や光熱費も含めた按分の全体像は、家事按分のやり方にまとめています。
火災保険・地震保険の按分
自宅の一室を事務所として使っている場合、建物全体にかけた火災保険のうち、事業に使っている面積の割合分だけを経費にできます。たとえば床面積の20%を事業スペースとして使っているなら、火災保険料の20%が経費の目安になります。
自動車保険の按分
1台の車を仕事と私用の両方で使っているケースもよくあります。この場合は、走行距離や使用日数など、合理的に説明できる基準で事業使用割合を決め、その割合分の自動車保険料を経費にします。按分の割合を決めて毎月の仕訳に落とし込む作業に手が回らない方には、仕訳ごと任せられる記帳代行のサービス内容もあります。
按分の根拠を残しておく
按分割合は「なんとなく半分」ではなく、根拠を示せるようにしておくことが重要です。税務署から問い合わせがあったときに、その割合をどのように決めたのかを説明できるかどうかが大切になります。逆に言えば、合理的な根拠さえ示せれば、按分そのものは難しく考える必要はありません。次のような資料を保管しておくと安心です。
事業スペースの面積が分かる間取り図やメモ
車の使用状況を記録した走行記録
按分割合を決めた計算過程のメモ
使用日数を記録したカレンダーや業務日誌
一度決めた按分割合は、使い方が大きく変わらない限り、毎年同じ基準を使い続けるのが自然です。年によって割合が大きく動く場合は、その理由も合わせて記録しておくと、より説明しやすくなります。按分割合の付け方を誤ると税負担が変わってしまうため、帳簿づけでよくある間違いもあわせて目を通しておくと安心です。
所得控除として扱う保険料
経費にはならないものの、確定申告で所得から差し引ける保険料があります。これらは経費の仕訳とは別に、確定申告書の所得控除欄に記入します。
社会保険料控除
国民健康保険料や国民年金保険料、介護保険料などは、支払った全額が「社会保険料控除」の対象になります。生計を同じくする家族の分を本人が支払った場合も、本人の控除に含められます。対象になる保険料の範囲は、国税庁タックスアンサーNo.1130「社会保険料控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm)で確認できます。
生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険や個人年金保険、介護医療保険の保険料は「生命保険料控除」として、一定の計算式に基づいた金額を所得から差し引けます。自宅にかけた地震保険料は「地震保険料控除」の対象です。いずれも上限額が定められているため、控除額は支払額そのままにはならない点に注意しましょう。生命保険料控除の計算方法は、国税庁タックスアンサーNo.1140「生命保険料控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm)で確認できます。控除額の計算方法や上限は改正されることがあるため、最新情報は国税庁サイト等でご確認ください。
仕訳と書類管理のポイント
保険料を正しく処理するには、日々の仕訳と書類の保管をセットで考えることが大切です。
勘定科目の選び方
経費にする損害保険料は「損害保険料」という勘定科目で処理するのが一般的です。これとは別に、本人の社会保険料や生命保険料は経費の帳簿には載せず、控除証明書をもとに確定申告書へ記入します。記帳代行の現場でも、事業用の損害保険料と個人の生命保険料が同じ帳簿に混在してしまっているケースは珍しくなく、最初の仕分けを丁寧に行うだけで後の作業がぐっと楽になります。
控除証明書は必ず保管する
生命保険料控除や地震保険料控除、国民年金保険料の控除を受けるには、保険会社や日本年金機構から届く「控除証明書」が必要です。秋ごろに郵送されてくることが多いので、確定申告まで紛失しないよう、専用のフォルダにまとめておきましょう。控除証明書を紛失してしまった場合は、保険会社や年金事務所に連絡すれば再発行してもらえることがほとんどです。あわてず問い合わせれば間に合うことが多いので、見当たらないときは早めに連絡しましょう。
支払った時期で計上する年が決まる
保険料は「いつ契約したか」ではなく「いつ支払ったか」で、計上する年が決まるのが基本です。年払いでまとめて支払った場合の取り扱いなど、細かな点で迷うこともあります。判断に迷うときは、支払った日付が分かる通帳やクレジットカードの明細を残したうえで確認すると安心です。とくに年末や年始をまたぐ支払いは、どちらの年の処理になるのかを意識しておきましょう。
よくある質問
Q. 賃貸住宅の家財保険は経費にできますか?
自宅兼事務所として使っている場合、事業に使っているスペースの割合分だけを家事按分して経費にできます。完全にプライベートの住まいであれば経費にはなりません。按分する場合は、面積などの合理的な基準で割合を決めてください。
Q. 小規模企業共済の掛金は経費になりますか?
小規模企業共済の掛金は経費ではなく、「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除として扱います。支払った全額が控除の対象になりますので、控除証明書を保管しておきましょう。
Q. 事業用の車の保険料を間違えて全額経費にしていました。どうすればよいですか?
私用と兼用している場合は、本来は家事按分が必要です。気づいた時点で正しい割合に直し、必要であれば過去の申告について修正を検討しましょう。判断に迷うときは税務の専門家に相談すると安心です。
まとめ|保険料はまず経費か控除かを見分ける
保険料の経理でつまずく一番の原因は、事業のための保険と、自分や家族のための保険を区別せずに処理してしまうことです。事業に関係する損害保険料は経費に、本人や家族のための保険料は所得控除に、という大きな仕分けを最初に行えば、迷いはぐっと減ります。自宅兼事務所や仕事と私用で兼用する車については、家事按分で事業使用分だけを経費にし、その根拠を残しておくことがポイントです。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








