業務改善助成金とは?最低賃金の引き上げと設備投資で使う助成金を解説
#
税金

業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げたうえで、生産性を高める設備投資などを行った事業者に、その費用の一部が助成される制度です。対象者・助成上限額・申請の流れと、従業員を雇う個人事業主の使いどころを具体例で整理します。
「従業員の賃金を上げたいけれど、原資をどう捻出するか悩ましい」——人を雇っている個人事業主にとって、これは切実なテーマです。業務改善助成金は、賃上げと設備投資をセットで後押ししてくれる仕組みですが、要件が細かく「自分の事業でも使えるのか」が分かりにくいのも事実です。まずは制度の全体像から押さえていきましょう。
☑ 従業員の賃金を引き上げたいが、機械やソフトの購入費が負担で踏み出せない
☑ 業務改善助成金という名前は聞いたが、個人事業主でも対象になるのか分からない
☑ いくらまで助成されるのか、申請はどんな順番で進めるのかを知りたい
ここでは、業務改善助成金の対象者と要件、助成される上限額、申請から入金までの流れ、そして申請前に確認したい注意点までを順を追って整理します。自分の事業で活用できるかどうかの判断材料をそろえていきましょう。
業務改善助成金とは?賃上げと設備投資をセットで支える制度
業務改善助成金とは、事業場内でいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上に役立つ設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に、その設備投資費用の一部を助成する厚生労働省の制度です。賃上げと投資を同時に進める事業者を支援するのが目的です。
誰が対象になるのか
対象となるのは、中小企業・小規模事業者で、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が一定範囲内であることなどの条件を満たす事業者です。従業員(労働者)がいることが前提で、労働者を雇っていない一人親方や一人社長は対象外です。従業員を雇っている個人事業主であれば、法人でなくても申請できます。
助成の対象になる「設備投資等」の例
作業効率を上げる機械・器具の導入(厨房機器、リフト、業務用機器など)
POSレジや会計・受発注ソフトなどの導入
コンサルティングや研修など、生産性向上につながる取り組み(一定の範囲)
単なる買い替えではなく、「賃上げの原資を生み出すための生産性向上」につながる投資であることがポイントです。会計ソフト導入など経理面の効率化は、記帳の負担軽減にも直結します。ソフト導入の観点はIT導入補助金で会計ソフトを導入する方法もあわせて読むと選択肢を比較しやすくなります。日々の帳簿づけそのものを外に出したい場合は、記帳代行という選択肢の詳しい内容も確認できます。
助成上限額と助成率の考え方
助成上限額は、「引き上げる労働者の人数」と「引き上げる金額(コース)」の組み合わせで決まります。多くの労働者を、より大きく引き上げるほど上限額が高くなる仕組みです。助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金の水準によって変わります。
コース別の上限額の目安
コースは引上げ額(例:30円・45円・60円・90円)ごとに分かれ、引き上げる労働者数に応じて上限額が設定されています。おおまかな目安は次のとおりです(金額・区分は年度により見直されるため、申請前に最新の公募内容を必ず確認してください)。
引上げ額(コース) | 1人 | 2〜3人 | 4〜6人 | 7人以上 |
|---|---|---|---|---|
30円 | 〜30万円 | 〜50万円 | 〜70万円 | 〜100万円 |
45円 | 〜45万円 | 〜70万円 | 〜100万円 | 〜150万円 |
60円 | 〜60万円 | 〜90万円 | 〜150万円 | 〜230万円 |
90円 | 〜90万円 | 〜150万円 | 〜270万円 | 〜450万円 |
さらに、賃金の引上げ人数が多い「特例事業者」では上限が引き上げられる場合があります。詳細は厚生労働省の業務改善助成金の公式案内で確認できます。
数値でイメージする活用例
たとえば従業員2人の時給を各60円引き上げ、あわせて業務用機器を80万円で導入したケースを考えます。60円コース・2人の上限が90万円で助成率が3/4なら、設備費80万円のうち60万円が助成される計算です(実際の助成額は要件審査で決まります)。賃上げの負担を投資支援で和らげられる点が、この制度の魅力です。
