補助金の対象経費における人件費・自社作業の扱いをやさしく解説
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税金

補助金の対象経費に人件費を入れられるかは、その補助金の政策目的しだいで大きく変わります。設備投資型では対象外になりやすい一方、人材育成・研究開発系では人件費が中心になることも。自社作業が対象外になりやすい理由と、計上する場合に必要な証拠書類を整理します。
公募要領を読み込んでいて「人件費は対象になるのか、ならないのか」で手が止まる方は少なくありません。とくにシステム開発や試作品づくりを自社の人手で進めようとすると、「外注なら補助されるのに、自分たちでやると一円も出ないの?」と疑問に感じるのではないでしょうか。まずは考え方の軸から押さえていきましょう。
☑ 補助金の対象経費に自分や従業員の人件費を入れられるのかわからない
☑ 外注すれば補助金が出るのに、自社で作業すると対象外になるのが腑に落ちない
☑ 人件費を申請したいけれど、何を証拠として残せばよいのか見当がつかない
補助金を活用しようと公募要領を読み込んでいると、人件費の扱いは制度によって正反対になることに気づきます。ここを取り違えたまま計画を立てると、あてにしていた費用が対象外になり、あとで資金計画が崩れてしまいます。
補助金の対象経費における人件費の考え方と、自社作業(自社で行った労務)が原則として対象外になりやすい理由、そして人件費を計上する場合に求められる証拠書類のポイントを、個人事業主やフリーランスの方向けに整理しました。自分の使いたい補助金で人件費がどう扱われるのかを、公募要領で確認するための視点が身につきます。
補助金の対象経費とは何かをまず整理しましょう
対象経費は「補助金ごとに決まっている」
補助金は、国や自治体が政策目的のために、事業者の特定の取り組みにかかる費用の一部を支援する仕組みです。その「支援してよい費用」の範囲は、補助金ごとに公募要領であらかじめ細かく定められています。つまり、ある補助金で対象になる経費が、別の補助金では対象外ということが普通に起こります。
そのため、人件費が対象になるかどうかも、「補助金一般のルール」で決まるのではなく、使おうとしている補助金の公募要領を読んで判断するのが大原則です。一般論として語られる話と、自分の補助金の実際の扱いがずれることもあるので、必ず一次情報にあたる姿勢が大切です。日々の作業記録や賃金台帳の管理まで手が回らないときは、日々の記帳を専門スタッフに任せるやり方もあわせて検討するとよいでしょう。
経費区分の例を知っておく
多くの補助金では、対象経費が次のような区分に分けて示されています。
機械装置・システム構築費(設備やソフトウェアの導入費用)
外注費・委託費(社外の専門家や業者に作業を頼む費用)
広告宣伝費・販売促進費
専門家経費・旅費 など
このうち「人件費」という区分が独立して設けられている補助金もあれば、まったく設けられていない補助金もあります。自分の使いたい補助金にそもそも人件費の枠があるのかを、最初に確認しておきましょう。
「補助対象期間」も人件費判断に関わる
多くの補助金には、対象となる費用を支払ってよい期間(補助事業期間)が定められています。人件費を計上できる場合でも、対象になるのはこの期間内に、補助事業のために働いた分の労務だけです。期間前から雇っている人の通常業務分まで丸ごと対象になるわけではない、という点はおさえておきましょう。
人件費が対象になる補助金・なりにくい補助金
設備投資型の補助金では人件費が対象外のことが多い
機械やシステムの導入を後押しするタイプの補助金では、対象経費の中心が「モノ」の購入費用です。こうした補助金では、社内の人が動いた分の人件費は対象外と整理されていることが多く見られます。理由はシンプルで、補助の狙いが「設備への投資を促すこと」にあり、日々発生する人件費まで支援する設計になっていないためです。
このタイプの補助金で「自社の担当者が頑張って導入作業をしたのだから、その分を経費に入れたい」と考えても、公募要領上は対象外、というケースは珍しくありません。期待と制度の設計がずれやすいポイントです。
