事業を法人に引き継いだ年の確定申告|個人最終年度の処理を解説
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確定申告

事業を法人に引き継いだ年は、個人事業主としての最後の確定申告と、法人の経理が一年のなかに混在します。引き継ぎ日を境にした売上・経費の区切り方、在庫や固定資産の引き継ぎ、廃業に伴う届出までを、個人最終年度の処理として整理します。
どこまでを個人で申告し、どこからを法人の取引として扱うのか、その線引きに頭を悩ませる方は少なくありません。設立の手続きで手いっぱいのまま、年明けの確定申告で慌ててしまうケースもよく見られます。個人と法人の境目をどこに引くのかから、順に押さえていきましょう。
☑ 法人化した年に、個人事業の確定申告がまだ必要なのか自信が持てない
☑ いつまでの売上や経費を個人で、いつからを法人で計上すればよいかわからない
☑ 在庫や車両、機械などを法人へ引き継ぐとき、どう処理すればいいのか不安だ
個人と法人の境目をどこに引き、何を申告すればよいのか、全体像をつかんでいきます。
法人化した年に個人の確定申告が必要な理由
「設立日」までの所得は個人として申告する
法人を設立して事業を引き継いだ場合でも、その年の法人成りより前に個人事業主として稼いだ所得については、個人の確定申告が必要です。1月1日から事業を法人へ引き継いだ日までの個人事業の収入と経費は、個人事業主としての所得として申告します。つまり法人化した年は、「個人としての最後の確定申告」と「法人としての初めての決算」が並行して発生するのが基本です。法人の手続きにばかり気を取られて個人の申告を忘れると、無申告となってしまうおそれがあるため注意が必要です。法人成りの全体像は個人と法人の二刀流という選択肢も参考になります。
最終年度こそ控除や経費を取りこぼさない
個人としての最終年度であっても、青色申告をしている方なら、要件を満たせば青色申告特別控除を受けられます。引き継ぎ後は個人で青色申告特別控除を使う機会がなくなるため、最後の年こそ帳簿を整え、使える控除や経費を取りこぼさないことが大切です。基礎控除や社会保険料控除などの所得控除も最終年度に適用されます。法人化を機に国民健康保険から社会保険(厚生年金)へ切り替わるなど保険関係が変わる年でもあり、切り替えの詳細は日本年金機構の案内で確認できます。支払った保険料の証明書を漏れなく集めておきましょう。
個人と法人で売上・経費をどう区切るか
引き継ぎ日を基準に「いつの取引か」で分ける
個人と法人の区切りで最も大切なのが、引き継ぎ日(法人で事業を始めた日)を境に、取引を個人と法人へ振り分けるという考え方です。請求書の日付や役務の提供が完了した日、商品を引き渡した日などをもとに、その取引が個人事業の期間に属するのか、法人へ移ったあとの期間に属するのかを判断していきます。
引き継ぎ日より前に売上が確定した取引 → 個人の売上として申告
引き継ぎ日以降に発生した取引 → 法人の売上として計上
経費も同じ考え方で、いつの事業活動のための支出かで個人・法人を分ける
入金や支払のタイミングではなく、あくまで「いつの取引か」で判断するのが原則です。年末年始に入金がずれ込むことはよくありますが、入金日だけを見て振り分けると、計上もれや二重計上の原因になります。区切りの記帳や申告書の作成まで任せたい場合は、確定申告の代行を利用するやり方もあります。
引き継ぎ日をまたぐ取引の扱い
継続的なサービスや、引き継ぎ日の前後にまたがる契約がある場合は、どこまでが個人の役務でどこからが法人の役務かを整理します。たとえば前払いで受け取った報酬のうち、引き継ぎ日以降に提供する分は、本来は法人が担うサービスにあたります。判断に迷うときは、取引先との契約を個人から法人へ切り替えた日や、請求書の発行元を切り替えた日を一つの目安にすると、整理がしやすくなります。
売掛金・買掛金など期末に残るもの
引き継ぎ日の時点で、まだ入金されていない売掛金や支払いが済んでいない買掛金が残ることがあります。これらは個人事業の期間に発生したものであれば、原則として個人の決算に計上します。決算での未収・未払の計上のしかたは決算での未収・未払の計上のしかたが参考になります。回収や支払いを法人で代行する場合は、個人と法人のあいだの貸し借りとして整理する必要があり、処理を誤ると残高が合わなくなります。期末に残る債権・債務は、リストにして一つずつ帰属先を確認しておくと安心です。
資産や在庫を法人へ引き継ぐときの処理
棚卸資産(在庫)の引き継ぎ
商品や材料などの在庫を法人へ引き継ぐ場合、個人から法人へ「売却」する形をとるのが一般的です。引き継ぎ日時点の在庫を棚卸しし、その金額を個人の売上(または収入)として計上したうえで、法人側は仕入や資産として受け入れます。無償でそのまま渡すのではなく、金額を決めてやり取りするのが基本です。品目・数量・金額をまとめた一覧を作っておくと、個人の決算と法人の帳簿の双方で根拠資料として使えます。
車両・機械・備品など固定資産の引き継ぎ
事業で使っていた車両や機械、パソコンなどの固定資産を法人へ移す場合も、個人から法人への譲渡として扱うのが基本です。これらの資産は、購入時から減価償却を行って帳簿上の価額(未償却残高)が下がっています。引き継ぐ際には、その時点の価額をもとに譲渡の金額を考えます。