申請から入金までの流れ
業務改善助成金は「先に交付申請 → 承認後に賃上げと設備投資を実施 → 実績報告 → 入金」という後払いの流れが基本です。承認前に発注・支払いをしてしまうと対象外になるため、順番を守ることが最も重要です。
大まかなステップ
①交付申請:賃金引上げ計画と設備投資の内容をまとめ、労働局へ提出
②交付決定:内容が承認されてから発注・契約・支払いを行う
③事業実施:計画どおり賃金を引き上げ、設備を導入
④実績報告:領収書や賃金台帳などの証拠書類を添えて報告
⑤額の確定・入金:審査後に助成金が支払われる
入金は事業を実施し実績報告を終えた後になるため、当面の設備代は自己資金や借入で立て替える必要があります。資金繰りの考え方は補助金の入金までの流れと資金繰りの注意点が参考になります。
要件になりやすい社会保険・労働保険
雇用に関する助成金では、労働保険への加入や適正な労務管理が前提になることが一般的です。従業員を雇う個人事業主が助成金を使う際の保険まわりの整理は、社会保険・労働保険の加入が要件になる助成金への対応で確認しておくと安心です。制度全体の探し方は個人事業主が使える補助金・助成金の探し方にまとめています。
申請前に確認したい注意点
業務改善助成金は魅力的な制度ですが、賃上げは一度実施すると原則として引き下げられない前提で計画を立てる必要があります。売上や資金繰りに無理のない範囲で、継続できる賃金水準を設定することが大切です。
受け取った助成金の税務上の扱い
助成金は原則として事業所得の収入(雑収入など)に計上し、課税対象になります。設備を購入した場合の圧縮記帳の可否など、経理処理には注意が必要です。詳しくは補助金・助成金を受け取ったときの税金と処理で解説しています。
よくある質問
Q. 従業員が1人だけの個人事業主でも申請できますか?
はい、労働者を1人以上雇っていれば申請できる可能性があります。その従業員の時給が事業場内最低賃金に該当し、要件を満たす引上げと設備投資を行うことが条件です。ただし事業主本人や、労働者にあたらない家族専従者の扱いは個別に確認が必要なので、労働局や商工会議所に相談しましょう。
Q. パソコンや車の購入も対象になりますか?
生産性向上に直接つながる設備であれば対象になり得ますが、汎用性が高く事業以外にも使えるものは対象外とされる場合があります。何が対象になるかは公募のたびに細かく定められているため、購入・発注の前に必ず対象経費の範囲を確認してください。
Q. 申請してからどのくらいで入金されますか?
交付申請から交付決定、事業実施、実績報告、額の確定を経て入金されるため、数か月単位の時間がかかるのが一般的です。設備代を先に支払う必要があるので、入金までのつなぎ資金を見込んで計画を立てましょう。
結論:賃上げと投資を同時に進めたいときの選択肢
業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引き上げと生産性向上の設備投資をセットで行う事業者を支援する制度です。従業員を雇う個人事業主でも対象になり得て、投資費用の一部が助成されるため、賃上げの負担を和らげながら職場の効率化を進められます。ポイントは「交付決定の前に発注しない」という順番と、継続できる賃金計画を立てることです。
もっとも、こうした助成金の申請では、賃金台帳や設備の領収書、帳簿など日々の記録が正確にそろっていることが前提になります。本業に追われる中で経理まで完璧に整えるのは、なかなか大変な作業です。記帳代行の現場でも、助成金の実績報告を前に帳簿の抜けに気づいて慌てる、というご相談は珍しくありません。
「領収書丸投げドットコム」は、領収書や請求書を郵送またはスマホ撮影で送るだけで、日々の記帳から書類整理までを代行します。初期費用は0円、契約の縛りもありません。助成金申請に必要な数字の裏づけを整えておきたい方は、助成金申請に必要な数字を無料で整えられるか相談するところから始めてみてください。料金や依頼できる範囲は料金プランを見ると具体的にわかります。
【本記事の監修】
領収書丸投げドットコム 責任者 山下
個人事業主・フリーランス専門の記帳代行サービス「領収書丸投げドットコム」(運営:それいけ株式会社)の責任者として、日々の記帳代行・確定申告サポートの実務知見に基づき本記事の内容を確認しています。本記事は、国税庁など公的機関の公表情報をもとに作成しています。