人材育成・雇用・研究開発系では人件費が中心になることも
一方で、従業員の能力開発や雇用の維持、研究開発の推進などを目的とする補助金・助成金では、人件費が対象経費の中心に据えられていることがあります。たとえば、研修を受けている間の賃金などを助成する人材開発支援助成金の活用方法や、研究開発に従事した技術者の労務費などです。非正規の従業員の賃金体系を見直して処遇を改善する場合は、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースのように、賃金そのものを支援対象とする制度もあります。
このように、補助金の政策目的と人件費の扱いは密接につながっています。「人手をかけること自体を応援したい」制度なら人件費は対象になりやすく、「設備投資を応援したい」制度なら対象外になりやすい、とおおまかにイメージしておくと、公募要領も読みやすくなります。
個人事業主自身の労働は特に扱いが厳しめ
従業員の人件費よりさらに扱いが厳しくなりやすいのが、事業主本人や役員の労働です。これらは「自分自身への支払い」という性質を持つため、客観的な金額を立てにくく、対象外と定められている補助金が多く見られます。なお、生計を一にする家族へ支払う給与は、税務上は青色事業専従者給与として通常の給与とは別のルールで扱われます(国税庁タックスアンサーNo.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」)。個人事業主の方が「自分の作業時間を人件費として申請したい」と考える場合は、特に慎重に公募要領を確認する必要があります。
なぜ「自社作業」は対象外になりやすいのか
支払いの事実が外部に残らないから
補助金の精算では、「実際にお金を支払った」という事実を客観的な書類で証明することが求められます。外注であれば、請求書や見積書、振込記録といった社外との取引記録が残ります。一方、自社の人が自分たちのために作業した場合、社外へのお金の動きが発生しないため、第三者から見て費用の実在性を確かめにくくなります。これが、自社作業が対象外とされやすい大きな理由です。
水増しや恣意的な計上を防ぐため
自社作業を自由に経費計上できてしまうと、作業時間や単価を実態より大きく見積もって、補助金を多く受け取ろうとする動きを完全には防げません。補助金は公的な財源から支出されるものですから、不正やあいまいな計上を避けるしくみが必要です。自社作業を原則対象外とすることは、こうした公平性・透明性を保つための線引きとも言えます。
「自社製品の購入」も同じ理由で対象外になりやすい
同じ考え方は、自社で製造した製品を補助事業に使う場合にも当てはまります。自社からの仕入れは、利益を上乗せして金額を作れてしまうため、対象外とされることが一般的です。グループ会社や関連が深い取引先との取引も、同様の理由で対象外や制限の対象になることがあります。「身内同士のお金の動き」は厳しく見られる、と覚えておくとよいでしょう。
人件費を計上できる場合に求められること
対象経費としての人件費の計算方法
人件費が対象になる補助金では、補助事業に従事した時間に応じて費用を計算するのが一般的です。多くの場合、年間の給与などをもとにした時間あたりの単価に、補助事業に費やした時間を掛けて算出します。通常業務と補助事業の作業が混在している場合は、補助事業に充てた分だけを切り分ける必要があります。
このとき、ボーナスや各種手当、社会保険料の事業主負担分などを人件費に含めてよいかは、補助金ごとに細かく決められています。含められる範囲は、補助金・助成金の社会保険・労働保険まわりの要件も参考にしながら確認しましょう。「給与の総額そのまま」ではなく、補助金が認める範囲だけが対象になる、と考えておくのが安全です。人件費として計上する費用が税務上の必要経費に当たるかどうかは、国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」も目安になります。
作業の実態を示す証拠書類をそろえる
人件費を計上する場合、次のような書類で作業の実態を示すことが求められます。
誰が、いつ、何の作業に何時間従事したかを記録した作業日報・業務日誌