引き継ぎ年も、個人事業として使っていた期間分の減価償却費を計上できる
引き継ぎ後は、法人側が資産として受け入れ、改めて償却していく
譲渡に伴って利益や損失が出る場合は、その扱いを確認する必要がある
固定資産は金額が大きくなりやすく、引き継ぎの方法によって個人・法人それぞれの税負担に影響します。リース中の資産やローンが残っている資産がある場合は、契約上そのまま法人へ移せるかどうかも併せて確認しておきましょう。
現金・預金や借入金の扱い
事業用の現金や預金は、個人の資産であり、そのまま自動的に法人のものになるわけではありません。法人へ資金を移す場合は、出資や貸付といった形をとるのが一般的です。個人と法人で報酬や資金をどう配分するかは、個人と法人で報酬を分散する節税設計も参考になります。また、個人事業で抱えていた借入金を法人へ引き継ぐかどうかも、金融機関との相談が必要になります。お金まわりは個人と法人の境目があいまいになりやすいので、「これは誰のお金か」を常に意識して処理することが大切です。
廃業に伴う届出と確定申告の進め方
個人事業を辞めるときの主な届出
事業を法人へ引き継いで個人事業を辞める場合は、税務署などへの届出が必要です。代表的なものに、個人事業の開業・廃業等届出書(廃業の届出)があります。青色申告をしていた方は青色申告を取りやめる届出が、消費税の課税事業者だった方は消費税に関する届出が必要になる場合もあります。これらの届出には提出期限が定められているものがあるため、いつまでに何を出すのかをリスト化し、法人設立の手続きと並行して抜け漏れなく進めましょう。事業承継に関わる税制の考え方は事業承継税制と個人の節税にまとめています。
最終年度の確定申告で気をつけたいこと
個人最終年度の確定申告では、通常の年に加えて、在庫や固定資産を法人へ引き継いだことによる収入や、廃業に関連する処理が加わります。「いつもの確定申告+引き継ぎの処理」という意識で、引き継いだ資産の金額や、引き継ぎ日までの売上・経費を正しく反映させましょう。申告の時期は、原則として翌年2月16日から3月15日までの確定申告期間です。法人の決算とは別のスケジュールで動くため、両方の申告期限を混同しないよう、それぞれカレンダーに書き込んでおくと安心です。中小企業の法人化に関する一般的な情報は、中小企業ビジネス支援サイトJ-Net21も参考になります。
個人と法人のあいだのお金のやり取りを記録する
法人化の年は、個人と法人のあいだで資産や資金のやり取りが何度も発生します。記録に残しておかないと、あとから「このお金は何のためのものか」がわからなくなり、決算でつまずく原因になります。引き継いだ資産の一覧、譲渡の金額、貸し借りの記録などは、書類として整理して保管しておきましょう。
よくある質問
Q. 法人を作った年は、個人の確定申告と法人の決算を両方やる必要がありますか?
はい、原則として両方が必要です。1月1日から事業を法人へ引き継いだ日までの個人事業の所得は個人として確定申告し、引き継ぎ日以降の取引は法人の決算で処理します。法人の手続きに気を取られて個人の申告を忘れると無申告になってしまうため、二つの申告がある年だと意識しておきましょう。
Q. 在庫や車を法人に渡すとき、無償であげてもよいですか?
個人から法人への資産の移転は、原則として金額を決めて譲渡する形をとります。無償でそのまま渡すと、税務上の論点になることがあります。在庫は棚卸しした金額をもとに、車などの固定資産はその時点の帳簿上の価額(未償却残高)を参考に金額を考えるのが一般的です。金額の付け方に迷う場合は、専門家に相談することをおすすめします。
Q. 廃業届はいつ出せばよいですか?
個人事業の廃業に関する届出には提出の期限が定められているものがあります。事業を法人へ引き継いだら、できるだけ早めに準備を始めましょう。法人設立の手続きと時期が重なりやすいので、「個人側で出す書類」と「法人側で出す書類」を分けて一覧にしておくと、提出漏れを防ぎやすくなります。
個人と法人の「境目」を意識すれば最終年度はうまくいく
事業を法人に引き継いだ年の確定申告は、引き継ぎ日を境に売上・経費・資産を個人と法人へ正しく振り分け、在庫や固定資産の引き継ぎ、廃業の届出を漏れなく行うことがポイントです。個人としての最後の申告だからこそ、使える控除や経費を取りこぼさず、個人と法人のあいだのお金のやり取りをきちんと記録しておくことが、スムーズに乗り切るための鍵になります。
法人設立の準備で忙しいなか、個人最終年度の帳簿づけと確定申告、さらに引き継ぎの処理まですべてを自分で行うのは、大きな負担になりがちです。境目の判断を誤ると、二重計上や計上もれにつながることもあります。領収書丸投げドットコムは、領収書や請求書を郵送またはスマホ撮影で送るだけで、税理士監修のもと日々の記帳から確定申告書類の作成までをサポートします。法人化した年の処理を無料で相談してみることができます(相談は無料です)。料金の目安は料金プランのページでご確認いただけます。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