給与の額や支払いを裏づける給与台帳・賃金台帳、振込記録
就業規則や雇用契約など、雇用関係を示す書類
とくに作業日報のような時間の記録は、人件費の根拠として重視されます。作業日誌の残し方は補助金の作業日誌・証拠の残し方で具体的に整理しています。「補助事業のために確かにこれだけ働いた」という証拠を、後からまとめて作るのではなく、日々こまめに残していくことが大切です。
事前確認と按分のルールを徹底する
人件費は計算の手間が大きく、按分(分け方)の考え方もあいまいになりがちです。申請前に、対象となる人の範囲、計算式、含めてよい手当の範囲を公募要領や事務局の手引きで確認し、判断に迷う点があれば事務局へ問い合わせておくと安心です。あいまいなまま進めて、後の検査で否認されると、その分は自己負担になってしまいます。
申請時に気をつけたい実務ポイント
「外注」と「自社作業」の線引きを意識する
同じ作業でも、社外の業者に頼めば外注費として対象になり、自社で行えば対象外、という分かれ方をすることがあります。だからといって、対象にしたいがために形だけ外注の体裁を整えるのは禁物です。実態のない取引は不正と見なされかねません。あくまで事業として合理的な範囲で、自社で行うか外注するかを判断しましょう。
見積りや内訳は具体的に書く
人件費を申請する場合は、「人件費一式」のような大ざっぱな書き方ではなく、どの作業に、誰が、どれくらいの時間を充てる想定なのかを具体的に示すことが求められます。算定の根拠が明確なほど、審査でも精算でもスムーズに進みやすくなります。
補助金は原則「後払い」であることを忘れない
多くの補助金は、先に費用を支払い、後から補助金を受け取る後払いの仕組みです。人件費も同様で、まず給与を支払い、実績報告で認められた分が補助されます。手元資金の計画を立てるうえでも、「すぐに補助金が入るわけではない」という前提を理解しておきましょう。
よくある質問
Q. 個人事業主の自分の作業時間を人件費として申請できますか?
多くの補助金では、事業主本人の労働は対象外とされています。自分自身への支払いは客観的な金額を立てにくく、水増しの懸念もあるためです。ただし、補助金によって扱いは異なるため、必ず使おうとしている補助金の公募要領を確認してください。対象外の場合は、本人の作業ではなく、設備の購入費や外部への委託費など、認められている経費で計画を組み立てるのが現実的です。
Q. 人件費の証拠として作業日報は必須ですか?
人件費が対象になる補助金では、作業日報や業務日誌のような時間の記録が事実上必須になることが多いです。補助事業のために何時間働いたかを示せないと、人件費の根拠が立たないためです。申請の段階から記録の様式を決め、毎日つけていく運用にしておくと、後の実績報告で慌てずに済みます。
Q. 残業代やボーナスも人件費に含められますか?
含められるかどうかは補助金ごとに定められており、一律ではありません。基本給だけを対象とし、賞与や一部の手当は対象外とする補助金もあります。判断に迷う場合は、思い込みで計上せず、公募要領や事務局の手引きを確認するか、直接問い合わせて確かめましょう。
人件費で迷ったときの結論
補助金における人件費や自社作業の扱いは、補助金の政策目的によって大きく変わります。設備投資型では人件費が対象外になりやすく、人材育成や研究開発系では人件費が中心になることもあります。自社作業が対象外とされやすいのは、外部への支払いが残らず費用の実在性を確かめにくいためで、計上できる場合でも作業日報などの客観的な証拠が欠かせません。まずは使いたい補助金の公募要領を読み込み、人件費の枠と計算ルール、必要な書類を一つずつ確認することが、確実な活用への近道です。
補助金の検討と並行して、日々の帳簿づけや確定申告まで自分一人で抱え込むのは、本業が忙しい個人事業主の方にとって大きな負担になりがちです。経費の記録があいまいなままだと、補助金の実績報告で求められる証拠もそろえにくくなってしまいます。
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【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








